皆に愛され 覇道をゆく天才の物語   作:水戸野幸義

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☆STORY4 白騎士事件を経ても不動の我が覇道

 夢を見た。

 踊るように空を舞い、迫りくるミサイルを斬り伏せる羽根を持った白い騎士の姿を。

 そして、その姿に震え慄く世界の光景を。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ん……」

 

 目が覚めた。

 時刻を確認すれば、朝の六時。

 俺は夢を見ていた。どんな夢だったかははっきりと覚えている。

 白い騎士……白騎士。

 夢だったがあれはただの夢ではない。夢と言う形で未来の出来事を見た予知夢。

 転生特典のニュータイプ能力がそうさせた。言うならば、コロニー落としの光景を見て予言の子となった不死鳥の娘のよう。

 

「クク、クハハっ……そうか……そうか! ついにこの日が!」

 

 内から歓喜が沸き上がる。身体が歓喜に打ち震える。

 ようやくだ。ようやくこの日が来た。

 物心がついてから長く感じた待ちに待ったこの日。ここから世界は大きく動き始める。

 

 日にちとしては今日。

 早ければ、もう始まっているか。

 

「こうしてはおられん!」

 

 飛び起き、まずは携帯端末で現在の世界情勢を確認する。

 一般的な情報網では当たり前の如く確認できない。

 世界でも有数の精度を誇る我が裏の情報網でも確認はできなかった。

 

「くっ……!」

 

 歯がゆさを感じた。

 相手は篠ノ之束だ。携帯端末で調べられる情報程度では尻尾すら掴ませてはくれんか。

 もしかして今日ではないのかと一瞬思ったが、確実に今日だ。このテオドールの勘がそう告げている。

 

「……」

 

 気持ちを落ち着け、部屋のディスプレイでニュース番組を確認する。

 それらしいことは変わらず報道されていない。

 しかし、もうじきだ。もうじき……。

 

「ン……来たか!」

 

 まず初めは裏の情報網に引っかかった。

 

 主要先進国を初めとして世界各国のミサイル2341発が起動、現在日本へと向かっている。

 数分後には世界同時中継という形でライブ中継が始まった。

 海上、その上空でブレード一本でミサイルを次々と的確かつ迅速に斬り伏せていく人の姿。

 

「凄まじいな」

 

 中継を見ながら、そんな感想が自然と出た。

 無駄のない完成された動き。

 装着者が誰なのか。こんな動きができる訳を知っているから納得はできるが、それでもだ。

 それに……。

 

「この中継も奴の仕業か」

 

 タイミングのいい世界同時中継。

 ミサイルを斬り伏せる白騎士の様子をしっかりとらえている映像。

 奴は変に劇場型の性格じみたところがあるからこその仕掛け。

 そして、仕上げ。

 

「高出力の荷電粒子砲」

 

 ブレードが淡い光に包まれたと思えば、入れ替わるように現れた大型荷電粒子砲。

 量子変換。残りのミサイル全てを飲み込む安定した超火力。

 各国が試作機段階の中フランス、我がデュノア社は荷電粒子砲を完成させたが、大型とは言え手持ちサイズにまでは小型化は進んでいない。

 それに白騎士のものは収束速度が尋常ではないほど速い。技術力の差を見せつけられた瞬間だった。

 

 その後の顛末は知っていた通りだ。

 脅威に感じた各国は軍を派遣。

 「可能ならば捕獲、無理ならば破壊」という命令の元、行動がなされたが早々に戦闘に発展。

 専守防衛の奴に各国の戦闘機は遊ばれ、最早引き立て役。無論、戦闘に関わった戦闘機にはデュノア社製の物もあったが結果は一目瞭然。

 躍起になった自称世界のリーダーである某国が極秘裏に開発していた最新鋭戦闘機を投入したが、これも撃墜。それどころかパイロットは救助される始末。

 そして、奴は日没と共に姿を消した。レーダーは勿論、肉眼ですら確認できない完璧なステルス性能まで見せつけたという初デビューにはもってこいの華々しい幕引き。

 世界はその事実を前にどうしようもないほど驚愕し、恐怖し、敗北を受け入れる以外の選択は残されていなかった。

 例え一機でも世界を征服できる圧倒的な力。ましてやそれが相手にしなかったものだったと知れば世界の混乱や動揺は想像を絶するものだった。

 フランス、我がデュノア家も例外ではない。

 

