皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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事件は現場だけで起きてるんじゃない!会議室でも起きてるんだ!


STORY21 Oの連鎖/事件は覇者たちがいる会議室でも起きている

――織斑千冬という女はつくづく愚か者だ。

 

 後の祭りとなってしまった今になって自嘲しても何も意味はなさい。

 それでも、そう思わずにはいられない。

 意味はあるか。自省した今だからこそ分かったことがある。私は浮かれていた。

 

ブリュンヒルデ

 

 世界最強の称号。世界大会総合優勝者に送られるそれが今の私を示す別名。

 神話や様々な伝承などに登場する有名な女騎士が由来だとかいう大層な名前。

 その名を持って人々は私を慕ってくれる。正直慣れなさゆえの戸惑いはあるが悪い気はしない。張り合うに申し分ない好敵手とも巡り合えた。

 だから、なのかもしれない。安心してしまった。ようやく地に足が着いたような感じがしてしまったから。

 安心して考えるのをやめてしまっていた。

 

 そもそも私は昔から今一つ考え足らずなところがある。アイツ、束の手を取った時もそうだった。

 アイツの手を取るということがどういうことなのか分かってはいた。しかし、そんなものは表層程度。理解不足、予測の甘さ。

 手を取るしかなくて、目の前のことで精一杯だった。事実としてはそうだが、それで済ませてしまっていた。私という女の限界。

 少し考えれば、その先も考えられたはずだ。ISが広まるという事。ISを駆って私が表舞台で活躍するとどうなるかなんてことは。

 もっと考え続けていれば、何かできていたはずだ。弟一夏をこんなことには巻き込まなかった。せめてISから遠ざけるべきか。

 

 何より、私は……私達は普通の人間じゃない。

 束の庇護があるとは言え、知れている。アイツは信用できても、信頼は出来ん。

 というより、アイツの中にとって一夏の優先順位は私達よりも低い。よくて三番目ぐらいだろう。

 今回のことを束に聞こうにも連絡つかないのがまさにそうだ。かといって今回のことがアイツの悪癖によって引き起こされたということでもない。

 今回のことに関しては束の気配は感じない。

 

 別に思い当たるものはある。

 こんなことをこの時期、束以外に出来る奴らがいるとすれば奴ら以外ない。

 私達のルーツ。急がなければ、手遅れになる。奴らの醜悪さは身をもって知っている。

 やはり、生まれの因縁はいつまでもついてくる。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 第二回モンド・グロッソ、総合部門。第三位、フランス、ショコラデ・ショコラータ選手。

 手元のタブレットに表示される大会の結果。

 今日は世界大会最終日。連日続いた大会は総合部門、その決勝戦を残すところとなった。

 

「タブレット、そんな見つめても結果は変わらないわよ」

「やっぱり、結果気にしてる……?」

 

 声をかけてきたのは楯無と簪の二人。

 二人とは最終日ということで今日は関係者席の類であるVIPルームで共に観戦している。

 

「ン……まあ、気にはしているな」

「その割には別にその結果がショックってわけじゃないんでしょう?」

「ショックな訳なかろう。3位という結果は素晴らしく、概ね有意義な成果であったと表現できるからな」

 

 結果としてはフランスは3位だが、ベスト3。メダルクラス。

 ショックを受けようものなら、ショコラータに申し訳が立たなくなる。

 彼女は結果と同時に成果も出してくれた。

 

「ああ、確かに。エース向けのパッケージをこの世界大会で発表、完璧な実演も済ませちゃうんだから」

「商売上手」

「それほどでもない」

 

 謙虚の気持ちでそう言う。

 ショコラータのおかげというのは重々承知している。彼女はよくやってくれた。

 今回の大会で使用したラファール・リヴァイヴには一般的なパッケージでは満足できない操縦者向けのエース用パッケージを装備させ、大会に出てもらった。

 世界大会はお披露目の場として申し分なく、事実莫大な宣伝効果があった。早くも導入を本格的に始めようとしている国も出ているとか。

 

「後は何より、予定調和となったなと安心の気持ちで結果を見ていた」

「やっぱり、あの二人の再戦は全世界の人が心待ちにしてたって言っても過言じゃないからね」

 

