皆に愛され 覇道をゆく天才の物語 作:水戸野幸義
セシリアがオルコット家当主となり、楯無がロシアの国家代表となって、簪が日本の代表候補生になった。
そしてシャルロットがデュノア社テストパイロットなり。代表候補生、専用機持ちにもなった今。
残すイベントは後一つ。男がIS動かす日。日に日に近づいてくる。
かといって何か予兆めいたものがあるわけでもない。生活が劇的に変わるわけでもない。ただじわりじわりと時間だけが過ぎていく。
「昨日遅くまでお仕事にしてたのに今日はこんな激しい訓練だなんて。最近ずっとそう。根詰め良すぎじゃないかな」
「心配無用だ。何だか落ち着かんくてな」
フランスを経つその日まで変わることなく今日も今日とて従者を務めてくれるシャルロット。
心配無用なのは口から出まかせではない。無理をしているわけでもなく充分な休息は取ってある。
それでもこう言われてしまうのは連日研究と開発、勉強。トレーニングをしているからだと理解している。
こうなっているのは言ったように何だか落ち着かなさ故のもの。理由は考えるまでもない。約束の日が近づいているから。
浮き上がっているからなのか。それとも――。
◇◆◇◆
更に時は経つ。
新しい年を迎え、日本では冬の受験シーズン。
今日は藍越学園の受験日。約束の日。ついに時は来た。
デュノア社の研究施設に来ていた俺は何となしにシャルロットが乗るのとは別のラファール・ノヴァに触れたその時不思議な事が起こった。
「こ、これは!?」
「まさかこんなって!?」
周りの者達の驚く声が遠くで聞こえる。
胸の奥が浮足立つ。気分が高揚する。やはり俺は、この瞬間を待っていたんだ。
「――」
次いで聞こえてくる金属質な音。大人数で奏でる叫びのような不協和音。まるでLESのあの音のようだ。頭に響く。おまけに寒気の様な感覚。
直後、頭の中へと一方的に流し込まれるおびただしい情報の濁流。基本操作、基本動作から始まって特性や機体状態まで流し込まれる情報は数知れず。どれもこれもISにまつわるものばかり。身体の中で渦巻き暴れまわる。
それらをラーニングを経て自身に最適化。寸分余さず書き換えられた。
視界が世界が広げられていく。まるで左右の目尻を掴まれ手で無理やりこじ開けられているように。
「――ははっ」
口角を尖らせて誰かが笑った。
笑ったのは俺なのか? 俺だ。俺は笑ったんだ。この状況笑われずにはいられないだろう。待ちに待ったこの瞬間。
手足達に纏わりつく鋼の装甲。無重力感に包まれ吊り上げられたように身体が軽くなった感覚。
そしてあらゆる機能が正常に動作していることが分かる今この時から男でありながらISを動かせるようになった。
後のことはよくある流れ。
このことが騒ぎになり織斑一夏と同時、あるいは二番目にISを動かせる男と呼ばれるようになる。
勿論、産まれや立場が特別故にどうなったかは想像に難くない。事実はどうあれ、人では真実か虚偽かはっきりとさせるのは不可能。俺がこの世界に来る前に女神から授かったもの。人の世を越えて起こった神業。目に見える原因が見当たらないのだから。
こればかりは俺自身今更なかったことにはできない。ただ事実として世界に浸透していく。
もっともとりとめのない話をするならば、周りの皆家族や友人達には当然驚かれたしめちゃくちゃ心配された。
当然だ。まさに“その時不思議なことが起こった”のだから。身体に異変がないかとか心配は尽きない。
表面上そんな素振りはないにしてもイリスさんの一件でデュノア家は身体への心配は過保護レベル。厳重監視体制の元自室療養にあわやなりかけた時は流石に焦った。
折角ISを動かせるようになったのだから早く動かしたい。そんな時、鶴の一声となったのが伯父殿の言葉。
『皆の心配は当然。お前に向けられる疑念や疑惑もな。我が甥とは言え、私とて今回のことばかりは疑ずにはいられない。だが正偽は兎も角、お前が見せてきた才。そして、結果は紛れもない事実。手にした力に報いる結果を、何も言えなくなる結果を残せ。悠長にしている暇はないぞ』
