皆に愛され 覇道をゆく天才の物語 作:水戸野幸義
マンキン甦れ甦れ。
シャルロットの母親、イリスさんが亡くなってからしばらくの時が経った。
今も神がかった躍進を遂げているデュノアと言えど、人の子。
アルベール一家、サンソン一家、両家共々悲しみに包まれていた。
しかし、いつまでも悲しみに暮れていられないのが現実。人の上に立つ者としては勿論。激動の今、隙を見せ続けるわけにもいかない。やることもやらなければいけないことも依然多い。
何より。
「ISのテストパイロットになりたい、だと?」
「うん。テオの役に立ちたいってのが私のしたいことだから」
イリスさんが残した言葉を思い出した。
そうか。ただ悲しみに暮れていられないと、悲しみの一歩先へと踏み出そうとしている。
「役に立ちたいって今までもずっと思ってたけど、具体的にどんなことで役に立てるんだろうって考えた時にISが今を動かしているし、デュノア社も力を入れてるから。勿論、試験とかはちゃんと受ける」
「それは願ってもない」
シャルロットの優秀さはよく知っている。
ISを扱う能力の高さについてもよく識っている。
思えば、
いろいろと早まったり、変わってしまった今だとそうならない可能性もあった。それは今後のことを思えば、かなり痛手だ。
そうならず、本来の道筋通りになりつつあるのは安心だ。
「そうと決まれば、伯父上や伯母上の了承がいる」
「そっか、私達だけじゃ決められないよね」
「年齢は足りていても保護者の同意がいるからな。こういうのは」
「ロゼンダ様と……お父さんに言わないと」
イリスさんの死後、シャルロットの籍はデュノア家に入った。
それもアルベール一家の元へと。問題もわだかまりもなければ、我がサンソン一家に入るよりも自然な形。
シャルロット・ベルナールはシャルロット・デュノアとなった。
思い立ったが吉日。
シャルロットと共にアルベール一家の屋敷に向かった。
電話や画面越しでも事足りるが、こういうのは対面の方がいい。イリスさんの死後からそう経ってないのなら尚更。
「そう、テストパイロットを。いいんじゃない? こういう時は何かやることがあるに越したことはないわ。デュノアの利益にもなるでしょうし、頑張りなさい」
「は、はい」
簡単に伯母殿は許しをくれた。
強く反対されるとは思ってはいなかったが、ここまであっさり許しをくれるとも思ってなかったから返事したシャルロットと揃って面食らった。
「二人して何面食らってるの。子供がやりたいことがあるというのなら大人がとやかくいうことじゃないでしょ。けれど、私からアルベールに口添えとかフォローしないからそのつもりで」
「分かりました。ありがとうございます、ロゼンダ様」
保護者の片割れ、伯母殿の了承は貰えた。
次は伯父殿。
いると知らされた書斎の扉前、シャルロットは緊張した様子だった。
「一人で伝えられるか?」
「だ、大丈夫。お母さんが死んでから顔合わせるの久しぶりだし、今まで話したことあんまりないから緊張しちゃって。でも、自分のことは自分でするよ」
「そうか。なら、行こうか」
中へと入った。
イリスさんの死後、伯父殿の顔を直接見るのは俺もまた久しい。
まだ完全には立ち直れきれてないようで、苛烈だった印象は影を潜めすっかり老け込んでいた。
シャルロットはここに来た理由を説明してから許しを得ようとする。
「テストパイロット……」
「そうです。デュノア社でISのテストパイロットになることが今一番テオの役に立てると思ったから。テオの役に立つことが私のしたいことだから」
シャルロットは自分の気持ちを伝えきった。
「イリスが残した言葉か……いいだろう。好きにするといい。だが、才がなければまずなることさえできん。そして、なれたとしても力を伸ばし続けることが出来なければ先はない。その時はテストパイロットの道諦めてもらう。例え、イリスの言葉があったとしてもだ。我が甥の役に立ちたいのなら他の方法もある」
