蜉蝣物語   作:推奨納言

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大変遅くなりました。最近本当に忙しくって…。長いこと待って頂いて嬉しい限りです。あと一話で体育祭は終わりますので…。

しかしながら、これからもっと忙しくなるので、今以上に更新速度は下がると思われます(院試許さない)(早く終わって欲しい)(卒論もある)(実習もある)(死にたい(死にたい))。

先だってお気に入りに登録している諸先生方の内、前書きにおいて、お手紙の事を述べられる御方のおられましたが、一瞬自分のことかしらと自惚れたのはここだけの話。




13. Polonaise No.6/向日葵らの証言

―――さながら、英雄の凱旋の如く、勇壮たる歩みを僕程度では止められそうにもなかった。

 

普段の彼は、そこまで確りしたような気質では無いと思われる。やはり、朝霞くんも体育祭で聢とその活躍を示したいのであろう。僕も負けてられないとは意気込んだものの、最終関門で彼からの手厳しい妨害に遭って、上手くは行かなかったし、彼の所為で僕の活躍が見せられなくなってしまった!しかし、チャンスは如何様にもある。これから頑張ればいいのだから。

 

さて第二種目の騎馬戦、彼はそこまで交友関係が広いといった印象は受けない故に、チームが組めるのだろうかと疑問を持ったが、些か杞憂であり、問題なさそうだった。

 

尾白くんも一緒のようだったし、彼となら朝霞くんも無事だろう。強いて言えば、やたらとふらついていたのには目がいったのだが。

 

 

 

何とか切り抜けていたが、彼の―朝霞くんの様子は、二種目目が終わって、レクリエーションの間でも妙におかしかった。考え込む様な事が現時点で起こったのだとすれば、果たしてこれまでにそれほど悩ませるような事があったのだろうか。

 

さては、第一種目の最終関門で、僕への妨害を気に病んでいるのか!?

 

だとすれば、彼も中々如何して悪い奴ではないのだなあ。いや、そもそも本当に悪い奴なら、こんな所に入学するものか。

 

いやはや、それにしても気に病んでいたら申し訳ないなあ。ある意味では、僕がその一端を担っていると言っても過言ではないし、何よりも僕がそのことにかかづらってはいないと、そういうモーションをかけておいた方が良かろう。

 

 

「朝霞くん!僕は第一種目の件では怒ってないからな!」

 

「…ん?えっ、ああ、うん。そう。分かった。」

 

 

朝霞くんは突然声を掛けられて戸惑って、何だか生返事だったけれど、充分伝わったようなら安心だ!そしたら、続け様に「委員長の寛大な御心に感謝の至り、心より嬉しうございます」だなんて返すから、むしろこっちがしてやられた様な気分だった。

 

別の話を切り出そうと思う矢先に、「それじゃあね。」と言われて彼は去った。途中で峰田くんと上鳴くんに呼び止められて、何か伝言を頼まれた様子だった。

 

何やら見ていると、八百万くんにその伝言らしきを伝えているようだった。八百万くんは口に手を当てて驚きながら、体から衣装を出し始めた。二人は「じゃあ」と手を挙げて挨拶してから、朝霞くんは観客席には戻らず、控え室の方へ向かって行った。

 

しかしながら、なぜ八百万くんは「チアガール」の衣装を創っているのだろうか。―――

 

 

 

***

 

 

 

ケロ…、朝霞ちゃんの髪は手入れが行き届いていて、いつ見ても艶々でサラサラの髪を―お茶子ちゃんよりは少し長い髪なのだけど―風に靡かせているわ。

 

ヒーロー基礎学のときはその髪を結わえるのだけど、女子でも今どき珍しいのに、髪紐で結い上げるの。小さな顔には涼し気な目元だったり、写真には残らない程度の泣き黒子だったり、口の右端辺りに少し濃い目の黒子があるわ。

 

女子の間でも―主にお茶子ちゃんが「口元の黒子は生涯食いっぱぐれないから羨ましい」と言っていたし、透ちゃんも「口元の黒子って、何かセクシーだよね!朝霞くんって、爆豪くんほどキリってした顔じゃないけど、スってした目尻とか目線とかと重なって、高校生っぽくないよね!」なんて言っていたわ。

 

ケロ、三奈ちゃんも「あんな大人っぽい顔で生まれたかった〜」なんて言ってたりしてたわ。

 

確かに、高校生っぽくない顔立ちだし、何よりも余り感情豊かな感じではないのもあると思うの。ケロ、別に無表情ってわけじゃないけど、いつも一緒にいる上鳴ちゃんみたいに、コロコロ表情が変わらないだけで、表情が読めない訳ではないわ。

 

でも、性格は真反対そうな二人が仲良いのって、何だかまるで漫画の世界みたいね。本当にそういうことってあるものなのね。―――

 

 

 

朝霞ちゃんが珍しく寝癖を付けているのに、行進中だったけれど、声を掛けようと思って見ていたら、ケロ…先に声を掛けられてしまったわ。

 

こんなにゴミゴミしていてガヤガヤいているのに、私が見ているのに気付いたみたい。これが噂の野生の勘かしら?

