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もう世間では春というらしい、春霞の立つようなところが一体どこにあろうか。この雪国ではまだ雪が積もっていて、少しも春めいてこない。
祖母は前より随分と痩せて、頬も些か肉が無くなり、落窪んだ目や頬にはまして影が生む。心配ないからねと、背中を叩いて送り出してくれた駅では、滲んで見えなかった。
駅舎を発てば、遠ざかる景色に一人佇む祖母の姿が有り続けた。いつまでもいつまでも、そこに居てくれていた。明日からの祖母に不安でたまらない。
もしかしたら、これが最後かも知れないと思うにつれて、あの「ちょっとそこまで」のごとき別れ方で、本当に良かったのだろうかと心配が胸を刺す。何だかもう会えないような気がして仕様がなかった。
あの山の奥地から通いでは不可能であるが故に、ひと足早い春と独り立ちに相成って、高校近郊に住むこととなり、朝も早い、日もまだ昇らぬ曙に雪国を去る。
次第に白む空は紫がかり、細く雲の漂う様は圧巻で、少し幅のある窓枠に肘を突いて頬杖をつけば、鈍行の窓越しのパノラマは、雪が徐々に無くなる土地へと向かう。予定の場所までは、乗り継ぎに乗り継ぎ、5時間も掛けて到った。
殺風景に味を出す為の家具を探しに街へと繰り出せば、経験したことのない人の多さに参ってしまうも、ただの空の箱でしか無い部屋に、せめて電灯とカーテンだけでも買って行かねばと奮い立たせ、何とか手に入れてより、寝具は布団を持って帰れぬとも毛布だけでもあらば寝られるため、一度新居に戻った。
列車の乗り方が電子的で手間取り、改札を上手く抜けられぬ様はおノボリさんを曝すばかりだった。優しい駅員さんの手解きがまた恥ずかしさを誘う。
***
蛍光灯とカーテンを買ったものの、カーテンのサイズを適当に見積もったため七分丈となってしまったが、暮らす上ではなんの問題があろうと開き直り、せめてもの毛布をと街へ再び出ようといえ、かかる街並みはこれまでに経験なく、何がどこにあるのかもどれが食事処かも分からず、困り果ててしまった。
朝霞臣はコンビニの利用もしたことがなく、どれがコンビニかもとんと見当のつかず、買い与えられた最新式の通話機器も、この現代の若者には身に余る利器、使い方さえ分からず益々戸惑う。
さながら現代の浦島の如くありて、雪国を出てまだ半日と経たずに恋しく、あのビル山高くて故郷見えぬがまた憎らしい。
早くも心折れかけた矢先のこと、運命の転機かな、一人の青年から手を借りられ、ショッピングモールなるを教えて貰う。
しかし、その場所分からず恥をしのんで行き先を尋ねれば、何たる優しさ、教えて呉れただけならず付いてきてくれるとのこと、上京初の友人を作れる好機をここぞとばかりに逃さず、名を伺う。
その初夏の爽やかに咲く金盞花の如く快活な青年、上鳴電気と言うらしい。
「悪いな。大事な休みなのに、初めて会った奴の寝具を買いに付いてきてくれるなんて。」
「いや、いいって。どうせすることないし、ナンパしてみっかってブラブラしてただけだったし。それに俺、ヒーローの卵だし?人助けくらいやって当然っしょ?」
――いや、ヒーローの卵がナンパしていいのか?
一瞬そう頭に過ぎったが、これがシティボーイなのかと一種の感動すら覚えた。流石、おノボリさんである。
二人は行き交う人波を掻き分け、ショッピングモールのエスカレーターに足を踏み入れる。エスカレーターも上手く乗れないのを見られて、まるで幼児だと笑われると恥ずかしさでまた顔が赤くなるのが分かった。
目的を果たすまでに、互いの自己紹介を兼ねて出身地を話すと、『雪国』のような世界から来たことに驚かれ、「トンネルを抜けると雪国だった」を現実で体験しているのに感動されても、少しも実感が湧かない上に、毎日雪合戦が出来るなと言われようが、そもそも近所に人が住んでいないばかりか、屋根に雪が積もる故に雪下ろし雪掻きで、雪合戦や雪達磨作りに何の魅力があるのやらと言えば、夢が無いなとガッカリされてしまった。
それに「道理で改札の使い方が分からなくて、駅員さんから何か説明してもらってたんだな」と言われて、あの姿見られていたことにまた恥ずかしさを募らせた。
上鳴の自己紹介で「ヒーローの卵」発言に言及すれば、「雄英高校に今年の春から通う事になっている」と鼻高々に誇らしそうに話し、「実は自分もヒーロー科に通うことになっている」と言うと、一瞬驚いた様子だったが、「何なら早くいってくれよ」と背中を強く叩かれた。慣れない距離感には少し戸惑ったが、それ以上に叩かれる背中が痛かった。
目的の毛布だけを買おうと見て回っていると、「これ、すっげーフカフカだぜ!」と展示品のセミダブルのベッドに寝そべりながら、「こっちに来て、確かめてみろよ!」と声をかけられて、周りの目が気になるものの、言われた通りに隣で寝そべると信じられない程の快適さに、感動を超えて逆に恐れすら感じた。