その一声があって今はこうして。
「やぁあッ」
「ハァアッ」
いくつも撃ち合い、斬り結び、弾き合った反動そのままにそれぞれ反対側へと距離を取り合う。
ぶつかり合っているのは二機のラファール・ノヴァ。
一機はシャルロットが操る“コスモス”。もう一機が俺が操る“グラン・オワゾー”。
コスモスが射撃振りの万能装備、ノワールが近接振りの万能装備ならIWSPを装備しているこいつは機動振りの万能装備。
早速、行動している最中。
ラファール・ノヴァ2号機を俺用に調整して、それシャルロットとの模擬戦形式をとって試運転している所。
おかげで基本操作に慣れることが出来、こうして単純な戦闘なら出来るまでになった。
「シャルロットが相手を引き受けてくれて本当に助かるよ。こうしてどんどんISに慣れていける!」
「本当にね! ご主人様の役に立てて従者として光栄この上ないよ!」
本心と皮肉を織り交ぜながら言った言葉を啖呵に変え、反撃の力へと変える。
「なっ……!?」
続いて聞こえてきたのは驚きの声。声の主はシャルロット。
反撃の力へと変えたのは察知済み。ならば、阻止あるのみ。
シャルロットが反撃を実装するよりも先に、量子変換によって呼び出した両手剣で反撃の手を抑え込んだ。
そうしてシャルロットが漏らしたのが驚きの声と今に至る。
何時目かの決着の訪れ。
俺の抑え込みを押し返す、機体性能をもって抜け出すなどまでまだ再戦へと繋げる手はあるがあくまでも試運転。
模擬戦形式を取っているだけで勝敗をつけなければ終わらないということはない。中断も選択肢としては当然ある。
「休憩にするかシャシャ」
「え……あ、うん……」
俺の声によって驚きから我に返ったシャルロットはぽつりと頷く。
驚けただけシャルロットは優秀だ。
見れば分かるのに地上で試運転の様子を観測している誰もが驚くことすらできずただひたすら呆気に取られている。
空中から地上へと降りて機体を解除しながら呆然とするスタッフへと指示とを飛ばす。
「休憩にする。皆も手持ちの仕事がキリのいいところまでいったのなら各自好きに休憩してくれ」
「はいっ!」
返事と共に我に返ったスタッフが動き出したのを見て自分の椅子へと腰を落ち着ける。
タブレットを手に取り、試運転を計測したデータに目を通す。データ、数値が示す客観的な結果は悪くない。我ながら上手く動かせていると思う。
これなら実技の面で後れを取ることはない。座学についてもまた然り。
「楽しそうだね。これ、貰ったからどうぞ」
「ああ、シャシャ。助かる。シャシャも座って休むといい」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
ペットボトルを持ってきてくれたシャルロットから受け取った。
シャルロットは隣に席に座り、こちらはペットボトルを開け口を付ける。
中身はミネラルウォーター。冷たい水が身体に浸透して、気分が和らぐ。
「楽しそうと言っていたがそんなにか?」
「うん。ほら、少し前大分と根詰めてたのを思えばね」
「だとしたら今までにないぐらい自由に身体を動かせてるからかもな。伯父殿様様だ」
実際今は楽しい。
ISによって行動範囲は広がり、身体がより自由になったというのがあるだろうがISに乗れたことでいろいろあった疑念が晴れた。
乗れたからには降りれない。やるだけだ。
「あんな風に突き放すような言い方してもテオのこと心配してのことだもんね。本当不器用な人だよ、お父さんは」
くすくすと笑ってシャルロットは言う。
シャルロットの方とて以前にも増して楽しそうだ。
理由については現状が物語っている。
穏やかなひと時。
しかし、終わるのは突然で一瞬。
「――」
「ど、どうかしたの?」
突然、俺が立ち上がったからシャルロットが驚く。
感じる。感じるぞ。
「俺を見ている」
殺意を込めたの視線を感じる。
スタッフの中に紛れているとかではない。これは外、それも空から。