 

当の本人は「今朝、久々に寝坊仕掛けて、寝癖にも気付かなかった」と恥ずかしそうに寝癖のある辺りを撫で付ける。

 

私も「髪ゴムがあるけど、使うかしら?」と言ったけど断られ、朝霞ちゃんはポケットの中から普段使いの髪紐を取り出して纏めた。

 

 

 

本戦には残念ながら出られなかったわ。けれど、通過者を見ると、ある意味では当然と思える様な並びだし、あの中で上手くやれるかしらと思えたわ。

 

ちょっとした余興を楽しみつつ、お昼ご飯もどうかしなきゃと思っていた矢先のこと、朝霞ちゃんが、ヤオモモちゃんに話しかけている様子が気になった。何やら業務連絡のようで、峰田ちゃんと上鳴ちゃんが相澤先生から伝言を預かったらしい。

 

朝霞ちゃんは「二人が急ぎの用があるから、八百万に伝えてといてって」と言っていたわ。

 

ヤオモモちゃんは、朝霞ちゃんの伝言を聞いてから、何かの衣装を創り始めた。あの二人が一体どう言う会話をすれば、あのコスチュームが出て来るのかしら。私も腕組みして頭を捻ったけれど、どうにもあの二人の思考回路は読めなかった。

 

でも、あの二人が考えた末の結論なら、まあ問題は無いんじゃないかしらと適当にあたりをつけた。

 

朝霞ちゃんもヤオモモちゃんも、相澤先生からの言伝だと聞いて、何も疑わなかったけど、今思えば、峰田ちゃん達から伝わっているというのに疑いを持つべきだったわ。―――

 

 

 

***

 

 

 

気付いた時には予選の二試合目が終わっていて、知らぬ間に本戦通過を果たしていた。

 

―――意味が分からない。

 

率直に言うと、そういう感じだった。皆は通過したことに「おめでとう」と言ってくれているが、自分にはこれっぽっちも嬉しくはない。自分の努力で実った結果では無いし、何よりも、明らかに人の力で通過したようなものだったから。

 

騎馬戦が終わってすぐに、あたりを見渡せば予選終了の騒がしさの中にいて、朝霞と俺は何故か互いにポツンとしていた。本戦通過組も互いに喜びを分かち合っていたけれど、自分と朝霞がポツンとしているのには些か奇妙だった。

 

最後に覚えているのは、騎馬戦が始まる少し前に、確かA組を煽って来た普通科の奴が声を掛けてきたこと。それから瞬く間に、予選通過まで時が過ぎていた。まるで、睡眠のようだった。

 

朝霞の方を見遣ると、微動だにせず、その場に立ち尽くしている様子でもあったが、もしまだ意識が眠っている様であれば起こしてやらなくてはいけなかった。

 

声を掛けて肩を揺すると、朝霞から返事はちゃんと戻って来たあたり、意識はある様子だった。

 

しかしそれでも、朝霞とは目が合わない。

 

果ては本人から「あれ…?その声だと…、尾白?ごめん、何処にいる?」と言われる始末だった。俺は目の前に居さえしても、あまりあるほどの存在の薄さかと肩を落とした。

 

 

「どこって…朝霞、目の前にいるじゃん…。」

 

「えっ、ああ、ごめん。」

 

 

朝霞からは「尾白って影薄いから、ついね。ごめん、ごめん。」と弄られてしまったが、弄り以前にガッツリ斬られた感が否めなかった。

 

 

「朝霞…、おまえ、意外とそういう奴なんだな…。」

 

「あれ、傷付いちゃった?ごめん、ごめん。冗談だって。」

 

 

俺は朝霞が少しケラケラしてるのを初めて見た気がする。普段の朝霞ってこういうタイプだったのか?と変なものを見たような、そういう感じがある。

 

強いて何が気になったかと言えば、ステージからの帰り際に朝霞が「えっ……?いつ糸を切って……?」と言ったことだった。―――

 

 

 

***

 

 

 

朝霞はいつも前衛的だ。まるで未来を知っていたかのように、オイラたちの行動の可能性を的確に予期してきた。

 

オイラが「ちょっとした出来心」でちょっとだけ、ほんのちょっとだけ女子と絡もうとしたら、まるで本当に予期していたかの様に、尽く邪魔される。

 

ズルいぞ!お前だけヤオモモと仲良くしてるの!オイラだって、ヤオモモと仲良くなって、あわよくばあんな事やこんな事を。―――

 

 

 

 

 

「なあ、上鳴。」

 

「なんだ?」

 

「朝霞とヤオモモって付き合ってると思うか?」

 

 

そう上鳴に尋ねれば、「一時期俺もそう思ってたけど、何か本人達は全然そういう気がないっぽいぞ。」と返ってきた。

 

オイラ思うに、男女の中に友情は生まれないと思うんスよ。だから、二人のそういう態度はカモフラであり、裏ではヤオモモをあられもない姿に剥いて、コソコソとあんな事やこんな事が行われてて!―――

 

言いかけた言葉だったが、言えばどこからともなく、まるで一部始終を見聞きしていた様な奴だから、下手に口には出来ない。壁に耳あり障子に目ありだからな。障子は目よりも耳の方をよく複製するけど。

