皆に愛され 覇道をゆく天才の物語 作:水戸野幸義
目を開けるとまず最初に見えたのは白色だった。
目の前だけじゃない。辺りも白。色の途切れ目なんてないかのように白一色。白の世界。
「ここは……俺はどうしてこんなところに」
「気が付きましたか。ここは選択の間へ。私は彼方に新たな道を提案する女神」
声と共に現れたのは一人の女神。
どうして女神だと相手の言うことをあっさり受け入れられたのかと言うと、背中が無駄にキラキラと神々しく光っているから。
それに目の前のこのひとがあまりにも現実離れした美少女的な容姿なので、本物の女神様なんだと受け入れられた。
何だろう某素晴らしきなんちゃらの女神様っぽい。
「それは貴方
の女神としての一番強いイメージがあの水の女神様だからですよ」
「こ、心が読めるのか!」
「ふふっ、神……女神ですので」
ニッコリと優しく微笑まれる。
ますますアレっぽい。
ということはということか。この状況、そしてここを選択の間と言った事といい。
「理解が早くて助かります。その通り、貴方は死にました」
「――死んだ……」
予想通りの返答。
なのにどうしてか実感は湧いてこない。
「はい、貴方は死にました。そう、そうです。わき見運転しながら信号無視したトラックに轢かれそうになった小さな子供を助けた為に」
そう、そうだ!……思い、出した!
家への帰り道。横断歩道が見えた時、小さな子が青信号を渡っていたのに、信号無視したトラックが突っ込んで来て、それから小さな子を助ける為に俺は。
当時の記憶が蘇る。死の実感が湧いてくる。
「……ぁ、っ……あ、あの小さな子は……?」
「心配ありません。貴方のおかげで助かりました。ですが……」
女神は申し訳なさそうな顔をする。
どうしたんだ。
「本来、貴方の死は予定にはありませんでした。貴方も助かる予定だったのです……俗にいう神、天界側のミスです。その、すみません」
「そう……か」
謝られたが信じられない。いや、信じたくはない。
そりゃあの子が助かったのはよかったけどミスで死んだなんてあまりに過ぎる。どこまでテンプレなんだ。
信じたくはないが蘇った記憶は確かだという確信がある。
それに何度瞬きしても白の世界なのは変わらず、目の前の女神も変わらずいる。
「事実なんだな」
「はい、悪いと思っています……ですが、ご安心を。貴方は人一人を救った。それもまた事実。命は重い」
「……やっぱり、そういう……?」
何か後々の展開が読めてきた。
「そう、そうです。貴方には選択の機会が与えられました。このまま死を受け入れ、輪廻の輪に還るか。それとも別世界へと所謂前世の記憶を持って赤ん坊から新しい生を謳歌するか」
ここまでテンプレな流れだともう逆に信じてしまう。
むしろ、いくつか先の展開が想像でき期待に胸が躍る。
「決まってる! 別世界行き以外ないだろ!」
「そう、そうですか。分かりました。では、別世界行き決定ですね。ただし、行く世界は既に決まっています」
「ああ」
俺は頷いた。
最近の流行りだとファンタジー世界で魔王を倒すか、スローライフ辺りか。
「違います」
情緒もなく事務的に否定された。
あの女神っぽくはないけど、女神は女神なんだな。
「はい、女神なので。行先はインフィニット・ストラトスの世界」
「え……ラノベだろ、それ」
「貴方にとってはラノベでもあの世界が存在するのは事実なのです。ほら、クトゥルフ神話って分かりますか。アレと同じですよ。創作が別世界の在り方を物の見事に当てた的な」
「メ、メタい……言いたいことは分かるけども」
まあ、そういうのもあるんだろう。
こんな生きてる間体験できなかったことがあるなら。
それにISの世界ならまだいいか。知らない世界じゃない。
「転生ってことでいいんだよな? だったら、何か特典とか……いやでも、いくらISの世界とは言え、ヤバいか? 転生特典を持って転生ってのはよく読んだけど」
「心配無用。貴方をインフィニット・ストラトスの世界に送るのはお詫びという意味がありますがバランスを取ってもらう為です」
「バランスか……」
いろいろアンバランスな世界だからか。
めちゃくちゃな世界だからな。
