皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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STORY30 とある覇者の放課後風景

「ここが……」

「第3アリーナですわね」

 

 辺りの様子を見ながらそう言うシャルロットとセシリア。

 教室を後にして俺達3人がやってきたのは第3アリーナ。一週間後、ここでセシリアと一夏がクラス代表の適性をはかる為の模擬戦が行われる。

 これはその下見という意味合いもあるが、本当の目的は別にある。

 

「よし。では、準備がよければ訓練を始めるか。まず相手は俺からでよかったか、セシリア」

「ええ、お願いしますわ。シャルロットさんもその後で」

「うん、分かってる。じゃあピットのモニター席で一戦目のモニタリングしてくるね」

 

 そう言ってピットに消えていくシャルロットをセシリアと見送る。

 ここにやってきた一番の理由は一週間後に向けてセシリアが訓練をしておきたいとのことなのでその為にやってきた。無論、使用許可を取って。

 俺もセシリアもISスーツに身を包み、後は機体を展開するのみ。

 

「覚悟はよろしくて? テオ」

「ああ、来るがいい。このテオドール・デュノアが胸を貸してやる!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 互い瞬時に機体を展開すると距離を取り、向かい合いように開始位置に着いた。

 

「バトル開始の宣言をしろ! シャシャ!」

『えっ、う、うんっ。バトル開始っ!』

 

 場内にアナウンスとして流れるシャルロットの宣言を皮切りにセシリアとのISバトルは始まった。

 

「はぁぁあっ!」

 

 絶え間なく撃たれる巨大で長身のスターライトmkIII(レーザーライフル)

 牽制を兼ねた光線の弾幕を張りながらセシリアにとっての適性距離、集中できる位置に着く。そして。

 

「行きなさい!」

 

 機体から分離して飛来する小型の攻撃端末。

 この特殊装備がブルーティアーズと呼ばれるビット兵器。

 合計4機が2機ずつ二手に別れ、俺を取り囲む。

 

「これがブルーティアーズか!」

 

 高速で迫り来るビットに無駄な動作はなく、放ってくるレーザーの狙いは的確。

 こちらが避けることは想定済み。回避した先へとレーザーを穿ってくる。

 手馴れている。なるほど、これがセシリアの十八番の攻め方。単純だがそれ故に嵌れば抜け出すのは困難となるだろう。流石の包囲網。いい攻め手だ。

 

「しかし、このラファール・ノヴァ舐めてもらっては困る!」

「平然と全て避けて! くっ、捉えきれない!」

 

 未だこちらはノーダメ。

 セシリアの射撃、ビット攻撃は正確。しかしだからこそ、落ち着けば動きや意図は読みやすく対処は容易。当たる道理はない。

 

 加えてビットの制御にはかなりの集中力がいる様子。

 ビット以外の攻撃を加えることは出来ず、本体の動きが単調なものとなる。

 そこが狙い目よ! ビットの包囲網を突破して、今度はこちらが攻める。

 

「制御が難しいのは分かるが抜かれればいい的だぞ!」

「っ、分かってますわ!」

 

 発破をかけてやると動きながらビット制御に務めようとするがどの動きもキレが衰え、ぎこちない。

 

「ふんっ!」

「きゃああっ」

 

 セシリアを守るエネルギーシールドに砲弾がぶつかる音と衝撃。

 単装砲にも簡単に当たってくれる。

 

「足を止めるな! 動け動け! ISは機動兵器だぞ! 機動しなくてどうする!」

「ええッ、その通り! ですわねッ!」

 

 砲撃の衝撃で一瞬動きは止まったもののセリシアはすぐ動き出す。

 もうセシリアは自分の中で理論だてられたようだ。

 動きながらビットを制御し、合間合間にレーザーライフルを打つのも欠かさない。

 

「そうだ! その調子だ! 絶え間なく動け!」

 

 レーザ攻撃を掻い潜りつつ、両手のライフルでビットの動きを完全に抑え込む。

 続けざまに両脇に展開した単装砲とレールガンでセシリア本体の動きをも制限、シールドエネルギーを削る。

 

「――ッ」

 

