皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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STORY31 覇者が見届けたセシリアと一夏の戦い

 模擬戦当日。

 俺とセシリアとシャルロットはピットと呼ばれる管制室にいた。

 向こう側のピットには一夏や織斑先生、山田先生達がいる。

 

「凄い沢山の人が見に来てくれてるね」

「それだけセシリアと一夏の一戦に期待している」

「面白半分にでしょうけど」

 

 セシリアは苦笑いしつつ外の様子が見えるモニターを見て言う。

 モニターにはこの一戦を見に来た生徒が観客席に映っている。多くの生徒が一年生だが、中には胸元にあるリボンの色が違う生徒がちらほらと居る。上級生だ。話を聞きつけて見に来た。おかげで観客席は大盛り上がり。

 

「まあいいでしょう。今は目の前の戦いに集中するのみ。テオが目をかける彼がどれほどのものなのか楽しみですわ」

「その意気だが心してかかれ。奴は未知数。人間は可能性の塊。戦いで一番恐ろしいのは何をしてくるかわからない奴だ」

「そうですわね、心しておきますわ。ですが、ご覧に入れてさしあげます。このセシリア・オルコットの優美なる勝利を!」

 

 ISスーツ姿に身を包んだはセリシアが胸を張ってそう言った姿は頼もしい。

 セシリアのモチベーションは充分。これはおもしろい試合が見れそうだ。

 

 向こうの準備が整った。

 開始の連絡が入ってきた。

 

「時間だね。頑張って! セシリア、応援してる!」

「行ってこい、セシリア」

「ええ、お二人ともありがとうございます。行ってきますわ」

 

 最後セシリアを中心にシャルロットと二人でハグする。

 そうして、セシリアがブルーティアーズを展開するとカタパルトに乗り、アリーナステージへと飛び立った。

 

 一足先にアリーナステージに着いたセシリア。一歩遅れるように一夏もやってきた。

 

『待たせたな!』

 

 セシリアに相対する一夏。

 

「あれが織斑君の機体」

 

 一夏が纏うISを見てシャルロットが呟く。

 シャルロットと共に見るピット内のモニターに映る一夏の機体は工業的な凹凸が多い。原作(俺が識る世界)と変わらずの姿。

 こいつは紛うことなく白式。我が愛機ラファールもそう認識してる。

 

『よっしゃ! オルコットさん試合を始めようぜ!』

『セシリアで構いませんわ。これから死力を尽くして戦うもの同士なのですから。しかし威勢がいいのは結構ですが、得物は構えませんの? 素手でこのわたしくセシリア・オルコットに挑むおつもりで?』

『おっと! そうだ、装備装備!』

 

 一夏の言葉に白式が反応したかのように空間投影されたディスプレイを表示する。

 それを見て一夏は目を疑っていたが、仕方ないと半ば半分やけくそ気味に装備を呼び出した。

 現れた光の粒子が集まり形を成していく。そして、一夏の手に一振りの日本刀を模したような近接ブレードが収まった。

 

 近接ブレード、名前はまだない。

 機体の感じといい武器の名称が未設定なのを思うに、やはり白式は初期設定状態。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は行われているだろうが済んではいない。

 ずっと疑問だった。何故、こんな状態で織斑千冬は出撃させた? 済んでいないと分からなかったなんてことはないだろう。一夏を信頼してのことか。 

 

『近接ブレード、近接格闘型のISですか』

『みたいだな。武器はこれしかねぇけど、分かりやすい! 何より刀だ、この一週間のことを込められる!』

『ならば、いいでしょう! 戦いの鐘は既に鳴ってます。始めますわよ。確かめさせていただきますわ、テオが目にかける一夏さんがどれほどのものかを! わたくとブルーティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!』

 

 その言葉を皮切りに戦闘始まった。

 先手はセシリア。後方へと後退し一夏との距離を取りながらレーザーライフルで弾雨を降らす。加えてビットベースからビットを全機惜しむことなく展開する。包囲網の完成。セシリアの手堅い基本戦術。

 

『うわっ!?』

 