この感じ。この殺意。よく覚えている。懐かしい。まったく気前のいい奴だ。
「いいだろう、相手してやる!」
「テオ!?」
外へと飛び出した。
外、空に姿は見当たらない。だが、確かにそこにいる。
「シャシャ、この場所とスタッフを守ることを最優先に動け」
「えっ? ――きゃああっ!?」
シャルロットへ指示を出すと同時にISを展開。
更に同時に飛び上がり、背部にある単装砲を右脇で抱えるように持ち放った。
高速の弾丸が向かう先には何も姿はない。変わらない空が続くのみ。
だが――。
「シィッ!」
弾丸は当たらず空を切る。
しかし、目標は達成。苦悶の声と共に姿を現したのは一機のIS。
蜘蛛を模したその機体には見覚えがある。以前は灰色だった機体色がよく識る赤紫とオレンジ色へと変わっていた。
だが、印象的な蜘蛛の尻を模した巨大なパーツはなく今だ何処となくあの姿になるひとつ前の姿のような印象を受ける。
パイロットでも変わったか。頭部はフルフェイスに覆われていて確認できないが中身はやはり。
「お前か、オータム!」
「なっ!? もう気づきやがった! なら、遠慮はいらねぇ!」
蜘蛛のように跳ねこちらへと襲い掛かってきた。
その両手にはカタールが一振りずつ。
俺を斬り裂かんと円を描きながら凶器が迫る。
刃と刃がぶつかり合う重い衝撃と音。
真っ向から受け止め、言葉もぶつける。
「元気そうで何よりだ!」
「てめぇもな! これだけ元気なら痛めつけ甲斐があるってもんだ!」
有言実行。
痛めつけることが目的の連撃。
確かな経験値を感じられる完成度。しかし、感情が乗りすぎて読みやすい。
語らず、逸らず、粛々と。防ぎ、捌き、最後には反撃の一閃。
狙ったところへと綺麗に入る。
「ガァッ!? クソ生意気に中々やるじゃねぇか! 男、しかもお前みたいなのがISに乗れるなんて一体どんな裏技使ったんだ?」
「なるべくしてなっただけのことだ!」
「減らず口を。まあいいさ、ボコしてバラして身体に直接聞いてやるからよォッ! 連れて帰れば生きようが死んでようが構わねぇって命令だ! ご自慢の愛機はうちらが貰ってやるから嬉し涙流して逝けやコラァッ!」
「2号機は盗まれるものってか!」
更に気持ちの反撃を受けきり、こちらも攻撃の手を休めない。
攻防を繰り広げながら、頭の中で語りかけるように
相手はシャルロット。
『シャシャ、聞こえるか』
『テオ!? 戦ってるみたいだけど大丈夫なの? 軍に連絡、ショコラさんを呼んで向かってもらおうとしてるけど準備に時間かかるみたいで』
『そうか。なら、どちらにせよ戦闘を続ける必要はある。奴は日本で襲ってきた奴と同じ。狙いは俺だ。ならば、これは好機だ!』
『好機!?』
どちらにせよ戦闘は避けられない。
逃げれば被害が広がるのはいつものこと。
それに実戦でならシャルロットとの模擬戦では得られない経験をデータが得られる。今は少しでも多くの経験とデータがいる。時間制限は出来たがあるほうが返って逆境だ。
ならば、ここは好機と捉えて立ち向かうのみ。
『施設へ被害を出さないようにはするが万が一のことがある。その時はシャシャ、スタッフの安全を第一に行動を。それまでは戦闘の様子をデータ収集しておけ! いいな!』
『でも……っ!』
『心配させるからには五体満足生きて結果を出す。俺を誰だと思っているんだ?』
『もうっ。ふふ、私のお優しいご主人様、天才テオドールでしょ! でも本当気を付けて!』
『おうともさ!』
威勢よく返事を返すと通信に回していた意識をオータムへと集中。
今、相手との間には距離がある。詰めるのは造作もないが、それではあまりに単調。折角、やって来てくれたんだ。初実戦のお膳立てにやって来てくれた礼はたっぷりとする。
「撃つ!」
剣と入れ替わるように呼び出したのは
フルオートで放つ凶弾の数々。
近・中距離で真価を発揮するこいつは捉えたオータムへと瞬間火力を叩き込む。ただ――
「ってこれは模擬弾か? ハッ、模擬弾ではなぁ!」
馬鹿にしきった笑み。
ISの特異性を帯びているとは言え、模擬弾は模擬弾。性能や威力は知れている。