「……。ですので、バランスを取る為とミスのお詫びにお好きなのをお好きなだけどうぞ。チート能力とか、どれでも」
「そうは言われてもな~」
いきなり言われてもそうすぐには出てこないのが我ながら何とも寂しい。
あの世界でファンタジー系の能力とかはいらないだろうし。
かといって、よくあるアニメ漫画の力とかも何か。
「そう、命は重い。こういうのも何ですが貴方は人を救って一度死んだのです。死後ぐらい自分に正直になって下さい」
「それもそうか」
今更変に遠慮したところで今限定とはいえ死人。
変に遠慮するのは生きてるうちにいっぱいした。
それにこの女神様は心が読める。隠しても意味はない。
「だったら……!」
俺は思い浮かんだ転生特典を女神を要求した。
ザッというとこうだ。
性別は男。転生して生まれる時期は一夏達と同じ頃の原作開始前の十六年前。生まれる家はデュノア家。美形、美声だと嬉しいな。
シャルロットが一番好きだから出来れば、従妹関係になるように生まれるのが望ましい。
原作知識は必須。もちろん男でありながらISに乗れるようにしてほしい。IS適正はSランクあればいいか。
他はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのような優れた頭脳。頑張れば頑張ったほど報われる。まだだ覚醒もいいな。
アムロ・レイと同等の戦闘技能、キラ・ヤマトと同等の情報処理能力、スーパーコーディネイター、枢木スザク並みの身体能力。
seed持ち、カミーユ・ビダンと同等のニュータイプ能力。ガンダム世界や各世界の技術知識を完備。勿論、それを実現できるだけの技能も必須だ。
それとシャア・アズナブルクラスのカリスマ性があると後々便利か。
「とまあ、こんな感じだけど」
「多いですが、まあいいでしょう。人を救ったこととミスのお詫びでサービスします。ただ」
「ただ?」
「貴方で言うところの原作開始時期。十六歳にはこれらすべては生まれ持った才能として貴方の望んだとおり、発現しますがそれまではまず体や精神、次に世界に悪い影響がないように一つずつ発現していきます。例えばISを使えるようになるのは織斑一夏と同じ時期だとか。その辺、ご理解を」
「分かった。むしろ、助かる。ありがとう」
産まれて、すぐスーパーコーディネイターの身体能力があったら変だ。
すぐISを使えないのは残念だがうまい具合に調整してくれるのならありがたい。
至れり尽くせりだ。
女神の手元が光る。
指を動かすしぐさはまるでキーボードでPCへとデータを入力しているかのよう。
これからなんだと実感が湧いていく。
「世界の書き換え完了。調整の完了を確認。準備は整いました。目を閉じるとすぐです」
「ああ、分かった。女神様、いろいろありがとう」
そう言って俺はゆっくり目を閉じていく。
「さようなら」
その言葉を最後に俺の意識は遠のいていった。
◇◆◇◆
ここはフランス最高峰の病院。
病室の一室にある夫妻と生まれて間もない赤子はいた。
「よく眠っているわ。元気に産まれてきてくれて嬉しい」
「ああ、本当に。マリー、君も元気で安心したよ。初めての出産。いろいろ心配だった」
「ありがとう。サンソン、貴方がついてくれていたからよ。仕事立て込んでいたのに。アルベール義兄様は怒ってなかったかしら」
「大丈夫だ。アルベール兄上は厳しい人だが、そこまで冷徹ではないよ。それにこの子は我がデュノア家にとっても待望の男の子だ。兄上もああ見えて楽しみにしていたさ」
「まあ、ならこの子と一緒にアルベール義兄様と挨拶しなくちゃならないわね。それとロゼンダにも。楽しみだわ」
「きっと二人とも喜んでくれるよ」
デュノア夫妻の間に待望の赤ん坊が生まれた。
幸せな出来事に夫妻は嬉しさに溢れている。
なんせ――。
「この子はずっと子供を待ち望んでいても中々恵まれなかった私達に神が授けてくれた子」
「だから、この子の名はこれで決まりだ」
「ええ……私達のところへ来てくれてありがとう。これからあなたはたくさんの人に愛され、たくさんの人を愛す素敵な男になるわ。ね、
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