 初弾のレーザーはヒット。

 白式がオートガードを働かせたおかげで直撃こそは免れたが、シールドエネルギーはかなり減った。

 ヒットの余波はそれだけでは留まらず、遅れてやってきた衝撃波に身体を持っていかれそうになり、寸前にところで白式による自動姿勢制御によって何とか堪える。

 強烈な衝撃波と急な動きに意識を失わずに済んだのはブラックアウト防御のおかげ。しかし、隙というのは一瞬だろうが出来る。その一瞬が命取りになる可能性は充分にあり、その一瞬をセシリアは逃さない。

 

『もらいましてよ!』

 

 レーザーライフルとビットによる波状攻撃。

 当然一夏は回避を試みる。

 

『これ以上は! うぉおおおおおおっ!』

 

 気合は充分だがそれだけでは足りない。

 何発か回避成功しているが、全弾回避とはいかない。一夏が回避した攻撃は誘いも兼ねたもの。それを回避した先では新たな攻撃が待ち構え、シールドエネルギーを掠める。直撃を免れているのがせめてもの救い。一夏はセシリアによって確実に消耗させられていく。

 

「流石だな。セシリアの奴上手く搦手を使っている。シャルロットの教えが活きてるな」

「教えだなんて。そんな偉そうなものじゃないよ。あれはセシリアが頑張ってるから。ビットの制御しながらも他の行動出来るようになったのもね」

 

 モニターで試合を観戦しながらシャルロットとそんな会話を交わす。

 

 セシリアはこの一週間訓練したことをフルに活用している。搦手を始め、ビットの制御に意識を集中させながらも別の動作を怠らず、レーザーライフルでの攻撃もしっかり入れるのなんて最たるものだ。セシリアはこの一週間で確かに成長した。

 

「シャシャから見て一夏はどうだ」

「何だか機体に引っ張られているみたいだけどしっかり回避して距離を詰めようとしてるし初心者ながら織斑君凄いよ」

 

 シャルロットからはそんな感想が出てきた。

 

「だな。専用機を受領してぶっつけ本番。それであれだけ動ければ大したものだ」

 

 俺も素直な感想を言う。

 ビットによるオールレンジ攻撃に戸惑ってはいるが、機体操作は問題なく行えている。

 ISが身体の動きを反映してくれるパワードスーツだからというのはあるだろう。

 しかし、奴の機体は試合開始して数分が経っても尚初期設定状態。訓練機と変わらない状態で初心者があそこまで動けていれば充分すぎる。

 

「機体に引っ張られているのはそろそろ落ち着くだろう。大方あれは機体が過剰反応している」

「過剰反応?」

「一夏を乗ったばかりで、一夏を乗せての戦闘も初めて。 機体の方もいろいろと戸惑って一夏を振ります過剰な反応をしてしまっているようだ」

「ああ、なるほど。ありえるかも」

 

 もっというのなら、機体が過剰反応しているのは白式が初期設定状態なのも関係しているんじゃないか。

 そもそも白式が初期設定状態なのは一夏の身体情報が膨大過ぎて本来数分で済むフォーマットとフィッティングの処理に時間がかかっているように見える。済むのを待つには時間がかかりすぎるのだろう。

 だから、初期設定状態で出ざるを得なかった。そして、膨大な身体情報に白式が圧迫され、セシリアの攻撃を始めとしたあらゆることに過剰反応するようになった。故に、一夏がISの反応に追いつけていない。試合を見ていてそう感じた。

 だから、試合が始まって数十分経つにもかかわらず初期設定状態のまま。

 それでも初期化と最適化は着々と進み、一夏はISバトルに慣れつつある。

 

『これならいかがでしょうか!』

 

 ビットが一夏を取り囲み頭上にはセシリアが向けるレーザーライフルが待ち構える。

 普通に避けるには難しく、当たれば大ダメージ確実。危険な状況。並みの熟練者ならば諦めが脳裏に過る一瞬。だが、一夏は初心者。負けん気も強い。故に見せてくれる。

 

『――ッ!? こうなったらイチかバチかだぁっ!』

 

 咄嗟にしゃがんだ。

 かと思えば一夏はブーストを吹かし一気に加速した。

 

『なっ!?』

 

 驚くセシリア。無理もない。

 なんせ一夏はまるで空中に地面があるかのようにスライディングをして初めての完全回避を成し遂げた。

 勢いそのままU字に滑ってセシリアへと距離を詰める。

 

