二時間目の授業も終わり、トモルはクラスを後にして図書室に向かった。 三時間目四時間目は一般学科の為、授業を免除されているトモルは図書室で自習することにしたのだ。
図書室に入り窓側の席に座るとトモルは参考書とノートを取りだし勉強を始めようとした瞬間だった。
背後から伸びてきた手で目をふさがれ
「だーれだ?」
女性特有の柔らかい手の触感に、聞き覚えのある少女の声。
「どういうつもりだ更識さん?」
「ぶーーー、昔みたいに刀奈って呼んでよトモル!」
「ハイハイ、わかったよ刀奈。」
後ろを振り向くとそこには幼馴染みの少女、更識刀奈がいた。
「それで、授業をサボってきてどういうつもりだい刀奈?」
「残念ながら生徒会長は生徒会の仕事があるときは授業が免除されるの。だからサボリじゃないの! ここに来たのはトモルに会いに来たの。」
「そう言えば、最後に会ったのは正月だったな。 刀奈は全寮制のIS学園だし、簪も受験ということで、遊びに行くのを控えたんだよな。」
「ぶーーー寂しかったんだからね! でもトモルがここに来たから、何時でも会えるから嬉しい。」
「俺としたら、ここに来たくはなかったんだけどな。それでワザワザ再会の挨拶をしに来たんじゃないんだろ?」
「用件はふたつ。ひとつは今日の昼食の御誘い、生徒会室で一緒に食べましょう。虚ちゃんに本音ちゃんに簪ちゃんも呼んであるから。」
「わかったよ、みんなで食べようか。」
「やったーーー! それからふたつめは、トモルに生徒会に入って欲しいの! 生徒会って私と虚ちゃんと本音ちゃんしかいなくて人手不足なんだ、お願いトモル。」
「しょうがないな、刀奈の頼みとあっては断れないな。」
「やったーーーーー!!!だからトモル大好き❤」
そう言って抱き着いてくる刀奈。
「お礼といっては何だけど、ISの操縦を教えてあげるわよ。」
「助かるよ刀奈。クラスにイギリスの代表候補生が居たから指導を頼んだんだが、彼女も自分の訓練もあるだろうし、ずっと頼るのも悪い気がしてたんだ。」
「そんなトモルに朗報よ、ロシアの国家代表である私に加えて日本代表候補生の簪ちゃんも力を貸すわよ。」
「簪が日本代表候補生になったのか、凄いな。」
「しかも序列第3位よ、専用機も与えられる事になって今開発されているのよ。」
結局トモルは勉強することなく刀奈と話し込んで三時間目を過ごした。
三時間目が終わり休憩となり、刀奈が生徒会室に移動しようと誘ってきたので、図書室を出ようとした時だった
「ここにいたのか真道、と更識? 何故お前がここにいる?」
「私とトモルは幼馴染みなんです。暫く会ってなかったので顔を見に来たんです。」
「まさか更識と幼馴染みとは驚いたな・・・・と、すまないが真道、四時間目は最初の内は教室にいてほしい。クラスの代表を決めなければならないのでな。」
「その事ですけど織斑先生、トモルには生徒会に入ってもらう事になりました。」
「何? 相変わらず抜け目が無いな更識。 それならば真道は除外しなければならないな。」
「と、いう事で織斑先生、お願いします。」
「わかった。それでは、真道遅れるなよ。」
千冬はそのまま図書室を後にした。 残されたトモルと刀奈も図書室を後にした。
「なあ、さっき言っていたクラス代表何だけどクラス委員長みたいなものか?」
「そうね、概ね役割は一緒よ。 ただ1つだけ特別な事があるのIS学園ならではの。 1学期と3学期に学年別にクラス対抗戦があるの、それにクラス代表として出場するの。」
「なるほど。それだと代表候補生、それも専用機持ちがなるのが適任というか有利だな。」
「たぶん殆どのクラスはそうなると思うけど、トモルのクラスはわからないわよ。一応、専用機を持つイギリス代表候補生と簪ちゃんと同じ日本代表候補生はいるけど、何せトモルと織斑君がいるから。」
「なるほど、男性装着者をたてて注目を集めようとするわけか。それで刀奈は俺を生徒会にいれた訳か。」
「そういう事。」
「なら、刀奈に感謝しないとな。」
そんな会話をしながら二人は途中まで一緒に歩いていく。
トモルが教室に戻ると一夏が近付いてきて
「どこに行っていたんだよトモル! 初日から授業をサボるなんて!」
相変わらず呼び捨ての一夏に顔を顰めて
「最初に織斑先生が言っていただろう、俺は既に高校卒業資格を持っている。だから一般学科は試験も含めて免除だと。」
「えっ! そんなのズルイぞ! 入学した以上はみんなと同じく授業を受けて試験を受けないと!」
「ズルイもなにも俺が決めた事じゃない。学園が決めた事だ。つまり学園からすれば俺は既に一般学科に関しては問題無いと判断したんだ。」
一夏はまだ何かを言おうとするが、ここでもまた予鈴が鳴り一夏は渋々席に戻る。 何度も一夏に絡まれてトモルはうんざりしていた。 そこに千冬と真耶が入室してきた。
「さて授業を始めるが、その前に再来週に行われる学年別クラス対抗戦を踏まえて、クラス代表を決めなければならない。クラス代表とは簡単に言えばクラス委員長と同じだ。ただ、先程言ったクラス対抗戦にクラス代表として出場してもらう事になる。」
