「お母さんが……倒れた……?」
「ああ、今国立病院にいる」
「わ、分かった……すぐに行く……」
嘘だと言って欲しい。また私の我儘で誰かが不幸になるの……?嫌だ…なんでこうなるの。
「……や」
とりあえず早く病院に行かないと。病院はどこだっけ。部屋の番号は?
「…あや」
だめだ、何も考えられない。嫌だ、お母さん…お母さん!!
「沙綾!!!」
「え……」
「落ち着け沙綾。まずは状況を教えろ。おばさんが倒れたのは分かった。病院はどこだ?」
そうだ。こんな所でパニックになってたらだめだ。落ち着いて私。
「えっと……こ、国立!国立病院!」
「国立病院だな。部屋の番号は?」
「分からない。何も言ってなかった」
「分かった。とりあえずタクシー拾うぞ。戸山、海野悪いけど先に帰っててくれ。後で電話するから」
「…うん」
「…沙綾……」
「ごめん、香澄……バンド入るのちょっと難しいかも」
「…私…待ってるよ!…沙綾が私たちのバンドに入ってくれるまで私待ってるから!絶対に諦めない!だから今はお母さんの所に行って!」
「………香澄」
「沙綾、行くぞ!」
「う、うん」
私たちはお母さんのいる病院へと急いだ。
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「すみません!山吹千紘の部屋はどこですか!」
「こ、こちらになります」
お母さんがいる部屋に着いてドアを開けたらそこにら私の家族全員がいた。そしてお母さんは2年前のように眠っていた。
「さっきまで起きてたんだよ。すこし疲れたみたいだ」
「………」
「おじさん、おばさんはやっぱり過労で?」
「ああ、倒れないように気にしていたんだが目に見えない所で疲れが溜まっていたみたいだ」
「……お母さん」
「沙綾、お前は悪くないぞ?仕事も家事も手伝ってくれた。沙綾が悪いことなんてなにもない」
「お父さん…でも…でも」
「お母さんな、沙綾がまたバンド始めてくれるかもって喜んでたんだ。だから絶対にやらないなんて言わないでくれないか?これはお母さんの想いでもあるんだ」
「……ちょっと外の風当たってくる……」
私はお母さんを見つめた後、唇を噛み締めながら病室を出た。
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「おじさん……」
「すまん、雅紀君。沙綾の事見てやってくれないか?」
「もちろんそのつもりだけど……」
今の沙綾はとても見てられない。俺がなんとかしなきゃいけないのも分かる。
「雅紀君、沙綾を助けて上げてくれ。これは親の俺たちより心を許した幼馴染の雅紀君の言葉が1番響くと思うんだ。」
俺が今沙綾にしてやれることは1つだ。
「……分かりました。ちょっと荒くなるかも知れないけど…」
「はは!それは幼馴染の親に言うことじゃないな。でも今の沙綾にはそれくらい必要なのかもしれないな。娘を頼みます」
おじさんはそう言って頭を下げてきた。顔を上げてもらって一言おじさんに告げて病室を出た。
「沙綾は俺に任してください」
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病院の屋上から見える夜空はこういう日に限って嫌というほど星が輝いていた。
「……お母さん、私どうしたらいいの?」
「それは自分で考えるべきなんじゃないか?」
声がする方へ顔を向けるとそこには私の大事な幼馴染である雅紀がいた。
「……雅紀」
「なあ沙綾、お前は誰かに命令してもらわないと行動出来ないのか?」
「なっ!」
「俺も人に言えた口じゃないけどな。でもな今の沙綾見てると腹が立つ」
いつもの優しい雅紀じゃない。こんな怒ってる雅紀は初めて見た。
「じゃあどうしたらいいの!?…2年前だって私の我儘でお母さんが倒れちゃったの!今日のだってきっと私が……」
「何をしたんだ?何もしてないだろ?ちゃんとパン屋の手伝いして自分のやりたい事我慢して、家の手伝いまでしてこんなに貢献してきた沙綾のどこがおばさんが倒れた事に繋がるんだ?」
「それは……」
「沙綾、いい加減目を覚ませよ。おじさんもおばさんも、もちろん俺も!沙綾が苦しむことなんて望んでない!」
「!!」
「俺はまた見たいよ…沙綾が楽しそうにドラム叩いてる姿を。沙綾が輝いてる姿を」
その時、雅紀のスマホが鳴った。
「はい。……分かりました。すぐに行きます」
電話を切ると雅紀は私の腕を掴む。
「ど、どこ行くの?」
「病室。おばさんが起きたらしい。沙綾に喝入れてくれるんだとさ」
私は強引に腕を捕まれ屋上を出た。
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軽くノックして扉を開けるとそこにはお母さんが体を起こして窓を眺めていた。
「お母さん……」
「沙綾…こっちに来て?」
手招きされ、私はお母さんに近寄る。そして私はお母さんの腕に包まれた。
「沙綾?あなたは今幸せ?」
「え?」
「お母さんはとても幸せよ?大好きな家族がいて、大好きな家族に愛されてとても幸せ。沙綾はどう?幸せを感じてる?」