『イメージ通りだぜ! このまま行ける!』

『イメージでこんな動きを!? なんて出鱈目な!』

『ISはイメージ! テオドールの教えだからな!』

 

 誇らしそうに一夏が言うもんだからシャルロットが驚いた顔で見てくる。

 まるで俺が一夏にあんな出鱈目な動きを教えたんだと言わんばかりに。

 

「ISはイメージインターフェイスのおかげもあって装着者のイメージを反映しやすいとは教えたがあんな動きは教えてないぞ」

「そうだよね……でも、テオも結構出鱈目な気が」

「聞こえているからな」

「あ、あはは……」

 

 試合に目を戻すと一夏とセシリアの接敵はまもなく。

 驚きからの不意を突いたことでセシリアは反応が送れ最早レーザーライフルの距離ではなくなり、回避できるような状況ではなくなっている。

 さて、セシリアはどう出る。

 

『テオに教えられたのは一夏さんだけではなくってよ!』

 

 レーザーライフルと入れ替わるようにコールする様子もなく握られていたショートブレード(インターセプター)

 セシリアは待ち構え応戦するのではなく自ら一夏へとショートブレードを振るい仕掛けた。激しく斬り結び鍔迫り合う二人。

 

『せぇぇいっ!』

『おおおっ!』

 

 仕掛けたという事。そして、訓練の甲斐もあってセシリアが押し気味

 一夏の剣戟を捌き、ダメージを0に押さえている。

 だが、一夏はただ押されているわけではない。やっと詰めることのことのできた近接格闘距離。セシリアを逃さない。だが、それはセシリアにも言えること。

 

『この距離なら回避はできませんわね!』

 

 一夏を取り囲む4機のビット。

 距離を詰めたこと、近接格闘からの鍔迫り合いをしていることが徒となった。

 回避できるような距離は勿論、間合いはない。ビットの銃口が光る刹那――。

 

『押してダメなら引いてみろってな!』

 

 唾ぜり合う力を一夏は近接ブレードを引くことで緩める。

 すると押していた力は行き場を失い、無防備になるセシリア。

 

『そして、押しのける!』

『ッゥ――!』

 

 そこをついて一夏はショートブレードを切り払いセシリアを押しのけた。

 それだけでは留まらず、押しのけた反動を利用して真横に一閃を描く長刀。 

 金属を斬り裂く轟音と共にビットが2機まとめ撃墜された。

 

 初心者が初期設定状態の機体でこの反応。

 タネを知っていていれば納得だが、実際見ると凄まじさは覚える。

 

『――ここまでとは! 流石はテオが目をかけるだけのことはありますわね! ならば、テオの妻として最大限の礼を尽くさせていただきますわ!』

 

 ビットが撃墜されることを割り切ったセシリアの切り替えは早く正確だった。

 ビットが撃墜されたとまったく同時にレーザーライフル、ビット、そしてミサイルビット。一斉射撃が一夏を飲み込んだ。

 

 その光景に観客席が沸く。

 誰もがセシリアの勝利を、戦いの終了を確信した。

 それは隣で見ているシャルロットまでもがそうなように。

 

「テオ、やったね!」

「いや」

「え?」

「まだだ」

 

 そうまだだ。

 むしろ、戦いはこれから。

 

『これは……』

 

 爆風が晴れるなり、一夏は姿を見せた。

 しかし、先ほどまでとは姿が違う。装甲は変化し、洗礼された姿へと変貌していた。

 これはまさしく。

 

『なっ……一次以降(ファースト・シフト)!? 今まで初期設定状態の機体であれほどの戦いをしていたというの!?』

 

 驚きは当然ながら、そこには危機感が入り混じり。何より悔しさをあらわにした。

 

 初期設定状態の機体であそこまで戦えたという事実の衝撃は凄まじい。

 それだけの高い潜在能力を一夏が有していたことをセシリアは瞬間的に理解したものの。

 そうした事実と理解があっても代表候補生であり、専用機持ちであるのに初心者相手に何分も戦闘を繰り広げ、あまつさえビットを2機も破壊された。しかも、相手が初期設定状態にも関わらず。

 その事実はセシリアへと重くのしかかり、自分の慢心を悔いているかのよう。

 

