大魔王inヒーロー学校   作:ソウクイ

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第12話

雄英施設USJに侵入したヴィラン連合と名乗るヴィランの集団。この暴挙の目的は雄英教員オールマイトの殺害と宣言。

USJに授業の為に来ていた1ーA生徒はヴィラン連合一員の黒霧のワープにより施設内に散り散りにされ、其々の施設で待機していたヴィランの集団に襲われた。

 

何らかの手段により外との通信は不能であり救援を呼べず、雄英施設内でありながら孤立化に近い危機的状況に陥った。クラスメイトを救うためにワープを免れ入口付近にいた委員長の飯田、彼は他生徒の助力を借りながら黒霧の妨害を突破し施設から外へと出て救援を呼びにいった。

 

今現在、各施設に飛ばされた生徒の多くが戻ってきている。戻ってきた生徒には目立った怪我人もなく戦闘不能者もいない。

ただ教師でありプロヒーロー二人は、13号は黒霧に宇宙服の背中を裂かれ意識どころか生死すら不明。イレイザーヘッドこと相澤は意識はあるが体はボロボロで膝をついている。精神力で辛うじて気絶してない状態で戦闘は不可能といっていい。

 

逆にヴィラン側の要員は殆んど倒されたが、悪く言えば寄せ集めの雑魚のみが戦闘不能になり最大戦力と幹部格は無傷。

 

つまりはヒーロー側は数は多いが主力は潰されている。ヴィラン側は多く倒され数は少ないが主力が残っている状態ということだ。戦力としてはヴィラン連合の方が減ってない。

しかし雄英側は飯田脱出により時間が経てば援軍が来る。比べるとヴィラン連合と雄英、双方の勝敗の天秤はまだ平坦にあると言っていいが……此れから行われる事の先の結果によって一気に天秤は傾くだろう。

 

『……』ゴクリ

 

その対峙に両陣営どちらも息をのんだ。雄英襲撃を行ったヴィラン連合と名乗るヴィランも。ヴィランを打ち倒しこの場に来たヒーローの卵達も。大怪我をしてるとはいえプロヒーローの相澤すら今は傍観者だ

 

片方は漆黒の服を着たヴィラ、生徒、

もう片方は脳が剥きだしな生き物。

 

個性抹消という個性社会では恐ろしい個性を持った実力派ヒーローであるイレイザーヘッド、相澤を圧倒したヴィラン『脳無』

 

オールマイト他にもトップクラスのプロヒーローの巣窟である雄英に侵入するという、大事件を引き起こしたヴィラン連合が対オールマイトに用意したという切り札。その力は実力派プロの相澤が圧倒された事から名ばかりの切り札とはとても言えない。 

 

ヴィランの言い分ではオールマイトに匹敵する身体能力がある。

 

だがそれだけでオールマイトを倒せるわけがない。もし身体能力が匹敵してるだけで倒せるなら、オールマイトは平和の象徴などと呼ばれない。オールマイトには膨大な経験と卓越した戦闘センスもある。脳無にはそれが有るとは思えない。

 

同じスポーツカー(身体能力)でも運転手の格が違う。つまり脳無はオールマイトに勝てない。脳無の力が純粋な身体能力だけならだが…。

 

一人につき1つの個性という常識から考えれば、脳無は身体能力だけが武器だと判断しても可笑しくはない。しかし脳無は真にオールマイトを打ち倒すために"用意された"切り札なのだ。

 

打撃を無効化するショック吸収能力、

肉体の欠損すら直す超再生力。

そしてオールマイト級の身体能力。

 

この三つが合わさってるのが対オールマイト脳無。

 

究極の脳筋と言われ攻撃が基本的に打撃しかないオールマイト、物理の天敵といっていいショック吸収。加えてオールマイト級の身体能力、さらに再生能力という保険付き。まさに脳無は文字通り対オールマイトの為にこの世にた怪物。オールマイトを倒せると言う言葉は誇張でもない。脳無はオールマイトを倒せる可能性が有る。

 

 

しかしこの場にはイレイザーヘッドがいる。脳無には手も足もでなかったがその個性は厄介。個性の抹消。視界に入っている限り発動系の個性は使えない。脳無の肉体に依存した身体能力は無理だが再生とショック吸収は無効化できる。イレイザーヘッドの個性が発揮すると脳無の能力は半減する。

 

ダメージは大きく個性を長く使えないだろうが、短時間でもイレイザーヘッドが個性が使える今この場にオールマイトが来れば脳無に勝ち目はない。それは同時にヴィラン連合の勝ち目も無いという事だ。

 

相澤だけでなく13号も個性を考えれば殺害を許容すれば脳無に勝る。

 

ただこれは無意味な仮定。

重要なのは今どうか。

 

この場にオールマイトは居ない。そして13号は生死不明、イレイザーヘッドは戦闘不能には成ってないが、動くのも困難なほど大怪我を負っている。今この時に戦えるのは生徒しかいない。

 

続々と散らされた生徒は続々と戻ってきているが、脳無はオールマイトを倒せる可能性をもった怪物、相性が良かろうが数が揃おうが生徒にどうにかなる相手ではない。

 

現時点で戦闘力のみならプロヒーローに匹敵するかもしれない轟だとしても脳無相手にはまず勝てない。生徒達と脳無にはそれほど力の差が……いやチームプレーで策を練れば何とかなるかも知れないが、連携をとれるだけのチームワークもない。

 

生徒達では勝てない。

一人を除いた場合の話だ。

 

