ファンタシースターポータブル外伝〜After the tragedy〜   作:烏山

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悪足掻き

~管制室~

 

 

ワスプ   「僕が…追い込まれた~? ……やっぱりおかしくなっちゃったのかなぁ?青髪クン~?」

 

 

穴だらけの管制室の壁に寄りかかり、不気味に笑うディーンにブラスターの銃口を向けてつまらなそうに見下ろした。

 

 

ディーン  「……く…くはは……。お前は……ハァ……気付いてないようだが………多分『次の一撃』で勝負は……ハァ……決まるぜ?」

 

 

息を切らし、俯きながらもディーンは笑みを作った。

 

 

ワスプ   「『次の一撃』?ヒャハハハハハ!!!そりゃそうだ!僕の一撃で君は木端微塵になってゲーム終了だぁあ!!強がってるみたいだけど、もう動けないんだろ~!?」

 

 

バチバチと音を立て、ブラスターにフォトンを収束しいつでも放射可能な状態を作った。

 

 

ワスプ   「カッコつけてないで、死ねよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ゴ――――――――

 

 

 

 

轟音を立ててブラスターから『電流収束砲』がディーン目掛け真直ぐに放たれた。

 

 

ワスプ   「ヒャハハハハハ!!!お前の言う通り『この一撃』でお終いだぁ!!!」

 

 

 

向かってくる光線に対してディーンはピクリとも動かなかった。しかし、直撃する寸前でまたニヤリと口元を歪ませた。

 

 

ディーン  「………『この一撃』でお終いね……その通りだよ馬鹿野郎!!」

 

 

身体を急旋回させ、近くに空いた穴へと飛び込んだ。

 

 

光線はディーンに当たることは無く、また壁に大きな穴を空けた。

 

 

ワスプ   「ヒャハ……ヒャハハハハハハハハハハ!!!散々カッコつけといて何!?逃げた!?それとも自殺!?ヒャハハハハハハハ!!!ダッサ!!ダサ過ぎでしょおオオオオ!!!」

 

 

ディーンの飛び降りた穴を指さし、これでもかと言うほど大爆笑をした。

しかし、途中から笑い声以外にも音が聞こえてきた。

 

 

ワスプ   「ハハハハハ……ハハ……ハ?…なんだ?この音?」

 

 

周りを見渡すと、天井から欠片がポロポロと振ってきた。

 

 

ワスプ   「………ちょ………これって?」

 

 

壁に穴が空き過ぎて天井を支えることが出来なくなったのだ。

 

 

ワスプ   「まずいっ!早く穴から出―――――――――――」

 

 

次の瞬間には天井は崩れワスプはなす術もなく、降り注ぐ天井の下敷きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

ワスプ   「(……くっそぉ…少し調子に乗り過ぎたなぁ…)」

 

 

瓦礫に首から下が埋もれワスプは首だけ出しているという状況。

 

 

ワスプ   「(……!?…来る!走ってくる音が――――――――――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――タタタタタタ――――――――――

 

 

 

 

首の回らない後方から駆けてくる音と気配を感じ取った直後、その声を聞いた。

 

 

 

ディーン  「……ハァ……捕獲……成功…!」

 

 

ワスプ   「なっ!?」

 

 

 

首にまたがり、後頭部に銃を突きつけ、首元にセイバーを突きつける。

 

 

ワスプ   「お…お前……飛び降りたんじゃ!?」

 

 

銃とセイバーを突きつけられ首が動かせず、そのまま焦り満ちた声を漏らした。

 

 

ディーン  「……オレが本当に飛び降りたと思ったのか?」

 

 

ワスプ   「……くっ……!」

 

 

ディーン  「……飛び降りたんじゃない………外へ避難したんだよ……」

 

 

ワスプ   「………外にそんなスペースなんて……」

 

 

ディーン  「……流石に結構キツかったぞ?これで体支えるのは…」

 

 

グイグイとワスプの首にセイバーを押し付ける。

 

 

ワスプ   「!?」

 

 

ディーン  「…これをブッ刺してる壁が崩れたら万事休すだったけどな………。まぁ、これでお前もお終いだ………爆弾を解除して貰おうか?」

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

ナギサ   「……何が起こったんだ?急に管制室の壁が………ディーン無事か!?」

 

