昼休みとなり、何かと絡んでくる一夏を避けてトモルは生徒会室に向かった。
「それにしてもまさか本音ちゃんが同じクラスだったとは、気づかなかったよ。」
「むーーー、トモトモ酷い!私に気づかないなんて。」
「ゴメンゴメン、悪かったよ。今度学食でプリン奢るから。」
「それじゃあ許してあげる♪」
教室を出た所で幼馴染みの少女の一人、布仏本音に呼び止められて生徒会室に一緒に向かう事になったのだが、トモルは本音が同じクラスとは呼び止められるまで気がついていなかったのかのである。
「それにしても本音ちゃんも生徒会役員だったとは、驚いたよ。」
「お嬢様が決めたの、あと私のお姉ちゃんも生徒会役員だよ。」
本音の姉、布仏虚も役員なので更に驚くトモル。
「見事に身内で固めたな。 というか身内で固めざるおえないと言うことか?」
トモルの疑問に本音は答える事なく笑顔のまま歩く。
生徒会室の前につき扉をノックする本音。 扉が開き中から本音の姉、虚が姿をみせる。
「・・・・トモルさん、本音、ようこそ生徒会室へ。」
二人を出迎えた虚、しかしトモルはその顔に翳りをみた。
「虚さん、どうかしたんですか?」
「実はちょっと・・・・」
「「ん?!」」
室内を見ると刀奈と刀奈の胸にすがる刀奈に似た雰囲気を持つ少女、更識簪がいた。
「どうしたんだ刀奈、簪?」
トモルの問い掛けに刀奈が
「とりあえず中に入ってちょうだい。」
刀奈に促されて室内入って扉を閉める。 そこでようやく簪が顔を上げてトモルに気づく。
「ト、トモル兄・・・・トモル兄!!」
簪は涙を流しながらトモルの胸に抱きつく。
「私の・・・私の・・・私の・・・専用機が・・・・うわぁぁぁぁぁーーー!!!」
堰を切ったように泣きはじめる。
「どういう事だ、刀奈?」
簪をなだめながらトモルは刀奈に問い掛ける。
「実は簪ちゃんの専用機を作っている倉持技研から簪ちゃん宛に連絡があったの・・・・簪ちゃんの専用機の開発停止と計画の無期限延期という連絡が・・・」
「はっ?! 何で急にそんな事に!」
「倉持技研が織斑一夏君の専用機を開発することになったそうです。 そしてその開発に全ての力を集約することにしたそうです。」
「・・・・・開発期間の延長というならまだ理解できる、だがいきなり開発停止と計画の無期限延期というのは理解出来ない。」
虚の説明に疑問を返すトモル。そしてそれに刀奈が答える。
「現在、倉持技研に与えられているISコアは2つ。過去に打鉄という第2世代型量産機を作り上げた実績はあるけど、世界の企業に比べて第3世代機の開発に遅れを取っていた倉持技研は昨年、日本から割り当てられていたISコアを3つから2つに減らされたの。そしてどの企業も研究所も最低1つはコアを手元に残すわ。 それが簪ちゃんの専用機の開発停止と計画の無期限延期に繋がったの。」
「・・・・・・つまり倉持技研は代表候補生の専用機を作るよりも男性装着者の専用機を作りデータを取る事と男性装着者の専用機を作ったという名声を選んだのか。」
無言で頷く刀奈と虚。 男性装着者のデータという美味しい餌に食いつき一気に名誉挽回にあたりたい倉持技研の気持ちもわからなくは無い。だが、最初に受けていた仕事を辞めて・・・いや投げ出して別の仕事を受けるのはプロ失格と思わざるおえない。
「なあ刀奈、これって重大な契約違反になるよな。」
「それがね、あくまでも一時的な開発停止であり織斑君の機体が完成し、必要なデータが入手出来れば開発を再開するから、それまで計画を延期するってことで計画そのものが無くなるわけではない。 期間がわからないので無期限としているだけだ。と言うのが倉持の言い分で、これだと契約違反とは言えないのよ。」
「倉持からすれば簪から辞退を申し出るのを待っているわけか・・・・」
簪から辞退したとなれば倉持のイメージにも傷はつかないという訳だ。
「ねぇ、トモトモ。何とかならない?このままじゃかんちゃんが・・・・・」