「はい。分かりました」
あれこれ言われはしたが伯父殿からも許可はあっさりもらえた。
やはり、シャルロットも伯父殿もイリスさんの言葉が大きな影響になっている。
だがお互い名前を呼び合うこともなければ、そっけない会話。親子の関係が縮まるのは大分先のようだ。
許しがもらえれば、後は流れのままに。
後日、適性検査や試験をクリアしたシャルロットは無事正式なテストパイロットになった。
AというIS適性、何事もそつなくこなす器用さをいかんなく発揮し優秀な結果を早々にたたき出し始めている。
『お強い。本当凄いですわね、シャルロットさん』
『ああ、本当に』
目的地へと走る車の車内。
眺める端末でビデオチャットをしていると画面の向こうでセシリアがしみじみと言う。
シャルロットは強い。
だからこそ、辛くても次へと進んでいく。
『この様子ならシャルロットさんが代表候補生になるのもそう遠くない話でしょう。そうなれば、私にとって良きライバルになりますわね。ISでも』
セシリアが言った未来は大いにありうる。
むしろ、そうなってもらわなければいろいろと困る。
『代表候補生はどうだ?』
『順調ですわ。このセシリア・オルコットに抜かりはありません。第三世代の開発が各国で続々と始まったと聞きますし、このまま代表候補生筆頭であり続け専用機持ちになってみせますわ。私達の願いの為に』
『ああ。今は準備の時。お互い準備は怠らないようにしなければ』
ISの存在は必要不可欠。
歯がゆい思いをさせるだろうが使える手や戦力は万全にしておきたい。
『ン、目的地に着いたか。移動の片手間であまり長話もできなかったな』
『仕方ありませんわ。テオがお忙しいのは今に始まったことではありませんもの。それに片手間とは言え、こうして連絡をこまめに下さるのは素直に嬉しいです』
『そうか。一段落皆でゆっくりとした時間を過ごそう。そして、セシリアさえよければ婚約者同士水入らず二人っきりの時間も』
『まあっ、それは楽しみですわね。心待ちにしておりますわ。忙しい日々はまだまだ続きますが無理は勿論、危ないことに喜々として首を突っ込まないようにしてくださいまし』
『我が婚約者は手厳しい。まあ、善処はしよう』
その言葉に苦笑いで呆れられたが別れの言葉を交わし通話を切る。
車から降り立ったのはデュノア社のIS研究所。
フランス随一の研究機関にして、競技用の大型アリーナまで兼ね備えている。
「時間を食ってしまった。待たせたか」
「いえ、それほどでも。むしろ、準備は万端です。さあ、どうぞ中へ」
建物の中からスタッフに出迎えられ、先導してもらいながら中に入っていく。
「機体はアリーナへと搬入済み……助かる。シャルロットは?」
「時間があるならウォーミングアップは万全したいとシミュレーターの方に」
「分かった。ならば、まず先にシミュレータールームに向かう」
「かしこまりました。案内します」
向かった先はシミュレータールーム。
そこは何台ものVRシミュレーター機が並べられ、更にその後ろの一角ではその様子をチェック分析するモニタールームが併設された場所。
シミュレーター機はIS操縦者に対して絶対数が少ないコアの都合上、実際に使える機体が限られているのを補うため開発されたものらしい。
ISコアの絶対を思えば、あってもおかしくない。いやむしろ、あるべき装置。しかし、
なのに今こうして目の前に存在していて、ISの普及と共に世界中に幅広く存在している。
俺が作ったわけではない。IS開発者じきじきにこれの雛形を開発したものだとか。
ちなみにシミュレーター機の外観は半円状の大型ドーム。
内部には丸い大きな円から伸びる数多くのアームに繋がれた展開待機状態のISを模した座席がある。そこへ乗り込み、両腕部のアーマーと両脚アーマー、背部アーマー、そしてフルフェイス状のVRヘッドギアを装着する。
