「スバル君」
星河スバルは、現在ベッドで就寝中である。しかし、聞こえてくる優しい声色に若干意識が覚醒する。
だが、眠い。非常に眠い。今日はミソラと出掛ける予定だが、時間はまだあったはずだ。外出時間は確か午前の10時頃。カーテンから僅かに差し込む日の光の加減具合では、まだ6時か7時くらいだろう。
「スバルくーん」
そこまで考えて、声の主の呼び掛けに応える前に眠気が勝ってしまい、再び瞼を閉じる。今日はミソラに振り回されるに違いない。体力を温存しなければ。
そう考えて、ベッドに身を委ねる。体を暖かく包み込んでくれるシーツのおかげですぐさま眠気が舞い降りーー
「おっきろー!!」
……響ミソラの大きな声とシーツを勢いよく剥がされ、星河スバルは再び覚醒する。
現在は夏とはいえ、シーツを剥がされて機嫌を悪くしない人間はまずいないだろう。頭の覚醒もそこそこに、笑顔でシーツをぶんどったミソラへと半目の状態で見る。
「……おはよう、ミソラちゃん」
「うん、おはよースバル君! なんだかこういうのって新鮮で良いよね!」
「……ところで、今何時?」
「6時!」
元気良く答えるミソラに、スバルは半目を二、三度瞬きする。いそいそとベッドから起き上がるスバルににこやかな笑顔を向けているミソラだが、そんな笑顔を無視してシーツを取り返し、そのままベッドにダイブ。全身をシーツで纏い、芋虫のごとく寝転がった。
「えぇー?! 起きてよぉ〜!」
「まだ早いでしょ……せめて8時まで寝かせてよー……」
「うぅ……スバル君って意外と薄情者だったんだね……」
《あら、ミソラが泣いちゃったわよ》
《あ〜あ。女泣かすと地球じゃ捕まっちまうんじゃなかったか?》
「あれ、僕がおかしいの?! あとロック、その台詞去年も言ったよね?!」
顔だけ出してツッコミを入れるが、やはり嘘泣きらしく涙は一滴も流れていなかった。やはりそこはアイドル。演技力がある。
ミソラは嘘泣きを止めるが、その表情は申し訳なさそうにしていた。
「でもごめんね? なんか寝付けなくて……」
「? 体調でも悪いの?」
「あぁ、ううん。そうじゃなくて、ね……」
ミソラは言いにくそうに頬を指でなぞっていた。スバルは体を半分だけ起こし、首を傾げる。
「きょ、今日のお出かけが楽しみで、ワクワクしてて、それで……中々寝れなかったというか……」
頬を赤らめ恥じらう姿にスバルの眠気はほとんど無くなり、逆にこちらも恥ずかしくなってしまう。
少しの間、無言状態が続く。なんとか助け舟をとハンターVGから出ているはずのウォーロックへと視線を向けるが、何故かハープがウォーロックの口を自身の弦で覆い尽くし、喋れないようにしていた。今度はハープへと視線を向けるが、その視線が合った瞬間意味深なウインクを向けられ、スバルは苦笑する。
「……やっぱりまだ早いよね! スバル君、もう少し寝てても良いよ!」
「えっ……でももう眠くなくなっちゃったよ」
「それじゃあ、私が子守唄でも歌ってあげる!」
「そんな、悪いよ」
「良いから! はい、寝て寝て!」
ミソラはスバルの肩を押し、寝かせる。そのままベッドの縁に腰掛け、楽しげに微笑んだ。
「久しぶりのお出かけだから、色んなところに行きたいの。だからスバル君には元気でいてもらわないと!」
「そういうミソラちゃんこそ寝た方が良いんじゃない?」
「私はお仕事で慣れてるから、大丈夫!」
アイドルという稼業をしていれば、早起きはもちろん徹夜という作業もこなしているのだろう。だからこそミソラには休んでいてほしいのだが、そんな考えも虚しくミソラは歌い始めた。
「♪〜♪♪〜」
心地よい歌声が部屋全体を包み込む。幼少の頃より母親から聞かされていた子守唄をこの年になってまた聞くことになるとは思わなかった。しかもアイドルの歌声で。
しかし効果はすぐに現れた。横になっているおかげでもあるのか、薄くなっていた眠気が押し寄せてくる。瞼はほとんど閉じかけ意識が微睡みの中に消えていくなか、スバルは一つ決心する。