「…………」
何も言わなかった。いや、言えなかった。私のことを大切にしてくれている大好きな家族がいて、私のことを大切にしてくれている大好きな幼馴染がいて。
でも私は幸せを感じているのだろうか。自分のやりたい事を我慢して、押し殺して。それが本当に幸せなのだろうか。
「沙綾、あなたが今やりたい事はなに?」
「……やりたい事」
「そう、沙綾がやりたい事。言ってみて?」
「…私は……」
私のやりたい事…同級生と放課後寄り道をしたい、休日はお洒落してお出かけしたい、恋愛もしたい…だけど今1番したい事は……
「私…バンドがやりたい。またドラムを叩きたい!」
「そう…私も沙綾のドラムまた見たいわ。かっこいい沙綾が見たい」
「お母さん……」
「沙綾を苦しめてるのはもう何もないよ?お母さんは身体が弱いけど大丈夫よ。自分のやりたい事を思いっきりやりなさい!」
「お母さん…やるよ。私、またバンドやる!家事もパン屋の手伝いもする!だから、私にバンドをやらせてください!」
バンドがやりたい。Poppin’Partyでドラムをやりたい!私の気持ちを家族に打ち明けた。
「うん!いいわよ!」
「もちろんだ!応援してるぞ!」
「お姉ちゃんの音楽見たい!」
「紗南も!!」
「みんな…ありがとう!」
私は目の前に立ちふさがっていた大きな扉は今開かれたんだ。
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「本当に!?」
「うん!今日からよろしくね!」
私は香澄にバンドに入るのことを伝えた。もう何も迷いはない。Poppin’Partyのドラムとして全力で挑むんだ。
「よかったな戸山」
「うん!まーくんもありがとうね!」
「いや、俺はなにもしてないよ」
「そうだよ。私に本気で怒ったんだもん」
「いや、それは……」
「私、怖かったんだからね?泣きたいくらいに」
「それは…ごめん」
「んーじゃあ今度羽沢珈琲でケーキ奢ってね」
「へいへい」
「あ、そうだ!沙綾これ!」
「なにこれ?」
「今度の学園祭の時に出す新曲だよ!」
「いいじゃん!曲のタイトルは…………」
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そして学園祭当時。
「こんにちは!私たちPoppin’Partyです!私たちの音楽聞いてください!」
曲は全部で3曲。3曲目は例の新曲だ。2曲終わってついに最後の曲になった。
「みなさん!次が最後です!最後の曲は私たちの新曲です。この曲は私たち5人の物語をを歌詞にしてます。聞いてください」
STAR BEAT~ホシノコドウ〜を
『いくつもの夢を数えても 聞こえないふり続けてきた
(ねえキミ 聞こえる?)
本当はずっと気付いてた 記憶の底 小さな声 聞こえる
(その声 聞こえる 聞こえてくるから ねえ)』
本当は私はバンドがしたかった。だけどそれは許されない。そう思って2年間我慢してきた。
『走ってた いつも走ってた
愛と勇気を届けたい(あふれる思いで)
眠ってた声がいざなった
風にゆれるキミの歌(夢見るココロと)』
中学の時バンド仲間と揉めて2年間話さなくなった。本当は仲直りしたいのに…またみんなと笑い合いたいのに。そしてみんなで涙を流して和解した。
『まぶた閉じて あきらめてたこと
いま歌って いま奏でて
昨日までの日々にサヨナラする』
本当に諦めていた。私は我儘言ったらダメなんだ。そういう運命なんだと。私の目の前には絶対に開くことはない扉が立ちふさがっていた。だけど大好きなお母さんが、大好きな家族が、そして…大好きな幼馴染がその扉を開けるのを手伝ってくれた。
私はもう後悔をしない。そして幸せだといつまでも言えような人生にしよう!
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「お疲れ様、ほい差し入れ。後でみんなに渡しといて」
「ありがとう!…ねえ雅紀」
「ん?」
「ありがとうね!あの時私を怒ってくれて」
「あ、あれは忘れろって言ったろ」
「忘れないよに忘れられない絶対に。雅紀のおかげでみんなのおかげで私は変われたの」
「………」
「だからありがとう!」
「まあ、なんだ。またなんかあったら相談してこいよ」
「うん!」
雅紀は照れてるのか顔をこっちに向けない。可愛いなあ。
「あ、そうだ。伝えるの忘れてた」
「ん?なあに?」
「沙綾、最高にかっこよかったぞ!ありがとうな楽しい時間だった!」
「……そ、そう。だったら良かっとよ……」
「んじゃあ俺これから部活だから。ポピパの打ち上げ楽しんでこいよ」
「うん…クラスの打ち上げも明日あるし遅くはならないけどね」
「そっか。じゃあな」
私はずっと顔を下に向けていた。だって………
こんな真っ赤になってる顔なんてとても見せられないから。
沙綾編はこれで終わりです!
次からは主人公に戻ります。
2019年のドラフトで僕の小学校から仲良くしてくれた野球チームの先輩がプロ野球選手になりました!
これからプロ野球選手として頑張ってください!
ていう情報でした。