「笑っているわりにはなっちゃいないなぁ!」
「くっ!」
いくつか回避しきれずオータムはダメージを重ねている現状。
その事実にオータムは耐えきれない。
「ア゛ア゛~! しゃらくせぇ!」
吐き捨てるような言葉と共に奴の両手には現れたのは2丁のマシンガン。
避けきれないなら面制圧で吹き飛ばし教え返してやろうという魂胆か。
轟音響かせながら乱れ撃たれる実弾の中に紛れ込むビーム。
ビーム。
そう言えば、オータムの機体はアメリカ製。
アメリカはいち早くエネルギー兵器を本格導入していた。方向性としてはビーム。この世界におけるビームはエネルギー消費が高いがその分、威力は高い。レーザーと比べて安定性は低いが、小型化に優れている。
何より、ビーム問わずエネルギー兵器はISから供給されるエネルギーを変換して放つため、実弾を始めとする物理攻撃よりもシールド、IS本体に大きなダメージを与えられる。ISエネルギーの塊をぶつけているから。
それもあってビームを撃ってきているんだろうがもう一つ訳はある。
「てめぇの機体は物理に強いらしいからなぁ! とっておきだ! まだまだ行くぜぇ! そらよォッ!」
背中から現れる蜘蛛の足が四本。
足先はブレードと砲門が一体化しており、そこから更にビームが放たれた。
鋼鉄の蜘蛛男みたいだな、まったく。
やはり、こいつは知っていている。
周知になるのはいずれ時間の問題だろうが、今だ厳重管理中であるこの機体の特性を。
人の口に戸を立てられないとはよく言うが気をつけなければ。将来のこともある。あれは未遂に終わるが万が一ということもあるものだ。
篠ノ之束の前には亡国機業がどうやっても立ちはだかるのだから。
と、悠長に思考を巡らせていられるのはISあってか。
以前みたく感じるまでもなく、目で見て、理解して、適切な行動が起こせる。
だからこうして。
「当たらなければどうということはない」
某赤い彗星が言ったことを実行するのみ。
実弾を無効にできるとは言え限る上にビームというおまけつき。
向かってくる弾数も無駄に多い。
当たればシールドは通常時よりも多く削られるだろが、避ければどうってことはない。
一方で回避を選択し続けてもいられない。
一気に崩す必要がある。
「――こんな時は」
次の瞬間、脳裏に響く鈴の音と共に思い浮かんだのは 可変速式レールガン。
背部にあるそれを左脇に抱え放つ。
轟音高らかにレールガンが面制圧中の弾幕の一部を飲み込みオータムの土手っ腹に直撃。
一撃でオータムが見せる攻めの姿勢を崩し、矜持を踏みにじった。
「ガハッ! テ、テメェッ……!」
オータムから汚らしく漏れる体液胃液。
エネルギーシールドを突き破り絶対防御の展開を確認。
大幅にエネルギーを削った。
これが実弾なら決め手となっていただろう一撃。追撃の手は緩めない。
「貴様はわざわざ亡国から私に倒されに来たんだよなぁ!」
「舐め腐った勘違い発言してんじゃねぇぞ! このクソ馬鹿御曹司が!」
「ハァアッ!」
「あぁぅっ……!」
蜘蛛のように飛び跳ね迫りくるが反撃は許さない。即座にねじ伏せる。
斬り取った2丁のマシンガン。背中に現れた四本の蜘蛛足。どれもこれも真っ二つ。
「次があるのなら、せめて手足ぐらいはもっと増やしてくることだ! これではアラクネの名前が泣くな!」
「お前こいつの名を!?」
「さぁ、フィナーレだ。今のお前は勇を失った。もう散体するがいい!」
「――ッッ!」
土手っ腹にキックはストライクした。
ロンダートによって威力は高まり、強力な吹き飛ばしを生み出す。
「ウルトラトンチキのクソ馬鹿御曹司! 次こそはボッコボコにして、ギッタンギッタンにして、バラバラに引き裂いてやる! おッ、覚えてやがれッ!」
吹き飛びながら捨て台詞を地平線の彼方へ消え、最後は星になって消えた。
まるでバイキンの王様みたい。
結果として取り逃がした。
だが今日ここで模擬戦をしていたことを知っていたり、機体の特性を知っていたりしていたこと。
