大魔王inヒーロー学校   作:ソウクイ

9 / 15
第9話

 

麻婆丼粉砕という涙なくしては騙れない悲劇の事件が起きた翌日、今日の一のAの授業はバスに乗って行く。目的地は同じ雄英敷地内にある施設、バス移動が必要とは雄英の敷地何れだけ広いのか。

 

席を決めるときに委員長の采配により一番後ろで座ることになったバーンさまのバス移動。身長が一番高い人間が一番後ろなのは…わかる。しかし何人も座れる後部座席に一人だけと言うのはどう言うことか。

 

楽しそうな会話を後ろから見せられることになったバーンさまのバス移動。

 

バーンさまは一人むなしく外を見ているとバーンさまの中学時代からの友人がやってきた。聞けばセクハラ発言をしたという事で一番後ろバーンさまの席に移動させられたそうだ。セクハラしたから自分の隣の席への移動と言うのは引っ掛かりを覚えたが、友人が来たことで少し機嫌を良くするバーンさま。

 

ただセクハラについてはバーンさまとしても良くないと思い軽く諌め、それから救助訓練は楽しみだなと話す。

 

「ソウスネ」

 

まるで借りてきたニャンコ、または執行直前の死刑囚のようになっている友人。まさか次にセクハラしたら救助訓練で事故に見せ掛けて…なんて誤解をした訳でも有るまい。関係ないがバーンさまは猫派。担任の先生と気が合うのかもしれない。

 

バスは到着すると生徒達は大きな建物にはいる。これから行うのは災害救助訓練。災害救助、それはヒーローにとって王道の活躍の一つ。ヒーロー科は救助訓練してるのだろうが……成果があるんだろうか。

 

昨日、雄英の生徒が警報を聞いて秩序を失く混乱して醜態を晒した。混乱する生徒の騒ぎを止めたのは一年の飯田。それに同じA組の何人か。まだ雄英の教育を受けてない雄英に入ったばかりの一年だ。可笑しいだろう。

 

食堂に雄英の訓練を受けた二年三年のヒーロー科生徒が一人も居なかったのか。その他でもヒーロー科で無くても雄英の生徒なら、バーンさまの様な例外を除けば将来ヒーローの関係者になるのが目標だろう。危険と聞いて無様に混乱する関係者と言うのは……犠牲となった麻婆丼を思い出せば成果があるのか疑惑を感じるのも仕方ないことか。

 

 

訓練は必要なことだが実技試験からわかる通り雄英のやることは大きい。生徒が災害訓練をする場所もマトモでない。訓練場はまるで一つのテーマパークのような大きさの建物。雄英の予算は本当にどうなっているのだろう。施設名はU(ウソの)S(災害)J(事故ルーム) 略してUSJ 。

 

 

誰もがUSJ と聞いてあのテーマパークを脳裏に浮かべてしまう。此処からはバーンさまのみの思考で他と関係ない話しだが、連想して浮かぶテーマパークとして双璧のディ○ニーランド。親と行った夢の国、親のサイズのせいで入場不可で入れず帰った夢の国。せめて気分だけでもと買ったミッ○ーの帽子。憧れの夢の国のライバルの偽物としか思えない施設にバーンさまは何とも言えない気持ちになる。

 

USJ にいたのは宇宙服のようなモノを着たプロヒーロー13号。見かけから動きが鈍そうとわかるヒーロー。専門は戦闘でなく災害救援専門のヒーロー。個性は『ブラックホール』本物のブラックホールなら使用者が地球ごと終わるので名前が同じだけの別モノだろう。バーンさまは個性名とあと災害救助で動きにくそうな格好は不味くないかと思う。

 

「訓練の前に小言を一言、二言、三言…」

 

「増えとる!!」

 

13号が訓練の前に話したのは大体こんな感じの内容、この個性社会、個性の力は一歩誤れば人を傷つけ最悪殺してしまいます。ボクのブラックホールなどが危険の最たる例ですが、皆さんの個性も多かれ少なかれ危険というのは同じです。だからヒーローを目指す上で個性の危険性を理解して使い方には十分に注意してください。今回の授業では個性による戦闘を行った戦闘訓練から心機一転、個性を使った人命救助を学ん貰います。君達の個性は傷付ける為でなく、人を助ける為にあると思ってください。

 

最後に一礼した13号、真面目そうなメガネ生徒がブラボーといい。お人好しそうな少女は黄色い声援。しかし……個性についても重要だが、昨日の醜態については話さないのだろうか。

 

委員長たちが個性を使って人を助ける活動をした実例だろう。それと幾ら能力があっても緊急時に行動できないと意味がないという話もできる。考えてるとバーンさまは何かを感じた。

 

 

バーンさまが何となく気になる方向に目線だけ動かすと、階段下の中央に広がった黒いモヤを見付けた。何もない空間から発生して一ヶ所に留まる異質なモヤ。明らかに火事で発生するモヤと違う。

 

モヤの中から誰かが出てきた。

ゾロゾロ出てきた。

とてもモヤに隠れられる人数じゃない。

何処からかモヤを通して来てる?

