皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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新年あけて数ヶ月経ってしまいましたが今年もよろしくお願いします。


STORY34 パーティー×覇者の気遣い×そして彼女が

「では、ただいまよりISの基本的な飛行操縦を行う。まず始めに専用機持ちの4名に手本を見せてもらうか。織斑、オルコット、デュノア飛んでみせろ」

 

 桜の時期が終わりつつある4月の下旬のこと。

 今日も今日とて授業、ISの実技を受けていた。

 

 そして、織斑先生の指示を受けてまずは機体を展開した。

 このプロセスは0.05秒で行われる。俺、セシリアとシャルロットが同時に機体の展開は完了。

 突き出した右手の手首にある待機状態であるガントレットもとい腕輪を掴み意識を集中させると最後に遅れて一夏も機体の展開を完了した。

 

「よし、飛べ」

 

 言われて、全員が行動に移す。

 瞬時に飛ぶことへと意識を収集させると急上昇し、遥か上空で静止する。

 一番初めに俺が着くと次にシャルロット、セシリア、最後ではあるが僅差で一夏がやって来る。

 

「クソー! やっぱり、俺が一番最後かぁっー!」

「まずまずの成長っぷりではあるが乗り始めて数日の者には負けんよ」

 

 悔しがる一夏に俺は言葉をかける。

 スペック上だと白式の出力はブルーティアーズ以上、ラファール・ノヴァと同等といったところ。

 変わらず一夏が遅れる形になったが遅いというわけではない。飛び方はしっかりと形になっている。故にここで織斑千冬から織斑一夏に向けるお叱りの言葉はない。

 

『全員飛べたな。少し辺りを飛び回れ』

 

 次の指示が通信回線から聞こえ指示通り飛び回る。

 頬に風が優しく触れる。心地よい浮遊感。ISアーマーを各部で身に纏っているがまったく気にならないほどの一体感。EOSであればこの感覚は味わえない。

 

「ふふっ」

 

 隣で同じように飛ぶシャルロットが笑う。

 それも楽しそうに。

 

「どうした? 楽しそうだが」

「テオが楽しそうだからつい。ね、セシリア」

「ええ、テオは本当にISが好き、いえ楽しんでいますわよね」

 

 微笑むセシリアのその言葉に肯定もしないが否定もしなかった。

 技術者として超越した技術に思うところがないわけではないが、今感じているこの感覚はそれを凌駕するほどにある種の感動すら感じさせてくれる。

 立ち向かう先は強力。その方が面白い。

 

「飛び回るの大分慣れてきたけどやっぱ変な感じするなぁ」

 

 後ろで同じように飛ぶ一夏のぼやきが聞こえた。

 パッと見問題なく飛べている。

 だが、一夏は飛ぶ感覚に違和感を覚えているらしく眉間にしわを寄せている。

 

「今後も訓練を怠らなければ慣れてきてそんなこと感じなくなるはずだ。今は兎に角集中しろ。イメージを絶やすなよ。最悪、落ちるからな」

「こ、怖いこと言うなよ。今飛ぶイメージだって千冬姉が現役だった頃の映像見たり、泳ぐ感覚思い出したりして何とか形に出来てるっていうのに」

 

 何とか形にこそといった感じだが、白式を手に入れる前からイメージについて念を押していたこともあってイメージにするのはそう難しいことではなかった。

 おかげで一夏は今こうして飛べている。イメージを汲んでくれるISに助けられたな。

 

「イメージでというのが不安なら理論で補強するのもアリだぞ」

「それいいかもね。理論ならセシリアが強いし」

「ええ、理論ならわたくしにお任せあれ。長くはなりますがまず手始めに反重力力翼と流動波干渉についてから」

「き、気持ちだけ受け取っておく!」

 

 苦笑いして遠慮する一夏に俺達は笑う。

 そんな風に談笑しながら飛び回っていると織斑先生から通信が入った。

 

『お喋りはそこまでだ。そのまま飛び続けた状態から急降下、地表から10センチで完全停止をやってみせろ』

「はいっ」

 

 皆で返事すると俺は早速行動に移した。

 目指すは地表。背部のメインスラスターを一気に吹かすと左右にあるX状の空力推進翼で機体制御しながら急降下。指示通り、地表から10センチで完全停止した。

 

「おおっ~!」

「速いのに綺麗……!」

「流石はデュノア君!」

 

 拍手と共に送られる賞賛の言葉の数々。誇るまでもない。この程度は当然だ。

 一夏達はというと。

 