 

頭の中でグルグル思考していると、余興の一種でチアガール達がステージの方へ向かって行くのが見えた。仲間の上鳴も、どうやら見ていたみたいで、オイラ達は互いに顔を見合わせた。考えていることは同じだった。

 

オイラ達が直接伝えるとなると、信憑性が無くなるから、相澤先生からの言伝という設定にした。それでも、上鳴もオイラも上手く行かない事を考えて、何かと女子ウケが良い朝霞を使って伝えようと決めた。

 

これなら絶対に上手くいくだろう。

 

それから、朝霞が近くを通り掛かったんで、事の次第を伝えたんスよ…。全部嘘だけど。

 

朝霞も相澤先生からの言伝だと聞いて疑うことなく、真っ直ぐ女子群の方へ向かって言った。

 

やっぱり、真っ先に声を掛けたのはヤオモモだった…!

 

朝霞ェ…、やっぱそういう普段の様子から君らの関係性が見えるモンなんすよ?やっぱ、お前ら絶対にそういう関係だろ!クソっ!これだからモテる男は嫌いだ!

 

ヤオモモは朝霞の伝言を聞いてから、チアコスを創り出した。

 

オイラは口の端から垂れる涎を拭った。―――

 

 

 

***

 

 

 

しかしながら、何故こんなにも目が乾くのか。前にも増して目の乾きが酷くなった。USJでの襲撃によって、大きな負傷をしてしまったために、後遺症までオマケに貰ってしまった。あのバァさんの所為で、大仰な包帯まで巻かれてしまったし。

 

 

マイクに無理やり連れてこられて、解説役を押し付けられた。本当はこんな事したくなかったけれど、アイツに上手く言いくるめられて連れてこられた。

 

いつもそうだ。俺が言おうとするよりも、多くの事を被せて来て、結局言いたいことも言えずにいいようにされる。

 

とはいえ、正直今回はこの役を貰えて好都合でもあった。というのも、ミッドナイト先生が朝霞の実家の身辺整理を終えて戻って来てから、俺と校長とミッドナイト先生で、朝霞の今後の処遇を話し合い、目を掛けてやらなくてはならないと決まったからだった。

 

実はそれだけじゃなかった。ミッドナイト先生から、朝霞の個性登録について、二三の質問があったからだった。

 

 

「ねえ、イレイザー。朝霞くんって、複合もしくは複数個性の子かしら?」

 

「いや、個性届けには『強い力で物を投げる個性』しか書かれてなかったと思いますが…。」

 

「そうよねぇ…。他に授業中とかで、何か変な事なかった?」

 

「いや、特には…。それにしても、ヤケに朝霞の事を探ってますけど、何かあったんですか?」

 

 

ミッドナイト先生から話を聞くに、何か朝霞にはあると思われるのは間違いなかった。見るなと言われて却って見たり気にしたりしてしまうように、ミッドナイト先生から話を聞いて変に朝霞のことが気になった。

 

障害物競走も騎馬戦も、見る限りでは恙無く終えたようにも見えた。もしかしたら、ドライアイのための点眼で見損ねたなんてことないよな?―――少し不安になって来た。

 

まあ、ミッドナイト先生が言うほど、そんなに気に掛けることも無い気はしないが、自分の受け持つ生徒だ、流石に放置しっぱなしは良くない。だが、やはり不可解なのは個性届になぜ記載しなかったのか。単に記入し損ねたならまだ良いが――いや良くはないな。そもそも、記入し忘れるなんてあるのか?

 

仮にし忘れていただけなら、今度役所に届出しろと言って済む話だが、もしこれが意図的に隠されていたら?

 

なぜ隠す必要がある?隠す理由は?それに、隠している個性は何なのか。

 

考えても答えは出るはずもない。ミッドナイト先生が気にかけ続けてから既に何週間も経っているし、それでも中々馬脚をあらわさないのだから、今日一日で全ての謎が解けるなんて、そんな都合の良い話があるわけない。

 

―――そういえば、ヒーロー基礎学の一回目の授業で、朝霞が轟を避け続けたが、あれはどうなのだろう。

 

ああ、思い出した。翌日のHRで、朝霞に何か言おうとしたのは。―――

 

 

 

「個性届に無い『個性』ねえ…。」

 

「ん?どうかしたか、イレイザー?」

 

「んにゃ、なんでもない。昼休憩が終わったら起こしてくれ。俺は寝る。」

 

 

マイクは喧しい。昔からそうだ。隣でギャーギャー喚いているが、俺は無視して眠ろうと寝袋で身を包む。本戦が楽しみだ。―――

 

 

 

 




前書きにもある通り、ただでさへ遅かった更新が、一層遅くなります。楽しみに待って下さる皆々様には、とても申し訳ない気持ちで一杯です。どうか気長にお待ち下さいまし。

皆様の感想や評価には必ず目を通し、必ず返信するようにしております。たまに、直接メッセージを送ったりします。皆様の感想とアーモンドチョコと空気で走っていますので、嬉しい限りです。

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