皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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STORY38 覇者のステージ、ゴーレム狂騒曲

「な、何だこれはっ……!」

 

 柄にもなく素で俺は驚愕の声を漏らしてしまう。

 本来ならここでゴーレムⅠは残った左腕に全エネルギーを集めバーストモードで一夏にビームを放つという最後だった。

 しかし、目の前の光景は違う。倒れたゴーレムは残った左腕で近くあった双天月牙を掴むとゆっくりと立ち上がった。

 

そして――。

 

「私の双天月牙が……!」

「喰われてるっ……!?」

 

 オープンチャンネルで一夏と凰の驚く声が聞こえる。

 本来なら存在しないのはずの口が現れ、魔物が餌を捕食するかのように激しい音を轟かせながら双天月牙を喰らいつくした。

 そして、変化はすぐに現れる。

 

「こ、壊れたところが……!」

 

 セシリアが驚愕の声を揚げる。無理もない。

 ブルーティアーズのレーザー攻撃を一斉に浴び、墜落して破損した部分がみるみる修復されていくのだから。

 双天月牙を取り込んで修復素材としたのは明らかだ。原理としては不要な部分を認識、その構成素材を分解して吸収、別の形状へと再構築していくといったものだろう。その光景はまるで装甲が展開していくかのようだった。

 

 変化はそれだけではない。

 

 

『――』

 

 

 気配が変わった。冷たく無機質かつ機械的なものから、自分勝手で楽しさを追い求めるような、それでいて何か壮大な目的がありそうな気配へと。鋼鉄を引き裂いて内側から顔を出してきた得体の知れない生々しい意識。

 アイツだ。誰の意識なのかすぐさま分かった。本人と相まみえたことはないがよく識っている。

 

「うっ!?」

「一夏!」

 

 再起動したゴーレムは左腕を構えると一夏へと迫る。

 それを見たと同時にラファールを展開。更に観客席を飛び出し割れた遮断シールドの間を通って一夏達の元へ向かう。

 突然の出来事。迫り来る危機に対して一夏は咄嗟に防御態勢を取った。凰も一夏を守ろうとする。

 しかし、消耗した二人の守りはあまりに脆い。相手が左腕一本だとしても致命傷になりかねない。

 ここで倒れられては困る。だからこそ――。

 

「――そこまでだ」

 

 左腕をソードで弾き、ゴーレムと一夏の間に割って入った。

 防御は成功した。二人は無事だ。一夏はこちらをぼーっと見惚れているが。

 

「ぁ……」

「一夏、何を惚けている! お前達はよくやった。後は俺に任せて今のうちに凰共々観客席へ避難しろ!」

「あっ、えっ? けど、そしたらテオドールが!」

「俺を誰だと思っている。何、案ずるな。勝つのは俺だ!」

 

 ゴーレムと対峙しながら俺はそう言った。

 とはいっても、一夏がそれで大人しく聞き分けるような奴ではない。

 だが、一夏の隣には凰がいる。

 

「そうは言ってもよぉ!」

「悔しいけどここはこいつに任せるしかないわ。行くわよ、一夏!」

「ちょっ、鈴!?」

 

 凰は状況とタイミングをよく理解している。

 一夏を引っ張って下がってくれた。

 それでもまだ心配性な者達は多い。

 

『わたくし達が加勢しますわ!』

『うん。テオ一人には!』

 

 セシリアとシャルロットが加勢してくれようとする。

 気持ちはありがたい。

 だが。

 

「案ずるな、俺に任せればいい。ここからは俺のステージなのだから!」

 

 啖呵を切りながら俺はゴーレムへと斬りかかった。

 

 修復したとは言え、完全修復したわけじゃない。切り落とされた右腕は以前、地に伏したまま。

 エネルギーシールドを使い、一夏達にダメージを与えていたことを考えるに原動力はやはり、ISコアだろう。

 ISコアを使い半永久的なエネルギーを有していても、そこから消費したエネルギーは当然ある。万全ではない。

なのに。

 

「ッ! やるな!」

 

 左腕一本のみで繰り出す攻防の鉄拳。この威力でこの速度。

 機械特有の正確さはそのままに天性のものを感じさせる狙い所と捌き方。

 一連のフリすら感じさせないほどの圧倒的な天才的な才能。

 間違いなく篠ノ之束だ。

 

「しかし、何故だ」

 

 分からない。

 こんな展開は本来ない。

 

 そもそもゴーレを差し向けたのはおそらく一夏の実力、零落白夜を確かめる為だろう。

 だったら、この展開は俺のことも確かめに来た? その考えは自意識過剰か。こんな手の込んだことをするような奴では……ないとも言いきれない。

 

「――ッ」

 

 悩む俺をあざ笑うような鉄拳による攻防。

 

 考えてもこの展開の意図は分からない。強いて分かることがあるとすれば、今奴は楽しんでいる。それは気配からも明白だ。

 俺が分からないと頭を悩ますのをおもしろがっている。

 

「おもしろい」

 

 向こうが面白がるのなら楽しむまで。

 考えるのは後だ。一夏や零落白夜のデータを取ったようにこちらもお前のデータを取ってやろう。

 

「はあああっ!」

 

 斬撃の乱舞を叩き込む。

 相手の被弾は増えていくが致命傷になりそうなのは俺の太刀筋を見事な見切りで避け、回避できないものは捌いてダメージを減らす。

 近距離、特に剣との間合いが絶妙だ。相変わらずの才能、センスの良さはあるだろうが経験から来るもの。確か篠ノ之の家は剣術道場、そして長い間隣にいた人物である織斑千冬は剣士。剣に慣れ親しんでいるのだろう。

 

「ならば! さぁッ!」

 

 幾度の鍔迫り合いの後弾いてできた間合いと一瞬。

 すかさず両脇から放つ単装砲とレールガン。

 とっさのことでも怯むことなくゴーレムは正確に対処してみせる。

 それでも無傷で回避とはならず、ゴーレムは多くの傷を負った。

 手ごたえこそはあったが決め手にならないことは想定済み。

 

「これで!」

 

 更に畳みかけようとした時だった。

 

「――」

 

 俺は動きを止める。

 目の前では突然、ゴーレムが無防備に崩れ落ちていた。

 その姿はまるで糸の切れた操り人形かのよう。

 

『エネルギー反応確認できず。敵機完全沈黙』

 

 ラファールの知らせが届く。

 俺の方でも探ってみたが気配もしなくなった。

 もう動き出すことはないだろう。楽しいひと時は突然終わってしまった。

 

「本当、自分勝手だな」

 

 見たいシーンを見て一人満足してその後のことにはもう飽きたようなこの感じ。

 それを感じてぼやかずにはいられなかった。




ついに現れた束さん(仮)。強い。
篠ノ之家の体術を使う束さん見たくない? 見たい!

ゴーレムのデザイン、今ではアニメやオーバーラップ版が主流ですがMF版のデザインも捨てがたい今日この頃です。

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