「急降下か……やっぱり、テオドールが言ってた通りになった……な、って! もう地上!? 速っ!?」

 

 遅れて俺が地上に降りたことに気づくと先ほどまで俺がいたところと地上を交互に見ながら驚いていた。

 

「何ぼーっとしてますの。ほら、行動に移す」

「遅れないようにね。じゃあ、お先に」

 

 そう諭したセシリアとシャルロットの二人も上空から急降下してきて指示通りのところで完全停止。

 慣れたものだ。綺麗な所作で難なくクリアした。

 

「やっぱ、うまいもんだなぁ。よしっ、俺だって!」

 

 その言葉の後、上空を旋回していた一夏が急降下してくる。

 一気に地上へと近づき、指定の位置に着いた。

 

「っと。うお!?」

 

 指示通りの位置で一夏は完全停止した。

 しかし次の瞬間、身体のバランスを崩した一夏は両手をバタバタとさせながらバランスを保とうとする。

 そうしてまるで体操選手のようなY字ポーズをして一夏は何とかバランスを保った。

 

「ど、どうよっ!」

「おお~!」

「織斑君おもしろーい!」

 

 ドヤ顔でポーズを取る一夏にクラスメイトは皆大爆笑。

 当の一夏は表情そのままにしながら内心ダメージを追ったように口角を引きつらせているがポーズを続けたまま急降下からの完全停止の成功を織斑先生にアピールをし続けている。

 

「――……馬鹿者。余計なポーズを取るな。騒がしくしてどうする。もっと静かに出来んのか」

「す、すみません」

 

 呆れられ叱られると一夏はしゅんしながらこちらへとやってくる。

 しかし、更になる追い打ちが一夏を襲う。

 

「調子乗っているからですわよ」

「カッコつけるのもいいけどカッコつけるならもっとスマートじゃないとカッコつかないよ」

「うっ……仰る通りで」

 

 セシリアもシャルロットも容赦ない。

 仕方ない。フォローしてやるか。

 

「結果的に不格好にはなったが指示された通り急降下からの完全停止は一応できていた。調子に乗らずスマートに出来ていればよかったが追々よくしていけばいい」

「うぅ……テオにそう言ってもらえると助かるぜ」

 

 俺の言葉に単純な一夏は気を取り直したようだった。

 フォローはこんなものでいいだろう。次の指示が来る。

 

「では、次に皆の前で手本として各自武装の展開をして見せろ。近接武器でいい。始めろ」

 

 言われて皆一同に近接武器を展開した。それぞれの手に握られる得物。

 速度的な順位を言えば、急降下からの完全停止の時と同じ順位。一夏が最後にはなったが今度は気を引き締め、油断なく呼び出したからミスはない。所作、呼び出す速さとしても口の出しようがない。

 

「――」

 

 それは一瞬だったが織斑先生……いや、織斑千冬は言葉を失い沈黙した。

 

「――いいだろう。見ての通りだ。今手本にしてもらった感じを参考に授業を進めてもらう」

 

 座って見ているクラスメイトに向けて織斑先生は言う。

 

 本来ならここでセシリアの展開の仕方について小言を言うシーンもあったがそれは既に修正済み。武器名を言って呼び出すことがなければ、ポーズについて言われることもない

 なので粛々と授業は進んでいく。

 

 セシリアと一夏の模擬戦から今日で数日。

 一夏にはまず基礎を徹底したのでISでの飛行や急降下からの完全停止などはひとまず形になった。

 しかし、織斑千冬にすれば一週間でここまで成長するとは思っていなかったようだ。その証拠に相変わらず物調面しているがその裏では複雑そうにしている。ハイパーセンサーがよく伝えてくれている。

 大変気分がいい。こんな風にされると篠ノ之束が織斑千冬をからかいたくなるのも分からなくはない。これを見る為にも一夏に鍛え甲斐が出てくるというもの。

 よくある一夏魔改造強化などやり過ぎて危険視されるのは論外だが一夏は鍛えておいて損はない。可能性は可能な限り潰すが万が一敵対するとなったとしても叩き潰せばいい。単純明快。

 織斑千冬をからかうぐらいに一夏を鍛える。そっちのほうがおもしろい。

 

「ン、あれは……」

 

 ハイパーセンサーがもう一つ捉えたものがある。

 

「……」

 