本音の言葉にトモルも刀奈も虚も何も言えない。
♪~ ~♪~♪♪♪~ ~♪
トモルのスマホが着信を告げる。ポケットからスマホを取り出したトモルは画面に表示されている相手に驚く
「もしもし真道です。」
『お久しぶりです真道さん。』
「突然の電話、いったいどうなされたのですか久見・ジェファーソン会長。」
電話の相手はエディフィの会長、久見・ジェファーソンだ。
『先程、わが社に情報が入りまして。貴方の旧知の少女、更識簪日本代表候補生の機体が開発延期・・・いえ実質の開発打ち切りというのを。そこで提案なのですが、彼女の専用機をわが社で開発したいと思うのですが、聞いていただけますか?』
あまりにもタイミングのよすぎる一報に驚くトモル。 だが、直ぐ様簪に
「簪、よく聞いてくれ。今、エディフィの会長から電話がかかってきている。内容は君の専用機をエディフィで作りたいというものだ。」
トモルの突然の話に四人とも言葉を失う。
「ト、トモル兄、それって・・・・本当なの?」
『更識簪さんですね、初めましてエディフィ会長の久見・ジェファーソンです。』
「さ、更識簪、日本代表候補生です。」
スマホから聴こえてきた声に慌てて答える簪。
『今、真道さんにお伝えした通り、貴方の専用機をわが社で開発したいと思うのですがよろしいでしょうか?』
「その、何故なんですか? 何故私の専用機を?」
『答えは簡単です。貴女が優秀な人物だからです。 わが社は優秀な人材を常に求めています。技術者しかり事務員しかり営業社員しかり、そしてIS操縦者しかり。 特に優秀なIS操縦者を抱えるということはISの開発に優位に働きます。いくら機体を開発した所で操縦者が二流三流なら機体の性能を完全に発揮することが出来ません。その為にもわが社は常に優秀な操縦者を求めています。そして貴女は私達の期待に答えられる人材として以前からリストアップされていました。』
スピーカーモードにしたスマホから聴こえてきた久見の話に生徒会室にいた面々は釘付けになる。
『ですが、一足違いで倉持技研が貴女を押さえました。 それでもわが社は貴女を諦めきれずにずっと倉持の動向を伺っていました。そしてチャンスが訪れた。』
久見の話に徐々に簪の瞳に力が戻ってくる。
「どの位の期間かかりますか?」
『わが社には既に幾つかのタイプの機体がロールアウトを待っています。コアを登載して微調整すれば早くて1週間で完成します。 もし、貴女の希望があるならそれに添えるようにカスタマイズします。 その内容によってはずれ込みますが最長で2週間、クラス対抗戦には間に合わせます。』
「!! わかりましたお願いします。」
『ありがとうございます。それでは明日、そちらに開発主任と担当職員を向かわせますので、そこで詳しく打ち合わせをお願いします。』
「いえ、此方こそチャンスを下さりありがとうございます。このご恩は稼働データで確りお返しします。」
『それは楽しみにしております。それでは失礼します』
そこで電話は切れた。 一連の騒動は意外な形で決着した。
簪の専用機の問題でゴタゴタしたものの、その後は仲良く昼食を取ることが出来た。
5時間目の一般科目が終わり6時間目がIS理論の為、再び教室に戻ったトモル。
予鈴がなる直前に教室に入った為、一夏に絡まれることはなかった。
授業もつつがなく終わり放課後、トモルは生徒会室に向かおうとしていた。 だが、
「トモ、じゃなくて真道さん! どこに行くんだよ! 頼むから勉強教えてくれよ!」
流石に少しは学習したのか名前の呼び捨てではなく、名字のさん付けでトモルに声をかける一夏。
「いい加減にしてくれ織斑君。織斑先生が俺に言っていた事は君も聞いていたはずだ。だから俺はいっさい助力しない!」
強い口調で拒絶するトモル。
「そんなの黙っていればわかんないって「ほう、誰に黙っていればわからないのだ?」 そりゃ勿論千冬姉・・・ えっ?!」
振り向く一夏、その頭に千冬の出席簿が炸裂する。
バコォォォォーーーーン!!