そう千冬が告げる。そして真耶が補足するように
「クラス代表になりますと特別な理由が無い限り1年間続けてもらいます。 それから参考までにこのクラスには2名の代表候補生がいます。イギリス代表候補生セシリア・オルコットさんと日本代表候補生篠ノ之箒さんです。」
「先に言っておくが、篠ノ之は篠ノ之束の妹にあたるが決して束の意向を傘にきて代表候補生になった訳ではない。本人の血の滲むような努力が実り掴んだ地位だ。くれぐれも勘違いするなよ。自薦他薦は問わない、なお他薦されたものは辞退できないからな。誰かいないか?」
と千冬がそう言った所でトモルは挙手をし
「織斑先生、申し訳ありませんが俺は 「そうだったな。」」
「もう1つ言っておく事があった、真道は生徒会役員に任命されたのでクラス代表にはなれないので除外する。」
「先生、何故クラス代表になれないのですか?兼務することは出来ないのですか?」
一人の生徒が質問する。
「残念ながらIS学園の生徒会というのは少し特殊でな、各イベントでは運営等にほぼ掛かりっきりになるので兼務は不可能なのだ、そこは理解してくれ。」
そう織斑先生が言って殆どの生徒が納得する。
「それなら織斑君を推薦します!」
「私も織斑君!」
「私も!」
と次々と一夏の推薦が上がる。 推薦されている当の本人に理解していないのか、キョトンとした表情をしている。
「先生、俺はイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんを推薦します。彼女は専用機を所持してますので、適任かと思います。」
「推薦ありがとうございます、真道さん。それでは私からも篠ノ之箒さんを推薦させていただきます。以前イギリスで模擬戦の映像を見せていただきましたが彼女の近接戦闘の素晴らしさは息を飲みました。」
こうして一夏とセシリアと箒がクラス代表として推薦された。 ようやく事態を理解した一夏が
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ千冬姉!俺はそんなクラス代表なんてやらないぜ!」
シュッ! キュルキュルキュル、バシッ!「痛ってーー!」 キュルキュルキュル パシッ!
千冬が投げた出席簿はブーメランの如く回転しながら一夏の頭に命中すると再び千冬の手に戻る。
「馬鹿者、織斑先生だ!それに他薦された者に辞退する権利はない。」
「くっそー、それなら、えーーーと、そうだ俺はトモルを推薦するぜ!」
「織斑、お前は私の話を聞いていなかったのか? 先程言ったであろう、真道は生徒会への所属が決まったので代表にはなれないと。」
「何だよそれ! 何でトモルだけ優遇されるんだよ!」
「優遇? なんの事だ? クラス代表になれない理由は確りと説明したではないか? ちゃんと聞いて理解していなかったのか?」
「それだけじゃねえよ!授業をサボっていいとか、おかしいじゃねえか!」
「サボる? 何の事だ? もしかして一般学科のことか? それも今朝説明したはずだ、真道は高校卒業資格を既に有しているから一般学科の授業と試験が免除されたと。 それとも織斑何か、お前は真道を留年生のような扱いをしてもう1度授業を受けさせろと言うのか?」
怒気を含めた千冬の言葉に口を閉じる一夏。 実際に一夏は心のどこかで無意識にそう思っていた。
年上の男性でありながも、自分と同じ学年にいる=留年というイメージを自分の中で確立させていた。
そうすることで、2対多数という男性の不利的状況下の中で少しでも自分の優位性を確立させて、自我を保とうとする無意識の行動があったのだ。
そして千冬に指摘されたことで、無意識におこなっていた行動をようやく自覚した、だがそれを公で認めれば自分の卑しさを露呈することにもなるので黙るしかなかった。
「織斑、あえて言わなかったが真道が卒業した高校はなK成高等学校だ。そして真道はそこを首席で卒業した。ここまで言えば真道の学力の高さは理解できるだろう。」
千冬の挙げた高校の名前にクラスメイトの殆どがざわめく。そう日本でも有数の偏差値を誇る高校なのだから。 流石の一夏もその高校の名前は知っておりトモルと自分には既に学力というものに差があることをようやく実感した。
「さて、話は逸れたが候補者は織斑、篠ノ之、オルコットの3人か。ここはIS学園らしく模擬戦で決めようと思う。ついでと言っては何だが真道、お前も代表決めとは無関係に参加してくれ。」
「織斑先生どういう事でしょうか?」
「男性装着者の実戦データを早めに出してくれと要請が来ていてな、情けない話だが学園の方では強く拒否出来なくてすまない。」
「わかりました、そういうことなら仕方ありませんので参加させていただきます。」
「他の3人もいいな!試合は1週間後の月曜日の午後からだ。それまでに各自準備をしておくように。」