 篠ノ之箒。静かに授業を受けてはいるが、何処か険しい顔をしている。

 本来なら一夏につっかかてくるがセシリアと一夏の関係性が変わり、何より俺という存在があってか前に出てこれず踏みあぐねている様子。

 

 ここもフォローはやはり必要のようだ。

 適度に適切な対処を早急にしていくか。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「というわけで! 今から織斑君のクラス代表就任おめでとう会を始めま~す! じゃあ織斑君おめでとー! かんぱ~い!」

「かんぱーい! おめでとう!」

 

 クラッカーを鳴らす楽しげな音が何度も響き、グラス同士を軽く合わせる景気のいい音があちらこちらから聞こえてくる。

 今は夕食後の自由時間。その時間を使って寮の食堂に集まり、こうしてクラス代表就任おめでとう会の真っ最中。

 なのだが実際は名ばかりの集まり。1組全員だけでなく、ちらほらと他のクラスの者達までものが集まって、命題関係なく各々好きなように楽しんでいる。まあ、それでも賑やかで楽しい場であることには変わりない。

 

「……」

 

 しかし、一夏だけは楽しい場と間逆にテンションは低い。

 更に、複雑そうな顔をしている。

 素直に楽しめないのは無理ないか。だとしても一夏はこのパーティーの主役。こんな顔していれば当然言われることはある。

 

「主役がなんて辛気臭い顔をしてますの。主役がそんなのだと折角のパーティーが台無しでしてよ」

「そうは言うけどなぁ……」

「気持ちは分からなくはないけど折角のパーティーなんだから楽しまなきゃ。形だけでも楽しんでたら自然と本当に楽しくなってくるから。ね、テオ」

「まあ、そうだな。シャシャが言うことはもっともだ。セシリアが言ったこともな。主役が辛気臭い顔をしているよりも楽しい顔をしている方がパーティーはより盛り上がるというもの。まずは一杯ジュースでも飲んで気分を切り替えろ。ほら、その空のコップをこっちに。このテオドール・デュノアが注いでやろう」

「ととっ! ったく、強引だな」

 

 俺は一夏が持つ空のコップにジュースを継いでやった。

 確かに強引だ。だが、このぐらいのほうがいいだろう。

 そのおかげか一夏は苦笑いではあるがようやく笑みを見せた。

 

「篠ノ之さんももっと楽しもうよ!」

「ほらほらこっちこっち!」

「ちょっ!」

 

 何だかんだ楽しむ一夏の姿を見たクラスメイトが先ほどの一夏と同じくテンションが低く複雑そうな顔をして端にいる篠ノ之をこちら、一夏のいる方へと連れてきた。

 篠ノ之は一夏と目が合うとバツが悪そうにした。

 

「折角のパーティーなのになんて辛気臭いしてんだよ、箒」

「なっ!? ……お前には言われたくない。というか、その言葉今言われたことだろ」

「だからこそこうやって楽しんでるんだろう。ほら、ジュースでも飲めって。注いでやるから」

「お、おいっ! まったく、お前という奴は」

 

 憎まれ口を叩いているが満更でもないといった様子。

 ジュースを注がれると篠ノ之はほんのり笑みを浮かべながら飲んでいた。

 

「賑やかだね」

「ン……簪か。用事は済んだみたいだな」

 

 簪が声をかけてきた。

 他所のクラスではあるが誰彼構わずのパーティーなので簪も誘ったのだが、用事があるとのことだった。

 

「うん。そうだ……ありがと、テオ」

「何だ、急に。礼を言われる覚えはないが」

「その、用事って言うのが明日からクラス対抗戦に向けての訓練をしようと思ってその為にアリーナの使用許可とかいろいろ書類用意して出しに行ってたんだけど、訓練の相手お姉ちゃんがしてくれることになって」

「それでか」

 

 それが用事だったのは今知ったが簪の訓練相手に楯無がなったのは知っていた。

 なんせ本人から嬉しそうに怒涛のメッセージが来たのだから。

 

「テオがお膳立てしてくれたんでしょ? だから、お礼をと思って」

「お膳立てと言われるほどのことではないが力になれたようで何よりだ。頑張れよ」

「うん。お姉ちゃんが訓練相手名乗り出てくれた時は驚いたけど折角の機会活かそうと思う。頑張るっ」

 

 両腕でガッツポーズをして意気込む簪はやる気充分だ。

 楯無もやる気充分で前言ったことは気を付けるだろうからまあ、上手くいくだろう。

 

「おお~やってんねぇー」

 

