皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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STORY22 Oの連鎖/覇者たちに忍び寄る幻影

「さて……」

 

 一緒に来たデュノアの者達、日本支社の協力もあって捜索の手がかりとなうる情報は収集中。

 デュノアを含め未だどの国からも有益な情報は上がってないが、ひとまずこれでいい。言っただけの働きはしている。後はあの顛末に至るだけ。

 なのは分かっているが、実状も気になる。しかし、肝心の足がない。

 

「どうしたものか」

「お困りのようね」

「楯無、それに簪も」

 

 声をかけてきたのは楯無と簪。

 

「もう指揮の方はいいのか」

「ええ、後はお父様に任せて私も現場に出ようと思って」

「テオは一体何を困っていたの……?」

「デュノアでも情報収集はしているがただ見守っているというのは性に合わんくてな。かといって動き回るわけにもいかず。情けないことにそもそも足がないというありさまだ」

 

 ましてや所属不明のISと遭遇する可能性がある。

 せめてEOSぐらいは欲しいが、ここまでになるとは読み切れず持ってきてない。

 持ってきていたところで他国ではいろいろと制約がある。

 

「そういうことなら更識とデュノアで共同戦線張らない?」

「共同戦線?」

「そう。着いてきて」

 

 言われるがまま着いていくと2両編成となった一台の大型トレーラー車の前まで連れてこられた。

 一目見てピンと来た。

 

「これはEOSの運用車か」

「正解! この機動指揮車両なら足として充分でしょ。もしもの為に機体は積んであるし」

「それはありがたいが……しかし、いいのか?」

「いいのよ。これは更識の物だし、諸々の許可も取得済みだから安心して。ただ今後も日本と、そして更識家をご贔屓にしてくれればいいから」

 

 そう言って微笑む楯無の口元を隠す開かれた扇には『御愛顧』の文字があった。

 

「抜け目ないな。だが、感謝する」

 

 この状況だ。使えるものはどんなものでも使わせてもらう。

 

 楯無や簪と共に運用車の1両目へと中へ乗り込む。

 すると中には更識の人間らしき大人が数人。

 そして、虚と本音の布仏姉妹までもが作業をしていた。

 

「ご無沙汰しております、デュノア様」

「おひさ~」

「久しぶりだ。しかし驚いた。二人とまさかここで会うことになるとは」

「大事な戦力だもの。虚ちゃんには今は情報分析してもらってるの。本音ちゃんはそのサポートね」

「ばりばりサポートするよーむんっ!」

 

 力拳を作るように本音は意気込む。

 

「で、簪ちゃんにはメインオペレーターをしてもらって私とテオがEOSで出撃。最強チームなら向かうところ敵なしでしょ」

 

 楯無の頼もしい言葉に頷いて俺は同意する。

 これなら一人でどうにかするより遥かに心強い。

 

「さて、切り替えていきましょう。まずは現状確認ね。虚ちゃん、まだ有益な情報を織斑選手に提供できた国は出てきてないのよね」

「そうです、お嬢様。捜索を続けている織斑選手もまだ見つけられてないようです」

「膠着状態か……私達まで当てずっぽうに探しても仕方ないわね。とは言っても手掛かりはこの写真のみ」

 

 そう言ってモニターに映し出されたのはデータ化された一枚の写真。

 制服姿で鉄の柱らしきものに縛られた眠る織斑一夏が映し出されている。

 

「これが織斑選手に送られたという写真か」

「そうなの。これから特定できればいいんだけど」

「映っている情報があまりに少なく……申し訳ございません、ご当主様」

 

 申し訳なさそうにする更識の人間に楯無は優しい笑みで宥める。

 

「いいのよ、よくやってくれてるわ。でも、そうなるとやっぱり地道に探すしかないわね」

「楯無、織斑千冬選手や他に捜索している者達が捜索した範囲を共有してたり把握してたりはできているか?」

「勿論よ。虚ちゃん出してあげて」

 

 モニターに映し出される織斑千冬が捜索した場所と範囲。

 

「こういう感じか……定番で言うとやはり」

「港の工場地帯だよね」

「その通りだ、簪。織斑千冬選手も同じようなところを重点的に探しているな」

「そうね。それでもまだまだ数は多い。行き違いになってもだし……そうだわ、ここは一つ天才の勘にかけてみましょうか!」

「勘か……いいだろ! 乗ったぞ、その案!」

 

 半分冗談まじりに言ってきたが、その実楯無は本気だ。

 これほどの装備、そして更識の人間を冗談だけでは動かせない。

 天才の勘を買ってくれてのことだろう。

 

 ならば、応えるのみ。

 ニュータイプ的な察知があったわけじゃないが、ある場所を指さした。

 

「ここだ」

「なるほど……そこね。天才の勘信じてるわよ。ここへ向かってもらえるかしら」

「かしこまりました、ご当主様」

 