 

廊下側は天井が崩壊することはなく、マナ、ナギサ、バロン(停止中)に直接害はなかった。マナとバロンを背負ったナギサが管制室に入ると、ワスプに銃とセイバーを突きつけているディーンの姿を目にした。…が、ディーンの表情は穏やかではなかった。

 

 

ディーン  「お前!!どういうコトだ!!」

 

 

ワスプ   「だ~か~ら~……あの爆弾を止める方法なんてないよぉ~? あの爆弾は僕から発せられる電波に反応して爆発するんだけど……時間になったら勝手に送信するように設定した挙句、変更も不可能だからねぇ~ あ、そうそう、僕を殺しても駄目だよ~?僕が死んだときにも同様の電波が送信される仕組みになってるから~ 設定時刻まであと3分を切ってるよぉ~?」

 

 

再度、自分が絶対優位とは言えないまでも、アドバンテージを得たワスプはその無機質な顔の奥に笑みを浮かべていた。

 

 

ディーン  「……(くそ…くそくそくそ!!!考えろ!!…これ以上コイツの思い通りにしてたまるか!…何か…何か策は!!)」

 

 

ワスプを制圧したままの状態で策を考えるも、何をやるにしても時間がないことで全ての策は実現不可能となる。そして、ただ時間だけが過ぎていき……

 

 

ワスプ   「ほらほら~僕の体内時計だとあと30秒くらいじゃない?あ~あ、これで市街地は火の海だぁ~」

 

 

ディーン  「だまれぇ!!!(……クソ!!結局…結局止められないのか…!?)」

 

 

深刻な表情でまだなお策を考えるディーン、狂ったように笑い出すワスプ。その場に居合わせたマナとナギサはただただ呆然とその光景を眺めるしかなかった。

 

 

ワスプ   「ヒャハハハハハハハ!!!!あと10秒だ!!きゅ~うぅ!は~ちぃ!な~なぁ!!ろ~くぅ!!」

 

 

もう間に合わない。そう悟ったナギサとマナは目を瞑った。ディーンもこれではどうすることもできなかった。正に「万事休」と言える状況だ。

 

 

 

ワスプ   「さぁ~ん!にぃ~いぃ!!い~ちぃいいいいい!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワスプ   「どっかぁああああああああああん!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナギサ   「―――――――?」

 

 

 

 

その場にいた誰もが不思議に思った。どこからも爆発音がしないのだ。

マナは市街地の方に目を向けるが、一回目に爆発したところから煙が上がっている以外、どこかで爆弾が爆発した形跡はない。

 

 

ワスプ   「……へ…?えぇ…?なんで…?なんで…爆発しないの?」

 

 

この中で最も不思議そうで情けない声を発したのはワスプだった。

 

 

 

―――――――プルルルルルル――――――――――

 

 

誰か端末が音を発している。

ナギサが、私か?と端末を取り出すと、鳴っているのは彼女のものだった。そして、中央のボタンを押し、通信に応じた。

 

 

エミリア  『あっ!?ナギサぁ?よかったぁ!繋がったよ~』

 

 

端末の画面の中には金髪の少女、エミリアが映っていた。その背後にはおそらくこの近くの市街地のものであろう建物が建っていた。

 

 

ナギサ   「エミリア!? そこは……どうして貴女がそこにいるんだ!?」

 

 

エミリア  『どうしてって…変な電波が観測されたから、アンタ達に調べてもらおうと連絡したら繋がらないからあたしがここに来たんしょ! 大変だったんだからねぇ!』

 

 

ナギサ   「………すまない、話が見えないのだが?」

 

 

エミリア  『…えっとね、平たく言うと私はここの地下にセットされている爆弾が、ナギサたちが今いる演習場の管制塔から発せられている電波によって爆発する仕組みだと気付いたの!…ここまでおーけぃ?』

 

 

ナギサの理解力を彼女なりに考えできるだけゆっくりと説明する。

ナギサ以外のメンバーもこの通信に耳を寄せている。

 

 