中の座席は国や企業ごとによって変わる。フランスならラファールタイプ。日本なら打鉄タイプといった感じに。
ベストタイミングのようだ。
シミュレータールームのモニター席にいるとシミュレーションを終えたシャルロットがやってきた。
どうやらショコラータが相手をしてくれていたらしい。手を振って挨拶する。
「意気込みは充分のようだな」
「テオ!? もう来てたの?」
早々に俺の姿を見つけるなり、普段の口調でシャルロットは驚いた。
無理もない。来ることは勿論、到着する大体の時間は知らせていたがまさかシミュレーションをしている最中に来るとは思っていなかったんだろう。
申し訳なさそうにしている。
「ああ、今着たところだ」
「そうなんだ。ごめんなさい。お出迎え出来ないどころかシミュレーション終えたばっかりで」
「気にするな。最後の準備をするだけだ。時にショコラータ、そちらから見てシャルロットの完成具合はどうだ?」
シャルロットの実力は見たことがあるから知っているし、ポテンシャルについてはよく識っている。
ただ第三者から見てどうなのか客観的な感想が知りたい。だから、気になっていたことを聞いてみた。
「そりゃもう完璧よ。というか、とんでもない逸材ね。貴方が天性の才能に溢れているのなら、シャルロットちゃんは努力と学んだ理論や技法に裏付けされた後天的な才能に溢れているというべきかしら。これなら代表候補生、それも専用機持ちは間違いなし。国家代表も夢じゃないわね」
「そ、そんなっ! とんでもないっ!」
「謙遜しなくていいの。後進がここまで優秀ならフランスの将来は明るいわ。私も選手として適齢期だから丁度いい後任者が現れてよかった」
ショコラータ、第三者である彼女がここまで言うのなら間違いない。
「それは重畳。この後の模擬戦、楽しみだ! 期待しているぞ、シャシャ!」
「うんっ、任せて! テオの期待に応えてみせるよ!」
シャルロットの充分過ぎる意気込みを見て事前準備、最後の仕上げにかかる。
場所は研究機関内にある競技用の大型アリーナ。
相手はシャルロット。機体は我が社が誇る最新鋭量産機ラファール・リヴァイヴ、そのカスタム機。タイプⅠ。
高機動用の“グランエール”パッケージ、近接格闘用の“グランエペ”パッケージ、遠距離砲撃用の“グランカノン”パッケージ。
これら基本的な第二世代型パッケージを3種を一部分ずつ組み合わせた試作型複合パッケージ「マルチプルアサルトパッケージ」を装着した姿。
さしずめラファール・リヴァイヴ版パーフェクトストライクガンダムと言えよう。
カスタムⅠと呼称されるこの機体は試験機ということもあって、初期化と最適化の機能はオフにしており、機体色は他の同機と同じ色。
対するこちらはEOS。機体はフォールダガー。
装備、パッケージは高機動用の“エール”パッケージをベースに開発し、エールではEOSを単独浮遊、単独飛行させるだけの出力が足らなかった為、大出力によって単独浮遊、単独飛行を実現させたジェットパッケージ。
飛行テストとEOSや浮遊ドローン相手の運用試験は完了済み。今回はIS相手にどこまでできるのか模擬戦形式で試す為の運用試験。
『改めてよろしく頼むぞ、シャシャ』
『うんっ』
シャルロットの頷いた言葉の後、場内アナウンスが聞こえてくる。
『それではただいまより、EOSフォールダガージェットパッケージ装備の対IS戦運用試験を行います。両者、試合を開始してください』
アナウンス、そして場内に響くサイレンを合図に俺達は模擬戦を開始した。
両膝を軽く曲げ、屈伸するように地を蹴り、空中へと上昇。
上昇しながらアサルトライフルを構え放つ。狙うは俺が上昇する為にしたモーションを一切することなく、既に頭上にいるシャルロット。