 指した場所へと俺達は向かい始める。

 純粋な勘だが言葉にはできない確信はある。

 まるで引き寄せられているかのように。

 

「そうだ。一つ楯無に聞いておきたかったことがあった」

「何かしら?」

 

 道中、ずっと気になったことがあったので聞いてみた。

 

「何故、あんな提案をしたんだ? 結果的に上手くいったが下手すれば更識家の立場を悪くしただけだろう」

 

 楯無提案の各国による一斉捜査。

 結果的に思惑様々だが各国は快く協力してくれた。

 これで提案するだけして流れていたらどうなっていたことか。成功した今も日本としては思うところはあるはずだろう。

 

「それはそう。ある意味、大博打だったわ。上手くいった点についてはテオとアリーシャ選手のおかげね。だからこそ、目的を果たせる」

「目的……」

 

 ただ提案をしたわけじゃないということか。

 

「公安の護衛を掻い潜って織斑千冬選手の弟を誘拐。そして、厳重警備の中写真を送りつける。これだけでただの誘拐犯じゃないわよね」

「それはそうだ」

「尚且つ、今も捜査の目から逃げ続けてトドメはウチの子達を追っ払ったIS。相手は組織犯、それもかなりの規模の。ISが出せるってことは国と関りがあってもおかしくない。何もないよりかは追いやすくなるってわけ」

 

 素直に驚いた。

 まさか楯無がここまで読めているとは。

 

「だからこその提案だったのか」

「まあね。それにここは日本よ。他国が見つけられるようなことがあって名乗り出れば、犯人と関係があるって自分から名乗り出るようなもの」

「で、重要なのが報酬」

「その通り。名乗り出ようと思っている方もそのことを分からない訳がない。でも、織斑千冬を一時的とはいえ自国に招いて戦技教官に出来るってのはそのリスクを背負ってでも手にしたい存在だものね」

 

 それもあるだろう。

 もっとも原作(俺が知る世界)ではそんなの関係なしにただ自国に織斑千冬を呼びたかったようにも読んでいて感じたが閑話休題。

 

「名乗る側としてもこの案のおかげで気持ち的には名乗り出やすいはずよ。だからって好きにはさせないように連絡係という名の監視も各国につけさせてもらってるけど」

「策士だな、楯無」

「ふふっ、だって私は更識楯無ですもの」

 

 得意げに微笑んだ楯無が開いた扇には『用意周到』の文字が書かれていた。

 しかし、伏目がちになりながら言葉を続ける。

 

「それでも織斑選手には悪い事したなとは思うけど」

「致し方なかろう。重く受けてる風ではあったし、何よりブリュンヒルデだ。上手くやるさ」

 

 やるしかない。

 やらなければ、取って食われるだけ。

 織斑千冬もそのことが分からないわけがない。

 

「お嬢様、織斑選手に大きな動きがありました!」

 

 知らせは突然にやってくる。

 いよいよだ。

 

「提供国は?」

「ドイツです」

 

 ドイツ。

 やはり、なるべくしてなっていく。

 

「織斑選手が向かっている先はおそらく我々と同じところです」

「またもや天才の勘は当たってしまったが、これでは俺も疑われてしまうな」

「テオを疑ってたらそれだけで日が暮れちゃいそう。むしろ、見事に勘を的中してくれたんだから頼りにしてるわよ。今からのことも、ね」

「おう、任されて!」

 

 出ることになった。

 

「車両はここで固定。周囲警戒を厳に。目的地までまだ距離があるけど、テオと私はカタパルで飛んでそのまま向かうわ。簪ちゃん、オペレーターよろしく」

「うん、任せて。お姉ちゃん、テオ……気を付けて」

 

 その言葉と共に簪に見送られながら楯無と共に頷いて2車両目へと向かう。

 入るなり、目に止まったのが向き合うように待機している2機のEOS。

 V字型のアンテナにツインアイ。所謂ガンダム顔。しかし、ガンダムタイプではない。

 

「これが日本のEOS、曙一ノ型」

 

 国連製グローバルモデル、GMタイプをベースに日本国内で開発された外装パーツでカスタムした日本のEOS。

 軽い装甲素材を採用しており、機動力重視。盾と機動力のある集団戦を徹底することで他のEOSに比べて低い防御力をカバーしている。

 さしずめEOS版のM1アストレイといったところだ。姿はプロトタイプアストレイだが。

 

「過剰かもしれないけど状況を思えば万が一のこともあるかもしれないからこのぐらいの装備はないとね」

「備えあれば憂いなし、という奴だな」

「そうね。ただ火器類は厳禁だからその点は心得といて」

 

 頷くと曙に乗り込む。

 

