魔法少女リリカルなのは~転生者は魔法剣士~ StrikerS編   作:ピーナ

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実は、過去最長の戦闘シーン。

……凄く疲れました。


第二十一話 男には何としても貫き通したい意地ってのがあるんですよ

50人の魔導師が空を飛んでいるのは正に壮観、その一言で済む。しかもエース、ストライカーと呼ばれる人たち。何処かで顔を見た事あるような人たちばかりだ。

 

『あー、聞こえるかしら、霧島三佐?』

 

こういう大規模な行事(これを行事と言っていいのかは微妙な所だけど)の時に参加者全員に配布される、個人用小型通信機から、レティ提督の声が聞こえる。

 

「聞こえてますよレティ提督。人事関係のトップの提督が直々に試験官ですか?」

『ええ。まあ、私は試験官の一人だけど。他に三提督とリンディもいるわ』

 

どんだけ大物が来てんだよ……。

 

『まあ、史上初のSSSランクの試験だから、見たい人は多いわよ。この映像は誰でも見れるようにするらしいし』

「心を読まないでください。分かりました。それで、始まるんですか?」

『その前に一言皆に開幕の挨拶をしてくれる?』

「はあ…」

 

挨拶……挨拶ねえ。

 

「それじゃあ……どうも、初めましての方は初めまして、会った事のある方はこんにちは。時空管理局本局古代遺物管理部機動六課副部隊長をさせていただいています、霧島八雲三等空佐です。本日は僕の試験にお付き合いいただきありがとうございます。……まあ、圧倒的に僕が不利ですけど……勝たせていただきますよ」

 

そう言って僕は笑みを浮かべると共に、意図的に抑えていた魔力を開放する。

全員一流だ。これで僕の力を理解したはず。ひるんでくれたら儲けものなんだけど……そう簡単じゃないよね。むしろ、全員が眼に闘志を宿らせている。……面白いねえ。

 

「レティ提督、始めてください」

『では……始め!』

 

 

 

「圧倒的ねえ…」

「そうね…」

 

モニター室でレティとリンディは八雲の戦いを見ている。

モニターの中の映像は一般の予想を裏切る(彼女たちにとっては予想通りの)展開になっていた。つまりは数的不利の八雲が優勢なのだ。

 

「元エースとしてはどう? リンディ」

「たしかに昔はエースだったけど、彼は私なんかより遥かに強いわよ?」

「それでも、基本指揮官、後方での仕事の私よりは戦い方とか分かるでしょう?」

「……そうね、魔導師は長期戦に置いて魔力量がどうしてもネックになるわ。桁外れの魔力を持つ八雲君でさえ」

「飛ぶだけでも消費するものね」

「八雲君とそのデバイスの叢雲が使える、便宜上『転移剣技』とでも呼びましょうか。それは対複数戦でも有効だけど、魔力量の問題は解決できない。どうしても、何処かで魔力の消費を抑える選択をしないといけない」

「彼なりの結論があれなのね。……無茶をするわ」

 

レティのいう『彼なりの結論』というのは、防御魔法を使わない。普段の身を護る魔力を全て攻撃に割り振るという選択だ。もちろん、回復もしない。

今の八雲は50人分の攻撃と自分の耐久力を天秤に掛けて戦っている。

 

「確かに無茶だけど、八雲君は確実に勝算ありきでやってるわね」

「まあ、そうでしょうけど……はやてさんは辛いわよね」

「はやてさんと八雲君はお互いがお互いの一番の理解者で、八雲君は自分が傷付いてはやてさんが悲しむのも分かっているけど、これは彼にとって譲れない物で」

「はやてさんはそんな彼の事が分かってるから自分の気持ちを押し殺して、彼を見送り、これを見守っている…か。やっぱりお似合いの二人よね」

「ようやく結婚するみたいだしね。娘さんも出来たから私の所に相談に来るようになったわ。主にはやてさんが」

「私の所にもよ。八雲君はナカジマ三佐の所に行ってるみたいよ?」

「知り合いで男親が少ないし、仕方ないでしょ。ウチのクロノはまだ親として新米だし」

「あら、案外厳しいのね?」

「そう? 提督なんて忙しい仕事ついているから家の事はエイミィにまかせっきりだから妥当だと思うけど。……あら、面白くなりそうね」

「どうしたの? ……って確かに面白くなりそうね」

 