なんてことのないように軽々と躱された。続けざまにすかさず反撃される。
「ハァァアッ!」
けたたましく響く銃声。
正確な射撃。悪くない。
こちらも回避。そして宙を駆け、適切な間合いを作り出し、引金を引き絞る。
「ライフルは外さんよ!」
「ッ!」
常時では反応しきれないこちらに射撃にISからの補助を受けつぶさに反応したシャルロットは防御姿勢を取った。
本来なら直撃必須。だが、当然のようにそうはならない。見えない何かによって阻まれ、機体の装甲表面にすら届かない。
正体は不可視のエネルギーシールド。バリアーのように展開するそれによって防がされた。
「厄介だな、それは!」
「それはこっちの台詞だよっ! まったくっ!」
悪態をつきながらも牽制とフェイントを組み合わせ翻弄してライフルから弾丸を放つが結果は変わらず。
不可視の何かを越えられない。
露出の高い見た目に反して守りの厚いISの防御壁第一層が不可視のエネルギーシールド、シールドバリアーなどと呼ばれるもの。
まずこれを突破しなければ、何も始まらないが突破できない。それはお互い使っている同種のアサルトライフルから放つ弾が模擬戦用の特殊弾ということもあって、実弾と比べて単純に威力不足ということもあるが、エネルギーシールドを突破するには絶対条件を満たさなければならない。
“ISの影響を受けて特異性を帯びてなければならない”。
というもの。
ISが使う武装はEOSや既存兵器でも扱える一般的なものだがひとたびISが扱えば武装には特異性が帯び、超兵器化する。
それによって実弾兵器や物理武器達はエネルギーシールドに干渉でき、威力次第では突破可能となる。
EOSは勿論、既存兵器ではISによる特異性を獲得することは出来ず、一般的な兵器のまま。
突破することもできなければ、そもそもシールド値を削ることすらできない。例えシールドの防御力を越えている威力だとしても。
仮にエネルギーシールドを突破できたとしても露出している肌などを守る
オマケにISアーマーも特異性を帯びて、硬くなっており通常兵器では傷一つけられない。あの開発者直々に
『バルカンだろうがミサイルだろうがISの装甲に傷一つつかないよん。エネルギーシールドもあるしね』
というだけある。
もっともシールドエネルギーが尽きれば、特異性は消失してISアーマーは脆くなる。それによって既存兵器が放つ弾などでも破壊できるがそうなる前に決着はついているのが常。期待するなどあまりにも危険だ。
「行け!」
「甘い!」
シャルロットが放つ弾幕を掻い潜り、反撃に出る。
何度やっても結末は変わらないが、これは実戦ではなく模擬戦。
どちらかのエネルギーが先に尽きるか、参ったと言わせれば戦いとしての決着は着く。
普通に考えれば、エネルギーが尽きるのはこちらの方。ならば、勝ち筋は絞られてくる。後はその勝ち筋を進みきるのみ。
「やらせないよ!」
「何と!」
当然ただではシャルロットは通してくれない。
模擬戦だからこそ全力を尽くそうとしてくれている。
正確無慈悲な連続する射撃で反撃の芽を潰し、回避に徹する選択肢のみを残し、近づけさせない。
距離を取ろうものなら。
「この距離はまだ私のものだよ!」
シャルロットの左手に現れた長身の大型レールカノン。
出現とともにこちらをロック、そして発射。雷鳴を思わせるような砲撃音。
レールガンとなった模擬戦用の特殊弾がこの身を襲う。
直撃必須。ダガーの捕捉システムでは捉えきれてない。しかし、見えてはいる。ならば、まだだ!と強い意志を力に変え、動きの精度を高める。
「なんとぉぉおっ!」
「嘘!?」
驚いたのも無理ない。
捕捉システムに一切頼らず感覚のみで反応してみせ、瞬時に最適化した最小限の動きでレールガンを回避してみせた。
「俺のターンはまだ終わっちゃいない!」