 人波をかき分けてきたかのように聞き慣れない声が聞こえてきた。

 

「はいどうもー、私は新聞部部長の2年黛薫子。織斑一夏君とテオドール・デュノア君、話題の男子二人に特別インタビューしに来ました! はい、これ名刺ね。以後、お見知りおきを」

 

 名刺を渡してそう言ってきたのは黛薫子。

 いたな、こんな人物。そしてあったな、そんなイベント。

 

「じゃあ、早速インタビューさせてもらうわね。まずは織斑君から! クラス代表になりましたがその感想と、いよいよ迫ってきたクラス代表戦への意気込みをどうぞ!」

「えっ、ええーと……」

 

 ボイスレコーダーを向けられ一夏は言い淀む。

 急に言葉は出てこないのは分かるが、だからといってこっちを見られても困る。

 

「まあ、なんというか、精一杯頑張ります」

「短いな~もっといい感じのコメントちょうだいよ! デュノア君はいいコメントお願いね!」

 

 一夏相手に粘ってもこれ以上のコメントは出てこないとすぐさま悟ってか、今度は俺の方へボイスレコーダーを向けてきた。

 もう一つ向けてくる眼差しは期待に輝いている。

 

「一夏は先の模擬戦で我が婚約者であるセシリア相手に勝利はならずとも大健闘とした男。クラス対抗戦、優勝は兎も角勝利の可能性はあるかと。何より、これから対抗戦までみっちり鍛えていくので一夏の活躍をお楽しみに」

「おおっ! 流石はデュノアの御曹司、インタビュー慣れしてるねぇ~いいコメント頂きました!」

「はぁー大したもんだなぁー」

 

 満足してくれた。

 一夏は関心しているがまあ、こんなものだろう。

 

 その後もセシリアやシャルロットにも似たようなインタビューをしていたが意外な者にまでインタビューは回ってきた。

 

「おっと! そこにいるのはたっちゃんの妹さんじゃない!」

「!?」

 

 姿を見つけるなり簪へと興味が移る。

 声をかけられると思っていなかった簪は両肩を震わせながらビックリとしている。

 

「妹さん、更識さんは4組のクラス代表よね。ということは対抗戦、織斑君と戦うことになるけど意気込みはどう?」

「え、えっと」

 

 当の本人である簪は緊張気味。

 急にボイスレコーダーを向けられ、それによって周りからの注目を集めているから緊張するのは無理もない。

 だが、答える気はちゃんとあるようだ。言葉を探している。

 

 思えば、原作(俺が識る世界)だとシャルロットと同じく簪はこの時期、この場にはいない。そして、シャルロットとは違い別のクラスでクラス代表。一夏と戦う可能性はある。だとすれば、この場にいるのならこうなるか。これは少しばかり興味引かれる展開になった。

 簪はどう答えるのか。

 

「織斑君の実力はまだまだ未知数で手強い相手になると思いますがだからこそ、戦えるのならぜひ戦ってみたいです。戦う機会が来るの楽しみです」

 

 ゆっくりとだが簪は確かに言い切った。

 意外なことを言うもんだ。だが、こういえるのが今の簪の強さで在り方なんだろう。

 周りにとっても意外な答えだったらしくある種呆気に取られていると、簪は反応がないと思ったようで不安そうに辺りを見る。

 

「あ、あれ……? 私のコメント悪かった……?」

「いや、いいコメントだった。頼もしい。やはり、簪は強敵だ。これはますます一夏の鍛え甲斐が出てくるというもの」

「忙しくなりそうだね。テオ、セシリア」

「ですわね。簪さんにここまで言ってもらえたのなら一夏さんとしても張り合いが出るというものでしょ?」

「えっ、ま、まあ……今までどんな人と戦うのか分かってなかったし、戦う相手がどういう思いなのか分かって、ここまで言われたらなぁ」

 

 まだ大分ぼんやりとした感じはあるものの一夏が少なからず対戦相手に興味を持ったのは大きい。意識改革は大切だ。

 

「いいわねっいいわねっ。世界で二人しかない男子操縦者の一人である織斑君が1組のクラス代表を務め。それを同じ男子操縦者であるデュノア君、それからセシリアちゃんとシャルロットちゃん、代表候補生達が指導する。そして、対するは日本の代表候補生である更識さん。これはいい記事になるわ!」

 

 一人大盛り上がりし始めたぞ。

 