ーー今日はミソラちゃんを目一杯楽しませよう。
そんな決意と共に、スバルの意識は微睡みの中へと沈んでいった。
ーーーー
「それじゃあ母さん。行ってくるね」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。気をつけるのよ」
スバルとミソラは元気良く家を出る。
二度寝を決めてしまったスバルだが、8時頃に再びミソラが起こしてくれたおかげで、体は通常以上に元気だ。ミソラもやはり楽しみにしていたのか、鼻歌混じりで歩いている。
「それにしても、やっぱりあかねさんってすごいね! 一晩でこんな良い服用意してくれるなんて!」
言いつつ体をクルリと回転させ、あかねが用意してくれた服にご機嫌なミソラだった。
今は夏ということで、白のTシャツに黒のノースリーブを羽織っており、下は茶色のショートズボン。一応顔バレしないように度のない眼鏡をし、ポニーテールで髪を束ね、更に青の帽子を被っている。急ごしらえであったにも関わらず、それを着こなすミソラにスバルは関心していた。
「流石はアイドルだよね。見事に着こなしてるよ」
「ありがと! これならバレないよね」
《メガネと帽子取れたらアウトだな》
《ポロロン……気を付ければ大丈夫よ》
ウォーロックとハープがハンターVGから現れる。二人の言うことも最もでもあるので、あまり走り回って事故らないようにしておきたいものだ。
《さて、私達はお邪魔だろうから、ここで一回お別れしましょうか》
《あぁ? ハンターVGの中にいりゃ良いだろうが。そんなにどっか行きてぇなら一人で行ってこモガァ!!》
ウォーロックの反論も虚しく、ハープの弦により口ごと体を巻き付かれ、喋ることも動くこともできなくなってしまった。ジタバタともがき苦しんでいるが、ハープはそんなウォーロックを気にもせず手を振りながらウォーロックと共に空へと消えていった。
しばし二人は口をポカンと開けて空を見上げていたが、ちょうどウェーブライナーがやってきたところで正気に戻る。
「あ、いこっか……」
「うん……ロック、大丈夫かな?」
「頑丈だから大丈夫だよ」
そういうことではなく、今からハープに振り回されるウォーロックを想像して少し同情してしまったという意味だったのだが、ミソラに引っ張られウェーブライナーに乗り込む。
それなりに混んではいたが、ちょうど窓際の席が空いていたため、二人はそこに座る。
「そういえば、どこに行くの?」
「久しぶりにヤシブタウンに行こうかなーって思ってるんだけど、良いかな?」
ミソラの提案に軽く頷くスバルだが、同時に今とんでもない状況なのではないかと気付く。
隣にはあのトップアイドルの響ミソラが座っている。今現在はただの友人として接しようと思ってはいるのだが、スバルも年頃の男の子だ。ルックスも可愛い彼女が隣にいるだけで、少しだけ気恥ずかしさを覚えてしまう。それにほんのりと良い香りがしてきて気が気ではない。
顔を赤らめ思わず俯いてしまうが、ミソラは窓の景色を楽しんでいた。
「こうやって二人で出掛けるの、久しぶりだねー」
「そ、そうだね。最後に行ったのって去年のロッポンドーヒルズだっけ?」
「そうそう! ムーの遺産の展示会に行った時に事件起こって、スバル君がかっこ良く解決したよねー」
「そんな、カッコよくないよ。あの後みんなを守れなかったし、ミソラちゃんなんて……」
「それは言いっこなしだよ。あれは私が自分で決めた事だし、すぐにスバル君が助けに来てくれたもん。あの時、本当はすっごく嬉しかったんだから」
ミソラは満面の笑顔をスバルに向ける。純粋な笑顔だということがすぐに理解するが、逆に恥ずかしくなってしまいスバルはそっぽを向く。
「で、でもミソラちゃん。もうあんな無茶な事はしちゃダメだよ」
「大丈夫! もうしないから。スバル君達が悲しむのも、もう嫌だしね……」
「ミソラちゃん……」
少しだけ影が射したように表情を曇らせ、顔を俯いてしまったミソラにスバルは少しだけ罪悪感を感じていた。