 セシリアがレーザーライフルで弾幕を張りながら、後退しつつ仕切り直しを図る。

 ビットは一旦両肩部に浮遊するビット・ベースへと戻っていく。

 その隙に詰めた近接戦可能な交戦距離。

 こうなるとどうなるかは限られてくる。それが分からないセシリアではなく。

 

「インターセプター!」

 

 迷いなくコールされる武器名。

 レーザーライフルと入れ替わりで現れたのはナイフ状のショートブレード。

 未だ名前を呼ばなければ呼び出せず、武器の名前を呼んで量子変換するのは初心者の手段。代表候補生であるセシリアにとってその手段を選ぶというのは屈辱的だろうが、何もできずダメージを受ける方が屈辱の度合いは強い。

 それ故に屈辱よりもこの場における判断が勝った。

 

 しかも、それはこちらが振りかざすブレードを受け止める為に呼んだのではなく、むしろセシリアから仕掛けてくる。

 刃と刃がぶつかる金属音が重く響き、衝撃が伝わってくる。

 

「流石は我が婚約者! 思い切りの良さ! 惚れ直したぞ!」

「光栄ですわ! ますます惚れさせてあげますわ!」

 

 その言葉をバネに攻めの姿勢は緩めない。

 セシリアにとって近接は不得手だろうが、力の限りを攻めの姿勢をやめない。

 防御に徹すれば、簡単に打ち破られる。それを理解しての選択。

 

「ッ!? くッ! なんて速い剣捌き! 追いつけない!」

「せいやー!」

 

 セシリアの意気込みは買うが、こちらへのダメージは許さない。反撃の意思すらも。

 懸命に追いつこうとするがやはり近接戦ではこちらが明らかに上手。

 弾き、いなし、斬り伏せる――ブルーティアーズのシールドエネルギーはデッドゾーンへとダメージは加速した。

 

「くっ……!」

 

 セシリアを完全に抑え込み無力化した後、苦悶の声を漏らすセシリアへと突き付けた剣と共に終わりを告げる。

 

「ここまでしよう」

「そうですわね。悔しいですがここまでのようなので」

 

 武器を量子変換でしまうと宙にいた俺とセシリアは地上へと降りた。

 

「流石はイギリス代表候補生。よかったぞ、いいセンスだ」

「そう言ってもらえると傷一つ与えられないという悔しい結果になりましたがよかったですわ。こうしてテオと初めて剣を交えられたことですし」

「言われてみれば確かにそうだな」

 

 ISバトルは無論、セシリアと何か競うこと自体今回が初めてだった。

 ISを手にしていなければなかったことだと思えば、いい経験だな。

 

「これからは剣を交えることも増える。まずは弱点を潰していこう」

「ブルーティアーズを操っている間動きが最低限になること。わたくしが得意とする交戦距離を抜けられ近接戦に持ち込まれると脆いことですわよね」

「まずはブルーティアーズの精度を今以上にあげれば、交戦距離を抜けられることはないだろうがそれでも弱点は潰しておいた方がいい」

 

 弱点があるのなら潰して改善していく。

 そうすれば一夏との一戦において盤石なものになるが、果たして。

 

「後は射撃のパターン、絡め手を増やせるといいだろう。その点はシャシャから学ぶといい」

「助かりますわ。強くなりませんと。いつまでも無様な姿は皆様の前で晒していられませんわ」

 

 皆さまというのは観客席で見ている生徒達のこと。

 いつの間にか野次馬が集まっていた。

 クラスメイトがいれば、他所のクラスの者達までいる。

 

「観客席も閉め切るべきだったか」

「いずれは見られてしまうものですし、隠すようなものではありませんわ。わたしくが強くなればいいだけのことです。テオドール・デュノアの妻として相応しいように、オルコット家当主として恥ずかしくないように」

「その意気だ。しかし、その前に休憩も必要だ」

 

「そうですわね、一休みといたしましょう、テオ」

 

 機体を休めるのも兼ねて俺達は一度休憩を取ることにした。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 夕食の時間がそろそろ始まろうかとする頃。

 シャルロットやセシリア達との訓練を終えた俺は一人、第二整備室へとやってきた。

 

「まだやっていたか、簪」

「あ……テオ」

 

 中には簪が一人でいた。

 

「夕食の時間だから簪も一緒にと思たのだが邪魔したか」

「ううん、大丈夫。というか、もうそんな時間なんだ」

「その様子ならかなり集中していたようだ。作業のほうはどうだ?」

「あまり進展はない、かな」

 

