オレンジ色の空。世界を照らす光が地平に沈む黄昏の時、光の時が終わり闇の時が来る。普通に言えばカラスがアホーと鳴く夕暮れ時だ。
町の大通り。
駅近くのどこにでもある大通り。
歩いているのは学生服を着た高校生、ビジネススーツの会社員、主婦や老人もいる。今が買い物や帰宅の時間帯なのか多くの人が大通りを歩いている。しかし…なんだ…歩く人々が可笑しい。肉体の一部が異様、極端になると顔が猫であったり爬虫類であったり明らかに人でない。それは百鬼夜行の光景か?
と、そんな風に異様だと思うのは過去の感性を持っていればだ。日常的な普通の光景、今の時代では彼等は極々普通に居る様なただの一般人だ。
今の世の中、殆どの人が“個性”持ち。人々が超人や怪人になっていると考えれば良いだろう。
個性の影響で様々な容姿となる事がある。人とほぼ同じ場合もあるが、それこそ一昔前なら怪物や化物と呼べる容姿である者たちもいる。それでも今の世の中では一般的な人々なのだ。完全に人の姿をしてない事も多々ある世の中、容姿で騒がれることは先ず無い!
いや、普通なら無いのだ…
「「「「!!!」」」」
ある"御方"が現れると大通りに居た人々は誰もがその方に反応した。
その御方は…身分的には一般的な中学生"なので御方でなく『彼』と呼ぶ方が常識的か。しかし彼と気軽に呼ぼうなどと思える人が居るだろうか?少なくともここには居ないと断言しよう。
先程も語ったが過去の人間が見れば大通りの様相は百鬼夜行、姿が人類とかけ離れた姿に変わることですら常識の範疇である世の中だが、中には個性社会でも恐れられる姿になることもある。ホラーだったりグロテスクな怪物の様な容姿などだ。
別にその御方、いや此処は彼としよう。『彼』がグロテスクであったりと格段外見が恐ろしいと言う訳じゃない。
長身であり筋肉で覆われ鈍さや弱さを欠片も感じさせない強靭そうな肉体。三つの眼から放たれる鋭い眼光は並々なら無い知性と威厳を感じさせる。そして彼の頭の両サイドに生えた二本の立派な角は見るものに王者の冠と思わせる。それが『彼』の姿だ。
外見で言えば個性を発現する前の旧来の人との違いは、額の三番目の目と頭部から生えた二本の角ぐらい。旧来の人とは違うが差異は少ない。怪人や怪獣でも人の姿でありえる今の世では埋没する範疇の姿といっていい。『彼』より人から外れた形で外見が目だったり恐ろしい個性の持ち主は数えきれないほど多くいる。それこそこの場だけでも彼より姿だけなら怖いと思える外見の人間は何人もいる。それなのに『彼』は明らかにこの場の注目を集めていた。
「……」
彼は無言で歩いてるだけで何かをしてる訳じゃない。服装もラフなモノで極々一般的なモノであり奇抜と言う訳でもない。彼はただただ普通の人と同じ様に、普通の姿勢で普通の歩幅で普通の速さで歩いているだけ。姿も常識の範疇、行動も他と同じ。なら『彼』は普通なのかと言われれば
否だ!
普通であるとは断じて!
断じて言えないだろう!!