『――』

 

 対する一夏は白式(自身)に起こった変化に驚きつつも変化を噛みしめている。

 白式は機体色が純白になり、翼を持った中世の鎧を彷彿とさせるフォルムになった。

 その姿はまるで白騎士。こんなところでも繋がりを持たせたというのか。

 

 続いて同じく大きな変化があったのは白式唯一の武器である近接ブレード。

 名称未設定から新たに手にした名は雪片弐型。織斑一夏の姉、織斑千冬がかつて専用IS暮桜で振るっていた専用装備雪片と同じ名前を冠している。そうラファールが新たに認識している。

 だが、その弐型と名付けられているように同一の武器ではなく発展しているようだ。刀身にある鎬の部分から左右に展開し、鎬の間にはエネルギーが剣状に形成されている。

 

「あれは……」

 

 零落白夜。

 暮桜が有していた単一仕様能力。映像では何度も見たことは勿論、過去のモンド・グロッソでは実際直接見たことがある。だが、まったく同一というわけではない。暮桜は刀身に零落白夜を纏うようだったのに対して、弐型は刀身そのものが零落白夜と呼ばれるエネルギーで出来ている。純度が高まったという事か。

 

『これが俺の力。守る為の力。千冬姉と同じ力を手に入れたんだ。最高で最強の姉がいる弟が無様な姿は見せられねぇ!』

 

 一夏は武器を構え、戦う姿勢を見せる。

 

『守られるだけ俺はここまで! これからは俺の家族、友達を俺が守る! まず最初に守るのは千冬姉の名前からだ! 不出来な弟だと笑われねぇよう最後まで戦ってやるさ!』

『守るものがあるのならわたくしにもあります! オルコット家を、そしてテオの妻としてこんな無様なままでは終わらせられません! 守るものがあるのはあなただけではなくってよ!』

 

 怒号のような声と共に放たれるセシリアの攻撃。

 多段かつ正確無比な弾幕はすぐさま一夏を捕らえるが。

 

『見える!』

 

 レーザーを完全回避し、ミサイルを切り落とす。

 

 一次以降(ファースト・シフト)の効果は早速出ていた。

 初期設定状態では勘や反射神経だけで戦っていたが、最適化したことでよりはっきりと見たものを捕らえ、対処していく。先ほどまであった白式に振り回される感覚なんて最早ない。

 加えて機体のスペックも上がっていることで単純な機動力は高い。遠くにあるビットにさえ、追いつく。

 

『思い出したぜ! ビットは10発程度でエネルギー切れを起こす。補給に戻る際は動きが単純になる!』

『ッ! よくご存じで!』

『勉強して調べたからなブルーティアーズのことは! そして、この試合でずっと見てきた!』

『この試合でずっと見てきたのはわたくもですわ!』

 

 3機目のビットが破壊されそうになった刹那。

 

『テオ、ならこういうでしょう! ――“まだだ”でしてよ!』

 

 ビットの動きが変わった。

 セシリアは一夏の攻撃の軌道を読み、補給の最動きが単純になるオートからアナログに切り替え、3機目のビットに意識を集中させることで複雑な動きをして撃破を免れた。

 

『なっ!?』

 

 驚く一夏。

 撃破できると確信を持っていだけに空を切る感触のみが伝わる雪片を真横へと勢いよく空振った。

 その瞬間をセシリアは逃がさない。既に放たれたレーザーライフルのレーザーが一夏へと迫る。空振った勢いで回避どころじゃない。防御をすれば、そこで決まる。

 

『まだ終わってたまるかぁっ!』

 

 ブーストを吹かし真横に空ぶった状態から一夏はくるりと一回転してみせた。

 何の回避にも防御にもなってない。普通なら。

 だが一夏の機体は白式。手に持つは零落白夜状態の雪片弐型。レーザーと刀身がぶつかる。

 

「レーザーを斬った!?」

 

 信じられない光景を見てシャルロットが声を上げる。

 観客席も歓声で盛り上がる。

 

 レーザーは雪片の刀身とぶつかったが零落白夜によって斬り裂かれた。

 いや、消滅されたというほうが正しい。よって、ノーダメージ。

 

『おおおおっ!』

『はぁああっ!』

 