すかさずライフルでの反撃。
「っ!? なんのこれしき! 負けていられない!」
驚いたのから切り替えは一瞬。
シャルロットは即対応した。
機体左肩部に装着された複合兵装ユニット「コンボウェポンポッド」の一部分であるバルカン砲。それが渦巻く唸り声を上げる。
バルカン砲によって相殺される反撃の弾雨。連鎖するようにバルカン砲の隣に位置する「コンボウェポンポッド」の一部分であるガンランチャーからミサイルに見立てて放たれる模擬戦用の特殊弾が回避先に目ざとくやってくる。
「ならばさあ!」
角度やその他諸々を合わせ頭部のバルカンポッドで迎撃。
放たれた弾丸類はISに干渉する特異性を依然有しているが、強度は一般的な兵器と大差ない。
故にこうして破壊できる。
模擬戦は続く。
シャルロットは多数の武器を早々と切り替え、巧に使い別けている。
加えて誘いや牽制も忘れていない。
まるで砂漠に迷い込み喉の渇きを覚え、砂漠の中に飲み水の湧く湖を見つけたがそれは蜃気楼。分かっていながらも、喉の渇きに耐え兼ねついつい泉の幻影へと近づき死にに行くかのようだ。
大分きつい状態だが、俺にあってシャルロットにはないものがある。
EOS誕生から積んできた知識と経験。そして実戦経験だ。もっともIS相手ではないが、それでも経験は経験。今へと役立てられることは大きい。
何より、シャルロットを相手にするのが慣れてきた。
だからこそ、こうして間合いを詰めていける。まずは牽制とフェイント。
「これならどうよ!」
「死角をッ!」
死角を取り、近接戦用伸縮式ロッドを媒介に発生させたプラズマを剣状に収束させて形成したプラズマソードを振るう。
シャルロットの死角は取った。
だがISには全方位接続というものがあり、人の目では見えない死角の光景をISが伝えてくれる。
直感的に見て得た情報ではない為整理を必要とするが、そこはデュノア社きってのテストパイロットであるシャルロット。整理と成功しながら次のモーションへと移ろうとするが遅い。
ハイパーセンサーの反応の良さが仇となっている。こちらの牽制とフェイントに瞬時に対応した隙をついた。
「ッアアッ! ――ッ、ならソードで!」
オートガードが発動しエネルギーシールドで死角からの一撃を防いだシャルロットは、近接格闘用の要素である重斬刀を両手にそれぞれ一本ずつ呼び出すと間髪入れずに振るう。
それも分かっているから当然はこちらは回避する。
「そう簡単には当たってくれないよね! 次!」
「ッッ! やるなっ! だが!」
シールド先端に内蔵されたロケットアンカーが飛び襲い掛かってくる。
それをサーベルで捌いて弾く。
間合いを詰めに詰めたここからは剣による一進一退の攻防。剣を振るい、当て、避け、シールドで受け流す。
EOSはISに機動力では敵わない。ゆえに距離を維持しながら、シャルロットからの攻撃を待ち構える。
「当たらないか! なんて勘のいい、これは先を読んでいる!」
「正解だ! 早々に気づいた! 褒めてやるぞ、シャシャ!」
「ありがッ、とッ! 私やられっぱなしじゃない!」
脳裏に一際強い稲妻が走るのを感じたと同時。
何か来る。とてつもなく強いのが。
「私にはまだ左手があるんだよ!」
その言葉を聞き終えた時にはシールドをもっていかれていた。
掠った程度で済んだのは正に幸いか。
何せパイルバンカー
左手のロケットアンカーアンカーがシールド内蔵パイルバンカーに切り替わっている。切り替えの瞬間を完全に捉えきれなかった。
「やるな、シャシャ! 瞬時の切り替えお見事!」
削られたものはあるが機体の状態、エネルギー残量を見てもセーブを第一にしている甲斐あってまだ戦闘続行可能。
相変わらず、シールド類は削れてはないがシャルロットのこの一手で分かったことがある。
パイルバンカーはシャルロットにとって奥の手。この手を使うということは相当精神的に追い詰められている。