いや外見の特徴のみを言葉で伝えようとすれば普通。しかし言葉では伝えきれない非凡さがある。
それでも言葉にすれば………発する気や熱、殺気や威圧感等と言った目に見えないモノ、何らかの力、第六感や本能に伝わる『彼』から感じる目に見えない無形の大きな力。
恐竜の様な抗うことすらも出来ない超肉食動物を前にした様な弱者の恐怖、国民を熱狂され戦争を引き起こす独裁者が持つ怪しいカリスマ、遥か雲の上の相手を前にするような存在感。
原始的な生存本能から来る恐怖心、
従いたいと思わせられる不思議な魅力。
そして生き物として格上と思わされる存在感。
陳腐なモノだがあえて言葉にすれば、これらを合わせて極限まで濃厚にしたモノが彼から感じるものだろう。
大通りで道、『彼』の歩む先の人は老いも若きも不良だろうと道の脇によっていた。そうした後には『彼』が通りすぎるまで畏れ多いとばかりに眼を伏せ動かそうとしない。まるでかつての大名行列に出くわした庶民。臣従する家臣の様だと言っても良いだろう。
『彼』が通り過ぎてから安堵の息を吐く人。感情が溢れむせび泣く人、腰を抜かし立てなくなった人。熱を出した様にトロリとした目で彼を見送る人もいた。恐怖、狂気、歓喜、崇拝、信仰、彼等が思っているモノが何にしても並々ならぬ想いを持ったのは事実だろう。
『彼』は何処に行くのだろう。
『彼』ほどの人が何処に向かっているのか。
誰も何処なのか判らないが、少なくとも共通して行く先に平和なモノは想像できてはいないだろう。
もし『彼』が例えばの話だ。気紛れや少し機嫌を損ねたという理由でヒーロー、またはヴィランはたまた国を殲滅に行くつもりだと言われれば、少しは驚くだろうが素直に納得する筈だ。
『彼』が行く先にあるのは戦場ではある。他者を出し抜きその手で獲物を刈り取る。弱肉強食、勝ち取ったモノこそ正義、誰もが目を野獣の様に輝かせている。戦地になる間近だ。
『彼』は戦地である建物に入った。その建物の中、人が殺気だっている。まるで飢えた虎狼の様な表情を浮かべている。ゴングが鳴るのを今か今かと虎視眈々と待っていた。
時は五時半
遂にゴングが鳴った
「五時半となりました。ただいまよりタイムセールを始めます!!」
『彼』が戦場にて目的を果たし家に帰る頃には日は暮れていた。彼の家は町の中心から離れた場所にある。木で奥が見えない不気味な森のような大きな庭を進むと、明らかに庶民の家でない西洋の貴族が暮らすような時代を感じさせる大きな邸宅があった。
『彼』が玄関を開けると家の奥から女性が出てきた。漆黒のドレスの様な服を着た美しい女性。顔は能面の様に白い。美しすぎて不気味だ。その美貌は妖艷や傾国などの極致と言える人外染みた美しさ。容姿だけで人の人生を狂わせてきたと言われると疑問の1つもなく納得するだろう。
「オカエリナサイ」
美しい女性の声は人の背筋をゾクリとさせるモノがある。彼とは違った方向のカリスマ、不気味なカリスマを感じられた。
彼女の名は田中敦子、彼の母親である専業主婦。夫一筋の良妻賢母であられる。妻となる前は気弱な文学少女だった…と本人は思っている。
『彼』は母親の頼みで戦地に行ってきた。
『彼』はどの様な激戦を潜り抜けてきたのか服には切り跡、焼け焦げた跡がある。手には先程まで無かった袋がある。彼の身体は無傷なのに袋からはドロリとした赤いモノが滴っている。彼は赤く滴るモノが漏れでている袋を彼女に渡す。その中身を見て笑う彼女、フフフフ……と笑い、そしてこう言った。
「ケチャップがツブレテル」
『彼』のおつかいは失敗という結末を迎えた。
帰宅から数時間、食事の時間となり彼は料理をする母親から父を起こすように言われる。母の言葉に彼は頷くと彼は何故か家を出て家の裏手に向かう。そこには洞窟の入り口がある。不気味な巨大な生き物の様な入り口、洞窟は奥深く地下深くまで続き可笑しな生き物まで生息している不思議な洞窟だ。具体的にいえば本編クリア後に出てきそうな不思議な洞窟だ。
父親はこの洞窟の最深部にいる。
父親の寝床が底にあるからだ。
何故か地下で寝るのが『彼』の父は好きなのだ。静かな地下が好きなのだ。高いところに登るのはバカと言われるが真逆な地下なら何と言うのだろう。良い言葉が思い浮かばない。
因みに洞窟には不可思議な生物が生息している。その力は並みのプロヒーローを凌駕し強大な生物の居るこの洞窟の危険度はトップクラスのヒーローでも油断しなくても殉職するレベル。一般人の庭にある地下洞窟。
そんな生物の生息する洞窟を彼は何の問題もなくサクサクと降りて最下層。いつも通り地下深くで寝ている父親がいた。
『……グゴゴゴゴ』
エスター、ゲフン、ビルほど有りそうなモンスターにしか見えない大きな父親。あえていえば彼とは立派な角と三つ目な所は彼と似ている。彼は父親を起こそうと声をかけた。
Zzzzz
寝ているとメッセージが流れた気がした。
Zzzzz
強めに声をかけた。
Zzzzz
寝ている。
更につよく声をかけた。
Zzzzz
寝ている。
ゴガン!!