エミリア  『それで、それが爆発するのを防ぐためにシズルに頼んでインヘルト社にこの地域の電波をジャミングして貰って、現在この爆弾は爆発することはないの!後は撤去するだけってこと!おーけぃ?』

 

 

この説明を聞いて3人に納得と笑顔が生じた。ワスプはただ呆然と聞くしかなかった。

 

 

エミリア  『…つーかそっちも相当大変そうな状況になってるね?てゆーかバロンやられてんじゃん!!増援は必要?!』

 

 

慌てふためくエミリアに優しく微笑んだ後、ナギサは礼とガーディアンズへの連絡の要請をするとディーンに目で合図した。

 

 

ディーン  「…と、いうワケだ…!お前の完全敗北だよ!ワスプ! お前には色々と聞きたいことがあるんだ!大人しく捕まって貰おうか?」

 

 

ワスプ   「……僕が…捕まる…?」

 

 

魂の抜けたような声を出すと彼に乗っかっている瓦礫が音を立てた。

 

 

ナギサ   「ディーン!かわせ!!!」

 

 

ディーン  「!?」

 

 

 

 

 

 

―――――ガァアア――――――――

 

 

 

瓦礫の中から突然ワスプの巨大な腕が現れ、ディーンの体を握りしめた。

 

 

それと同時に何かが始動したような、ピッという音がした。

 

 

ディーン  「うぐっ――――…お前…まさか…!?」

 

 

強い握力に締め付けられながらも押し殺すような声をだし、ワスプを睨みつけた。

 

 

ワスプ   「ピンポ~ン!!今のは自爆スイッチで~す!!威力はそれほどではないけど、君を道連れにすることぐらい他愛無いよ~!!さぁ、10秒前だ!ごーとぅへるぅうううう!!!!」

 

 

自分の命を諦めた者の恐ろしさを感じさせる狂い笑をしながら、またカウントダウンを始める。ディーンは抜け出そうとして締め付ける力が弱まることはなく、彼の命も風前のともし火に思えた。

 

 

マナ    「ディーンさん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ビュン―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一発の紫色の弾丸がディーンを握りしめているワスプの手に当たり爆発した。

不意打ちの驚いたワスプはつい手を離してしまった。

 

 

バロン   「青髪ぃいい!!!走れぇええええ!!!!」

 

 

弾丸の飛んで来た方を振り向くと、ナギサに背負われた状態で片手にハンドガンを握っているバロンの姿があった。

 

 

そしてディーンはその言葉に従い急いでワスプから離れるため駆け出した。

 

 

 

ワスプはディーンをまた掴もうとするが下半身と左半身が埋まっているためその腕は届かず抜け出すことも出来なかった。

 

 

 

 

 

ワスプ   「……そんな……僕が……僕がこんなダサい…死に方………ウソだぁああああああああああ―――――――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――ドゥー――――ン―――――――――――――――――――

 

 

 

断末魔と爆音が醜く共鳴した。

 

 

 

爆風がディーンの背中を押し爆発に直接巻き込まれることはなかった。

 

 

 

ディーン  「………ハァ……ハァ……」

 

 

荒い呼吸が自分の生を実感させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管制塔の隣のビルの屋上でディーン達の様子を眺めている者がいた。

 

 

ピンクのセミロングヘアー、ディーラーのような服装、スペードが描かれた仮面―――五芒星(ペンタクル)の紅一点、『ラヴカ』と呼ばれている女である。

 

 

ラヴカ   「………哀れなものね………でも、おかげで今回は彼(ファング)の時みたいに『処理』する手間が省けたわ……」

 

 

その仮面が彼女の表情を隠すが、冷淡な口調はまるで仮面がそのまま表情なのではないかと思わせるほどだった。

 

 

ラヴカ   「それに今回は直に『彼女』を見れたしね……。…あのバンダナの彼との戦闘中に見せた黒いオーラ……やっぱり間違えないわ………。…フフ……ファングも惜しいことをしたものね…」

 

 

クスクスと笑い声を漏らすと、管制塔に背を向け歩き始めた。

 

 

ラヴカ   「……そう遠くないうちにまた会いましょう?………可愛い邪神さん?」

 