そして、何よりISにおける実戦経験など得られるものは多かった。
しかし、勝って兜の緒を締めよ。
これは嵐の前触れに過ぎない。
◇◆◇◆
あれから数日。
日本だと咲き始める桜に迎えられながら4月からの新生活が始まろうとする頃。
我がフランスはそうではないが、日本のそれに合わせて俺も用意している所。
何故なら。
「いいわ、素敵よ! テオ! 目線こっちに!」
「こうですかね。ならば、ポーズはこうでしょう!」
「ええっ! バッチリよ!」
飛び交うフラッシュの光。
いつぞや見た母上主催の撮影会なる光景。
あの時はシャルロットが撮られていたが今日は俺の番。
「IS学園の制服、女の子のも可愛くて素敵だけど男の子の制服も変わらず白くて素敵よね。白馬の王子様みたい。我が息子ながらカッコイイわね!」
今俺はIS学園の制服、男子用を着ている。
コスプレとかで着ているわけじゃなく、正しい目的で着ている。
「でも本当シャルロットちゃんだけじゃなくてまさか、テオまでIS学園に入学することになるなんてね」
しみじみと母上は言う。
そう何故なら、俺もまたIS学園へと入学することになったからだ。
俺のような状況になればよく語られること。
もっと言うなら、先日起きた亡国機業オータムの奇襲が強く関係している。わざわざ日本を出ずフランスにいればいいがこのままフランス内にいれば、また襲いにやってくるだろう。前は被害を0に出来たが、いつまでもそうできるとは限らない。いつかは大なり小なり被害は出る。
かといって俺はデュノアの人間故に監禁や隔離はできず、施設を作るそんな余裕もない。
だが、フランスは俺を手放したくはない。そこで白羽の矢が立ったのがIS学園。そこは最新鋭の防衛設備を備え、防御力については初代ブリュンヒルデ織斑千冬がいるからお墨付き。
便宜上治外法権となっている場所の為、国内にいるよりかは他から手が出しにくいうえにデータを集めるには最適の場所。
実質島流し、体のいい厄介払いだが学びの場としてIS学園は最上位に位置していて、道徳的。
こうした大義名分、後は特別という名の実質予備代表候補生の肩書を送ればIS学園へと送り出せる。
「テオ、平気なんだね」
この場に居合わせているシャルロットはやっぱりかという顔をしている。
ちなみにシャルロットも制服を着ている。
「当然だろう。母上の願いを叶えるのは息子として当然のこと。何より、このテオドール・デュノアが見せる折角の晴れ着姿、後世にまで残るように納めてもらわなければな!」
「あ……あはは、テオに聞くまでもなかったね」
「本番行くとしましょう。サンソン、レフ板よろしくね。アルベール義兄様も」
「何故、私がこのような雑用を」
「のわりには、兄上大人しくやってるじゃないか」
「ふん、雑用とは言えこの程度このアルベール・デュノアにかかれば些末なこと。神業的レフ版運用を見るがいい! 後、デュノアの女の言うことには大人しく従っておいた方がいい事は私は学んだ……」
小声で言ったそれが一番の理由なんだろう。
このようにこの場にはシャルロットだけでなく、母上と父上。そして伯父殿と伯母殿、デュノア家の皆が一度に会している。
「テオはこう、シャルロットちゃんはこうね。目線はこっちよ! さあ、キラキラ、キラキラ。煌めいて!」
並ぶ俺とシャルロットに母上は思い思いのポーズをさせると撮影開始の掛け声とと共に取り進めていく。
「お揃いの制服もいいけど、髪型も似た感じにしたのは正解だったわね」
後ろ髪は結べるぐらい伸び、シャルロットと同じ色でリボンで結んでいる。
シャルロットは首の後ろでリボン結びをして馴染み深い髪型に、俺は三つ編みで一つ結びにしてある。
ひとしきり撮ると母上は満足してくれて、解放してくれた。
「言ったら何だけどこうして写真撮ってると本当にお別れなんだなって実感増しちゃうわね」
「そんな大げさな。長期休暇、それこそ夏休みには帰って来てきますよ。母上」
「でも、やっぱり二人が子供達が家を出ちゃうのは寂しいわ」