 

恐らくモヤは転移系個性の産物、モヤは空間転移の出入口の様なモノらしい。出てきたのは何者だろうかとバーンさまは思う。正体不明な相手、しかしまだこの時点では特に危機感は感じてはいなかった。救助訓練に協力してくれる人員か何かだと考えた。無意味な転移での登場も合格通知を思い出せば雄英なら変な所で凝っても違和感はない。

 

「なんだあれ」

 

他の生徒もバーンさまに遅れてだが気が付いたようだ。気付いたが呑気な声を出している。危険だという懸念はないようだ。天下の雄英に堂々と危険人物が入り込んで来ることはないと油断していた。バーンさまを含め総ての生徒が危機感を感じていない。しかし一瞬の行動が命に関わる実戦を経験してきた現役のプロヒーローの教師は違う。

 

「全員一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!!下手に動くな!…あれはヴィランだ!」

 

相澤は臨戦態勢をとる。これまで声を張り上げた事がない相澤の出した気迫の籠った声。

 

「え!ヴィラン!?」

 

まだヴィランと信じきれてない。危険だと認識できていない。階段下にいる無数のヴィラン。リーダーとしての位置にいる手をアクセサリーにした不気味な男。10代か20代の狭間ぐらいの年若い男は1-Aを見回して誰かを探した。お目当ての相手が見つからなかったのか不機嫌そうな声を出す。

 

「オールマイトどこだよ。なんだよ。せっかく大衆引き連れてきたのに………生徒を殺せば出てくるか?」

 

言葉からは隠さない悪意そして殺意、演技とは思えない悪意と殺意の言葉を向けられ多くの生徒がようやく敵(ヴィラン)だと危険だと認識した。

 

「雄英に襲撃て馬鹿かよ!」

 

「センサーが反応してねぇなら妨害をしてる個性の奴がいる。ならアイツらは馬鹿だがアホじゃねぇ。これは周到に用意された計画的な奇襲だ」

 

このクラスで根本から例外扱いな一人を除けば、ダントツの強さを見せ付けたプロヒーローの息子の発言に誰もがゴクリと息を飲んだ。

 

「13号避難開始だ!上鳴、個性で通信を試せ!!」

 

「うっす!」

 

何らかの手段で警報もスマホなどの通信は無効にされている。上鳴の個性でも通信不能、そもそも通信など器用な事が出来るのか知らないが不能。外部との連絡手段がない。なら生徒たちは自力で逃げなければいけない。生徒が逃げるまで誰かヴィランの相手をしなければいけない。抗戦すればどうなるか……相澤はチラリとバーンさまを見た。

 

相澤は視線を戻し前に出た。

下に降りて戦おうとしている。

 

「せ、先生相手は多いんです!一対一が得意な筈の先生だと危険です!」

 

「緑谷プロを甘く見るな。一芸だけじゃプロヒーローは勤まらない!13号!生徒は頼んだ!」

 

相澤は13号に後を任せ階段を降り一人ヴィランの元に突撃。緑谷は雑誌やネットの情報から相澤の個性だと複数相手は不利だと認識している。相澤の個性『抹消』相手の個性を消せると言う切り札となる強力なモノだが、純粋な意味では無個性と変わらない。無個性同士の戦闘になる。しかし個性を消せるのは目線の先だけで全員でない。なら数が多い方が有利、緑谷はそう思った。しかしその心配を払拭するように相澤は奮闘、特殊なマフラーを変幻自在に使い数のハンデを退け、個性抹消では消せない身体能力が高い異形種すらも圧倒する動きを見せた。

 

「す、スゴい!先生の本領は多対一だったのか!!」

 

その戦いぶりはヒーロー観察が趣味の緑谷に相澤の本領は多人数の乱戦なんだと゛誤認゛させるほどだ。

 

緑谷の初めの予想は間違ってなく相澤の本領は短期決戦、奇襲タイプ。正面から堂々と多人数を相手にするのは得意でない。それでも雄英の教師になれるほどの一流プロヒーローの相澤、相手が弱い三下のヴィランだけなら多人数が得意で無くても制圧仕切る強さはある。

