夢を追うあなたのそばで   作:夜助

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シリアスって難しいよね……


春の訪れ

私、山吹沙綾には天才と呼ばれていた幼馴染がいる。家が隣同士で家族絡みの付き合いだ。

 

彼は物心つく前から野球というスポーツに触れていて、私をよくキャッチボールに誘ってくれた。

 

彼のおかげかいつからか私は野球の虜にされていた。いや、楽しそうに野球をしている彼の虜になったと言うべきか。

 

そんな彼が急に野球を辞めると言い出した。私は当然反対した。せっかくの才能があるのに簡単に辞めていいの?昔からプロの世界に入ってスーパースターになるって夢はどうなるの?

 

だけど雅紀の見ると、とても辛そうな表情をしていた。私は察した。ああ、才能が彼を傷つけてしまったのかと。

 

私は、大切な幼馴染が辛そうにしているのを見ていたくない。その才能のせいで心を閉ざしてしまうのなら解放してあげたい。そう思った私は彼を受け入れた。そして私はその時誓った。

 

どんなことがあっても私が彼を守ってみせると。そして願わくば野球を心から楽しんでいたあの時の雅紀に戻って欲しいと。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「雅紀、準備出来た?」

 

「ああ、出来たけど俺ブレザー似合わねえな」

 

そう言って部屋から出てきた雅紀はまだ着慣れていないブレザーの袖を通していた。

 

「あはは!似合ってるよ!」

 

「心にも思ってないことを……」

 

そんなことはない。もともと身長が高いしスタイルもいい普段何を着ても似合うんだからブレザーが似合わない訳が無い。まあ口には出さないけどね!

 

「それより朝ごはん出来てるよ!今日は私も食べるから早く降りよ!」

 

早朝からお店の準備をして、急いで学校の準備をしてきたので朝食は食べてない。こういうことはよくあってその都度萩野家にお世話になっている。

 

「おはよう母さん、父さん」

 

「おはよう。早く食べちゃってよね、入学式私たちも行くんだから」

 

「別に来なくていいのに…」

 

「何言ってんだ、せっかくの息子の晴れ姿を見に行かない訳にはいかないだろう」

 

「親バカだなあ。まあいいやいただきます!」

 

手を合わせ目の前にならんでいるパンとハムエッグを食べる。

 

「やっぱ沙綾んとこのパンは美味いな。別にパンはそこまで好きじゃないけど山吹ベーカリーのパンは本当に美味い」

 

「そう言ってもらえるとお父さんも喜ぶよ!」

 

雑談をしながら朝食を済ませ、身支度を整えた私たちは学校に向かうために玄関に向かった。

 

「よし、じゃあ行くか!」

 

「あ、雅紀ネクタイ曲がってるよ?」

 

「ありゃ?ほんとだ。まあいいや、向こうでやったらいいし」

 

「初日からだらしない姿晒してたらみっともないでしょ!やってあげるよ!」

 

「わ、わりい」

 

「いいよ、いいよ。恥ずかしい幼馴染見るよりはマシだからねえ」

 

「おい……」

 

「あらあらネクタイ沙綾ちゃんにらやってもらうなんてまるで新婚夫婦ね!」

 

「し、新婚夫婦……///」

 

「な、何言ってんだ母さん!」

 

「おほほほ〜それより早くしないと遅刻するわよ?」

 

「ああもう!行ってきます!」

 

「行ってらっしゃ〜い……全くあんなにイチャイチャして付き合ってないってんだから不思議よねえ。沙綾ちゃんは満更でもなさそうだけど」

 

二人の関係に頭の抱える母であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺と沙綾はまだ行き慣れない通学路を歩いていた。

 

「そういえば沙綾は部活すんのか?」

 

「う〜んお店の手伝いもあるし部活はやらないかな」

 

「バンド辞めて暇な時間増えたんじゃねえの?軽音部があるのかは知らねえけど運動部に入るのもいいんじゃねえの?」

 

「お店の手伝いを増やすためにバンドを辞めたんだから部活やる暇もないよ……」

 