そう言ってモニターに集中する二人。一人の青年の大舞台は終わりに向かっていた。

 

 

 

「これで46人……疲れる」

『ですが、最後の4人が強敵ですよ?』

「違いないねえ。だってあいつら、ここまで手を抜いてやがったし」

『ですね。ですがそれは、マスターとの戦いを邪魔されたくなかったのでは?』

「嬉しいねえ」

 

叢雲と軽口を叩きながら、僕は残った4人を見る。僕のよく知る4人だ。なんてったって、六課での僕の同僚なんだから。

つまり、ラスト4人はスターズ&ライトニングの隊長と副隊長。個人名を出すなら高町なのは、フェイト・テスタロッサ、ヴィータ、シグナム。

 

「……んで、誰から来るの?」

「「私達だよ!」」

 

そう言ったのはなのはとフェイト。

 

「タイマンじゃないのかよ!」

「これは複数対一だよ? 問題ないよ」

「そうだけどさ」

 

正直、なのは&フェイトなんてやりたくない。なのはの誘導弾の雨とフェイトの超高速機動を同時に相手なんて普通にやってられない。

 

「まあ、良いか。始めよう!」

 

その言葉を言い終わった瞬間僕はなのはに向かって突撃を掛ける。転移魔法に魔力を割けるほど、余裕は無い。なにより、この二人には見せすぎているから、すぐに対応してくる。魔力の無駄でしかない。

不意打ち上等だ。僕には余裕なんてないし。

 

「甘いよ!」

 

僕となのはの間に割り込んでくるフェイト(真ソニックフォーム)。バルディッシュもライオットザンバーフォームで本気とか……。

よく見ると、なのはもエクシードモードでレイジングハートもブラスターモードになっている。

 

「お前ら、バカだろ!」

「八雲君相手に手を抜くなんて出来ないの!」

「それに50対1をやってる八雲にバカって言われたくないよ!」

 

ぐっ、言い返せねえ。傍から見たら、俺の方がバカやってるだろうし。

それはそれとして、フェイトの独特な航空剣技となのはの誘導弾で僕の体には着実にダメージが蓄積していく。

……このままじゃ、ジリ貧だ。本当はなのはから行きたい所だけど、仕方ない。

ある程度、なのはの誘導弾を無視して、僕はフェイトに攻撃を集中する。たしかに超高速機動は厄介だけど、一発当てればいい!

 

「貰った!」

 

フェイトの一撃を僕は食らう。でも、これはわざとだ。

 

「ぐっ、でも、それはこっちのセリフさ。魔王炎撃波!」

「キャァ!?」

 

何とかフェイトを落とせた。

 

「でも、捕らえさせてもらったよ」

「どういう……なっ⁉」

 

フェイトは最後の力を使って僕にバインドを掛けた。ここから来る展開は! 僕はなのはの方を見る。彼女は彼女の切り札、スターライトブレイカーの準備をしていた。いや、もうほぼ発射態勢だ。つーか、フェイトもなんて無茶しやがる!

くそ、ハメられた。だけどな!

 

「負けるわけにはいかないんだよ! 来い、なのは!」

「決めるよ! スターライト……ブレイカー!」

 

桃色の閃光が発射される。なんとかバインドを振り解いた僕はすぐさま次の手を打つ。

 

「叢雲、対ブレイカー用の手段で行くぞ」

『了解』

 

僕は円錐状のシールドを正面に展開してその閃光に突っ込んでいく。

なのははフェイト程の速さがある訳ではない。だが、空間把握能力が抜群に高い。だから、相手の回避エリアを的確に削る誘導弾との相性が良いし、速度の遅さをカバーして回避能力もある。そんななのはでも、砲撃後の隙に関してはどうしようもない。

それを突くために考えた結果が円錐状のシールドを展開して強行突撃を掛ける方法。

 

「……スターライトブレイカーに突っ込むなんて無茶苦茶だよ」

「二人の全力には僕も全力で答えないとね。まあ、今回は僕の勝ちだけど」

「次は負けないよ」

 

僕の一撃で撃墜するなのは。

 

