ファンタシースターポータブル外伝〜After the tragedy〜 作:烏山
~取引場所~
グレネードの爆発で廃墟が倒壊し、土煙であたりが茶一色に染まっている中、ディーンとファングは刃をぶつけたまま鍔迫り合いを続けていた。
ディーンが両手で剣を振りかざして、それをツインクローでファングが受け止めている形だ。
ファング 「オイオイ~!勢いがあるのは声だけかぁ?一向に動かねぇぞ?あぁ!?」
ディーン 「そいつはどうかな!?」
左手を剣から離すと、押し返される前にハンドガンのナノトランスを解除し、左手に持ちファングに向けて引き金を引いた。
ファング 「なっ!」
バァン!!
ファング 「グフッ!!」
フォトンの弾丸はファングの左胸に当たり、そのまま後ろに吹っ飛び土煙の中に消えて行った。
ディーン 「(…今ので仕留め……られてはいないだろうな…。だが、心臓近くを狙ったから多少のダメージは…)」
ファングの消えて行った方向の土煙が晴れてきた。そして、当たり前のように立ち上がったファングの姿があった。
ディーン 「……マジかよ…」
銃弾を撃ち込んだ左胸は少し汚れているだけで傷一つ付いていない。
ファング 「お~、びっくりしたぁ~…てめぇ、いきなりチャカ使うってどぉなのよ?まぁ、なんともねぇからいいけど…?」
ディーン 「(…すこし焦げているような跡があるから避けられたわけじゃないんだろうが……OSの能力か?)……化け物が…」
ファングは大きなあくびをするとツインクローをナノトランスした。
ディーン 「!!…なんのつもりだ…?」
ファング 「…ったく、おめぇ俺様の能力が気になってんでしょ?『な、なんで銃弾はヒットしたのに傷がないだーっ!?』とか思ってんだろ?……もっかい試してみろよ?動かねぇからよぉ?」
ポケットに手を突っ込み余裕の笑みを浮かべている。
ディーン 「(…罠か…?何をかんがえているんだ?)……マジで行くぞ?」
ファング 「おうよ?…とっとと来いよ?もしかしたら今度は心臓貫けるかもしれな…」
言い終える前にディーンは走りだし、走りながらハンドガンで顔面、左胸、腹に打ち込み、一瞬でファングの目の前まで距離をつめ、首に一太刀いれた。
しかし、それは弾かれた。
ディーン 「!!!……なんだその姿…?」
ファング 「…あぁ?だ~か~ら~能力だよ?OSの」
全身が銀色に染まり鉄のように硬くなっている。当然銃弾による傷もない。
ファング 「じゃあお返しいくぜ?オラァ!!」
ディーン 「!!クッ!!!」
膝を前に押し出し、目の前にいるディーンにニーキックを入れたが、銃と剣を盾にして直撃は避けた。それでも数メートル吹っ飛ばされた。
ディーン 「…ッっ…(硬い…あの能力……あの時の蹴りの威力が強かったのもこの能力のせいか…)」
ファング 「おうおう、青髪ちゃんよぉ?俺様の能力わかったぁ~?」
剣を杖代わりにして起き上がりながらディーンは答えた。
ディーン 「……硬化の類か…?」
その答えにファングは腕を組んでう~んと首を傾げる。
ファング 「…おしいな…。いや、この姿じゃあ正解ちゃあ正解だ!厳密には、表皮を鉄に変化させたんだ!」
ディーン 「(この姿…?)…ペンタクルってのはヒト型でも能力が使えるのか…?」
ファング 「まぁな!少しくらいなら使えるぜぇ?…なぁ~んかお前には喋り過ぎちまうな?…一発で終わらせてや……ガフッ!!!」
喋っている途中ファングの頭上に巨大な氷の塊が出現し、そのまま押しつぶした。
よく見るとファング越しに、ウォンドを構えているギラードの姿があった。
ファング 「オイオイ!なんだってん…ギハッ!!」
ヤマト 「御免!」
氷の塊の下から這いずり出て起き上がった所を土煙のなかから突如現れたヤマトの居合切りがファングの腹を切り裂いた。そして刀を打ち付けられたところにはヒビが入っている。
ファング 「!!オイ!?ウソだろ!?」
ヤマト 「…拙者のコクイントウは鋼鉄をも砕く…!」
ファングが腹を抑えようとした瞬間には既にラグナが間合いに入って双剣を振り下ろそうとしていた。
ファング 「!!テメッ……ガハッ!!!」
Xを描くように切り裂かれた腹部は、鉄の表皮が完全に砕かれ、血が出ている。
ファング 「痛ってーーーー!!ざけんなよ!?お前等!?俺様を誰だと…」
ビュン!……ザシュ…
弓を射る音がした直後、ファングの表皮が砕かれた部分に朱い矢が刺さっていた。
矢の飛んで来た方向には弓を放ち終え、無表情で次の矢を放とうとしているギラードがいた。
ビュンビュンビュン!!!