「よしっ。じゃあ、写真撮りましょう! まずは織斑君と更識さん、こんな感じに向かい合って。ほらほら」

「うぉっ!?」

「わわっ」

 

 一夏と簪の手を引くと二人を向かい合わて並ばせる。

 インタビューは勿論、写真を撮られるとは思っておらず。こんな風に撮られるのは初めてだったり、慣れてなかったりする。だから、二人とも表情は硬い。そして当然、そのことに指摘と注文が来る。

 

「二人とも表情硬い! もっと笑顔お願い!」

「そんな無茶な……」

「ううっ……」

 

 ぎこちない笑顔の二人が撮られていく。

 

 そんな二人を周りは何だか凄いものを見るような目で見ているがその中でも一人だけ違うものがいる。

 

 篠ノ之だ。

 羨ましそうに見ている。

 

 そして、更に辺りを見渡すと次の展開を予想してかセシリアが身なりを正していた。

 

「笑顔ぎこちないけどまあいいでしょう。じゃあ次は織斑君とテオドール君、セシリアちゃんとシャルロットちゃん、専用機持ちの皆で撮りましょうか」

「ああ、そのことなんだがよければ1組の皆も一緒に撮ってもらってもいいか?」

「えっ?」

 

 驚いたのは隣にいるセシリアやシャルロットだけではなかった。

 話が聞こえていたクラスメイト達も驚き、それを見た話を聞けてなかった別のクラスメイトが驚いたわけを聞いてまた驚く。

 

「織斑君とデュノア君達が中心だからその周りでいいなら大丈夫だけど何でまた?」

「折角の機会だからな。撮るならクラスの皆と一緒の方がいい。皆のいい思い出にもなるし、それで皆が喜んでくれれば一夏のやる気に繋がる。だろう、一夏」

「確かにどうせ撮るならクラスの皆と一緒の方がいいな! 喜んでくれれば、俺もっと頑張ろうって思えるし!」

「織斑君……!」

「やった! 流石はデュノア君、話が分かるね!」

「てっちーありがとうー!」

 

 これで状況は作れた。

 皆がカメラの前へと集まってくる。

 カメラの中心で俺は一夏と隣り合い、空いたもう片方の隣にはセシリア。シャルロットはセシリアの隣へと並んだ。

 一夏の隣はまだ空いている。人気がないわけじゃない。むしろ、人気があり過ぎて誰が隣に並ぶのか牽制し合ってる。

 埒が開かない。時間は惜しい。何より、一夏の隣には相応しい者はいる。

 

「一夏の隣は篠ノ之、お前だ」

 

 端の方で映ろうとする篠ノ之を指名した。

 すると篠ノ之へと注目は集まり、当人は狼狽えながら遠慮した。

 

「なっ!? い、いや……私は……」

「何を遠慮する。お前も一夏の指導者の一人。大切な仲間だ」

「テオドールの言う通りだ。折角撮るんだし近くで一緒に映ろうぜ!」

「……う、うむ……一夏達がそこまで言うのなら仕方ないな!」

 

 気が引けていたようだが一夏の言葉を聞くと思い直して篠ノ之は一夏の隣へとやってきた。

 何というか一夏の幼馴染だけはある。しかし、正解だった。

 

「ふふっ」

 

 一夏の隣で篠ノ之が満足げに笑う。

 これで多少なりと溜飲を下げられただろう。

 これまでは当然、一夏か簪と一緒に写真を撮るのを見て内心いろいろ思いつめている篠ノ之の為に一緒に撮る流れを用意した。

 

「はいはーい、撮るわよ!」

 

 掛け声の後、シャッター音が鳴って写真は撮られた。

 

 その後、パーティーは実からの外出禁止時間ギリギリまで続き。

 食堂から寮の自室へと続く道を歩いている時のことだった。

 ふいによその生徒とすれ違った。

 

「――」

 

 見識った顔。揺れるツインテール。

 直接会ったことはない。顔は知っている。識っている

 振り返った時にはすでに曲がり角を曲がっていて、姿は見えなくないた。

 

「テオ、どうかなさいました?」

「いや、何でもない。ところでシャシャ、今日は何日だ?」

「えっ? 今日? えっと」

 

 不思議がりながらもシャルロットが答えてくれた今日の日付を聞いて納得した。

 今日はその日だったか。

 これは明日からまた騒がしくなるな。




原作1巻の後半部分が始まりました~!
ちょっとずつ変化していっているのでそこを楽しんでいただければ何よりです!

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