食事を終えてからまた館内を見物してからもう時間もだいぶたったから私たちはお土産コーナーで最後を迎えた。純と沙南はイルカとサメの人形を買ってもらいご機嫌。私と雅紀はお互いの両親へのお土産でクッキーを買って帰った。外へ出ると日は沈みかけ辺りは真っ赤な景色へと変わっていた。
「2人とも楽しかったか?」
「うん!」
「楽しかった!」
2人の返答が嬉しかったのか雅紀は笑顔で「そうか」と言って前を向いて歩く。
「沙綾はどうだった?」
「楽しかったよ!久しぶりに息抜き出来たと思う」
「ならよかったよ。今日は沙綾のためでもあったしな」
「私のため?」
私は意味がわからなくついオウム返しをしてしまった。
「最近沙綾手伝いと家事とで自分の時間作れてなかっただろ?おばさんにも頼まれてたんだよ。沙綾を息抜きに誘ってくれって」
私のためにそこまでしてくれてたとは嬉しかった。でも私なんかのためにという罪悪感もあった。
私たちは電車に乗って地元の駅で降りた。辺りはすっかり暗くなり、街灯が道を照らしていた。
「まさ兄…眠い…」
「たくさん遊んだからな〜ほら純、乗りな?」
純は頷いて、雅紀におんぶしてもらう。続いて眠たそうにしている沙南を私もおんぶをした。
「なあ、沙綾」
「なに?」
「なんでバンドやらないんだ?戸山からバンドずっと誘われてるだろ?やっぱりあいつらに申し訳ないのか?」
雅紀はこっちを見てはいないけど真剣な顔をしている。
「……うん。来週のライブも本当は行くか悩んだんだよ。でもあず姉に相談して行くことを決めた。だけどそれは行くだけ。バンドを
やるのは違う。夏希たちになんて言えばいいのか分からない。お母さんのこともあるし」
そう。香澄には申し訳ないけどそれ以上に夏希たちを裏切って更に違うバンドに入っていいのか。そして一番心配なのはお母さん。バイトの人もいるけどやっぱり心配が勝つ。
「……これは俺の持論だから独り言と思って聞いてくれ。まだ成人もしてない15歳の少女が自分を犠牲にして周りに気遣う。凄いことだと思うし、俺には到底できっこない」
だけどな。と雅紀は続ける。
「それが本当に沙綾のやりたいことなのか?違うだろ?それが好きだというやつもいると思う。だけど沙綾の顔はそんな顔じゃない。助けてって顔をしている」
「…………」
「俺も過去を引きずって一時野球が出来なくなった。その時そばで支えてくれたのは沙綾、お前だ。だから今度は俺がお前を助けたい。救いたい。沙綾、お前は一体どうしたいんだ?」
雅紀は悲しそうなそれでも本気で私を助けようとしてくれている顔をして問いかける。
「……私は…」
「あれ?沙綾!まさ君も!こんばんは!」
そこにいたのは私をいつもバンドに誘ってくれる香澄だった。
「こんばんは。戸山も家この辺なのか?」
「この辺ってわけじゃないけど帰り道によく使うよ!」
そう言って香澄はギターケースを見せてきた。恐らくバンドの練習の帰りなのだろう。
「こんばんは、香澄。こんな時間まで練習?」
「そうなんだよ〜Poppin’Partyってバンドなんだけどおたえの指導が厳しくて〜」
おたえって言うのは恐らく花園さんだろう。同じクラスだから覚えてる。
「大変なんだな。俺も楽器やってたけどそこまで本気になったことないから素直に賞賛だな」
「えへへありがとう!2人はお出かけ?」
「うん。弟たちとね。水族館行ってきたの」
「いいね!水族館キラキラしてそう!」
キラキラしてるかどうは分からないけど………
「なあ戸山、お前来週の土曜日暇か?」
「え?うん、まあ暇だけど……」
「来週の土曜日沙綾が昔いたバンドのライブがあるんだが来るか?」
香澄にライブの誘いをした雅紀の意図が全く掴めない。
「え!いいの!?行きたい!」
「よし、チケットは買っといてやるから。戸山、お前はいつも沙綾を誘ってくれてるだろ?」
「う、うん」
「幼馴染としてはそれはすごい嬉しい。諦めないでくれてありがとう。だからこそそんな戸山には来週のライブを見てもらいたい。沙綾がどんなバンドにらいたのか。沙綾がお前からの勧誘を断り続ける理由を知ってもらいたい。そして詳細が分かってなお、沙綾を誘ってくれるなら誘ってくれ。お願いできるか?」
雅紀は私のことを真剣に考えてくれている。この案も私を考えてのことだった。
「うん!私、沙綾についてもっと知りたい!友だちだから!」
友だち…その言葉が私はすごく嬉しかった。この子のために少し力になってあげたい。そんな気がした。
香澄と別れた後、私は雅紀に話した。
「ねえ、雅紀。さっきの質問に答えるね?……私はまたバンドを組みたい。毎日私に飽きず誘ってくれてる香澄の力になってあげたい。でもお母さんも心配。私の自分勝手でお母さんに負担がかかっちゃったらどうしようって。雅紀はどう思う?」
「……おばさんが前に言ってたよ。あの子には申し訳ないことをした。昔から身体の弱い私を心配して、自分のやりたい事を捨ててまで私を助けてくれた。だから今度は、沙綾のやりたい事を全力で支えてあげたい。私のことは気にしなくていい。自分のやりたい事を思いっきり楽しんで欲しいってな」
「…お母さん…」
「おばさんは大切な娘に自分を主張してほしいんだろうな。少なくとも俺とおばさんはバンドを辞めろなんて言わないよ。それはおじさんもそうだ。うちの両親だって沙綾のドラムがまた見たいって言ってるほどだしな」
「いいのかな…自分のやりたい事して」
「いいだろ。俺なんてやりたい事しかしてないぞ?」
「そっか…私また、バンド始めてみようかな…」
「ああ、その思いも来週の土曜日元メンバーのあいつらぶつけてみなよ?」
「そうする。その時はちゃんとそばにいてくれるよね?」
「当たり前だろ?一緒にいてやるよ」
半分プロポーズ混じりな発言に気づいたのか雅紀は「違うからな!」と否定していたけど私は嬉しかった。やっぱり私には雅紀がいてくれないとダメみたいだ。
家に着いた後、お母さんたちにお土産を渡してそれをお茶菓子にして4人でしばしの時間を過ごした。
私の運命が決まる日はもうすぐそこまで来ている。
今回は文字数少なめです。
沙綾編ももう少しで終わりを迎えてきました。
もう少しお付き合い下さい。
これからどうなっていくのでしょうか。見逃せません!