 畳みかけようとする一夏。

 一夏に呼応して刀身に宿る零落白夜の密度が増す。

 対する向かい討とうと構えるセシリア。

 試合は最後の瞬間へと移ろうかとした瞬間。

 

『両者そこまで。勝者――セシリア・オルコット』

 

 アナウンスと共に試合終了を告げるブザーがけたたましく響く。

 予期せぬ終了にセシリアも一夏もそろってぽかーんとした表情をするばかり。

 まあ、無理もない。しかし、何はともあれ試合は終了した。セシリアを勝者として。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 カタパルトから入って機体を解除したセシリアがピットに戻ってきた。

 当然シャルロットと出迎えるわけだが、セシリアの勝利を喜んでは出迎えられない。

 当の勝者であるセシリアの顔は勝ったにも関わらず浮かない。むしろ、先ほどの試合を悔いているかのよう。

 その姿はまるで試合に勝って、勝負に負けたといわんばかりだった。

 

「セシリア、よく帰った!」

「テオ!?」

 

 出迎えるなり、俺からセシリアを抱きしめた。

 オーバーリアクションではあるが、変に言葉をかけるよりもまずは行動でねぎらっておく。

 当然セシリアは突然のことに驚いた。なので、勿論言葉でも労っておく。

 

「試合見ていたぞ。一週間で学んだことよくできていた」

「ありがとうございます。そう言っていただけると無様な姿を見せましたがいい慰めになりますわ」

 

 抱き合ったまま顔を見せてくれたセシリアは笑みを浮かべているがどこか浮かない。

 ここの口ぶりといい相当落ち込んでいる。

 だからこそ、最大限に労ってやらなければならない。

 

「そうあまり悲観するな。セシリアは本当によくやった」

「テオ……」

 

 抱き寄せ頭を撫でる。

 言った言葉に嘘偽りはない。心から労うの言葉。

 実際セシリア本当によくやった。試合にノーダメージで勝利し、機体の存在状況も撃破されたのがビット2機のみと原作(俺が知る世界)よりもいい結果となった。

 何より、織斑一夏と白式が現段階でどれほどのものかよく見せてくれた。これを労わずとしてどうする。

 

「悔いもあろうが悔いを認めて次への糧にすればいい。一人で難しいのならシャルロットが、そしてセシリアの夫であるこのテオドール・デュノアがいる。一人じゃない。共に進んでいこう」

「テオの言う通りだよ。今日のことを次へと繋げていこう。皆で!」

 

 シャルロットが力添えをしてくれる。

 するとセシリアの表情は少しずつ晴れていく。

 

「シャルロットさんまで……――そう、ですわね。わたくしは一人ではありません。わたくしには皆さんがいます。くよくよするのはここまで。オルコット家当主らしくありませんでしたわね。いつでも尊厳と平静を忘れず、あくまで優雅に華麗であれ」

 

 セシリアが呟いたのは昔教えてくれたオルコット家の家訓。

 

「イギリス代表候補生の専用機持ちとして、オルコット家当主として、そしてテオドール・デュノアの妻としてよりいっそう相応しいセシリア・オルコットをご覧にいれますわ」

「ああ、楽しみにしている」

 

 すっかりセシリアは立ち直った。

 何よりだ。

 

「ところでテ、テオ」

「どうした? セシリア?」

「どうしたではありませんっ。その……いつまで抱きしめているのですかっ」

 

 頬を赤く染めたセシリアはこの状況がたまになくなったらしく言ってきた。

 

「頑張った者は褒めないとだろ? いやむしろ、褒めさせてくれ。自分のことのようにこんなにもセシリアの頑張りが誇らしいのだから」

「で、ですがっ」

「私達以外いないんだから大人しく甘えちゃったら? セシリア、恥ずかしいのは分かるけど嬉しそうな顔してるんだしさ」

「シャルロットさん!? ……お二人がそこまで言うのでしたら」

 

 口ではそんなこと言ってるが抱き返してくれたセシリアはこちらへと身体を預けてくれた。

 

「ありがとうございます、テオ」




いろいろ考察?混ぜつつのセシリアvs一夏戦でした。
二人とも原作よりも強くなってます。

次回はセシリアvs一夏戦のエピローグ(?)+α
感想お待ちしております!
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