3本の矢が続けて放たれ全て鉄のはがれた部分にヒットし最後の一本は背中の鉄の表皮を砕き貫通した。
ファング 「うぐ……ガハッ…ゴホッゴホッ!!」
腹を押さえながら、血を吐き土煙の中に消えて行った。
ディーン 「……(つ…強い……)…ん!?」
突然肩に重さを感じた。ラグナが肩を組んできた。
ラグナ 「どうだ?ギラードもヤマトも強えぇだろ!?」
ディーン 「……あぁ……あの硬い表皮を砕いた居合…同じ箇所への正確な弓での射撃……普通じゃない…」
ディーンはどこか不機嫌そうだった。
自分のせいでマナが奪われたのに、完全に自分が足手まといなのが悔しかったのだろう。
ラグナ 「…フッ…ディーンよぉ?気持ちはわかんねぇでもねぇけど、オレ達はギルドなんだ!マナを助けたいのはお前だけじゃないよ…。…それにもし、自分が役に立ててないとか思ってんなら、それは違うぞ?お前が一対一でファングとやり合ってたからこそ、オレ等も奇襲攻撃ができたんだ!お前のおかげだよ…!」
ディーン 「………」
すぐそこにヤマトも近寄ってきた。
ヤマト 「そうでござるよ!?ディーン殿!ディーン殿がやつの隙を作ってくれたからこそ、奴を倒すことができたのでござるよ!」
二人に励まされ、ディーンは下を向いたままどうしていいかわからず黙っていた。
ディーン 「…(結局、今のオレじゃあ囮くらいにしかならないか……)」
ギラード 「……油断しないで………まだ生きてる…」
ギラードの声で二人はすぐに戦闘態勢に戻った。
ファング 「イテェ……」
土煙の中からファングの声がした。動いているシルエットも見える。
ファング 「……あ~あ、マジでイテェ…。油断してたわ…ホント…。そこの赤髪の女『朱い魔女』だろ?…そりゃ、こんな深手を負わされるわけだわ…」
ラグナ 「…オイオイ…随分余裕そうな声じゃねぇか?…化け物か?」
ファング 「化け物か…違いねぇや…。でも、これから本当の化け物に会わせてやるよ?……ハァー!!!」
土煙の向こうで黒いオーラが発生しはじめた。そしてその黒オーラはファングのシルエットを包み込んだ。
ディーン 「!!(マルコの時と同じだ!)オイ!アイツ、SEEDフォームになる気だ!変身するまえに倒さないとまずい!!」
ディーンの声でギラードはフルチャージの弓矢を黒いオーラの中に打ち込んだ。
しかし、その弓矢は何かに弾かれたように消えて行った。
ディーン 「…(遅かったか…!)」
黒いオーラが消え始めると、土煙の中に巨大なシルエットが現れた。
それ影は段々と近づいてきて次第に姿を現し始めた。
ラグナ 「…こ…こいつぁ……」
ディーン 「!!!こんなSEEDフォーム見たことないぞ!?SEEDフォームをベースにしてるんじゃないのか?!どういうことだ!?」
ファング 「あぁ~?お前等知らないの?五芒星と敵対してんのに?」
口は動かしていないが、テレパシーのように直接ファングの声が伝わってくる。
ディーン 「何をだ!?」
ファング 「…あ、マジでしらねぇんか…。…青髪よぉ?普通のOS使用者とペンタクルの違いってなんだと思ってる?」
ディーン 「……!?」
ファング 「戦闘能力の差?権力の差?違う…もっと根本的な部分だ!!……そう…ペンタクルってのはOSを投与された、ヒトの姿をしたSEEDフォームってのが定義として当てはまんだ!」
ディーン 「なっ!?」
ファング 「…そう……俺達は一度死んだんだよ!!…さて、無駄話はここまでで、今度こそ全員喰わせてもらうぜぇ~!?」
鋭い牙がならんだ口を開き、真っ赤な舌をペロリと出した。
~廃墟内・倉庫~
マナ 「あ!ありましたよ!私のコート!」
奴隷男 「…よし、早く回収して脱出しよう!」
マナが部屋の隅に掛けてある自分のコートと、それについているナノトランサーを取りにいったが、いきなり動きが止まった。
部下 「あぁ、やっぱり、ここで張ってたら来るんだよなぁ~!女~動くなよ?」
部屋のテーブルの下に隠れていた男がマナに銃を向けたのだ。そして、もう一つハンドガンを取り出し、奴隷男にも銃を向ける。
部下 「さぁて、動くなよ~?」
キャラクター設定⑭
ファング・テーヴェ
種族:ビースト(SEEDフォーム)(男)
年齢:35歳(見た目)そのまま生きていれば52歳
身長:197cm
体重:99kg
ICV:杉田智和
詳細:ペンタクルの一角で、違法取引を行っている商業団体のヘッド。17年前に事故で死亡したとされているが、一度SEED空間に飛ばされ、SEEDフォームとして再構成され、元のグラールに戻ってきた。そこでペンタクルの一人としてスカウトされた。
作者のイメージする「戦闘が本職じゃない悪人」のイメージを叩き込んでみました。何故マッチョかはあまり気にしないでください。
名前の由来は獣っぽい響きがほしかったのでファング(牙)、テーヴェはスペイン語(だったっけ?ドイツかも…)でライオンの意味。