ファンタシースターポータブル外伝〜After the tragedy〜 作:烏山
~海底カジノ跡地 大ホール~
放心状態のマナから黒いオーラは止めどなく発せられ、それらはマナを瞬く間に覆い尽くし、黒い球体を形成した。
ラヴカ「…やはり、彼がキーになっていたのね… それともこの状況かしら?まぁ、それについては後で詳しく解析しようかしら………まずは凍結(フリーズ)させて保存しましょうかしら?」
不気味な笑みを口元に浮かべながら呟くと、後ろに控えている二体の不気味な生物のうち一匹をマナに向けて放った。
~どこかの施設~
薄暗い部屋に五芒星のリーダー格であろう包帯の男とシエンがテーブル越しに向かい合って座っていた。
包帯男「ラヴカが…単独行動か…… やはりな……」
シエン「…やはり…? わかっていたのですか!?」
テーブルを強く叩き立ち上がると、その鋭い眼光で包帯男を睨みつけた。
シエン「我々の計画の達成まであと少しのところでラヴカに『鍵』を持ち逃げされたのですよ!?彼女が裏切るのを分っていたなら…なぜ対策を打たなかったのです!?」
包帯男「…シエンよ……これも私の計算の内だ……」
シエン「私にはわかりません!!………ラヴカは……私の手で止めます……」
包帯男に背を向け立ち去ろうとするシエン。その手には先端が鋭く光る長刀か長槍のような武器を強く握っていた。
包帯男「……落ち着けシエン……… お前が行ったところでどうなる? 返り討ちに遭ってお前は死ぬ…… それこそ私の計算の外だ……」
シエン「……私が死ぬ?どういうことです?」
包帯男「…そうか…お前はヤツの能力を知らないのか……」
シエン「…えぇ、『最高の能力』としか…… ですが、戦闘能力は私の方が優れていると聞いていますが…?」
包帯男「確かに戦場出身のお前の方が身体能力、武術の心得に置いては上であろう…… しかし、ヤツは…ヤツの能力はその常識が一切通用しない…」
シエン「どういうことです?」
包帯男「OSによって得られる能力は基本は一つ…お前のような変り種もあるが、やつはその例外に当たらない…だが、ヤツの常識を超越した情報処理能力と演算能力によって…やつは一つの能力であらゆる神業を使うことができる……」
シエン「……神業…?…彼女の能力とはなんなのです?」
少し間を開けて、包帯男はゆっくりと口を開いた。
包帯男「氷のOSによる『空間の凍結能力』……一定空間を停止させる力だ……しかし、やつはこの能力を応用して様々な現象を起こす…。一つは『凍結(フリーズ)』。これは基本的な技で単に能力を使っているだけだ。能力の影響をうけた空間にあるものはどういう力を与えても動くことはできなくなる。まるでそこだけ時間が止まったようにな…。これを簡易応用したもので目の前の空間に凍結をかけて防御する『遮断(シャットアウト)』があるな…。」
シエン「では、長距離移動を可能とするあの能力は…?」
包帯男「『接続(リンク)』……これは凍結能力の解除……『空間凍結の解凍』を応用した技で元々繋がっていない空間のワープホールを解凍・編集し、直接繋げる能力だ。OSのコントロールの他にもかなり高度な座標演算能力が必要となるだろう…」
シエン「…………」
包帯男「そして……最も恐れるべき能力……『消去(デリート)』だ…… 選択した空間を消滅させる……正確には原子、分子の単位で解凍・分解しているワケだ… もちろんどんな防御も通じない…… ただ、少々情報処理に時間がかかるようだ……」
シエン「ならば、処理中にヤツの首を取れば………」
包帯男「可能だろうな…… ヒトの姿ならばな…… しかし、奴が覚醒しSEEDフォームの姿になった時……演算スピードは10倍ほどに跳ね上がる…… しかも接続媒体が手から素早く動く鮫に変わる……噛まれれば一瞬で消されるだろう………」
シエン「……一瞬……?!」
包帯男「他にもダメージを相手の体に直接流し込む能力や、自分の受けた傷を外部に取り出す能力もある…… おそらく現存のSEEDを含む全ての生物の頂点に立つと言えるな………」
シエン「…ならば、どうやって『鍵』を奴から奪うのです!?」
包帯男「……『現存の生物』……ならばな………」
~海底カジノ跡地・大ホール~
黒い球体と化したマナに向かってラヴカの鮫は放たれた。綺麗にならんだ牙の生えた口を大きく開けて球体に噛みついた。
ガジッ!!!