 楯無が言う二人とは、織斑千冬とアリーシャ・ジョセスターフ。

 第一回であれほどの試合を見せられれば、また見たくなるというもの。今回一番の目玉ともいえる一戦で、無事見られることに大会全体もまた安堵しているかの様子。

 実際今残す二人の決勝戦を今か今かと観客は待ち侘びている。

 俺としても決勝戦で戦うのが二人で何よりではある。変らず、やってくるのだろう。

 変わらずと言えば、頼んでいたあのことに対して礼を言うのは忘れていた。

 

「二人と言えば、織斑千冬……頼んでいた彼女の弟のこと礼を言うのがまだだったな。ありがとう、楯無」

「あら、そのこと。いいのよ、更識家にかかれば一般人の護衛なんてちょちょいのちょいよ」

 

 先日の大会前夜祭で行われた宴会で楯無、簪達と出会った。

 その時に楯無と二人っきりとなり別れ際にとある頼みごとをした。

 それが織斑千冬の弟、織斑一夏の護衛だ。

 予定調和にことが進むのなら、あの出来事も起きるに違いない。あの者達による織斑一夏の誘拐。

 

「……な~んて調子のいいこと言っちゃったけど、護衛なんて名ばかり。大分遠くからの監視が関の山なのが申し訳ないわね」

「いやいや、構わない。急なお願いで無理させたみたいだしな」

「まあ、それはいいのよ。ただ彼の主だった護衛は公安の領分であまり近くでの護衛は難しいってだけだから」

 

 更識との二段構えならひとまずといったところだな。

 まあ、あの者達相手にどこまでやれるかは問題ではある。が

 しかし、公安が護衛。そんな記述はなかったように覚えているが、あるにはあるか。篠ノ之束の家族に適応されている重要人物保護プログラムの類か。それとも人の出入りが激しいこの時期だからだろうか。

 

「あの、テオ……」

「ン……どうした、簪」

 

 考え事をしていると、簪が呼びかけてきた。

 

「テオって別に織斑選手の知り合いでもなければ、弟さんの知り合いでもないんだよね。なら、どうして……あっ、そのっ、私が口出していい事じゃないのは分かってだけど……」

「あ、それは私も気になってた。何かあるの?」

「知っているかもしれんがドイツでの一件から何かときな臭い動きをする者達がいてその者達の手がかり掴みたくてな。そういう者達は今大会のような祭りごとの裏で暗躍するのがお約束だろう? ならば、狙いそうなのは……という勘が働いたのだ」

 

 というのは建前ではあるが、嘘ではない。

 手がかりを掴みたいのもまた事実。

 オルコット夫妻の時は叶わなかったが起こると知っているのなら、対策するのみだ。

 

「な、なるほど……?」

「勘ね……まあ、天才の勘ならただの勘よりかはいいわね……っと、ごめんなさい」

 

 そう謝りながら、部屋の隅の方へ行く。

 そして、連絡が入ったスマホに楯無は出た。

 真面目な顔で話して顔色は変えないが、目に動揺の色がほんのわずかに見える。

 何か起きた。いや、ついに始まったと言うべきか。

 通話を終え戻ってきた楯無に声をかけてみた。

 

「緊急事態か」

「分かっちゃう……わよね。テオに隠し事しても意味ない、か……ええ、その通りよ。まったく天才の勘良さは考え物ね」

「ということは」

「ブリュンヒルデ織斑千冬の弟、織斑一夏が何者かに誘拐されたわ」

 

 決定的な言葉だった。

 

「まったく定番よね、黒づくめの男達に車で連れ去られる。公安の護衛も打ち負かされて。更識の子達に阻止に入ったんだけどISが出てきたらしくてね」

「ISが? 大丈夫だったのか」

「幸い怪我人はなくて、捜索を始めてもらってるところよ」

 

 いろいろと動き出している。

 しかも、ISまで出てくるとは……思い当たる実行犯がますますあそこで確定になってくる。

 

「っと虚ちゃんから連絡が来たようね。ふんふん……織斑千冬が誘拐した弟を映した写真を見つけたらしいわ」

「それを見てもう飛び出してしまったか」

「いえ、幸い係りの人達が止めたからまだ会場にいるようだけど今にも探しに行きたいようね。で、今からそれをどうするか関係各所と協議しにいかなきゃ」

 

