今回は野球ネタはないです。しかし、この物語の伏線になりますのでぜひ見てください!
「うえ〜やっぱ東京は人多いな」
「当たり前じゃん?東京住みが今更何言ってんの?」
俺と沙綾は俺の野球道具を買うために中学の頃までお世話になっていたスポーツ店に向かっている。
それはいいのだが問題は人の多さだ。ここは東京、それも人の多く集まる23区内だ。15年ここで暮らしているがやっぱり慣れない。沙綾はよく遊びに行くため慣れてるようだが基本誘われないと家から出ない俺からしてみたら息が詰まりそうになる。
「それより忘れてないよね?今日は私の買い物にも付き合ってもらうんだからね?」
「分かってるよ。昼飯もだろ?」
「ならよろしい!さあ、行こう!」
「なんでそんなにテンション高いんだよ……」
などと言いながら、スキップしそうな勢いで歩き出していることには自分は気づいてない。
「……もうちょっと素直になろうね。楽しみなのは分かるけどスキップしそうになってるよ?」
「う、うるせえ!」
人混みは苦手なのに楽しみという矛盾が生じてるのは気にせず俺たちは行き慣れたスポーツ店に行くのだった。
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私たちはスポーツ店で雅紀が使うグローブを見ていた。基本オーダーメイドで既製品は使わない雅紀だけど、どういう感じにしたいのか考えるためにお店に並んでるのを触ったり手を入れてみたり確認する。
「あまり大きいのは違うんだよなあ。手にフィットする感じでゴロ捕球もしっかり出来るような感じで……」
やっぱり物を選ぶ時の真剣な雅紀の顔はキリッとしててかっこいいと思う。私はグローブよりも雅紀の顔を見ていた。
「それで革質は……ん?どうした?」
「な、なんでもない!」
「なんだよ急にでかい声だして」
「ご、ごめん」
「……ああ、退屈だった?悪い、もう決めたから行こうか」
「退屈じゃない…ただ真剣に選んでる雅紀が懐かしくてね」
「なんだそれ。まあいいや。すみませーん!」
雅紀は店員さんを呼んでオーダーメイドの段階に入った。私はその間ブラブラと店の中を見て回っていた。
数分後、話し終えた雅紀がこっちに向かってきてることに気づき、そっちに向かう。
「もう終わったの?」
「終わったよ。出来るまでに1週間だって」
「結構早く出来るんだね」
「そうだな。それより俺はもう終わったから昼食に行くか」
「うん!」
私たちは店を出て、デパートへと向かって歩き出した。
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「ん、なかなか行けるなこのパスタ」
「こっちのハンバーグも美味しいよ」
「一口くれよ」
「嫌に決まってるでしょ!」
「ケチ」
「あれ?沙綾とまさ君だ!」
そんなたわいもない話していると背後から女性の声が聞こえ振り向くとそこにはクラスメイトの戸山香澄ともう1人女の子がいた。
「戸山かよ。昼飯か?」
「そうだよ!2人は?」
「いや、お姉ちゃんここにいるんだからランチに決まってるでしょ」
「た、確かに…」
「あはは、君は香澄の妹さん?」
「はい!戸山明日香と言います。姉がいつもお世話になっております」
「まあ、ぶっちゃけ中学の頃から世話してたっちゃしてたか」
「余計な事は言わなくていいから!」
「そうだよまさ君!お世話になったことないよ!」
「ごめん香澄、さすがになったこと無いことは無いよ」
「さ、沙綾まで〜それより沙綾!バンドの話決めてくれた?」
「……ごめん、まだ決めてない」
「そっか!ゆっくりでいいからね!でもなるべく早くね!」
「それでは私たちはこれで。ほらお姉ちゃん行くよ!」
戸山姉妹は嵐のように去っていった。
「なあ、沙綾?バンドって戸山とバンド組むのか?」
「……高校に入ってから香澄エレキギター始めたらしくてね。バンド組まないかって誘われてるの」
