紫様によって連れて来られたのは「マヨヒガ」だった。そこにいたのは、妖怪の賢者八雲紫の式神であり、九尾の狐である八雲藍様。そして紫様の口から明かされたのは、藍様は私の祖先だと言う驚愕の事実、二人は開いた口が塞がらなかった。そんな中紫様の提案で、マヨヒガの中で詳しい話を聞くことになり、私達はマヨヒガに入っていった。
「藍、喉が渇いたからお茶を淹れてちょうだい」
「了解致しました。では暫しお時間をいただきます」
紫様からの指示を受けた藍様は、炊事場があるであろう場所に向かっていった。そして紫様の案内により、居間に到着した私は驚いた。部屋には蝋燭や提灯がなく、部屋の隅には四角い赤い箱のようなものなど、私の住む時代に無いものがいくつもあった。果たしてこれらは一体なんなのか?私は頭を傾げつつも座布団に座った。
「この部屋は、見れば見るほど不思議な空間ですね」
私は率直にふとした疑問を聞いてみた。
「ここはマヨヒガ、私達が住処にしている場所。故に強い妖気が発せられているから、普通の人間や、並の妖怪が立ち寄る場所ではないの」
「マヨヒガ。改めて聞くと不思議な名前ですが、そもそもなんでマヨヒガと言うんですか?」
「それはね・・・」
紫様は淡々と語り始めた。「マヨヒガ」それは迷い家とも言われるらしく、古くから日本の東北地方に位置する青森の遠野から伝承されており、山中のどこかにある幻の家のことを指しているらしい。そのマヨヒガを訪れた者はとてつもない幸福や富などの恩恵を受け、しかも家に置いてある物品は、持ち帰る事が出来る。しかし、訪れたら必ずしも恩恵が受けられる訳ではない。紫様曰く、一度訪れた者が物欲に溢れる者を連れ訪れた場合、恩恵は一つも受けられないとのこと。ちなみに今現在ではもう実在しないらしい。
「とまぁこんなところかしらね、今は私と藍、あと今は居ないけど橙の三人で暮らしてるわ」
「へぇ~そうなんですね。ちなみになんですが紫様、橙とは一体誰なんですか?もしかして藍様と同じ九尾なんですか?」
「九尾ではないけれど、立場的には藍の式神かしらね。ただ式神としてはまだまだ未熟だけどね」
藍様の式神、紫様は未熟と言っていたが、妖怪としては強い力を持っているに違いない。そんな妄想を膨らませていると、炊事場の方から一つ足音が近づいてくる、きっと藍様がお茶を運びに向かっているのだろう。そして足音は、私と紫様のいる居間の襖の前で止まり、ゆっくりとそして丁寧に襖を開けた。藍様の手元を見ると、お茶の淹れられた湯呑みを三つ乗せたお盆をバランスよく持っていた。湯呑みよく見ると、薄っすらと湯気が立っていた。藍様は慣れた手つきで紫様、私の目の前に置いていった。湯気の立つお茶が気になり覗き込むと、それは澄み切った綺麗な緑をしたなんとも立派な緑茶だった。それに加えて、まるで快晴の下、茶畑で茶摘みをしているのではないかと感じる上品な香りが私の鼻を刺激した。
「ふふっ、どうしたんだ藍華、そんなにニヤけた顔をして」
「あっいや、この緑茶がとても美味しくて、私のいた世界では無かったので」
藍華の世界では、お茶と言えば、抹茶が主流であったため、緑茶はあまり飲まれてはいなかったのだ。そのため緑茶の旨味や香りを深く堪能していた。するといきなり女の子の声が、突然聞こえてきた。
「らんしゃまぁぁぁぁぁ!ゆかりしゃまぁぁぁぁぁぁ!」
高い声で呼んでいるのは、紫様と藍様のようだ。その声は、軽快な足音と共にどんどんと近づいてくる。そして、私たちのいる居間の前で止まった。襖が勢いよく開かれ、また赤い物体が素早く移動した、まるで忍者のように。赤い物体の正体はすぐに分かった。藍様の膝で気持ちよさそうに膝枕を堪能していたのだ。その表情は、極楽に満ちているているようだった。
「こらっ、橙!今日はお客様が来るから控えるようにと言っただろ」
「ご、ごめんなさいらんしゃま」
「分かればいいんだ。でも可愛いから許す」
「らんしゃまぁぁぁぁぁ」
「ちぇぇぇぇぇぇぇぇん」
なんか藍様って、親バカみたいな一面があるんだなー。初めて見たときは、目はキリっとしたツリ目、口元はプリッとしていて髪も整っていた。あと何といっても、豊満な胸。つまり、しっかりとした大人の女性だ。
「藍?貴方こそ控えなさい」
「はっ、すいません」
「ごめんなさいね藍華さん」
「私は大丈夫ですよ」
紫様は呆れた顔をして私に謝った。紫様の顔を見る限りどうやらこれは、日常茶飯事と悟った。でもこれで藍様の意外な一面が見れて、ある意味ラッキーだったのかも。
「あっ藍華、紹介が遅れてしまったな。ほら橙、挨拶しなさい。」
「はい、藍華さん初めまして、私はらんしゃまの式神のちぇんです。よろしくお願いします」
「よろしくね、橙ちゃん」
その後紫様から、橙ちゃんは「猫又」つまり双尾の化け猫の妖怪とのこと。式神としては実力不足とは聞いていたが、確かに妖力では私よりも低く、助けてもらったルーミアと互角かそれ以下である。だがスペルカードや弾幕などの腕前は果たしてどんなものなのか?
「藍華さん。その様子だと、もしかして橙と手合わせしたいの?」
「な、何故分かったんですか?」
「そりゃあ顔に出てたからよ、橙ちゃんの弾幕ごっこの腕前は、どんな感じなんだろうかなって」
まさか私ってそんなに顔に出やすいのか?それとも心を読んだのか?本当に紫様は、どんな力を秘めているのか分からない。
「次は私の力について考えてるわね?いいわ教えてあげる」
もう一体何なんだよ、なんか怖くなってきたな。
「私の能力は境界を操る程度の能力。生物や空間などあらゆる境界を操れるの」
紫様に続けて、藍様も自身の能力について、話し始めた。
「私は式神を操る程度の能力。名前の通り、橙を意のままに操れることが出来る」
「わたしは妖術を扱う程度の能力です~」
紫様が境界で、藍様が橙ちゃんを操る、橙ちゃんが妖術を使うか。私と言えば、妖術は使えるがどちらかと言えば、武力や肉体派。妖狐族の中で極めて妖力が低いのではないだろうか。だが、実践を交えてみなければ分からない。
「どうする?やるかしら?」
「分かりました。私でよければ相手をしましょう」
私はこんなチャンスはないと思い、すぐさま頷き了承した。
「ならすぐさまやりましょうか。藍と橙、庭に出て準備しなさい。始めるわよ、弾幕ごっこを」
「はい、紫様」
紫様の言葉に、藍様と橙ちゃんはすぐに庭に向かった。私も準備をするために、精神を集中させてから望むことにした。
第4話を読んでいただきありがとうございました。今回は八雲のやべー奴らを書きました。次回に八雲家の実力が明らかになります。短いですが次回の弾幕ごっこは、迫力が出るように頑張りますのでよろしくお願いします。