皆に愛され 覇道をゆく天才の物語 作:水戸野幸義
感謝します!
シャワーヘッドから噴き出る熱めのお湯が試合の汗を流してくれる。
熱いお湯を浴びていると癒され、わたしくセシリア・オルコットは今日のことを思い出していく。
まず真っ先に思い出したのは試合を終え、テオとシャルロットさんが試合を終えピットへと帰ってきたわたくしを暖かく出迎えてくれた時のこと。
情けない試合をしてくよくよ落ち込むわたくしを励ましてくれたシャルロットさん。わたくしはよき友人を、家族を持った。
そして。
「――テオ」
愛しい人のことを思い出すと胸が熱くなる。
出迎えてくれた時、抱きしめて出迎えてくれたとても情熱的な人。
優しく撫でてくれた手の感触は今でもよく覚えている。あんな風に撫でられるのは子供っぽいかと思ったけど、撫でてもらえて正解だった。撫でてもらえて凄く嬉しかったのは言うまでもない。
テオが婚約者で夫でよかった。そして何より、テオには確かに人を見る目があった。
「織斑一夏……」
テオがああいっただけあって化ける素質はニ充分に垣間見た。テオの勘の良さはよく耳にしていたけども、実際体験するとここまでの勘の良さは考え物だ。
一夏さんは初心者も初心者、ISに乗ったのは今回を含め2回にも関わらずわたくし相手にあれほどの戦いを繰り広げた。しかも、試合前半は初期設定状態でビットを破壊するという信じがたい光景を実現した。
正直慢心していたというのもあるがそれでもここまでになるとは思ってもなかった。
完全にわたくしの攻撃に対応し始め、完全回避の実現。エネルギーブレードでレーザーにぶつけ消滅させるという離れ業の披露。
驚かされたことを上げたらキリがないほど今までやったことのないISバトル。今まで戦った祖国イギリスの代表候補生や国家代表選手達相手の常識が通じない。
結果こそわたくしの勝ち。
けれど、それは一夏さんの機体がいきなりエネルギー切れによるもの。
原因はあのエネルギーブレード。
「零落白夜……」
シャワーを終え濡れた身体を拭きながらわたくしはぽつりと呟く。
織斑先生――初代ブリュンヒルデを世界最強たらしめたワンオフ・アビリティー。
それと同一だとテオは教えてくれたけど、にわかには信じられない。
もちろん存在は知っている。過去あった織斑先生の試合映像は何度も講義の一環で見て、ワンオフ・アビリティーについても学んだ。
だからこそ、余計に信じられない。ワンオフ・アビリティーは機体と操縦者の相性が重要。普通はありえない。姉弟だからというのが真っ先に思いつくものの、それだけではないはず。男性でありながら一夏さんがISを動かせているということに何か関係しているのだろうか。
考えても分からないことだらけではあるもののエネルギー切れの理由は零落白夜の発動によるもの。
テオ曰く零落白夜は膨大なエネルギーを必要とし、それ故にシールドエネルギーまで使いエネルギー切れとなったという顛末。それははっきりとした。
そして、あれが当っていればわたくしが負けていた可能性があった。
それどころか、大怪我になっていた可能性だってあった。
エネルギーの性質を持ったものなら何であれ無力化・消滅させられるというのが零落白夜。現役時代の織斑先生はエネルギーシールドを消滅されることで強制的に絶対防御発動させ、シールドエネルギーを削り勝ち続けていた。絶対防御を消滅させないようにしながら。
それは織斑先生の技量あってのことだろうけど、一夏さんは初心者。
あそこまでの大立ち回りが出来たのなら、零落白夜を織斑先生と同じように扱えた可能性だってなくはない。
けれど、逆の可能性は拭いきれない。
「……」
鏡の前で髪を乾かしていると険しい顔をしているわたくしが映る。
強力な力。同時に危険な力でもある。
テオもそれを理解した上で尚一夏さんの力を戦力として考えている。それだけ亡国機業は思っている以上に強力な相手だということ。
そうだと分かれば悪い考えをしてしまいそうになるけども。
「わたくしらしくありませんわね」
自分に活を入れ、険しい表情を拭う。
悪い考えをするのならまずは行動あるのみ。
強力で危険な力なら、一夏さんを力に相応しく育て上げればいい。
こういう時は考え方を変えてみるものだとテオが言っていた。
何より、わたくしのことを誇らしいと言ってくれたテオに応える為にもわたくしはここで躓いてられない。
わたくしはもっと成長していく。
正妻セシリアはヒロイン力も高いですがヒーロー力も高い!
セシリア可愛いよセシリア!
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