【装着者の搭乗を確認。基本機構起動、装着者の認証を開始します。認証完了。全搭載電子装置起動。全駆動装置接続。身体補助機構正常に作動。自動調整完了。最終確認。確認完了】

 

 初期シークエンスの経過が報告され、機体が身体にフイットしていく。

 日本のIS打鉄と互換性があるようで、OSも打鉄を参考にしたもの。

 だからか、システムアナウンスが日本風になっているのがこの機体のおもしろいところ。

 

「ハッチ閉鎖。戦闘モード起動」

 

【搭乗口閉鎖完了。戦闘機構起動】

 

 これで準備は整った。

 

「ちなみに使える武装は……」

 

 コンソールを操作し確認する。

 武装表示されたのは腰に備え付けられた日本刀を模した打鉄も使っている近接用ブレードの葵が一本。バックパック両側に各1本ずつ装備された対装甲短刀が合計2本。

 近接武器のみだがこれなら万が一の時は戦える。そう確認していると簪から通信が入ってきた。

 

『えっと、オペレーターの簪です。今装備確認しているみたいだけど、お姉ちゃんが伝え忘れたことがあって。それを使う時、許可なしにいきなりは使えないから気を付けて』

『そういうところ正に日本って感じだな』

『あはは……ま、まあ、私に言ってくれれば許可すぐ出せるから忘れないでね』

『ああ、了解した』

 

 楯無は一足先に発進したとのこと。

 続くようにリフトが最上階まで上がり、2車両目の車上にあるカタパルトに着く。

 引き続き簪がオペレーションしてくれる。

 

『曙一ノ型2号機、リフトアップ。映像リンク、データリンクともに完了。進路クリア。2号機、発進どうぞ』

「テオドール・デュノア、出る!」

 

 発進するとその勢いのまま目的地へと飛び、先に発進した楯無の元へと降りる。

 

『状況に変化は?』

『つい先ほど織斑選手は無事弟を発見、保護したようね。何かされたとか、外傷も特にはないみたい』

『ただ犯人どころか、人一人いなかったらしい。織斑一夏が一人残されてたと』

 

 楯無と簪の話を通信で聞きながら思案する。

 やはり、織斑千冬が織斑一夏を救出する際に何かあったということはなかったか。

 

『辺りを調べることは出来るか』

『流石に時間をかけて細かくは難しいけど軽くなら大丈夫よ。私も気になるし』

『ならば、行こう』

 

 捜索を始める。

 俺達が今いるところは織斑千冬が織斑一夏を見つけた場所の向こう側、海沿い。

 ここら辺りにも人の姿は勿論、気配もない。織斑千冬に奪い返された以上、相手にしたらこの場に残り続ける意味はないだろう。

 しかし、来る確信があった。

 

『テオ、どうしたの? 突然立ち止まって』

『更識、ちょっと待て。――来るぞ』

『え?」

 

 確信が最高潮に達した刹那、状況に変化が起きた。

 俺達のほうへと投げ込まれる投擲物。

 手榴弾などと言った爆発物ではない。これは。

 

『スモーク!?』

 

 楯無の言葉通り、周囲に広がる白い煙。

 危険物反応はない。ただのスモークのようだ。

 

『システム、スキャンモード』

 

【索敵機構、索敵機構】

 

 指示を出すとシステム音声と共に目の前の色彩がモノクロ調へと変る。

 索敵に特化したモードでスモークの中にいる物体を捉えた。

 数は1。姿は人型。しかし、完全な人型ではなく熱を放つ長く大きな斧を持つ手、それとは反対の腕の型に当たる部分には棘がらしきものがスモーク越しにうっすら確認できる。

 そして赤く光る一つ目はこちらを捕らえ、

 

『テオ!』

 

 楯無の叫び声と重なる重く鈍い衝撃音。

 仕掛けてこようとした相手の方だったが、実際にしかけたのはこちらの方。

 やはり大型の長い斧だったそれを振るよりも先に鞘に収まったままの刀を振るい、長い柄の部とぶつかり拮抗した。それが重く鈍い衝撃音の正体。

 

「ッゥ! やるなぁ! えぇ?! 天才さんよォ!」

 

 秋暴れ(あきあれ)が到来するかのようにそいつは現れた。

 




機体紹介

機体名:曙一ノ型
【武装】
アサルトライフル≪焔備(ほむらび)
近接ブレード≪(あおい)|≫
対装甲用短刀
シールド
ランドローラー
【機体解説】
国連製グローバルモデル、GMタイプをベースに外装を日本独自のパーツに変更し機体性能を向上させた日本製EOS。

ということで今回登場した日本製EOSの曙一ノ型。
メカやロボットを考える時ベースにしてしまうのがガンダムseedシリーズで、ガンダムseedシリーズで日本と言えばオーブ。オーブと言えば、M1アストレイという流れで元ネタになりました。
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