今、脳無と対峙している漆黒の服のババーン!と登場して注目を集めている田中太郎ことバーンさま。もし第三者が居れば風格から迷わず今回の事件のヴィランの首領と思うだろうが…ヒーロー側だ。生徒だ。15才の青少年だ。

 

相澤はまだ短期間しかそのヴィ…、生徒と接してないが、その短期間でも知れた力は、過去の彼の父親から受けたトラウマを思い出させるほど。

 

脳無同様にオールマイトに劣ると思えない身体能力、一撃で町一つの会場を更地にすることが可能な攻撃、他に飛行、炎、冷凍、暴風等々を使用した万能と思える能力の数々、トラウマによる過大評価を考え見積もっても、それでも現時点で……弱体化したオールマイトよりも総合的にはスペックが高いと相澤には思えた。

 

戦闘技術や経験の差から考えれば実戦での勝敗はまた違うとは思うが……スペックだけ見ればトップヒーロー以上と言うだけでもとんでもない逸材。

 

雄英で脳無に単独で勝てると思えるのはオールマイト……それにバーンさまぐらいか、しかしバーンさまが現れてむしろ相澤の不安は増大していた。正直、相澤としては……バーンさまが現れてむしろピンチになった気がして成らなかった。

 

相澤の感じた不安は勝てる勝てないの不安じゃない。不安それは……周りへの被害。

 

いや、担任として脳無と戦うバーンさまの心配をしろと言われるかもしれないが、この場では相澤だけが知っている町ひとつある試験会場を瓦礫にした一撃。例えれば間近で戦闘でなく戦争が起きる直前という話しか

 

「な、なぁどっちが勝つと思う」

 

「さぁ、な、だが、とんでもない事になるのは確実だろ」

 

生徒たちはただ見守った。オールマイトがまだ来てない現状、実質的に両陣営最強のぶつかり合い。お互いこの場の対立戦力を蹂躙できる最強戦力同士。どちらが勝つかで一気に勝敗の天秤が傾く。にらみ会う形にある両陣営の最強。

 

にらみ合いはすぐに終わった。

先ず動き出したのは脳無。

 

「きえ、た!」

 

脳無のいた地面が陥没し土煙がのぼるとその場から脳無は消える。もちろん消えたのでない。脳無はオールマイト級の身体能力で動き出し姿を消したように見せた、その速度が見えたのは少数。殆どその場の人間には脳無が突然消えたようにしか見えないほどの超速。そして大きな打撃音とともにバーン様も消える。戦闘が始まったのだろうか。

 

違う。

 

バーンさまは動いてない。自分からは。

脳無が動き出しバーンさまを殴り飛ばしたのだ。

 

打撃音がしたと思えばほぼ同時に壁に炸裂音、壁は瓦礫となる。瓦礫の中に誰かが倒れている。バーンさまは脳無に殴られあそこまで飛ばされ……。   

 

立って居るのは脳無のみ。

 

「は、え」

 

「ま、まけた…のか」

 

この場の最強同士のぶつかり合い。あまりの呆気なさに呆然とした生徒とヴィラン。

 

「……は、はははは、な、なんだよ。簡単に倒せたじゃないか。」

 

死柄木の嘲笑うような声だけが響く。そんな死柄木の隣にいる黒霧の黒いモヤは不自然に揺れていた。まるで戸惑っているように。

 

瓦礫の山を見ればバーンさまに脳無の一撃は直撃した事はわかる…………崩れた瓦礫の山を見ればまず攻撃を受けた相手は生きてはないだろうと思わせる光景だ。そういう光景なのだ。

 

しかし

 

黒霧はヴィラン連合で真っ先に生徒を散り散りにする時にバーンさまを見た。その時……ある人物とその姿を重ねた。自身の黒いモヤよりも黒い何か、見掛けは全く似てないが醸し出す気配は同種。悪のカリスマと呼ばれた怪物と…

 

そんな怪物と同類に見えたのが一撃で?

 

ふと黒霧が隣を見ると先程まで上機嫌に見えた死柄木が不機嫌そうな顔をしていた。

 

「あーけどメインにまったく関係ないサブシナリオをクリアしただけだ…。メインは何時くるんだ。チャート外なことばかりだ。散らした生徒は集まってきてるしイレイザーヘッドも完全に潰せてない。極めつけはアイツだ。まさか他のヴィランが俺達みたいに雄英を襲撃しにきてるなんてな」

 

死柄木の言葉に黒霧は確かにと頷く。頷いた後、なんでヴィランがヒーローの卵の近くに居たんだろうと少し疑問が湧いた。まさかヒーローの教師、それかヒーローの卵、ヒーロー科の生徒?黒霧はふと考えてしまったあり得ない馬鹿馬鹿しい想像に首を降る。

 

「う、嘘だろ。一撃で」 

 

「…対オールマイトだと伊達に名乗ってないってことかよ…!!」

 

「あぁ……やった。やってくれのかよ!!?」

 

死柄木は脳無の力に震えるヒーローの卵たちをを見てわざとらしく溜め息を吐いた。

 

「はぁ~、オールマイトはまだかよ。まったく……………可愛い生徒が死体になったらくるかな?」

 

再度初めと同じ事を言う。隠れた目と口を見れば判る悪意と狂気の混ざった愉い、黒い意思が生徒たちに向けられる。相澤は相手を睨み付けヒーローの卵たちは身構えた。

 

……瓦礫の山が吹き飛んだ。

 

 

 


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