「ふ〜んまあいいや、お互い楽しい高校生活送ろうな」

 

「…そうだね!」

 

俺は知っていた。本当は音楽を続けたいということを。でもそれは親に迷惑をかけてしまうから自分の気持ちを抑え込むしかないと思っていることも。だから俺が少しでも沙綾の支えになってくれればいいと思っている。沙綾が俺にしてくれたように。

 

『スポーツニュースです。怪物と呼ばれている清宮幸次郎君が今日早稲田高校の入学式と言うことで学校の周りではメディアが殺到しており……』

 

街中にある巨大テレビから朝のスポーツニュースの音が聞こえた。そこには中学時代から怪物と呼ばれている同い年のやつが取り上げられていた。

 

「……すげえなこいつ。まだデビューもしてねえのにもう注目株だよ」

 

「………そうだね……」

 

「そう落ち込むなっての!何?本来はあそこに映るのは俺だったのにとか思ってんの?」

 

「そ、そんなこと思ってない!私は雅紀が幸せならそれでいいの……」

 

「そんな恥ずかしいセリフを堂々と。だったら口だけじゃなくて態度も堂々としてろよな」

 

「…そうだね!それより早くしないと遅刻しちゃうよ!」

 

「お、おいちょっと待てよ!」

 

言ってみたかったんだよこのセリフ……おい沙綾よ、頼むからそのこいつマジかみたいな顔を辞めてくれ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ええっと俺のクラスは…A組か。沙綾は何組だ?」

 

「私もA組だよ!1年間よろしくね!」

 

「沙綾も一緒か、っていうか小6から俺らずっとクラス被ってるよな〜さては神のイタズラ?」

 

「バカ言ってないで早く教室行くよ〜」

 

俺たちは指定された教室に行き中に入ると教室内はすでに結構生徒が入っていていた。

 

俺は席につき、辺りを見渡していると1人の男子生徒がこっちに向かってきた。

 

「よう!俺は西島快斗(にしじまかいと)ってんだ!よろしくな!」

 

「俺は萩野雅紀、よろしく」

 

「萩野雅紀?どっかで聞いた名前だなあ」

 

「別に名前くらい珍しくないだろ」

 

「まあそれもそうか!ところで雅紀は部活決めたか?」

 

「いや、特に入る予定はないけど?」

 

「じゃあさ!俺と一緒に野球やんねえか!?」

 

「いや俺は……」

 

「まあ無理にとは言わねえさ。ゆっくり考えてくれよ」

 

「ああ、っていうか見たところお前の体型からしてキャッチャーか?」

 

「ん?ああ、一応キャッチャーだよ。この高校にスポーツ推薦で来たんだ」

 

「へえ、この学校の野球部強いのか?」

 

「ん〜まあ決して弱くなはないんだけど毎年県大会止まりだな。それでも24年前は甲子園に行ったこともある学校だぞ!」

 

「ふ〜ん、まあ、聞いといて悪いんだけど俺は野球やらないからせっかく誘ってくれたのに悪いな」

 

「そうか。まあ野球がすべてじゃねえからな、高校生楽しめや」

 

「おう!」

 

そういって快斗は俺の元を離れて坊主たちのいる所に戻って行った。恐らくチームメイトだろう。

 

「雅紀、なんの話してたの?」

 

「ん?んああ、なんでもないよ自己紹介ぐらいだ」

 

「ふ〜ん仲良くできそ?」

 

「どうかな?良い奴だとは思うけど」

 

「は〜い席について〜」

 

先生が教室に入ってきて生徒たちは自分の席に戻った。

 

「今日から1年間君たちの担任をすることになりました。篠川飛鳥(しのかわあすか)です。今年で2年目でまだまだ新米教師ですけどよろしくね!私のことは篠川先生でも飛鳥先生でも飛鳥ちゃんでも好きなように呼んでね!」

 

随分とまあ可愛らしい先生だな。堅苦しい先生じゃなさそうだし好かれそうなひとだな。

 

「じゃあ今から式が始まるからみんな並んで廊下に出てね」

 

そう言われてみんなは2列に並んで体育館へと向かった。俺は沙綾の隣を歩いていた。

 