かつてはミソラが裏切ってしまったとスバルが思い込み、落ち込んでいたところをルナが一喝してくれ、もう一度ミソラを信じると決めたあの頃は未だに鮮明に覚えている。もう一度会いに行った時、ミソラの表情を見て確信したのだ。彼女は無理をしていると。だからこそ、救ってあげなくては。彼女は笑顔の方が似合うのだから、と思ったのだ。
今もそうだ。ミソラに元気が無いところを見るのは気が気でない。だから、彼女の方へとやんわりとした笑顔を向ける。
「ミソラちゃん。僕は絶対にみんなを守る。だから、そんなに落ち込まないで。君は笑顔の方が似合うから……」
「……スバル君……ありがとう!」
ミソラに笑顔が戻り、スバルはホッとする。やはり彼女には笑顔がとても良く似合う。
『次は、ヤシブタウン〜ヤシブタウン〜……』
「あ、もうそろそろ着くね」
「え、もう? まだ掛かると思ったんだけど……」
「ウェーブライナーが普及してからは移動が早くなったんだよ! さ、降りよ!」
確かに、ウェーブライナーが実装される前はただのバスで移動していた。そのバスと比べ、ウェーブライナーはリアルウェーブを使った線路で走るため、道の感覚も狭まっているのだろう。
スバルとミソラはハンターVGでポップアップを操作しつつウェーブライナーから降りる。一年前とほぼ変わらない街並みだが、スバルはビジライザーを掛けてもう一度辺りを見回す。
「うわ、色んなところにリアルウェーブが使われてる」
「そうなの? 変わってないようで変わってるんだねー」
「そうだね……あ。あの回ってるモワイ像はいつも通りだ」
「去年も回ってたよねー……いつから回ってるんだろ」
「中にいたデンパ君が言ってたんだけど、もう200年もずっと回ってるらしいよ」
「うわぁ……想像できない……あ、スバル君スバル君!」
他愛もない話で少しだけ盛り上がったところで、ミソラが興奮気味にある場所を指差す。スバルはビジライザーを上げてその指の先を見て、若干後悔した。
「まずはあそこのパフェの屋台に行こう! あそこにある新作、ニュースでも話題になっててちょっと気になってたんだー!」
ミソラが目を輝かせながら言うが、スバルは忘れてはいない。去年、ロッポンドーヒルズでミソラと食べたあのフジヤマクリームパフェの事を。
名に恥じぬほどの巨大なパフェが現れ、食べても食べても無くならないクリームの山は、思い出すだけで胃にズドンと鉄球のような重さがのし掛かった。ような気がする。
しかし、あんな凄まじいパフェを売っているのはロッポンドーヒルズだけだろう。そう思い込み、ルンルン気分でパフェの屋台に近づくミソラの後に重い足取りで駆け寄る。
「あったあった! これ食べよー……スバル君は?」
「ぼ、僕は遠慮するよ……もうお昼近いし、今食べたら昼食食べれないんじゃない?」
「何言ってるの? ご飯とデザートは別腹だよ!」
違うそうじゃない、というツッコミを入れたかったが、それはミソラにとっては野暮な答えだと理解しているのであえて口には出さない。
しかし、フジヤマクリームパフェを超えるパフェなどそうそう無いだろうと考え、ハンターVGを出してヤシブタウンのどこが変わったのかを確認し、
「すいませーん! ブルーマウンテンモワイ仕立てのドッカンパフェ一つ下さーい!」
「大丈夫だよね、ミソラちゃん?! 本当に一人で食べれるんだよね?! なんか店員さんがドンブリみたいな物を両手で持ち上げながら準備してるんだけど、大丈夫なんだよね?!」
ーーーー
「いっただっきまーす!」
「あ、うん……」
スバルの元気の無い声にミソラは首を傾げる。近くの席に座り、やってきた話題のパフェが目の前にあるというのにどうしたというのだろうか。
そのパフェは成人男性の顔の1.5倍は大きい。ブルーマウンテンの名の通り、ブルーハワイがクリームと一緒に混ざり合い、切り分けられたミカンや桃、メロンが色鮮やかに輝いている。天辺にはバニラが小さく乗っており、チョコソースでモワイの顔を作っている。パーフェクト。正に完璧なパフェだ。唯一の欠点と言えば、少しばかり大きくてテーブルの面積の半分程を占めているくらいか。