「……だいたい話は分かった。戸山にバンドに誘われたけど、親に迷惑がかかる。バンドに入ったとしても前のバンドメンバーに申し訳ないって感じか」
「……うん。出来ることなら力になってあげたいけど、お母さんがね。体弱いからもし倒れたりしたらバンドどころじゃなくなっちゃうから」
「なるほどな。まあ、沙綾の人生だ。沙綾が決めた事に俺はとやかく言うつもりはないさ」
でも。と俺は続ける。
「後悔だけはするなよ?やっぱりこうしとけば良かったとかならないことを俺は願ってる。って俺が言えた事じゃないけどな!」
俺に言われたところでお前に言われたくないって思うだろうが本心だ。それだけは揺るがない。
「ま!高校生活も始まったばっかだ。気楽に行こうや。だけどあんまり戸山待たせすぎんなよ?さすがに可哀想だから」
「うん。なるべく早く答え出すよ」
俺たちは残りを食べ終わり、店を出て、デパート内で色々物色したが沙綾は時々心ここに在らずって感じだった。
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家に帰った私はお店の閉店作業をしてる親に代わり、晩ご飯支度をする。私に出来ることはやっていきたい。お父さんお母さんに無理だけはさせたくないから。
「お姉ちゃん!今日のご飯なに?」
「俺カレーがいい!カレー!」
「んーじゃあ今日はカレーにしようか!」
「「やったー!!」」
カレーと聞いて無邪気に喜ぶ弟純と妹の紗南。まだ小さくて可愛げのある私の大切な弟妹たちだ。
『後悔だけはすんなよ?』
昼時に雅紀に言われたのが頭から離れない。自分を捨てて家族を選ぶのに後悔はない。私の自己満で家族に何かあったらそれこそ後悔しかない。
「……だけど……」
「沙綾、ありがとう。ごめんね?家事手伝わせちゃって」
「大丈夫だよ、お母さん。これくらいなんて事ないよ」
「家事が出来るのはいい事さ。将来アスリートのお嫁さんになるんだからこれくらいはしないとね」
「は、はあ!?お父さん何言ってんの!?」
「アスリートってなにー?」
「アスリートって言うのは雅紀お兄ちゃんみたいな人のことよ」
「姉ちゃん雅紀兄ちゃんと結婚するの!?」
「そ、そんなわけないでしょ!お母さんも純に変なこと言わないでよ」
「あら?純にアスリートって何?って言われたから答えただけよ?」
してやったりという顔をするお母さん。お父さんの悪ノリから始まったこの会話にいつしか私も恥ずかしさから笑顔に変わっていた。
「やっと笑ったわね」
「え?」
「帰った時から表情暗かったもの。何を悩んでいたのかは分からないけどあまり悩みすぎたらだめよ?ストレスでお肌荒れちゃうわよ?」
「き、気を付けます…」
「ねえ沙綾?」
「ん?なに?」
「1人で悩むのもいいけど周りの人もちゃんと頼りなさいよ?雅紀君にそう言ったのは誰かしら?」
「な、なんで知ってるの……?」
「娘の情報なんてどこからでも入るわよ〜」
それはなんだか怖いんだけど。だけどお母さんに言われた事は正しい。もう少し考えて潰れそうになったら雅紀に相談しよう。それまでは………
晩ご飯を食べ終え、お風呂に入り髪の毛を乾かし肌の手入れをする。部屋に戻りいつもの様に雑誌を手に取る。雅紀が中学時代雑誌のったやつだ。
雅紀が載ってる新聞は雑誌を私はしっかり集めている。雅紀のページを開き、そっとそのページに向かって囁く。
「……私、どうしたらいいんだろう…私はどうしたいの…?」
誰も聞こえないくらい小さな声で呟く。当然言葉が返ってくることはなく、あるのは静寂のみ。
「…ダメだこんなんじゃ。雅紀に心配はかけたくない。しっかりしないと…」
やっと雅紀が野球をまたやる決意を示してくれたんだ。今は余計な心配をさせたくない。
「………寝よ」
突然やって来た睡魔に逆らうことなく私は静かに目を閉じた。
今回から沙綾編に突入します。
野球の話が見たいねんって言う人はごめんなさい、もう少しだけ付き合ってください。
次回はもうちょい早くあげます!