「……」

 

 伯父殿は頭を抱え、父上は絶句。

 母上達は表情を曇らせた。

 世界の崩壊を想像させる出来事に誰もが下を向いた。

 

 しかし、俺は違う。

 

「テオ、笑ってるの?」

 

「ああ。そうだとも。シャシャ、笑ってる。嬉しいんだ。これは好機なのだから。デュノア家の更なる輝かしい未来への栄光を創造し、我が覇道の成長を感じさせてくれるからな!」

 

 起きたことは悔やんでも仕方ない。無駄だ。

 そんな暇じゃない。考え行動する。足元を固めて、次へと、明日へと、未来へと強固な道を築いていく。

 後悔やら懺悔は死んだ後にでもすればいい。

 覇者ならば、己が意思を貫くこと。悲しみ涙を流す者がいるのなら、それを笑顔に変えんがため、男は大志を抱くのだ。

 宿業(みち)重い(険しい)がだからこそ、それを誇りへ変える。俺は必ず我が覇道が世界を拓くと信じている。

 大切な者達の幸福を未来を輝きを───守り抜かんとこの意思貫く限り、俺は無敵だ。来るがいい、我が覇道は不滅だッ!

 

「それにだ、シャシャ。こんな時だからこそ、笑うんだ。人は泣きながら生まれてくる。ゆえに笑って死ぬべきでその為には今も笑っていなければ。何より、世の中笑ってるやつが一番強いからな!」

 

「テオらしいね。だからこそ、心強い。安心できる」

 

「安心するといい! 行くぞ、シャルロット!」

 

「うんっ!」

 

 俺達は進み続ける。栄光のロードを!

 

 

◇◆◇◆

 

 

 白騎士の登場……白騎士事件と呼ばれたあの事件から約一年以上が経った。

 インフィニットストラトス、通称ISは全世界へ瞬く間に広まった。

 勿論、兵器として。あれだけのトンチキパフォーマンスをすれば当然だ。

 兵器として転用、実用化するまでの速度も尋常ではなかった。

 開発者である篠ノ之束がISコアを各国へ分配し、コア周りの技術を開示したのと合わせ、ISの原型スーツの研究開発を各国が進めていたのもこの広まりの速さには関係している。

 ただ、あの戦闘力を見せつけられ、IS同士の戦闘が起こることを危惧した世界は直ちに条約の締結。それに基づく運用を始めている。

 それが戦闘形式の競技なのだから笑ってしまう。あれだけのものを見せられ、手にしたら使わずにはいられない。近々、世界大会という名の代理戦争すら開催される予定だ。

 

 抑止力が核からISとなり、世界はIS中心に動いている。

 どの国でも研究と開発が進められ、何タイプか機体は完成し、実際に稼働している。

 デュノア社でもISの研究と開発は行っており、完成したのがこの機体。

 

「ラファール、順調ですね! 軍からの評判も高いです! 所長!」

 

 今いる研究所所長室へ報告しに来た広報担当は嬉しそうだ。

 

「当然だ。このテオドール・デュノア自らが設計したのだからな」

 

 フランス、デュノア社製第一世代機ラファール。

 お馴染みラファール・リヴァイヴの現行機。

 6歳の誕生日プレゼントとして伯父殿から全権利を貰った技術研究所主体で完成されたフランス初のIS。

 アメリカ、中国、ドイツに次いで4番目の完成となったが、それでも完成度、機体性能は高い。

 それにただラファール・リヴァイヴの現行機として完成させたわけじゃない。転生特典の技術知識や技能を駆使して改良を施している。

 

「高機動用の“エール”パッケージ、近接格闘用の“エペ”パッケージ、遠距離砲撃戦“カノン”パッケージ。どこよりも早くパッケージ機能を実装するとは所長の腕には頭が上がりません。どのパッケージも評判いいですね」

 

 ラファールは第一世代の中で他のどの機種よりも早くパッケージ機能を実装した機体になる。このおかげで開発が四番目になったが、些末なことだ。

 ラファール本体の機体性能、安定性、扱いやすさは勿論、パッケージ機能によって一機で対応できる戦況は増えた。

 言うならば、ラファールはIS版ストライク、ストライカーパック搭載機と言ったところか。

 

「ちなみにどれが人気だ?」

 

「そうですね……エールパッケージになります。後は順に、エペ、カノンとなります」

 