「いってーーーーーー!!!」
うずくまる一夏。それを見ながら千冬が
「お前は何度言えばわかるのだ、学校では公私の区別をしっかりつけろと。それから授業の時にいったはずだ、真道の力は借りるなと!」
眉間を揉みほぐしながら千冬は一夏の襟を掴むと
「さて織斑、重要な連絡事項が出来た。お前には今日から寮に入って貰う。」
「えっ?! 暫くは自宅通学だって言われてだけど?」
「日本政府とIS委員会とIS学園の三者で協議した結果、登下校の護衛には不安が残るということで急遽、寮の部屋割りを調整し、今日から入寮してもらう事になった。ただし、女子生徒と同室となった。その辺りの事も含めて心して行動するように。荷物は私が用意してきた、もっとも2週間分の着替えとスマホの充電器しか持って来なかったから、後は休みの日に外出届けと護衛要請書を提出して帰宅した際に揃えろ。」
「わ、わかりました。ところでト、真道さんは寮には?」
「心配せずとも真道は既に入寮が決まっていて、荷物も運びこまれている。 真道、お前はもう行っていいぞ。」
「わかりました、それでは失礼します。」
そう言ってトモルは教室を後にする。 トモルについて行こうとする一夏だが、千冬に襟を捕まれて動く事が出来ない。
「えっと、俺も行きたいんだけど?」
「その前に織斑、お前には大事な話がある。参考書の件だ。」
その瞬間、一夏の顔は青ざめていく。千冬は持ってきたバックから一冊の分厚い参考書を取り出す。
「さて、織斑。確かお前は授業の時に参考書は間違って捨てた、と言っていたな? だが家を警護していたSPに確認した所、ゴミとして参考書が捨てられた形跡はなかったと言っていた。 そして私が着替えを取りに帰り、お前の部屋に入ったところ参考書がマンガの下敷きとなってベッドの横にあった。 しかもビニール梱包されたまま。」
一夏に参考書を見つけた時の状況を淡々と告げる千冬。だが無表情な顔とは引き換えに見ているだけで確りとわかる怒気は感じとれた。 それは一夏にも十分伝わっていた。
「・・・・・・勉強を見て欲しいのだろう織斑? ならば特別に今日は私が直々に見てやろう。今から寮監室に向かうぞ。 すまないが山田先生、今日の残りの仕事と織斑と同室となる者への説明を頼む。それから今日は部屋には戻らぬ事もな。」
「わ、わかりました。全てやっておきます。 その寮についての説明は?」
「それは此方で説明しておきます。それから申しわけありませんが、夕食の手配もお願いします。」
「わかりました、それではいってきます。」
そう言って真耶は教室を後にする。
「さあ行くぞ織斑。」
一夏は千冬に引き摺られるように教室を後にした。
その夜、寮監室からは千冬の怒鳴り声と一夏の悲鳴が絶え間なく聞こえてきた。
エディフィー
日本でも有数のISメーカー。元は下請けを中心としていた会社だったが、久見・ジェファーソンがトップに立つと急成長し、ISメーカーとして頭角を現す。
また独自の技術によりEOSを上回るパワードスーツ【エクテアーマー】を開発し、準ISの扱いで自衛隊に防衛装備として採用される。更に打鉄を上回る性能と操作性を持つ第2世代量産型IS【ネモ】を出したことでISメーカーとして地位を確立。ISコアの再分配により倉持技研を上回り、日本トップとなるIS企業となる。
エクテアーマー
エディフィーが開発した準ISともいえるパワードスーツ。 EOSと違いIS並のパワーアシストに完全装甲、ビークルモードへの変形、長時間活動といった高性能を誇る。SEや量子変換等が無いIS・・・準ISの異名を持つ。また準ISと言うだけあり対ISとの模擬戦において第2世代IS1機VSエクテアーマー6機で引き分けに持ち込む程の戦闘能力を持つ。 現在は日本の自衛隊に防衛装備として配備されており、これにより日本はIS以外の防衛能力として世界トップクラスを誇る事に。
戦闘機型エクテアーマー【バードマン】:戦闘機への変形機構を持つエクテアーマー。現在はハリケーンMKⅢが稼働している。
戦車型エクテアーマー【タンクマン】:戦車への変形機構を持つエクテアーマー。現在はクロコダイルMKVが稼働している。
戦闘ヘリ型エクテアーマー【フリーマン】:戦闘ヘリへの変形機構を持つエクテアーマー。現在はトルネードMKⅠが稼働している。
第2世代量産型IS【ネモ】:エディフィーが作り上げた完全装甲型のIS。完全装甲ながらも高い機動性能と操作性、更に豊富な装備を売りにしているIS。打鉄に替わり徐々に正式採用がなされている。
外見:MSネモ