ファンタシースターポータブル外伝〜After the tragedy〜 作:烏山
~ギルド・エントランス~
ヤマト「まだ殺し足りぬか!?虐殺者ホムラ!!」
蔑むようにヤマトは吐き捨てた。
見た目通りなのか、ヤマトは歴史好きな男だった。
そして、歴史の表舞台には登場しないが、大悪人として描かれているホムラ……
正義感の強い彼にとって最も忌み嫌う歴史上の人物の一人であった。
しかし、これに対してシエンは動じること無く答えた。
シエン「……その名は捨てた………私はペンタクルが一人………シエン・ロン………」
ヤマト「捨てた……?随分都合がいいでござるな?英雄・ギル・ドラグノフにやられて心を入れ替えたとでも言うのか!?」
これを聞いた途端、即座にヤマトとの距離を詰め、槍を一気に振り下ろした。
何とか刀で槍を止めたが、不利な体勢での鍔迫り合いになった。
ヤマト「………ぐぅ…!!」
シエン「………その男の名を口にするな!!!」
声は荒がせ、目は先ほどの落ち着きなど微塵も感じさせない凶暴なものへと変貌していた。
シエン「であぁあああ!!!!!」
一気に力を強めヤマトを刀もろとも両断しようとした。
しかし……
キィィイイイイイイイイイイイ!!!!!
刀を傾けその方向に槍を受け流した。
全力を込めた一撃をいなされ、シエンは一瞬、完全に無防備になった。
その一瞬をヤマトは見逃さなかった。いなした刀を捨て、脇差に素早く手を伸ばした。
タッ………
床を蹴る音だけが鋭く響いた。
遅れて聞こえた斬撃の音、捨てた刀が床に落ちた音と同時にシエンの脇から血飛沫が飛び散った。
シエン「ガハッ…………」
居合切り。それはディーンの高速の連続技とは違う、速さに特化した一撃。
ヤマト程の強者が使えばそれを目で追うことは愚か、隙ができた状態だったシエンは反応することすら許されなかったのだろう。
脇差とは言えかなり深いところまで斬られたシエンはその場に倒れた。
ヤマト「………サラバ………」
脇差を鞘に納めると後ろからボウボウと音がするのが聞こえた。
何事かと振り向くと……
ボォオオン!!!!!!!!!
ヤマト「!?!?」
突然ヤマトの背中が爆発した。
そして、倒れる中、彼は二色の炎を目にした。
一つは自分の身体を黒煙を上げて燃やす赤い炎。そしてもう一つはシエンを包み込むようにして激しく燃え上がる『白い炎』だった。
そしてシエンは白い炎に包まれたまま立ち上がった。
ヤマト「……何故……だ……!?………致命傷を………それに……拙者の背中が爆発……した……のは……!?」
シエン「………貴方は強い………そして、私もこれ以上貴方との戦闘に時間を費やすわけにはいかない………故に能力を使わせてもらった………立ち上がることのできないものをこれ以上痛めつける趣味はない……行かせてもらうぞ?」
槍を拾い上げると倒れているヤマトの脇を通り過ぎようとした。
その刹那、ヤマトはなんとか右腕を動かし脇差をシエンに突きつけた。
ヤマト「……待た……れよ……!!」
シエン「まだ動けたか……」
冷めた目でヤマトを見下した。
ヤマト「油断の多い奴……よ……胴を両断されたくなくば……ただちに去られよ…」
シエン「………残念だが……それは無理だな…」
シエンが瞳孔を開くと、またヤマトの背中の炎が爆発した。
ヤマト「ぐぁああああ!!!!!!!!」
シエン「………」
前に向き直るとそのまま何事もなかったように奥へ進んで行った。
闇の中の聖者が援軍と共に撤退し、ギルドメンバーも立ち去った今、エントランスには胴体がバラバラに砕け散ったヤマトだけがあった。
~ギルド・医務室前通路~
新型武器ワイヤードランスでジャンはクロムに先制の一撃を決めた。
しかし、フォトンアーツで強力な電撃を受けてなお立ち上がるクロムのタフさに、ジャンは少々焦りを感じていた。
ジャン「(ぶっちゃけ今ので決まって欲しかったんスけどね……長期戦になれば戦闘経験値の差が出てこっちが不利になるッス……次で決めないと…)」
クロム「……くくく……なるほどワイヤードランス……なかなか面白い武器ですね……伸縮自在なワイヤーによって変化する間合いで敵を翻弄し……捉える……今までの武器には無い戦術ですね……一本取られましたよ…」
ジャン「………」