 苦笑いしつつ視線を向けた先にはISハンガーに固定された展開待機状態の機体が一機。

 左右にミサイルポッドを内蔵した大型のウィングスラスターを、両腰部にはミサイルポッドと一体化した荷電粒子砲を一門ずつ持つ、どことなく打鉄を思わせる姿。

 これが簪の専用機、日本製第3世代機『打鉄弐式』。簪が受領した時からガワである機体そのものは完成しているが、原作(俺が識る世界)と変わらず未完成状態。

 

「打鉄のOSを使うことで一応実技の授業には出れるようにしたんだけど、それ以外は。山嵐のマルチロックオンシステムも荷電粒子砲のシステムも全然ダメで。本当は全部連動させないといけないんだけど中々、ね……そんな状態だと稼働データ取り難くて」

 

 未完成具合もまた変わらずといったところ。

 だが、一応動かせるようにはなっているのか。そこだけは違った。

 

「中々苦労しているようだな。手伝えることがあれば、手伝おう」

「ありがと。今は気持ちだけ受け取らせて。まずは自分一人で頑張ってどこまでやれるか腕試ししたい」

 

 少し意外な言葉が簪から出た。

 

「更識の娘だからって自力での開発を倉持とかいろいろなところから許してもらったのは甘えちゃったけど、こんな機会は滅多にないからチャンスを活かしてしっかりやりたいの。自力での機体開発はお姉ちゃんもやったことだから」

「やり遂げ楯無に追いつきたいと……?」

「うん」

 

 簪は小さく、そして力強く頷く。

 

「最低限これぐらいやらないとお姉ちゃんの影すら踏めないから。まずは機体を完成せるのが第一目標」

 

 言葉こそは原作(俺が識る世界)でも見たものだが鬱屈としてしていない。

 前向きでやる気に満ちた明るい言葉だった。

 

「それにそんな気を使わなくても大丈夫。忙しいでしょ? 聞いたよ、1組のこと。いろいろあったんだってね」

「耳が早いな」

 

 もう他のクラスまで情報が行き届いてる。

 女子の情報網は伝達速度はやはり凄まじい。

 

「織斑一夏が1組のクラス代表なんだよね。だったら来月のクラス代表戦、戦うことになるのかな」

「ということは4組のクラス代表には簪が?」

「うん……まあ、こんな状態でも代表候補生、それも専用機持ちだから」

 

 簪は苦笑交じりに言った。

 

 4組のクラス代表が簪なのは変わらずか。

 そうなるのはおかしいことではない。むしろ、安心した。

 そして、簪から出た織斑一夏の名前。簪は織斑一夏をどう思っているのか。気にはなるが、そのことを聞くのはわざとらしいか。

 

「何か難しい顔してるけど大丈夫。策は考えてるから」

 

 そこまで言うというのなら策はちゃんとしたものになるのだろう。

 これは対戦することになれば織斑一夏にとって強敵となる。

 もっともそうなる未来は限りなく0に近いが。

 

「と、この辺でいいか。ごめんなさい、待たせちゃって。ご飯行けるよ」

「では行くか」

 

 二人で整備室から出た時だった。

 外に人がいた。そちらを見るなりぽつりと一言。

 

「あ……」

「あ……って、何してるのお姉ちゃん」

「あはは……」

 

 誤魔化すように笑う楯無がいる。

 

「何か用事か?」

「そ、そうなの! ちょっとこの辺に用事あってね!」

「そうなんだ……? そうだ……ご飯の前に荷物部屋に置いてくるね。テオ、先に言って」

 

 そう言うと簪は寮へと去っていく。

 場には俺と楯無だけが残される。

 

「で、簪の用があったみたいだがよかったのか?」

「分かっちゃう?」

「分かるとも。その用が簪の様子を見に来て、あわよくば専用機開発に協力しようとしていたこともな」

「何でもお見通しね」

 

 お手上げといった風に楯無は肩をすくめた。

 お見通しというよりかは状況判断だ。

 楯無がわざわざ第二整備室にくる理由なんてそれぐらいしかない。

 