 織斑千冬を一人で行動させてしまう。

 そういった最悪の状況にはなってないようだ。

 となると、やるべきことは決まってくる。

 

「その協議、俺も参加していいか?」

「別に大丈夫なはずよ。天才ほど大したものじゃないけど私の勘だと決勝戦は一時中止になって各国との調整もあるだろうから、フランスも関わってくるだろうし」

「それはそうだな。よし、行くか」

 

 楯無や簪と共に今いる部屋を後にして協議が行われるところに向かった。

 協議が行われる会議室の前まで着くとそこにはもう既に沢山の関係者、時間になっても試合が始まらないことを問いただしに来た他の国の者達で一杯だった。

 

「いったい何があったんだ」

「何でも、織斑千冬の家族が攫われたらしいぞ」

「おいっ! 詳しい説明をしろ!」

 

 大きな騒ぎになっている。

 というか、もうその事実は漏れているのか。

 扉の向こうに恐らく織斑千冬がいるのだろうが。

 

「テオ、お姉ちゃん……どうするの、人いっぱい……」

「う~ん、どうしたものかしらね……これは。入るには入れないわ」

 

 人だかりが凄すぎて前に進めない。

 ここで楯無が関係者、更識の人間だと言ったところで無理だろう。

 どうしたものか……そう思っていた時だった。

 

「ふざけるな!」

 

 扉の向こうから聞こえた怒鳴り声。織斑千冬だ。

 突然のことに騒がしかった人だかりは静まり返る。

 これはチャンスだ。

 

「行くぞ、楯無、簪」

「ええ」

「え……ちょっと……!」

 

 先頭に立ち楯替わりとなる。

 後ろでははぐれないよう楯無が簪と手を繋ぎ、手を引く。

 

「更識です。入らせてもらいますね」

「え……あっ、はい……」

 

 今だ唖然としている扉の前にいる人に楯無が断ると部屋の中へとようやく入れた。

 中にも人は沢山おり、ここもまた騒がしい。

 そして当然、その中心とも言える部分には織斑千冬の姿があった。

 楯無の父親の姿を見つけるとひとまず先に向かった。

 

「来たか、楯無に簪。それにテオドール君まで」

「遅れました、お父様。それで状況は」

「見ての通りだ。今にも飛び出しかねない。公安の者達が説得しているが……」

 

 無理だと言わんばかりに言葉を濁す。

 事実、傍から見ても説得が絶望的なのは見て取れる。

 会話に耳を傾けてみた。

 

「ですから、試合にお戻りを。棄権など認められません」

「そうは言われても弟が正体も分からない者達に攫われたんだぞ! ジッとしてられるか!」

「お気持ちは分かります。ですが、そこは我々にお任せを。ご家族は責任をもって必ず見つけ出します」

「護衛なんて名ばかりで私に何の断りもなく勝手に一夏の監視をしていたくせに。調子のいいことを」

 

 平行線だった。

 ここにいる以上ほぼ確定路線ではあるが日本としてはここで織斑千冬を自由にしてしまえば、棄権は決定事項になる。

 後日再試合というのはいろいろな都合で難しいだろう。

 

 織斑千冬は確かに今にも飛び出してもおかしくない雰囲気だ。

 あくまで雰囲気。実際には飛び出してない。

 織斑一夏なら文字通り飛び出しているだろう。

 しかし、姉弟でも織斑千冬は違う。飛び出したい衝動は消えてないが、その衝動の強さと同じぐらい冷静さがある。自分の立場を分かっていて、立場に縛られて動きたくても動けない。織斑千冬とはそういう人物でもある。

 

 平行線ではあるが、いつまでもこうしてはいられない。

 再開するにせよ棄権するにせよ何かしらアクションは起こさなければならない。

 かといって織斑千冬を説得するなんてこと日本は勿論、織斑千冬の圧に押されただ見てることしかできてない周りの国にも無理だ。

 

 そんな平行線を終わらせたのは楯無だった。

 