「さて、次は?」

「私だ」

「ヴィータか。二人じゃないの?」

「最初はそうしようかと思ってたんだけどよ、さっきまでのお前の戦いを見て考えが変わった」

 

そこで一旦言葉を切り、にやりと笑顔を見せるヴィータ。ただ、その笑顔は普段、ヴィータが見せる感じの笑顔ではない。アレはどっちかというと……。

 

「私の中に流れる古代ベルカの騎士の血がお前とサシでやりてえって疼くんだよ」

 

そう、シグナムが強敵との戦いで見せる笑みだ。その辺やはり騎士って事なんだろうか。まあ、僕も人の事は言えないけどさ。

 

「分かった。やろうか。……やっぱり、こういうのって名乗り上げとか要るの?」

「どっちでも良いけど、そっちの方が気分が乗るぜ?」

「OK」

「後、私が最初に言う言葉を八雲も言え。良いな」

「? 分かった」

「それじゃ……『最後の夜天の書の主』八神はやての守護騎士が一人『鉄槌の騎士』ヴィータとその愛機『鉄の伯爵』グラーフアイゼン!」

 

最初の所ってはやてのくだりか? ……僕流にアレンジさせてもらおうかな。

 

「『最後の夜天の書の主』八神はやての守護騎士、改め人生のパートナー『八極の騎士』霧島八雲とその愛機『神代の刀』叢雲!」

「いざ」

「尋常に」

「「勝負!」」

 

名乗り上げと共にお互い真正面からぶつかる。小細工なしの全力勝負。

 

「シグナムじゃねえけど、たまにはこういうのもアリだな」

「そう言うってことは、何だかんだ言ってもヴィータも騎士って事だね」

 

数合打ち合って、ブレイク。ここでヴィータは射撃魔法シュワルベフリーゲンを発射。魔力弾と鉄球を織り交ぜた射撃が僕に飛んでくる。

 

「いつもなら、射撃は牽制程度なのに今日は積極的に使ってくるね!」

「私はフロントアタッカーだからな。前で支えるのが仕事だ。でも、今日は色んな手を使っていかないとな!」

 

…これは厄介だ。4人の中でヴィータは魔導師ランクが一番低いが個人的にはかなりバランスのとれた極めて優秀な魔導師だと思っている。

遠中近どの距離でもある程度戦えて、攻撃力も防御力もある。普段は前線で戦うから近接戦の技しか使わないけど、サシでやりあうと非常に面倒だ。

特に今回の戦いでの最大の難敵だと僕は思っている。ヴィータの防御力は桁外れ。魔力量で勝っている僕やなのはよりも硬い。魔力、体力共に消耗した状態で当たらないといけないのはかなりキツイ。

 

「おらおら、息があがってるぞおっ!」

「当たり前だろ! 僕が今まで戦ったか知ってるだろ!」

「んなもん、言い訳だ!」

 

まあ、そうなんだけどね。とりあえず、数を減らす事から入った僕と、最後の最後まで力を温存したヴィータ。その差が如実に出始めている。

個人的に戦闘の疲れは二種類あると思っている。1つは体を使う事での肉体的な疲れ。もう一つは集中する事での頭の疲れ。僕が厄介だと思うっているのは後者の方。集中力が不意に切れると咄嗟に攻撃に対応できない。今回も、ヴィータの射撃魔法をしのぎ切った事で、一瞬気を抜いてしまった。そして、ヴィータはその一瞬を見逃すほど甘くない。

 

「ラケーテン……」

 

カートリッジを一発使って強襲形態であるラケーテンフォルムにアイゼンを変えるヴィータ。これはマズイ!

そう思った瞬間にはヴィータは既に僕の懐に飛び込んでいた。

 

「ハンマー!」

「間に合え!」

 

ギリギリシールドで防ぐけど、あんまり防御系の魔法が得意じゃない僕と防御を破るのが得意なヴィータ。不利なのは一目瞭然だ。

シールドは破られ吹き飛ばされる。破れると同時に後ろに飛んだから、ダメージはそこまでだけど、態勢を崩された。

これをみたヴィータは更に追撃を掛けるんだけど……

 

「オイオイオイオイ!」

 

ギガントフォルムとラケーテンフォルムの長所を併せ持った、アイゼンの最強フォーム、ツェアシュテールングスフォルム。それをヴィータは使ってきた。……あれ、ビルとか軽々破壊できるぜ?