「マリィの言うことは一利なくはないわね。けど、シャルロットは嬉しそうじゃない。テオと離れることになった前が嘘みたい」
「!?」
伯母殿の言葉にシャルロットは図星をつかれた顔をする。
本人は隠し通そうとしていたからそうなるか。
「気づいてないと思っていたのかしら。これでも10年近く何だかんだ顔合わせてきたのよ。何も言わず行くことがテオの役に一番立てると割り切ってたけど、その必要がなくなってテオと一緒に日本に行けて学園生活が楽しみで仕方ないってところよね」
「ロ、ロゼンダ様~! あぅあぅ~」
思っていること綺麗に言い当てられシャルロットは見事に轟沈。
赤くなった顔を両手で覆いながら俯く。
伯母殿の慧眼は侮れないな。
「テオも知っているでしょ、デュノアの不可能を可能とする。デュノアの女に見通せないものはないのよ!」
左様で。
轟沈状態のシャルロットをこのままには出来んか。
俺が立ち直らせろと母上と伯母殿に視線が刺さっている
「シャルロット」
「は、はいぃ……」
「俺も一緒に日本に行けて学園生活を過ごせるのが楽しみだ。共に行こう、シャシャ! 俺にはシャルロット・デュノアが必要だ!」
「うんっ!」
笑顔の花を咲かせていた。
「……ぐぬぬっ」
「お労しや兄上」
シャルロットがそんな反応するものだからこちらに刺々しい視線が突き刺さる。
気持ちは察しつかなくはないがそんな目で見られてもどうしようもない。
同じく理由を察した父上が苦笑いしながらその心情を労っていた。
「じゃあ最後、デュノア家皆で撮りましょう。カメラは……」
「私執事長ジェイムズにお任せを。レフ版は他の従者の者達が」
カメラを執事長ジェイムズに、レフ版を他の従者に渡すと家族全員で並ぶ。
「テオとシャルロットちゃんは真ん中。テオの隣に私、シャルロットちゃんの隣にロゼンダ。テオの後ろにサンソンで……って」
「兄上、そんな一つ開けて端の方いなくても」
「黙れ、口うるさい弟よ。私はここがいいがいいんだ」
「はいはい、子供みたいなこと言ってないでシャルロットの後ろに立ちなさい。デュノアの男が情けない」
「おい、ロゼンダ! 分かった、分かったから逃げないように手を繋ぐのをやめろ!」
「ふふっ」
観念したようにシャルロットの後ろに立つ伯父殿。
皆のやり取りを見て微笑むシャルロット。
写真に映る並び一つで騒がしくなる我が家族。
本来のデュノア家にはない光景。でも、今のデュノア家はこれが当たり前の光景。
前触れはあれど、やはり物語や運命はまだ動いてない。だが、俺の人生は10年以上前から始まっていて、始まりはどうあれ俺はここにいる。
「よろしいですね。撮りますよ、はーい」
ジェイムスの掛け声の後シャッター音が響く。
また一枚写真という今がここにあるという証が出来た。
区切りはついた。さあ次へ!
ということでデビュー戦でした。
作者もテオドールさんも無駄にテンションが高くなってしまいました。
オータムさんはいいキャラしているので滅茶苦茶してくれるのがありがたい!
次回からいよいよIS学園! やっとです……!
それはそうとビームとレーザーを区別してみましたがどうなんでしょうね。
原作ではこの場のノリで使い分けてるだけな気もしなくはないのですが。
皆さんはどう思いますか? ぜひ感想欄にコメント残していってください!
感想もお待ちしております!
ラファール・ノヴァ≪グラン・オワゾー(和名:
【武装】
アサルトライフル×1
対装甲用コンバットナイフ×2
プラズマソード×2
アンカーランチャー×2
グラン・オワゾー内蔵右舷単装砲
グラン・オワゾー内蔵左舷レールガン
グラン・オワゾー内蔵両舷懸架斬滅剣×2
グラン・オワゾー上面左舷ミサイルランチャー×1
グラン・オワゾー翼下ハードポイント懸架3連小型ミサイル×4
【装甲】
【機体解説】
テオドール・デュノアの乗るラファール・ノヴァがIWSP2番機≪グラン・オワゾー≫を標準装備した姿。
万能性を維持したまま振り向ける特性を高速機動戦闘に特化させた装備を有する。