早速スプーンで一つ掬い、口に運ぶ。当然ながら、甘い味わいが口いっぱいに広がり、思わず感動で手の平を頬に添える。
「おいしーい!」
「よ、良かったね……」
「スバル君も食べればよかったのに」
「これ食べようとしたら、多分半分も食べれないよ……」
「えー? スバル君は小食だなー」
「いや、小食っていう問題じゃない気が……ってもう半分も食べ終わってる?!」
当たり前の事実にスバルは驚愕していた。時間を取らせる訳にもいかないという理由もあるが、これだけ素晴らしいパフェが目の前にあるのだ。食べないというのは失礼極まりない。
「ミソラちゃんの胃袋の底が知れない……」
「何か言った?」
「何にも言ってないです……」
「うーん、それにしてもこれを食べないなんてスバル君も損してるなぁ……あ、そうだ!」
名案とばかりに両手を叩くが、実はここまで計算の内だ。何故スバルがパフェを注文しなかったのかは謎だが、それも踏まえた上での作戦決行である。
スバルはどちらかというと内気な性格だ。ルナのように厳しくも引っ張っていくような人物とは相性が良いはず。しかし、ルナ自体も中々に奥手であるため、積極的に攻めることは出来ない。
だが、響ミソラだけは違う。スバルが内気な性格ならばこちらからガンガン攻めていくのが妥当だ。だからこそ、今から大胆な行動に出る。
ミソラはクリームを掬い、スバルに向けた。
「はい、あーん」
「…………………………え?」
スバルは差し出されたクリームの乗ったスプーンとミソラの満面な笑顔を交互に見てから、顔を赤く染め、慌て始める。
「ちょ、ミソラちゃん?! 何してるの?!」
「えっ? こんなに美味しいパフェだからスバル君にも味わってもらおうと思って」
「いやいやいや! そんな、恥ずかしくて出来ないよ?!」
「……食べないの?」
「うっ……」
ミソラは少しだけ困り顔で、涙目になりながらスバルを見つめる。流石に罪悪感を感じたのか、言葉に詰まる。
しかし、ここまではミソラの想定通りだ。ドラマ等で数々の演技をこなしてきた彼女にとって、これくらいの演技など造作もない。押しに弱いスバルのことだ。これで乗ってくれるだろうと確信する。
スバルはキョロキョロと周囲を見渡す。人がいないか確認しているようだ。夏休みということもあって子供連れやカップル等人はそこそこいるが、幸いか不幸か、スバル達の周囲には殆ど人がいない。
意を決したのか、改めてスバルはスプーンを見つめる。軽く深呼吸をして、まだ赤い頬を両手で軽く叩いた後、口を開ける。
「あ、あーん……」
「ふふ、よろしい」
ミソラはスバルの口の中にスプーンを優しく入れ、すぐに抜く。
スバルは顔を赤く染めながらも口の中でクリームを味わおうとしているようだが、そんな余裕もなさそうだ。顔を下に向け、表情を誤魔化そうとしているようだが、全くの無意味だ。そんなスバルを少しだけ可愛いと思ってしまう。
「美味しいでしょ?」
「う、うん……あの、ミソラちゃん?」
「んー?」
スバルが質問すると同時に、ミソラはパフェを一つ口に運ぶ。
「は、恥ずかしくないの……?」
「少しだけ恥ずかしいけど、こういう美味しい物はみんなで分かち合いたいの!」
「そ、そっか……」
スバルは再び言葉を詰まらせ、パフェを食べるミソラをただ眺めていた。しかし、ミソラには全てお見通しである。
おそらくスバルが意識してしまっている要因がもう一つある。今スバルの口に運んだのはミソラが使っていたスプーンでもあるのだ。
つまり、間接キス。
お互いに年頃の年齢だ。意識しない方が不思議だろう。ただ、これ以上からかうとそろそろスバルが気絶しかねない。今にも頭から湯気を出し、倒れるんじゃないかと思うくらいだ。
名残惜しいが、他にも行きたいところは山ほどある。ミソラはスプーンを置き、席を立つ。
「さて、それじゃあ今度はデパート行こう!」