「でもテオがいるなら私の出番はなさそうね」

「どうだろうな。俺も専用機開発の協力を申し出たが断られた」

「ええっ!? 嘘!? どうして!?」

「まずは自分一人で頑張ってどこまでやれるか腕試ししたい。そうすることで同じく専用機開発をした楯無に追いつきたいとのことだ」

「ああ……本当に簪ちゃんはこんなにも頼もしくなっちゃって。いえ、むしろ今の簪ちゃんらしいというべきかしら」

 

 簪の成長を喜ぶ半面、寂しそうに笑みを浮かべる楯無。

 

「でもそれじゃあますます私の出番ないわね。私は簪ちゃんのお姉ちゃんなんだから本当はもっと何かしてあげなきゃいけないのに……」

 

 随分気負った発言をする。

 妹である簪を思ってなのだろうが、それだけではないだろうな。

 

「まあ、何かしら協力できることがあるはずだ。その時に力になればいい」

「そうなった時真っ先に出番あるのはテオじゃない? 私がいてもアレでしょうしテオのほうが適任よね」

「適材適所はあるだろうがあまり人任せにするなよ、楯無。自分がいることで拗れることもあるかもと危惧しているようだが人任せにして楯無がいないことで逆に拗れることもある」

 

 原作(俺が識る世界)がそうだった。

 あの時は完全人任せではないが、人任せにして楯無がいなかったことで少し拗れた。

 

「何かしてあげたいのならちゃんと簪と向き合うといい。昔とは変わったことは多い。楯無がちゃんと向き合えばら簪は応えてくれる。その時は入り口の前で入るか迷わず勇気を持ってな」

「なっ!? そこまで気づいていたの!? まあ……でも、そうね。挑戦してみるわ」

 

 楯無は決意を新たにした。

 これで少しは二人の仲に進展があるだろう。

 上手くいくといいな。

 

 

◇◆◇◆

 

 

『分からん……何も……』

 

 講義を始めてから30分を過ぎた頃。

 聞き覚えのある言葉を画面の向こうでもらす一夏。

 

「もう弱音か。声をかけてきた時の意気の良さは何処へ行ったのやら」

『そうは言うけどよお……』

 

 IS座学はやはり一夏にはまだ荷が重いようだ。

 事前学習もなくいきなりだから理解はしてやられるが、それでも俺の時間を使ってやっているのだからここで根を上げるようでは困る。一夏の方から座学を教えてほしいと早速言ってきたのだから尚更。

 力になると言ったからしているだけで俺の方からわざわざこんな寮部屋からの外出禁止時間が過ぎた夜遅くにビデオチャットで座学を教えたりはせん。

 

『テオドールはちゃんと出来てるんだよな』

「お前とはスタートラインが違うからな。うちはデュノアだ。それこそISが誕生してからの付き合い、ISと付き合いが長ければ知識は自然と身に着く。それでも入学に際して復習もしたがな」

『はぁ~ちゃんとやってるんだな。今更になって間違いとは言え参考書捨てたの情けなくなってきた……』

 

 がくりと肩を落とす。

 参考書を捨てたことで織斑先生に怒られていたな。何というか馴染み深い光景だった。

 

「捨てたのは確かにいただけないが過ぎたことだ。気を落としている暇があるのなら少しでも多く知識を身に身に着けろ」

『仰る通りで』

 

 引き続き一夏に座学を教える。

 だが、一夏にとってやはり不慣れな内容。

 初めてだらけに四苦八苦して、だんだんと手が止まっていく。

 そして一言。

 

『なぁぶっちゃけ何だがこういうの覚えても使うのか?』

「本当にぶっちゃけたな」

 

 まあ、言いたくなるのは分からなくはない。

 ISの座学は小難しく書かれている上に覚える量が多い。

 

「通常科目と同じだ。学んだことをすべて使うわけではない。俺もぶっちゃけるのなら別に座学やマニュア的な知識が不足していてもISは動かせる」

『やっぱりか』

「直感的な感覚と身体能力、そして何よりイメージがものを言う。それらさえあれば動かせる。いるだろ? ISに限らず簡単な説明だけで感覚と身体能力ゴリ押しでサラっとやってしまうものが」

『いるな。千冬姉とか』

「そうだな。現役時代の織斑先生がまさに分かりやすい例だ」

『やっぱり。千冬姉説明書読まねぇで何となくで電化製品使ってたからな』

 

