皆に愛され 覇道をゆく天才の物語 作:水戸野幸義
デュノア家とオルコット家。
俺、テオドール・デュノアとセシリア・オルコットの婚約が成立してから少し経つ。
大々的に公表したわけではないが、隠しているわけでもない。なので両家の仲は知る人ぞ知るものとなった。
各方面からの反応もあった。それは日本の友人達からも。
「そそそ、そう……こ、婚約者ね……おめでとうっていうのは気が早いかしら。ふ、ふふ、ふふっ」
と楯無にはこんな反応をされ。
「そう、なんだ……おおお、お幸せに……?」
簪までこんな反応だ。
そっけない。というか、微妙な反応。
まあ、友人にいきなり婚約者が出来れば戸惑うか。
友人達がこんな反応なら近しい人はどうなのか心配になった。
しかし、杞憂だった。
それはある日、オルコット一家がデュノア、サンソン一家の邸宅にやって来た時のこと。
ここで初めてシャルロットとセシリアの顔合わせがあった。
「そう……あなたがテオの。シャルロットさん、これから末永くよろしくお願いしますわね」
「はい、こちらこそ。オルコット様、末永く」
「公の場でなければ、呼び捨てでも敬語でなくても構いませんわ。わたくしはこの話し方とこの呼び方が一番しっくり来ているのでお気になさらず。共にテオを支えましょう!」
「うん。そういう事なら分かったよ……共にテオを支えよう!」
仲睦まじげに手を取り合うセシリアとシャルロット。
意外というべきなのか、二人の仲は良好だ。
立場は違えど、同い年の同性同士。何か通じるものがあったのやもしれん。
思えば、
何にせよ、大切なもの達が仲いいことにことしたことはない。
セシリアとの仲も良好だ。
この婚約は家同士の繋がりを強くするための意味合いが強く、婚約者と言われても何かあるわけでもない。
それでも共通するものがあるとすれば、仲は自然と深まっていくもの。
「貴族……いえ、高貴な者。特別な地位にある者にはどのようなことが伴うとテオは思いますか?」
「また、それか。セシリアは本当に好きだな」
「好きですわ。わたくしのモットーのひとつですもの。何より、他ならぬテオの口から聞きたいのです。あの言葉を教えてくたれのはテオなのですから」
「そういうことならいいだろう。婚約者殿の願いを叶えるのも大事なことだ」
「ふふっ、ありがとうございます」
一つ小さく笑うとセシリアは俺に問うた。
「大いなる力には」
「大いなる責任が伴う」
そう答えるとセシリアは満足そうに笑った。
といった感じのやりとりがもっぱら。
セシリアとは高貴な者の役目、力ある者の在り方といった話でよく盛り上がる。
小難しい話ではあるが、セシリアと話すのなら悪くない。
セシリアとは婚約関係であるが、互いに高め合う気高き仲となった。
家族は幸せそのもの。平和だ。
しかし、世界は未だ大きな変革の中。
ISが世界に姿を見せて早数年。いや、まだ数年と言うべきか。
日々世界中でISの研究は行われており、発見は多い。
中でも大きな発見が防御機能の一つである救命領域対応と呼ばれる生命維持、身体回復能力。
IS中にあるすべてのエネルギーをその機能に集中させることで、操縦者の生命維持をするというもの。
実際、墜落事故などはこの機能によって操縦者は助かって、その後復帰している。だが、分かっているのはそれだけでどの状態までならこの機能は働き続けるのかまで詳しいことは分かってない。例えば手足を失った場合、この機能がどう作用するのか。はたまた 病気などには有効なのかどうか。
しかし、今はこれだけで十分な情報。伯父殿の反応を見れば、そうだろ。
「ISは魔法の道具の如き存在。これはテオ、お前の言葉だったな」
「はい……伯父上」
「なんて顔をする。喜ばしいことだ、これは。正しくお前の言葉通りとなった。これなら……!」
デュノア社の社長室。
俺は伯父殿に呼ばれ、そこで伯父殿はやる気に満ち満ちた顔をしている。
おそらく伯父殿の頭にあるのはシャルロットの母親、イリスさんのこと。
今、体調はよく元気に過ごしているが病気、体の弱さが治ったわけじゃない。油断はできない。
だからこそ、もしものための保険は必要でその保険の一つがISであり、救命領域対応。今は可能性の話でしかないが、ISは魔法のような存在。
ましてや伯父殿はワンオフ・アビリティーという超常現象を間近で目の当たりにしたんだ。ISならと強く望みを抱いてしまうのかもしれない。
おかげでと言っていいのか、今まで一部門にしか過ぎなかったISがデュノア社全体で力を入れるようになって、やれることも増え余裕もできた。
EOSにも今まで以上に集中できているが……、
「テオがそんな顔する必要はないよ。心配無用……もしもの時は僕に任せて」
「はい……父上」
同じく伯父殿に呼ばれた父上がそう言ってきた。
顔に出ていたのか、それとも親子だから考えは見抜かれていた。
父上に任せるとしても注意してなければならないな。
「では、そろそろ本題に入ろう」
これまでの話は大事な話ではあるが本題は別にある。
「テオ、お前が見つけ出したあの情報。私とサンソンでも裏取りと精査をしたが間違いなかった」
「テオがみつけてきた通りだったよ」
「ということは……やはり」
「ああ。アメリカとイギリスが極秘裏に衛星を共同開発し、運用する計画は確かにある」
これが今回三人が集まった本題。
セシリアの従者チェルシー・ブランケットの妹、エクシア・ブランケットの存在が確認できず、本格的な調査の末漸く掴んだのがこの計画。
まだ計画段階で本格的な開発はされていない。しかし、それも時間の問題。時が進めば、完成する。攻撃型衛星として。
そして、生命融合型のIS『エクスカリバー』として。
「こそこそとこんな計画を練っているとは」
「国同士の計画とあって両国の有力者が出資者として数多く名を連ねているね。その中にはオルコット家の名前も」
当然と言えば当然か。
国が動けば、貴族、それもイギリス有数の名家であるオルコットが動かない訳にもいかない。
「それときな臭いが他の出資元だ。名前以外正体がデュノアでも掴めない不明なのがいくつかいる」
「確かに……この計画、一物ありそうだ」
父上の言葉に頷いた。
一物は当然あるはずだ。
国同士が極秘裏に開発、運用を計画している衛星。しかも、攻撃にも使える兵器。
計画として分かったのはここまで。だが後々ISコアを搭載して、エネルギー元と制御回路にするつもりなんだろう。
そうすれば最高峰の防御力を手に入れ、攻守ともに強力な兵器となる。
「伯父上、父上。今後の対応はどのように?」
事実を知った。
なら、見て見ぬふりはできない。
計画に即介入はまだしも何かしらのアクションは必要だ。
「そうだね……様子見ってことになるのかな。言ってもイギリスとアメリカ、国同士の極秘計画だ。デュノアが突き付けたところでしらを切られる。かといって、フランス政府を頼るのはね」
「国を動かすにはもう少し具体的な情報が必要だ。それに今言えば、余計な混乱を招く……しかし、時期を見てオルコット夫妻には問いただしてみてもいいだろう」
「そうですね。ことは慎重に」
父上の意見も伯父殿の意見も納得の行くものだった。
今は様子見がベストで、然る可き時期には問いただして一つ一つはっきりさせていく必要がある。