「そういえば新入生の挨拶だれなんだろうな」

 

「さあ、まあ首席だろうね。誰かは分からないけど」

 

「萩野君、ちょっといいかな?」

 

「ん?先生、どうしたんすか?」

 

「今日の式典で新入生挨拶があるんだけど、首席の子が欠席で居ないらしくて。そこで萩野君にお願い出来ないかな?」

 

「はあ、ていうかなんで俺?次席の人に言ったらいいじゃないですか」

 

「ん?だから次席の君に言ってるんだよ?…あれ?次席って知らなかった?」

 

「「は、はあああああ!?」」

 

俺と沙綾は息が合うように驚きながらも仕方なく俺はそれを了承した。挨拶はまあ適当でいいか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今は式中、隣を見ると雅紀はまあだるそうにしている。

 

「ちょっと!次雅紀挨拶するんだからシャキッとしてよ!」

 

「分かってるよ。でも校長話が長いから」

 

『新入生代表挨拶。新入生代表、萩野雅紀』

 

「あ、呼ばれたわ。んじゃあな」

 

そう言うと雅紀はさっきとは別人のように姿勢をただし、壇上へと向かった。

 

『暖かな春の訪れとともに、私たちは花咲川学園の入学式を迎えることになりました。本日はこのような式を開いていただき大変感謝致します。』

 

え、雅紀こういうちゃんとしたこと出来るの?しかも考える時間もなかったからほぼアドリブだよね!?

 

「ねえ、萩野君ってさかっこよくない?」

 

「あ、それ私も思った!背大きいし、スタイルいいしモデルさんみたいだよね!」

 

「私アタックしちゃおうかな〜」

 

「あ、ずる〜い!私が先に目かけたんだから!」

 

なっ?!雅紀が色目かけられてる!?まあ、実際雅紀はかっこいい部類に入るのは確かだよね。小中のときも雅紀のファンクラブあったくらいだし。

 

「ああしてたらかっこいいんだけどな〜」ボソ

 

「あ〜れ〜沙綾ちゃん萩野君が気になるの〜?」

 

「ま、真希ちゃん、そんなんじゃないよ!私と雅紀は小さい頃から一緒だった、ただの腐れ縁だよ」

 

彼女は吉田真希(よしだまき)ちゃん。出席番号と席が近く仲良くなった子だ。

 

「へえ、幼馴染なんだ〜いいな〜沙綾ちゃん、あんなかっこいい幼馴染がいて」

 

「かっこいい…のかな?うん、まあかっこいいよね」

 

「あれえ、満更でもない感じ?」

 

「そうだね、でも雅紀は私なんかなんとも思ってないよ、姉みたいにしか思えてないと思う」

 

実際昔は私のことをお姉ちゃんなんて言ってたしね。今でも時々私に甘えたりするしその時はほんとうに弟みたいな感じだ。

 

「なんか訳ありな感じ?」

 

「まあこれ以上は今は言えないかな?雅紀のためにも…」

 

「ま、あんまり踏み込むのも野暮だから今は聞かないよ。でもいつか聞かせてね!」

 

「…うん!」

 

「なんの話してんの?」

 

「うわ!ま、雅紀?挨拶は?」

 

目の前にはさっきまで会話の話題になっていた雅紀がいた。

 

「はあ?とっくの前に終わったぞ?まさか聞いてなかったのか?」

 

「あはは〜ごめんね?」

 

「はあ、まあどうでもいいけど」

 

「萩野君?私吉田真希っていうの!沙綾ちゃんとは友だちなんだ!よろしくね!」

 

「萩野雅紀だ。よろしくな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんなこんなで式も終わり俺たちは教室に戻ってきた。

 

「ねえ、雅紀君。沙綾ちゃんのことはぶっちゃけどう思ってるの?」

 

「は、はあ?!なに急に!」

 

「えーでも、気になるよね〜」

 

「まあぶっちゃけ気になるよな」

 

「お前はいつのまにいたんだよ快斗」

 

「ずっといたけど?みんなとも挨拶すましたぞ?」

 

「いつのまに………」

 

「それよりどうなの?」

 

「どうなのって姉気質の幼馴染としか」

 

「…ほらね?」

 

「まあ、今はこんなところだろうね」

 

「っていうかなんの話を……」

 

「失礼するよ!」

 

そう言って入ってきたのはクラスメイトではないやつだ。っていうか誰だこいつ?