「埒が開きませんね。ここは一つ我が更識家に任せては貰えませんでしょうか」

「更識楯無……!」

「でしゃばるのはよしていただきたい。これは我々の領分なのはお判りでしょう」

「それは勿論。しかし、お言葉ですがこのままではただ時間が過ぎるだけでしょう。どうやっても試合の中止……いえ、棄権は免れません。それとも織斑選手を納得させられるほどの何か秘策でもあるのでしょうか?」

「……ッ」

 

 泰然とした態度で言った楯無に抗議していた役人は口ごもる。

 しかし、大の大人が年端のいかぬ少女相手に何も言い返せないのは面子が立たない。

 

「あっ、あるとも! 織斑選手のご家族捜索は順調! 何も心配することはない!」

「なるほど。では、他国への説明はどのように?」

「そ、それはっ……」

 

 完全に言い負けた。

 役人が声高々に言ったことは完全に口から出まかせでそれが楯無にも分からない訳はなく、言った側も見抜かれていることは理解しているからこそバツの悪さが顔に出ている。

 最後の悪あがきかのように役人は楯無を問いただす。

 

「では、逆に聞きますが更識殿は秘策とやらは勿論、他国への説明はどうするおつもりで?」

「それは勿論、正直に現状の説明をします。そして、各国の皆さんには捜索に参加してもらいましょう。勿論、タダでとはいきません。ですから、一番有益な情報を伝えられた国に織斑選手を一年間限定で戦技教官として無償かつ無制限で貸し出しましょう。そうすれば、今の騒ぎ諸々をお釣り付きで納められるはず」

 

 結構パワープレイな提案だな。

 だが織斑千冬を一年間の限定付きとは言え、借りられるのはデカい。

 ただのトップ選手なら兎も角、IS発展に貢献した立役者の一人である織斑千冬に教えを請えるのは言葉以上の価値がある。

 何より、マンパワーは強力だ。

 

 しかし、パワープレイであることには変わりない。

 当事者である織斑千冬は表情にこそ出てないが言葉なく驚いており、役人は不満を露にした。

 

「馬鹿なことを。そんな上手くいくわけないだろ! 織斑選手は我が国にとって重要な人材。他国に貸し出すなど、我が国が一方的に損するだけではないか!」

「その点についてもご安心を。帰国後は日本所属という形でIS学園にてISの技術教師をやってもらおうかと。あそこも人手が欲しかったはず。元からそういう案もあったように覚えてます。当人が渋り続けていたので難航していましたが、これを逆手に取らない手はないと思いますが」

「一理ある。しかし、なぁ……」

 

 喉から手が出るようだが、それでも今一歩踏み出せない。

 そんな役人の反応を見て、楯無は一歩、更に一歩と畳みかけていく。

 

「織斑選手ならきっと学園と日本の力になってくれることでしょう」

「それは願ってもない……」

「そうなれば、嬉しい限りだが……」

「これはあくまでも提案。今はまず先に他国の皆様に現状の説明をしましょう。よければ、私の方からさせてもらいますが」

「うむ……どうだ?」

「更識殿がそこまで言うのなら任せてもよいか」

「ありがとうございます。では」

 

 その言葉と共に部屋の外にいる他国の者達を招き入れる。

 もう完全に楯無が場の主導権を握っている。

 役人の威勢は時間の経過とともに大人しいものへとなっていく。

 

「大変お待たせ致しました。もう耳にしている方もいるかもしれませんが、改めて私更識楯無から現状のご説明を」

 

 そして始まった楯無による各国への現状説明。

 当然様々な反応があったが、流石の手腕で楯無は素早く静めていく。

 やはり、決め手だったのが各国一斉捜索。その報酬。どの国も喉から手が出るほど欲してるのは明らかだ。

 だが、牽制し合ってどの国も名乗り出さない。

 

「……」

 

 進みだした話がまたもや止まりつつある。

 楯無は静かに答えを待っているが、困っている。

 ここまで楯無はよくやってくれた。

 ならば、助け舟を出すか。

 

「我がフランスは更識殿が提案してくれた捜索に協力させてもらおう」

「テオ……!」

 

 楯無は喜び、俺には視線が集まる。

 どういうつもりなんだと訝しむ視線。変わらず静観を保とうとする視線。

 驚いた視線を向けながら、フランスの役人が詰め寄ってくる。

 