凍結が完了したのだろうか?黒い球体はそのまま動かなかった。しかし、噛みついた鮫もピクリとも動かなくなった。
ラヴカの表情に微妙な焦りが現れていた。
ラヴカ「(どういうこと?凍結されない……構造はダークファルスの核と酷似しているのではないの?……それどころか媒体が動かなくなった……)」
次の瞬間、噛みついていた鮫が真っ白に染まり風化したようにボロボロと朽ちていった。
ラヴカ「(どういうこと!?)――――ッ」
声を出しそうになったがどうにか抑え、黒い球体を観察する。すると、黒い球体の中からマナが姿を現した。
しかし、髪は真っ白に変色し、肌も血の気の引いたように青白くなり、両腕は白い翼のようなものに変異し、頭の上には神々しく輝く天使の輪のようなものが浮かんでいた。
球体から完全に抜け出すと、相変わらず虚ろな目で虚空を見つめたままぼそぼそと何かを呟きながらゆっくりとラヴカに歩み寄り始めた。
ラヴカ「……あれが覚醒した『鍵』ね………邪神と言うより天使ね………。……それよりも媒体が破壊されたのはなぜ?演算のミス?そんなことは無いわ……。仮に演算が失敗していてもそれだけで崩壊するなんて………」
原因を考えている間にも覚醒したマナはラヴカに近づいている。そして、ある地点に着くと歩みを止め闇のテクニックの唱える時のように黒紫のフォトンを散らし始めた。そしてマナの前に巨大な黒い球体が出現した。闇のテクニックメギドであるが、その大きさは本来もものの10倍を超えている。
ラヴカ「……何をするかと思えばテクニックね………なるほど、さっきのは強力なメギバースを受けたのね………確かに規格外な大きさだけど所詮はテクニック………いくらでも対応策はあるわ……… 大人しく私のものになってくれないかしら?」
正面にローブで覆われた手を伸ばし、空間を固定させた。絶対防御能力『遮断(シャットアウト)』である。それもヒトの形態で使ったものよりも圧倒的に範囲が広く分厚く壁と言うよりも一定空間をそのまま盾にしたと言える。SEEDフォーム形態の演算能力だからこそここまでのことを一瞬で行なえるのだろう。
ビュウウウウウウウ!!!!!
そんなことを気にもかけないようにメギドは強風の渦巻くような音を立てラヴカに向かって発射された。飛んでいくスピードも大きさに似合わず銃弾のような速さである。
ラヴカ「速いわね……… でも、この壁は破れない………」
余裕の表情を浮かべ、巨大な闇のテクニックを迎え撃つ。しかし、その表情はすぐに失われた。
ラヴカ「……えっ?」
メギドが凍結された空間を飲み込んだのだ。
ラヴカ「…!!そんなバカな!?………!!!」
なぜ凍結した空間にテクニックが侵入できたかなど考える間も与えずメギドは猛スピードでラヴカに向かって行く。とっさにラヴカは『遮断』から『接続』に切り替えた。
どこか違う場所へ転送しようとしたのだ。
ラヴカ「……これなら…………えっ…?」
びゅううううううううう!!!!!!
黒紫の巨球は歪んだ空間も無視するかのように飲み込み、まっすぐラヴカに向かって進み続けた。予想外のことにラヴカはかわすタイミングが遅れてしまい片腕をメギドに飲まれてしまった。
ラヴカ「……!?」
しかし不思議と痛みは感じない。本来なら強力な重力波が渦巻いているメギドに腕を飲まれれば骨は粉々に砕け、肉も原型を留めないほど破壊されるだろう。
気になってメギドに触れた部分に目を当てる。
ラヴカ「……!?!?…ヒッ!?」
無いのだ。飲まれた部分が。血が出ていなかったり痛みが無いのは彼女がSEEDフォームだからではない。
ラヴカ「…何……コレ………」
失われた部分を見つめる。しかし、彼女の表情は絶望では無く狂気に満ちていった。
ラヴカ「…………フフ………フフフフフフ!!!!貴女最高よ!!この私の知識に存在しない全く新しい構造……そして、今のテクニックには私の能力を応用させていたのかしら?空間ごと消し飛ばしたわね?『消去(デリート)』のように……フフフ………やはり目的の一歩手前だけあって想像以上で嬉しいわ…… でも………」
笑い声から厳格な声色へ一変させた。
ラヴカ「……ここまでよ………」
ディーン「………ヴィ……ン………。…………マ……ナ……?」
キャラクター設定
シエン・ロン
種族:ニューマン(男性)(SEEDフォーム)
年齢:不明(見た目年齢10代後半~20代前半)
身長:180
体重:67kg
ICV:緑川光
詳細
五芒星の一角であり、唯一包帯男に忠誠心を持っている冷静かつ熱い男。ファングとは仲が悪かったが仲間だとは思っていた。どういう経緯でSEEDフォームになり五芒星になったかは不明(今後語られるかも)。能力として判明しているのは青炎の生成(性質は不明)のため、OSの属性は炎と思われる。武器は金属製の長槍を愛用。意外と作者のお気に入りキャラクターだったりする。今後の活躍に期待w