クロム「ですが、この狭い通路ではさっきのように不意を突かなければもう私を捉えることはできないでしょう………」
ジャン「(やっぱりそうッスよね………)……クッ……」
クロム「さて……少々オイタが過ぎましたね………苦しい苦しいお仕置きの時間です!!」
そう言うと持っているロッドを握りフォトンを解放した。すると今度は衝撃波でなく、ロッドの先端から紫色の霧のようなものが発生した。
その霧は瞬く間に通路全体に広がりジャンに迫った。無論、霧に紛れてクロムの姿は目視不可能である。
ジャン「……このヤバい感じ……毒ッスか…?」
クロム「テクニック『ダム・ディーガ』!!!毒霧を発生させるテクニックです!!屋外で使用してもすぐに消えてしまうのですが、このような狭い空間なら換気されることは無い!!さらに私の姿を隠す!!もう貴方には奥へ逃げる以外手段はありませんよ!?」
毒霧の中で両手を高笑いしているとジャンのいる方向から何か音がした。何かが回転するような、キュルキュルというような音だ。
クロム「ん?」
すぐにその正体は分かった。回転しながら飛んでくる瓦礫だった。さっきのノス・ディーガによって壁が破壊された時できたものだろう。
それは瞬く間にクロムの眼前に迫り……直撃した。
ブァ――――――ン!!!!!!!
クロム「がはぁあああ!!!!!!」
クロムのガスマスクにヒビが入った。
クロム「あああああああ!!!毒がぁああ!!!あああああ!!!」
片手で顔を抑えながら慌ててテクニックを解除した。毒霧が晴れるとお互いの姿が確認し合えた。
ジャン「見事に命中ッスね☆…フォトンアーツ『アザーサイクロン』!!掴んだものを回転させて旋風を発生させて投げる技ッス!!別に捕まえるのはアンタじゃなくてもいいんスよ!!」
クロム「このクソガキがぁああああああ!!!許さねぇえええええ!!!!」
突然口調を変えた。その声の振動で彼のガスマスクの部分は完全に砕け散り中身が露わになっていた。
それと同時に彼の周りに黒いオーラも発生した。
ジャン「!?なんッスか!?」
クロム「ブッ殺してやるぜぇえええええ!!!!!!!!」
シエン「………そこまでだ……クロム……」
クロム「!?……教祖…さま……」
突然後ろから声を掛けられ振り返るとそこにはシエンが居た。慌てて口調を戻すと、黒いオーラも消えた。
そして新手の登場でジャンの焦りはますます加速した。
シエン「……クロム……こんなところで何をしている………」
前髪と襟の間から覗いている眼は鋭いものだった。
クロム「…はい、危険因子と考えられるシルル・カリバーに止めを刺そうと思いまして……」
フゥとため息をつくと冷たい目をクロムに向けた。
シエン「…余計なことを考えるから子供に遅れをとる……もういい…お前は戻れ……後は私が引き受ける…」
クロム「……ですが!?」
ボゥ!!
クロム「!?」
突然クロムの顔の前に赤い炎が発生した。
シエン「……聞こえなかったのか……?戻れ……いいな?」
クロム「……た、ただちに!!」
クロムはそそくさとその場を去って行った。
残ったジャンとシエンは数秒間にらみ合いが続いていた。
ジャン「……アンタが大将スか?……うちのギルドになんのようスか?」
シエン「……それを君が知る必要はない……勇気ある少年よ……」
ジャン「…!?勇気あるって……舐めてんスか!?」
シエン「……いや、これは本心だ……仲間のためによく戦ったな……君のおかげで扉の向こうの二人の命は救われた……」
ジャンの背後の扉を指さした。
ジャン「(何でコイツ中のことが……)今度はアンタがやるんスか?」
シエン「……私は彼らには用がない……しかし、私の目的を言ってしまうと君は私の邪魔をするだろう……だから……」
ボゥ!!
ジャン「!?」
突然ジャンの足元から黒い炎が燃え上がった。
ジャン「ぎゃあああああ!!!!あっつぁああああああ!!!!!……てアレ?熱くない……けど、動けない!?」
シエン「……悪いが進ませてもらうよ………」
ジャン「待て!!!くそっ!!何をしたッスか!?」
シエンはまたも黙って奥へと進んで行った。
ペンタクルvsギルドメンバーはひとまず決着ですかね?
これからどう話が動くか?
次回はマナの過去に迫る予定です。でわでわ