「あ、うん……うん?! あれ、もう食べ終わってる?!」
空になったパフェのグラスを見て驚愕するスバルだが、何らおかしいところはないだろう。ミソラはスバルを立たせるため、手を取る。
「ほーら、早くしないと夕方なんてあっという間だよ!」
「わ、わかったよ……」
スバルも立ち上がり、いざヤシブデパートへと向かうーー前に、もう一つだけやりたい事がある。
スバルが前へと進んだ瞬間に、ミソラは彼の腕へと抱きついた。
「ちょ、ミソラちゃん?!」
「夏休みだから人も多いよ。はぐれないように、ね?」
「で、でも、人目もあるのにこれは……」
「……ダメ?」
再び困り顔でスバルを見る。今度は上目遣いも含めて。
流石に演技だとバレるだろうかと懸念していたが、今のスバルにはそれを見通す余裕は無いようだ。彼は観念したかのように溜め息を少しだけ吐き、頷く。
「い、いいよ……」
「よし! それじゃあ、改めてしゅっぱーつ!」
ミソラの元気な掛け声に、スバルは困ったように微笑んだ。
ーーーー
「ふー、流石に疲れたねー」
「本当だね……ミソラちゃん、すっごく元気だったし」
「久しぶりにお買い物出来たんだもん。少しはストレス発散しないと!」
買い物するだけでストレス発散できるのだろうかというツッコミを入れたかったが、野暮だと思ったので心の中で留めておく。
今二人は丁度コダマタウンに帰ってきたところだ。スバルの片手には、ミソラ用に買った服が入った袋を持っている。持ってきている服だけでは何かと不便だと思ったからだ。
「今日はミソラちゃんに振り回されっぱなしだったよ……」
「スバル君は体力無さすぎだよー。電波変換以外でも運動とかしてる?」
「あははは……」
返す言葉が見つからないので笑って誤魔化す。
だが、ミソラに振り回されたと言っても、今日みたいに誰かと買い物をするのは久しぶりだったし、何より楽しめたので文句はない。
横断歩道を渡り、スバルの家がそろそろ見えてくる。
《ポロロン……帰ってきたわね、ミソラ。スバル君》
「あ、ハープ! ただいま!」
「……あれ? ロックは?」
《あそこよ》
ミソラの相棒であるハープが先に出迎えてくれたが、肝心の無理矢理連れ去られたウォーロックの姿が見えない。
ハープがある居場所へと手を向け、スバルはその方角を見て唖然としていた。
ウォーロックはいた。その存在に気付かなかっただけで確かにいた。空中で、いつも体から出ている青白い電波が真っ白になっているという謎の状態のまま。
「ろ、ロックー?!」
「は、ハープ?! ロック君に何したの?!」
《あら、人聞きの悪いこと言わないで頂戴。貴方達と同じでデートしてたのよ、デート》
「で、デート……?!」
《なぁにがデートだごらぁああ!!」
デートという言葉に過剰反応してしまうスバルだが、同時にウォーロックが咆哮し、いつもの青白い電波へと戻る。
《ウェーブロード使ってシーサーアイランドまで無理矢理連れて行かれた挙句、あっちこっち連れ回してくれたのはどこのどいつだ、あぁ?!》
「し、シーサーアイランドまで行ってきたの?!」
《下品な言葉使うんじゃないの。良いじゃない。最近暇だったんでしょ?」
《おいスバル……俺はもう二度とこいつと一緒になるのはゴメンだからな。わかったな?!》
「はいはい……ご苦労様、ロック」
鼻息を荒くしながらウォーロックはハンターVGへと戻る。その様子に呆れながらもハープもミソラのハンターVGへと戻っていった。
「……ロック君も大変だね」
「そうだね……」
「ふふふ……さ、帰ろう?」
ミソラはスバルの手を取り、家へと向かって走る。もう手を繋げるのは慣れてしまった。それが良いことなのかどうかはさておきだが。
明日もまたミソラに振り回されるだろうなと考え、ふと笑ってしまう。いつもと少し違う夏休みだが、こんな状況も悪くないと思ってしまう。だいぶミソラに感化された影響だろうか。
「「ただいまー!」」
明日も良い日でありますように。スバルはそう願いつつ、二人は無事に家にたどり着いたのだった。