 

「ぶち……砕けー!」

「くそっ!」

 

もう一度シールドを出すけど、こんなのは物の役にも立たない。障子紙を指で突いて破るようにシールドは破れる。

食らおうが、墜ちなきゃいい! 歯をくいしばって耐えろ! 意識を保て! そう自分に言い聞かせる。

 

「……やったか?」

「ヴィータ、それはフラグだぜ?」

 

食らった後すぐに態勢を立て直した僕はヴィータの背後に転移した。

 

「私の全力耐えるとか無茶苦茶だぜ、八雲」

「普段なら無理だろうけど、今日の僕は特別だからね。無茶とか無謀とかそんな道理は吹っ飛ばすよ」

「そうかい。……レティ提督、降参したいんですけど」

『構わないけど、どうしてかしら?』

「いやー、この後の戦いを近い所で見たいと思って」

『分かったわ』

「つー訳だ。最後の一人頑張れよ」

「もちろん」

 

激励の言葉を僕に言ってヴィータは少し距離を取る。僕は残った一人の相手の方を向く。

あんなに居た魔導師も残りは僕を含めて二人。

 

「さて、最後の勝負を始めようか、シグナム」

「そうだな。長々と話すのは私に合わない。後は剣で語るとしよう。……『最後の夜天の書の主』八神はやての守護騎士が一人『剣の騎士』シグナムとその愛機『炎の魔剣』レヴァンティン!」

『最後の夜天の書の主』八神はやての守護騎士、改め人生のパートナー『八極の騎士』霧島八雲とその愛機『神代の刀』叢雲!」

「いざ」

「尋常に」

「「勝負!」」

 

ヴィータの時の様に真正面からぶつかりあう。

同じ古代ベルカの騎士のヴィータと比べるとシグナムは中遠距離からの攻撃はほとんど無い。だが、その近接戦の技術はヴィータよりも何枚も上だ。僕の魔法戦、空中戦の中の接近戦の師匠でもある。

そして、万全の状態のシグナムと疲労、ダメージの大きい僕の差は大きい。普段なら捌ける攻撃が捌けない。ダメージは蓄積していく。なんとか打開を…

 

「魔王炎撃波!」

 

状況を変えるために技を仕掛けるが、

 

「甘いぞ、紫電一閃!」

 

あっさり迎撃される。……クソ、焦ってたな。

 

「まあ、高町やヴィータのあれを耐えたんだ。この程度では落ち無い事は分かっている。……が、これでとどめをさすぞ!」

 

シグナムはレヴァンティンをボーゲンフォルムに変形させ、構えている。そこから来る技はシグナム唯一の射撃魔法で、最大の威力を持つ……

 

「翔けよ隼!」

 

シュツルムファルケンが発射された。

その次の瞬間、音速を超えた矢は僕に直撃し、僕は爆炎と衝撃波に包まれる。

さすがに……キツイか。よくやったよな?

 

 

 

……そんな訳ないだろ。僕の体はまだ動く。魔力も残っている。そして何より、僕はまだ切り札を切っていない。

 

『叢雲行けるよね?』

『もちろんです』

『頼んだよ』

『Mode Release Over Limit』

 

正真正銘、今日の最後の一撃だ。後悔の無いように、体力も魔力も振り絞る。

 

「限界なんか知るか! これで決める!」

 

残ったすべてを移動に、スピードにつぎ込む。その速度で一撃を叩きこむシンプルな奥義。名づけるなら『斬!!』って感じだ。

 

「はあ……はあ……」

「見事だ、八雲…」

 

僕の一撃で意識を刈り取られたシグナムをヴィータがキャッチする。

僕も魔力の限界なので下に降りる。もう無理。このまま、回復するまで寝てよう。

降りて、そのまま僕は地面に寝転がる。

 

「体動かすのすら億劫だよ……。でも、勝ったんだよなあ」

 

正直、最後の方は無茶したと思う。

でも、僕の貫き通したい物は出来たし、良いかな。

とりあえず、今はこの青空を見上げながらゆっくり休もう。

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