 

しかし雄英に侵入したヴィランが弱い相手ばかりと想定出来るわけがない。相澤の目的は倒しきる事でなく足止め。生徒が逃げるまでの時間稼ぎ。それを13号だけは察した。13号は相澤の残した言葉に答え生徒を連れ避難しようとした。

 

「此処は先輩に任せ皆さんは避難を…!!」

 

黒い靄が13号たちの目の前に現れた。

ヴィラン達を運んできた存在だ。

モヤの前に人の形のようなモヤがある。

 

「始めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟である雄英に入らせていただきましたのは……平和の象徴のオールマイトを殺害するためです」

 

プロ一人と多数のヒーローの卵の前で名乗る余裕のある態度。まるで自分が圧倒的に優位にあるというようだ。実力に相当の自信が有るのだろうか。

 

転位する個性をもった黒いモヤは現状一番先に倒すべき相手といっていい。それが態々単独で来た。もし個性そのものを使えなく出来る相澤がこの場にいれば楽に無力化できた。向こうもそれが解っていたとすれば、相澤が単独行動に出たからこそ来たのか。結果論のみで厳しく言えば結果的に相澤の判断ミスと言っていい……いや間違いか?相澤はモヤが動いた場合の事も考えていたのかもしれない。

 

相手はモヤ。生徒の元に残されたのは13号、『個性ブラックホール』の持ち主、抹消ほどではないがブラックホールというのは、不定形のモヤを相手にするなら極めて有利な個性。幾ら実力に自信があるとしても単独で来たのは迂闊!! 

 

しかもだ。

 

「……!!!」

 

何故か黒いモヤはバーンさまの方を見て固まり13号に致命的な隙を見せた。

 

「隙ありです!」

 

13号は容赦なく隙をついて個性を使い靄を吸引しようとした。モヤを剥がす事が目的か。行動の妨害だけが目的か。それとも生徒を守るために殺害も覚悟の上なのか。

 

どれにしても13号がやろうとした事は邪魔をされた。他ならない守ろうとした生徒に

 

「つぶれろやくそが!!!」

 

「オラァああ!!」

 

「な!二人ともさがりなさい!!」

 

飛び出したのはツンツン頭の二人。

硬化が個性の切島と爆破が個性の爆豪の二人だ。

 

ブラックホールは強力無比な力、だがその強力さ故に弱点ともなる。生徒が前にいると巻き込んでしまうため個性が使えない。更に13号の指示を聞き逃げようとした生徒まで逃げる足を止めた。つまり二人は最悪の行動をしていた。

 

二人の攻撃は爆発で多少モヤが散ったがダメージはない。相手は本体があるのか怪しいモヤ、爆破はともかく打撃で攻撃して何とかなると思ったのか。

 

「危ない危ない。流石は雄英の金の卵…」

 

後半はともかく危ないという台詞には実感があった。それに気付けた生徒は幾人か。前半は思わず漏れた本音としたら後半は皮肉か馬鹿にしてるのか、それとも誤魔化す為の台詞か。

 

「どなたか分かりませんが、恐ろしいお方も居ますし。早々に去りたいと思いますがその前にあなた達を………散らして、なぶり、ころす」

 

高速に四方八方に拡散して生徒を飲み込もうとする黒いモヤ。相手の動きが早く有効な個性なのに生徒の近くでは13号は個性が使えない。何人もの生徒が黒いモヤに飲み込まれる。そしてバーンさまもまたただ黙ったまま黒いモヤを受け入れた。

 

黒いモヤは転移ゲート、黒いモヤに包まれた生徒は四散して施設の別々の場所に送られる。バーンさまと誰かが送られたのは災害ルームの一つ、小さな町のようだ。黒いモヤが晴れると其処は地上から数メートルの場。バーンさまは特に問題もなく落下し地面に着地。

 

バーンさまが感じたのは例えると鬱陶しいハエが近づいてくる様な感覚、バーンさまはハエを叩くように反射的に腕を動かし『何かを』弾いた。

 

弾かれた何かはまるでダンプに轢かれた様に壁に突っ込んだ。壊れた壁から赤いものが垂れてきていた。バーンさまは弾いた何かを確認しようとしたが……周りを取り囲んむ様にいる無数の誰かに気づき、弾いたモノの事について意識から消えた。

 

ヴィランという看板を掛けてそうなヴィラン、ぽい人達。そんな人達に囲まれバーンさまは…

 

 

 

 

この"訓練"をどうすれば良いのか考えた

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。