 電化製品とISは全然違うが、言いたいことは伝ったようだ。

 というか、一夏の言った言葉はすぐ脳裏に思い浮かんだ。

 その様子イメージしやすいな。

 

「それでもマニュアルは知っておいた方がいい。座学はしっかりするべきだ。知識は力。知っているというのは自信に繋がり、選択肢を増やせる。何事もあればあるほどいい」

『結局、地道にやるしかねぇか』

「そういうことだ。知識が身に着けば座学の授業で今日みたいな恥をかかなくて済む。いずれ筆記試験もあるだろう」

『筆記試験……前途多難だな。ってか地道にやるにしてもこんなんで来週の模擬戦俺に勝つ見込みあるのか』

 

 また一夏がうなだれだした。

 今できる座学を地道になるしかないと分かっていても、目に見えて成長している実感が薄いのだろう。だから、不安になる。

 

「座学だけで不安ならば公開情報というものがある。そこへアクセスし、ISについて調べるのもいいだろう。それこそセシリアの専用機について調べるもよしだ。ついでに映像教材や有名選手の試合映像を見てイメージトレーニングをするといい」

『イメージトレーニング?』

 

 今一つ理解できないのか一夏は首を傾げた。

 

「見て学ぶというのも大事だ。見ればイメージしやすい。こんな風に動けばいいのか、こんな時はこう立ち回ればいいのかなどとイメージが産まれる。ISに置いてイメージは重要だ。ISは装着者のイメージを汲んでくれるからな」 

『イメージトレーニングか……やってみる!』

「これは一つアドバイスだ。イメージするのは常に最強の自分だ」

 

 赤い弓兵が残した言葉だがアドバイスするならこの言葉だろう。

 

『最強の自分……』

「過度なイメージは自滅を招きかねないがかといって負ける弱い自分なんて想像しても仕方ない。勝負する前なのに気持ちの時点で負けてどうする。最強の自分をイメージすれば勇気にもなる、イメージを実現したいと目標や夢になる。夢や目標になれば辿り着こうと気力を振り絞る。簡単なことだ」

『簡単って……かなり難しくねぇか? それ』

「何を言っている。人間は可能性の塊だ。勇気と夢、そして気合があれば大概どうにでもなる。自ずと道は開ける。さすれば、その道に恐れず進めばいい」

『テオドールっていろいろ知ってたり教えたりしてくれるわりには結構脳筋なんだな』

「言ってろ」

 

 俺が笑い飛ばしてやると画面の向こうで一夏も笑った。

 

『座学に調べごとやイメージトレーニング。で、実際に体を鍛えたりするんだろう? やること多いな』

「その方が一夏にはいいだろう。気を落とす暇すらない」

『確かにそのほうがいいのかもな。オルコットさんも来週に向けて訓練しているんだよな?』

「当然だ。だからこそ、より一層励めよ」

『おうっ!』

 

 俺がここまでしてやったんだ。

 どう成長するのか見ものだな。

 そして翌日。

 

「なぁ! テオドール、今日こそ俺に訓練つけてくれるよな!」

 

 入学2日目。

 授業をすべて終えて放課後になるなり、一夏がこちらへやってきてそう言った。

 やる気なのは結構。だが。

 

「彼女はいいのか?」

「彼女?」

 

 自分の席から俺達を凝視する鋭い視線。

 彼女は俺達が気づいたことに気づくとこちらへやってきて口を開く。

 

「一夏、そいつと訓練する気か?」

「そうだけど、それがどうかしたのか? 箒」

 

 やってきた彼女は篠ノ之箒。

 一夏の幼馴染にして、篠ノ之束の妹。いろいろと対応が難しい奴だ。

 

「……」

 

 物凄くいいだけな顔でこちらを見てくる。

 というか、めっちゃ睨まれてる。まあ、何言いたいのかは大体察しが付く。

 一夏に訓練をつけて二人っきりになろうと思っていたら、一夏は俺を頼った。

 それに物申したいが指導者として自分よりも俺の方が適任だと分かっているらしく、何も言えず押し黙る。しかし、納得がいかず睨むような形になってしまう。

 仕方ない、一肌脱いでやるか。

 