 

そういうと彼女の前の空間が歪み、その中へ吸い込まれるように消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間もしないうちにガーディアンズが到着し、ディーン達の保護、倒れているテロリストの回収、生存者の捜索が行われた。

 

 

犯人グループ・市街地の爆弾に巻き込まれた者も含め死亡者43名、負傷者147名と言う形でこの事件は幕を閉じた

 

 

お約束のようにディーンは病院に運ばれたが、今回はそこまで大きなケガが無かったので3日で退院でき、その後マナと二人リトルウィングへあいさつに向かった。

 

 

 

ナギサ   「あぁ、待っていたぞ!あの時は世話になったな!お互い大きなケガもなく安心したぞ!」

 

 

リトルウィングに着くなり笑顔でナギサが迎えてくれた。

 

 

ディーン  「まぁな…。つか、マナに至ってはほぼ無傷じゃなかったか?」

 

 

マナ    「え?!違いますよ?かなり傷ついたけど、バロンさんがレスタで直してくれたんです。」

 

 

ナギサはバロンはテクニックがそんなに優秀なものだっただろうか?と考えこもうとしたが、結局はあまり気にせずスルーした。

 

 

ディーン  「そういえば、黒スー……バロンはどこにいるんだ?あの時の礼を言いたいんだが……」

 

 

少し照れくさそうにするディーンの表情もスルーし、ナギサは事務所の方を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

バロン   「エミリア―!!何ですかこれは!?なんで片腕がサイコガンになってるんですかぁああ!!」

 

 

失った腕の代わりにサイコガンを携えたバロンが大声を上げて金髪の少女を追い回していた。

 

 

エミリア  「かっこいいじゃん!」

 

 

満面の笑みを浮かべ逃げ回るエミリアに対して、バロンは若干涙目だ。よほどサイコガンが嫌だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ディーン  「……ん、まぁ元気そうで安心したわ……」

 

 

ナギサ   「…あぁ、そうだな……。とりあえずウチの社長に会ってもらえるか…」

 

 

ディーン  「あぁ!よし、マナ行こう…」

 

 

マナ    「あ、はい!」

 

 

 

三人は事務所の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段、五芒星(ペンタクル)が会議をしている施設と同様の建物と思われるが、部屋が違っていた。その部屋にはリーダーらしき包帯の男とシエンが向かい合って座っていた。

 

 

シエン   「先ほど、ラヴカからワスプが敗北し死亡したとの連絡を受けました……」

 

 

仲間の死を悔やむような悲しい瞳を長髪とコートの襟の間から除かせた。

 

 

包帯男   「……そうか…ファングに続いて奴まで……」

 

 

シエン   「……万が一のことを考え、欠番を補充すべきでしょうか?」

 

 

包帯男   「…いや、ファングに任せていた『財の確保』もワスプに任せていた『工作活動』も、もう必要ない……。万が一強硬手段に出なければならなくっても、『最高』の能力を持つラヴカと『最強』の戦士である君………そして『最凶』のあの男が居れば、戦力としては申し分ない………」

 

 

『最凶』のあの男と言う言葉を耳にした瞬間、シエンは眉間にしわを寄せ嫌悪感を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ施設の地下室。牢獄のようになっているがほとんどが空である。

しかし、ただ一つ…一番奥の牢屋にはヒトが入っていた。

 

 

しかし、その右腕は異形に変異しており、その変異した腕でひたすら自分の心臓部分を突き刺そうと繰り返している。だが、身体に触れた瞬間、腕が体を透き通り空打ちとなっている。

 

 

 

 

 

???   「…………今日も……今日もお前は……俺を死なせてくれないんだな……?」

 

 

 

大きなため息をつくと焦点の合っていない瞳で虚空を見つめながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

???   「…………誰か……誰か…俺を…………――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――殺してくれ…!!

 

 

 




「英雄たちのウォーゲーム」終了です!


長い…長かった…。ついでに言えば急展開かもしれん…


何かあれば感想の方にお願いします。


次回はとりあえずインターストーリーを挟もうと思ってますのでよろしくお願いします!


それではまた次話で!
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