ISからの補助を受けていても集中力、体力は減っていく。今この時、緊張状態なら尚更。そこが狙い目よ。
「だが、まだだ! “勝つ”のは俺だ!」
「そうだと思ったよ! まったく、テオは本当に!」
その言葉のやり取りが再戦の合図。
再び一進一退の攻防が始まり、そして――。
「取った」
「ッ……参りました」
サーベルの先をシャルロットへと突き付けるとついに根を上げた。
モニター席でもこれを確認して。
『降参の言葉を確認。模擬戦を終了とします。両者戦闘態勢を解除してください』
二人して宙から地上へと降りていく。
今ここに模擬戦の決着は着いた。
「まさかISに乗ってるのに本当に負けちゃうなんて」
しょんぼりと落ち込んでいる。
負けだと認めてはいるが、ISに乗っているのにも関わらず勝ち筋を見つけられなかった自分に不甲斐なさを感じているのが伺える。
「落ち込む必要はない。勝ったとはいえこちらはギリギリだったよ」
「あんな曲芸何度も見せられた後に言われてもって感じあるけど」
「負けるつもりはなかったからな。全力を尽くしたまでだ。それが全力を見せてくれたシャシャへの礼儀だ。実際シャシャもよくやってくれたよ」
シャルロット・デュノアの強さと秘めた底力を身を思って感じられた。
悪い結果を多く得てしまったが、決してそればかりではない。少ないながらもいい結果はこうして得られている。
「胸を張れ、シャシャ。このテオドール・デュノア相手にここまで出来るものはそうはいない」
「分かったよ、テオ」
「ショコラータが言ったように代表候補生、専用機持ちへの道が現実味を強く帯びてきた。更なる成長期待しているぞ!」
「うんっ!」
元気を取り戻し自信に満ちたシャルロットの笑顔と共にこの度の模擬戦はこうして幕を閉じた。
…
ずっとやりたかった回。
既存兵器を凌駕するISの超兵器たる由縁を原作3巻で束さんが言った台詞をベースにしつつ捏造設定こねくり回して明確化してみました。
見落としてる可能性は大いにありますがIS以外の攻撃でISの装甲が傷ついた描写原作にはなかったはず。あったとしても『俺の宇宙では音がするんだよ』に習って乗り切ります。
この辺りのことについて何か考察とかあれば感想という形でお聞かせいただけると幸いです
機体名:ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅠ
【武装】
アサルトライフル×1
対装甲用コンバットナイフ×2
プラズマソード×2 ←グランエールの装備
重斬刀×2
ロケットアンカー×2
シールド内蔵パイルバンカー
大型レールカノン×1
コンボウェポンポッド内蔵バルカン砲・2連装ガンランチャー×1
レドーム・ポッド
【機体解説】
第2世代型ISであるラファール・リヴァイブのカスタム機。
高機動用の“グランエール”パッケージ、近接格闘用の“グランエペ”パッケージ、遠距離砲撃用の“グランカノン”パッケージ。
これら基本的な第二世代型パッケージを3種を一部分ずつ組み合わせた試作型複合パッケージ「マルチプルアサルトパッケージ」を装着した姿。
次世代全距離対応装備を開発する為に試作され、総合的な攻撃力は高くなったがその分武装管制システムが複雑になっており、機体の扱い難さや各装備の取り回しの悪さなど問題点が多い装備となった。
ちなみに操縦者の特性に合わせてより細かく専用のカスタムをしたものがカスタムIIと呼ばれる。
装備名:ジェットパッケージ
【装備解説】
大気圏内用の空戦型パッケージ。
エールパッケージではベースに開発し、エールではEOSを単独浮遊、単独飛行させるだけの出力が足らなかった為、大出力によって単独浮遊、単独飛行を実現させたパッケージ。ISラファールシリーズにも装備可能だが、実質EOS専用となっている。