「時に一夏は何かスポーツの経験はあるか? 例えば中学の頃の部活動とか」

「中学の頃は特に。三年連続帰宅部だったからな。ただ小学生の頃は剣道やってたぞ。箒と同じ道場で。箒の実家が剣道道場で親父さんが師範代だったからな」

「なるほど。篠ノ之さんはどうだ? スポーツ経験は」

「篠ノ之で構わない。私は物心ついたころから今日までずっと剣道一筋だ」

「箒はな去年、剣道の全国大会で優勝したんだぜ!」

「おっおい、やめろ。恥ずかしいっ」

「何でだよ、凄いことなのに」

「それはまあ……しかしだな」

 

 篠ノ之は嬉しくて緩む顔を表には出さないように必死にこらえて難しい顔をしているが口角が絶妙に緩んでいる。

 こうして実際に自分の目で見ると篠ノ之は本当に一夏のことが好きなんだな。凄く実感する。ならばこそ一肌の脱ぎ甲斐がでてくるというもの。

 

「そうか。ならば、一夏は俺よりも篠ノ之に訓練をつけてもらうのがいいだろう」

 

 その言葉に篠ノ之は驚き、一夏はしょんぼりとする。

 

「やっぱり、今日も先約が?」

「セシリアやシャルロットと放課後する予定ではあるが正直、実技の面において一夏にISがなければ教えられることは限られてくる。かといって訓練機を借りてというのは申請などに時間がかかる。そして、まずは身体から鍛え直すべきだ。ISは身体が資本だからな」

「それで箒が……?」

「ああ。それだけブランクがあるのなら多少なりとも訛っているはず。だからこそ、同門ならば教えや形などを学び直せる。剣道の動きはISに応用が効く。まずは体力作りと失った勘を取り戻すことに務めよ」

「な、なるほどな」

 

 一夏は納得した様子で頷く。

 一週間という短い期間で今やれることはこれぐらいだろう。専門的なことや実践的なことを教えたところで基礎的なものが乏しければ、チグハグになる。

 丁度いい適任者もいることだ。使わない手はない。

 

「放課後は剣道を主軸とした基礎トレーニングで身体作りに務め、夜は座学をするがいい。もっとも放課後は俺は立ち会えず二人っきりとなる。何より篠ノ之がよければの話にはなるが」

「か、構わないぞ! 私に任せておけ! 一夏を立派な武士にしてみせる! 一夏と二人っきり!」

 

 胸を張る篠ノ之。

 その姿は嬉しさで溢れている。

 小声ではあるが心の声まで漏らしてしまって。

 

「いい意気だ。一夏を任せたぞ」

「うむっ! デュノアは案外いい奴なのだな! 一夏にいい友人が出来てよかった!」

 

 案外は余計だが篠ノ之はやる気になってくれた。

 これで後は任せられる。

 

「テオドールはいい奴だけどちょっと勝手に」

「何だ、篠ノ之じゃ不満なのか? 幼馴染は大事にしたまえよ」

「そういうわけじゃねぇけど、テオドールに教わるの楽しみにしていたからさあ」

「そんなものは追々いくらでもできるだろう。それこそ専用機を手に入れた後とかな。今の一夏は何もないゼロの状態。この一週間でどれだけ基礎をつけられ、セシリアとの一戦でどう立ち回るのか楽しみにしているんだ。成長した姿刮目させてくれ」

 

 そう言うと一夏の目は更になるやる気が灯った。

 

「そっか! うしっ! なら、基礎からみっちりやるか! 箒、よろしく頼むぜ!」

「言われるまでもない! ビシバシ鍛えてやるから覚悟しろ!」

 

 二人は教室を出ていった。

 すると入れ替わるように声をかけてきたセシリアとシャルロット。

 二人して微笑ましいものを見たかのようなニヤついた顔をしている。

 

「テオ、いい事したね」

「ええ、やはり恋する乙女は応援したくなりますものね。篠ノ之さんには頑張ってほしいですわ」

「そうだな。さて、俺達も負けじと頑張ろうか」

「はいっ」

「うんっ」

 

 俺達も来る一週間後の模擬戦に向けて訓練に精を出した。




試合に向けていろいろ進んでいます!
それぞれにこれぐらいフォロー入っていればいい感じ!……なはず?

次回、セシリアvs一夏戦です!
お楽しみに!

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