 

「君が山吹沙綾さんかな?」

 

「は、はい。そうですけど……」

 

「なんて美しいレディなんだ!失礼、私は1年B組の小坂雅人(こさかまさと)というんだ、よろしくね」

 

「は、はあ。それで私になにか用ですか?」

 

「では単刀直入に言わせてもらおう!山吹さん!僕は君に惚れた!是非僕と付き合ってはいただけないか?」

 

「ええ!?」

 

「はあ!?何言ってんだお前!沙綾ちゃん困ってるだろ!」

 

「ふん!誰かと思えば僕より才能のない下手っぴ君じゃないか。僕より下の人間が文句を言うな!」

 

「……快斗、こいつも野球部か?」

 

「ん?ああ、こいつは小坂雅人。うちの野球部で春練習のころからバッティングと守備に定評があって今度ある区大会でベンチ入りしてんだ。」

 

「へえ、こいつがねえ」

 

別に誰がベンチに入ろうが俺には関係ないけどなんか腹立つんだよなこいつ。しかも沙綾と交際だと?頭沸いてんじゃねえか?

 

「こ、困ります!急にそんなこと言われても!」

 

「はは!照れることはない。それに君は野球が好きみたいじゃないか。僕は野球の天才だしベンチにも入っている。僕と付き合えばエリート選手の彼女というブランドがついてくるよ!」

 

「そ、そんなの興味ない!それに私は…」

 

「おい……」

 

「ん?君は何かな?天才である僕の邪魔をしないでくれないか?」

 

「別にお前が天才だとか天才じゃないとかどうでもいい。俺には関係ないからな」

 

「ふん、じゃあ…」

 

「でも中途半端なやろうが気安く沙綾に手出してんじゃねえよ」

 

「ま、雅紀……」

 

「ふ、何を言い出すかと思えば君も可哀想な人だね。好きな人が取られそうで焦っているのかい?だったら僕と勝負しないかい?もちろん野球でね?」

 

「なっ!!!」

 

「お、おい小坂!こいつは野球やってねえんだぞ!勝てる訳がない!」

 

「僕に喧嘩を売ったんだ。これくらいしないとね」

 

「雅紀!こんな勝負しなくても……」

 

「いいぜ」

 

「え?」

 

「やろうぜその勝負。ただし俺に負けたらお前ただじゃ済まないからな?」

 

「ま、雅紀!」

 

「大丈夫だ沙綾。軽くやるだけだから」

 

「お、おい雅紀!いいのかよ?」

 

「ああこいつはいっぺん痛い目見ないと分からないだろ」

 

とにかく俺はこいつにすこぶる腹が立っている。こんなことで野球をするなんて思わなかったがまあ仕方ない。

 

「ふふ、いいねえ。では放課後、グラウンドに集合だ。」

 

「ああ」

 

「……逃げるなよ?」

 

「はっ、誰が!」

 

小坂雅人は優雅に教室に帰って行った。

 

「おい、いいのかよ!」

 

「は、萩野君野球出来るの?」

 

「まあ軽くな」

 

「軽くって」

 

「雅紀………」

 

沙綾が俺の袖を掴んでる。きっと心配なんだろうな。だから俺はそっと沙綾の頭に手を置いて優しく撫でる。

 

「大丈夫。沙綾が心配してるようなことにはならないから」

 

沙綾は顔を赤くして小さく頷いた。はあ、結局また野球やってるよ……でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。

 

「ちょっくら懲らしめてくるよ」

 

 

 

 

これがきっかけで萩野雅紀の物語は大きく動くことになる。それは雅紀自身も知る由もなかった。

 

 

 




関東の人間じゃないんで標準語が難しい!しょっちゅう方言出ちゃって消してますwww
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