「テオドール君! いくらデュノアの御曹司とは言えそんな勝手なことは……!」

「心配ご無用。あなた方の手は煩わせません。デュノアのみで捜索に協力することをお許しいただければいいです。デュノアはフランスの一員なのですから手柄は母国フランスのものです。でしょう?」

「それは嬉しいが……」

「それに日本の優秀な公安の方々が今も捜索してくださってるとは言え、我々にも出来ることがあるのなら協力したい。新時代の到来を祝う折角の平和の祭典。混迷する時代だからこそ手を取り合わなければ」

「――分かった……テオドール君がそこまで言うのなら一任しよう」

「ありがとうございます。では、フランスは正式に捜索に参加ということで」

 

 一歩進むことが出来た。大きな一歩。

 だからこそ、周りの反応も変わった。

 

「フランス……いや、デュノアが参加したか。なら、イギリスも協力させてもらおう」

「しまった! 先を越された! なら我らアメリカも!」

「なっ! 我が国も協力だ!」

 

 右に習えと言わんばかりに次々と参加表明する各国。

 祝賀会で相手した者達ばかり。あの時のことが役に立った。

 しかし、それでこの場の総意が決まったわけではない。

 渋る国もまだ当然いる。その中の一つがイタリアだ。更に付け加えて言うのなら、渋る国はどれもイタリアよりの国ばかり。イタリアは先の大会で準優勝を納めたことで発言力を高めつつある。なので、イタリアを動かせられればことは丸く収まる。もう一押しと言ったところだが、後押しがない。

 だが、イタリアは動く。確かな予感がある。

 

「イタリアも参加させてもらうサ。そして千冬、探しに行け」

 

 そう言ったのはたった今、部屋に入ってきたアリーシャ・ジョセスターフだった。

 嵐がやってきた。追い風が吹く。

 

「突然来て何を言う。ジョセスターフ、あの御曹司に感化されたか」

「別にそういうんじゃないサ。けど仮に今すぐ試合を再開したところで千冬はそれどころじゃなくて私との試合に集中できない。そんな腑抜けた状態の千冬と戦っても意味はない。私がもう一度戦いたいのは全身全霊をぶつけてくれたあの時の千冬なのサ」

 

 彼女が今大会に人一倍情熱を注いでいたのは誰もが知る有名な話だ。

 そんな彼女がここまで言う。

 だからこそ、彼女の言葉には無視できない確かな重みがある。

 

 加えて彼女は情熱的な人物ではあるが、冷静でもある。

 感情論を言っても国を動かせないのは重々承知。自国なら尚更。

 利益を説いていく。

 

「イタリアとしてもここで日本に借りを作るのは悪くないとは思うサね。他の国とイタリアとじゃ貸しの価値は比べ物にならんだろからサ」

「そうではあるな……いいだろう。イタリアとしても正式に決勝戦の中止を認め、捜索に協力することをここに宣言させてもらう」

 

 決め手だった。

 中心的存在であるイタリアが頷いて、他が頷かないというのは難しく。

 後は連鎖するように渋っていた他の国も賛同していく。

 大会の事後処理など諸問題は残っているが、これで漸く本格的な捜索が始められる。

 

 大人達は動き始めた。

 その指揮を楯無が取る。

 その傍らでは織斑千冬とアリーシャ・ジョセスターフは言葉を交わしていた。

 

「すまない、アリーシャ。恩に着る」

「頭を下げるほどのことじゃないサ。折角の大会でこんな誘拐事件する奴らが悪い。解決してもいろいろあるだろうからすぐにとは行かないだろうけど全てが落ち着いたその時は千冬、私とあの時以上の全身全霊で戦ってほしい」

「ああ、勿論だ」

 

 二人は握手を交わす。

 美しい友情を見た。

 もしかすると原作(俺が知る世界)でもこんなやり取りがあったのかもしれない。




ギリギリのところで何とか頑張る楯無さん。
それを後押ししする天才。
そして、女気を見せるアリーシャさん。

誘拐の一件があったから、千冬さんはISから遠ざけていたのかもしれませんね。
アリーシャさんの千冬さんとの再戦の思いもこのころから。
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