 ここでも一番人気はエールか。

 ラファールの基本形態で機動力を強化するという性質上汎用性が高いのが起因しているのだろう。

 しかしまだ、パッケージ自体整備士による換装作業が必要で自動切換えはまだできない。それにここまで大掛かりな武装の量子変換化は実現していない。

 当面の目標は量子変換化とコアによる詳細な戦況分析を経た量子変換の自動換装といったところだろう。

 

 何より、ISは女にしか使えない。

 俺はまだ8歳。使えるようになるのは約十年後だ。

 だからこそ、もう一つあるものを開発した。

 

「EOS……ラファール・ダガーはどうか」

 

「こちらも評判です。見た目とパワードスーツという性質上、男性軍人からは特に喜ばれています。運用方法も安定してきています」

 

 エクステンデッド・オペレーション・シーカー……通称、EOS。

 国連が開発したパワードスーツ。ラファール・ダガーは国連タイプの流れをくむ機体で、国連タイプの欠点である機体重量、稼働時間などすべてを改善し、パワードスーツとして問題なく運用できるレベルまで昇華した機体。

 開発にあって、アギトに登場するGシリーズやアクティヴレイドに登場するウィルウェアなど多くのパワードスーツを参考にした。

 

 ダガーという機体名。ラファールがIS版ストライク、ストライカーパック搭載機ならこの機体はEOS版ストライクダガー。機体デザインがまさにそうだ。

 モデル機同様ストライカーパックは対応しておらず、EOSということもあってビーム兵器は搭載してない。実弾兵装のみ。

 

「やはり、ラファールと武装とパーツを共有にしたことで整備性が高くなったのとパワードスーツだからこそ直感的、反射的な動きが可能なことが強く支持されている理由ですね」

 

「それを聞くにやはり費用対効果は絶大のようだが高くつくのが課題だな。後は単独飛行能力の向上も急務か」

 

 ラファール・ダガーはまだ単独飛行はできない。

 将来的にはラファールのパッケージを共有し、単独飛行できるようにするのが計画には組み込まれているがもうしばらくかかりそうだ。

 ISと編隊を組むことも視野に入れている為、飛ばないことには編隊が組みにくい。それにEOSは戦闘はもちろんだが救助活動や作業活動を主とする為、空中から行動できた方が汎用性も上がる。

 何より、俺としてもEOSで空を飛びたい。伸びしろは大きいか。

 

「報告ありがとう。下がってくれ」

 

「はい、失礼します」

 

 一礼すると広報担当は退室した。

 

 EOSを原典よりも強化はしたが、ISの前ではやはり既存の兵器と変わりない。

 所詮は応急処置。

 ISに携われば携わるほどISのとんでもっぷりを身をもって知る今日この頃。読者として見ていた頃(前世で見ていた頃)とは感じ方も違ってくる。

 こちらから篠ノ之束に関わるようなマネはしない。触らぬ神に祟りなしだ。

 それでもISが誕生した以上、利用できるものはとことん利用してやる。その結果、篠ノ之束が来るというのなら……来るがいい、兎女――貴様の覇道、我が覇道で飲みこんでくれる!




機体名:ラファール
【武装】
アサルトライフル×1
対装甲コンバットナイフ×2
シールド×1
【機体解説】
フランス、デュノア社製第一世代機。
第一世代からパッケージによる装備換装を可能としている。
この物語でモデルとなったストライクガンダムのIS版。

装備名:エール
【武装】
マシンガン×2
プラズマソード×2
【装備解説】
4枚の多方向加速推進翼持つ高機動戦闘用パッケージ。
モデルとなったストライカーパックで言うところのエールストライカー。

装備名:エペ
【武装】
重斬刀×2
シールド内蔵ロケットアンカー
【装備解説】
近接格闘戦用に開発されたパッケージ。
背中に二振りの重斬刀。両腕にシールド内蔵ロケットアンカーを一つずつ装備した姿。
モデルとなったストライカーパックで言うところのソードストライカー

装備名:カノン
【武装】
単装砲×1
コンボウェポンポッド内蔵バルカン砲・2連装ガンランチャー×1
【装備解説】
遠距離の砲撃戦に特化したパッケージ。
背中に身の丈ほど単装砲を一丁。
バルカン砲と2連装ガンランチャーを内蔵したコンボウェポンポッドを右肩部に装備した姿。
モデルとなったストライカーパックで言うところのランチャーストライカー
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