石を投げつけた。
目が開いた。
しかし白目だ。
「グゴゴゴ……誰だ?わが眠りをさまたげる者は?わが名はエス○ーク……。今はそれしか思い出せぬ……。はたして自分が善なのか悪なのか。それすらもわからぬのだ……。その私になに用だ?私をほろぼすためにやって来たのか?」
起こした父親は寝ぼけている。父親の名前はエスター○でなく田中大鬼だ。エスタなんとか何て名前は掠りもしない。彼は寝惚けた父親の本当に何の脈絡もない痛い寝言を無視して起こしに来たという。
「我の眠りを妨げる愚か者よ。滅びろ」
寝ぼけて巨大な剣で攻撃してきた。彼は剣を避ける。地面にぶつかった剣は大地を割いた。そんな父親に息子は相変わらず寝相が悪いと呆れさせられた。そんな軽い反応でいいのだろうか。
父親は剣を振り回し吹雪を吐きや業火も吐く。激しく巨大な剣も振り回し地面に当たれば隕石が落ちたように地面を砕く。寝惚けた父とそれに困る息子、親子の交流と見ればほのぼのした光景か。身近に居れば凶悪ヴィランも逃げるだろうが
それから5分後
「……グゴゴ、むぅよくねた。夕食の時間か?」
眼球がある。洞窟の最下層がマグマと氷河な外観に変わった頃にようやく父親の目が覚めた。なんで洞窟が崩れなてないのだろう。彼は地上なら町が軽く滅びるほどの攻撃をされたが何時もの事なので特に気にせず、ご飯だと再度言い父親と共に地上に向かった。
『彼』と巨大なモンスターのような父の親子が洞窟を抜け地上に出るとゴロゴロと不安を煽る音を鳴り響かせる雷、まるで希望が消えると言いたげに空が曇り月を隠した、
彼と父親が外に出ると起こる気象変動。本人の意思に関係なく起きる。大体一時間もすれば天候は元に戻る。本人たちは何時もの事だと気にしない。まぁ此処から雨がふってきたりしたら気にする。洗濯物が有るなら二人で取り込まないといけないからだ。二人の容姿でその光景を想像してはいけない。
「皆揃った。じゃあイタダキマショウ」
全員が自他共に(やっぱり他を除く)平凡と認められる家族三人での普通で当たり前な夕食。父親は大きいので外での食事。家の外からでも父親の体が半分見えるが普通の一家団欒。
食事をしている三人の口回りに赤いモノが、赤いモノが、それはナポリタンパスタのトマトケチャップの色だ。断じて血液的なモノでない。そんな想像する理由もないが念のため。
「ソウイエバ」
食事終わりにふと母親が可笑しな事を思い出した様に笑いそうに話しだす。口調からいって語るのは日常的な会話だろう。
「フフ、貴方のお友達から貴方が何時世界征服をするんですかってキカレタノ、世界征服をする予定ガアルノ?』
『彼』は思う。一体誰だろうかそんな人聞きの悪いことを言ったのはと、平和主義な自分が世界征服なんて望むわけかない。『彼』は思う。彼にそんな疑惑を持つ友達なんて居ない。『彼』に友達が居ない訳ではない(重要)
彼は覚えは無いと伝えると母親は笑う。
「ソウヨネ。私もお父さんも同じ冗談を言われた事があるわ。なんで世界征服をするなんて冗談をイワレルノカシラ?」
「ソウダナ。なんでそんな冗談を言われるんだろうな…」
同じ様に首を傾げる三人。それは…い、一般人な彼等にはとても不可解な難問だ。
冗談なら冗談で返すべきだろうか。今度聞かれたら数年後の予定だと冗談を返すべきだろうか?と聞いた相手の心臓が止まりそうな事を考える。
今さらだが最期に『彼』の事だ。
平凡な人に成るようにと両親から願われて名付けられた名は太郎。名字は田中なので田中太郎。ありふれ過ぎて偽名にしか聞こえない名前、両親の願い通り。別世界の漫画でバーンと呼ばれる御方と姿形と能力が似てるだけのちょっと天然な極々一般的な内気でシャイな(内面は)とても普通な15の男子に成長。
彼の将来の夢は農業関係、趣味は太陽の下での日向ぼっことテレビゲーム、好きな言葉は世界平和。嫌いな事は暴力。座右の銘は一日一善。嫌いな食べ物はピーマン。欲しいものはフレンズ。いらないものは手下、下僕、ストーカー。
そんな彼の個性は『大魔王』