人間はこんなに素晴らしいものを作るのかと、しみじみ思っていたつもりが嘆息の漏れ出ており、散々上鳴にからかわれた。
ベッドを使ったことない上に、そもそも布団は手作り、綺麗に仕立てた毛皮で毛布は代用していたと言えば、「え?まさかのボンボン?」と問われたが、いまいち彼には「ボンボン」の意味が分からず、鳩が豆鉄砲をくらったかのようなキョトン顔で見詰め返すものだから、一層呆れられた。
「朝霞って金持ちなの?」
「金持ち…ではないと思うぞ?うちはマタギを家業にしてたから、狩った動物の毛皮を毛布に仕立ててたし、布団は綿花を育てて自分たちで作ってたし。」
「えっ…?戦前…?未だにここまで現代社会と隔絶された人っているもんなんだな…。」
上鳴は呆れより感心すら覚えたが、これが事実ならあんまり馬鹿にはしては良くないと思い、田舎モン弄りはこれ以来控える様になった。
しかし偶に吹聴して、朝霞臣の実家には熊の毛皮で出来た絨毯があると言い回り、臣を何度か困らせることとなる。
それがまた本当のことだから余計に困り物なのだが。
臣と上鳴は寝具売り場を見て回ったが、どれにするか決めるに決められず、悩みに悩み、結局あのセミダブルのベッドを買う事に決めた。本当にあのベッドを買うとは上鳴も考えておらず、無神経に勧めた自分を少々責めた。
何せあのベッド、そこそこの値段がするのだ。それを一括払いで買う朝霞臣を目撃し、サインしている手元と顔を何度も往復して見てしまった。やはり、朝霞はボンボン何だと決め込んだ。
本当はただ勝手が分かっていないために、とりあえず一回で良いだろうと適当に一括にしただけなのだ。金銭感覚の危うさに、上鳴少年は今後ついついお節介を妬いてしまうことになるのだが。
上鳴少年は日がな道案内やら街の案内をしてあげた。感謝してもしきれぬ性分、しかも昼の時間はとっくの昔に過ぎ、夕餉の時間ともなるらしく、折角だからと今日のお礼に何か振る舞ってやらねばと声を掛ければ、二つ返事で喜び勇み、ではと毛布や、ついでに購入した台所用品を一緒に家まで持って帰った。
上鳴は振る舞われた料理の美味さに感動を覚え、偶に集りに来るようになったが、可愛い弟の出来た気分でついつい甘やかしてしまい、入学するまでのモラトリアム―春休みの間はかなりの頻度で集られたのである。
食べ過ぎに食べさせ過ぎに、上鳴がこの春休み期間で少し太ってしまったのは、無論、朝霞臣の所為であることは明らかである。
***
道も分からぬ、電車の乗り換えも未だに分からぬ故に、朝霞臣は駅で待ち合わせて、上鳴と入学式へ向かった。満員電車という都会の洗礼に咽びおれば、甚だひどく笑われ、ハーゲンダッツの約束を取り付ける。
この休みの間で娯楽や美味しいものを知り、ハーゲンダッツの美味しさにやられて、店に寄れば買ってしまい、己の意志の薄弱さに悲しく思うとも、毎度美味しく頂き、行きつけとなったコンビニの店員に「ハーゲンダッツの人」と知れ渡るはつゆ知らず。
春休暇の最中に二人は同じクラスなのも知って益々仲も深まった。入学式ともあって、当然のことながら、人は多いのであるが、この田舎者の朝霞臣は故郷が小中学校の極小規模しか知らず、この日まで全然人混みに慣れないまま今日に至り、既に家に帰りたくなるとも、これからが本番。悲しや、慈悲も無し。
朝霞臣には些か人見知りの気があり、偶然の成り行きで上鳴電気とは友人になれば、そのまま芋づる式にズルズルと互いの家に―一方的に上鳴が臣の家に入り浸っていたが、気も置けない仲となっていたために、問題はなかったが、そもそも朝霞臣はそんなに話すような性質でもなし、趣味と言えば本を読み耽るのみ、家に入り浸る上鳴も自身の携帯ゲーム機を以て暇を潰すばかりであった。
最早年季の入った夫婦のようになり、稀に臣の家に必要な物を買い足しに共に街を回るばかりで、他の友人が出来るわけでは無い上に、上鳴自身も臣と共に沈黙を過ごすとも居心地が良く、終日無言の日もある。
席が共に離れているのが予想され、授業中に話し掛けられる訳でも無し、上手くやって行けそうにも思えなかったが慈悲はあり、斜め後ろが上鳴であったため、表には出ずとも歓喜にうち震えた。
臣のために少し早めに学校に赴き、入れば既に人も疎らでこそはあれチラホラと来ており、臣はあのポニーテールの少女を探したが、このクラスには居ないのだろうか、もしや隣か?と思い、いつ返すか思案していた所、あの子が後ろの扉から、濡れているらしいその手を拭きながら、まさに白き天竺牡丹がやって来るではないか!
上鳴と話している途中に、突然黙りこくって、その少女が自身の席に着くまで始終見ていれば、宜なるかな、上鳴もその不可解に気付き、一目惚れかと弄り倒す。
いや実はと話す矢先に、傍の扉ががなり立てて開き、切れ長の吊った目にツンツン髪の、申し訳ないが、見るからにガラの悪そうな、手入れの行き届いた鬼百合の少年が大股で、肩で風切り闖入して来た。
余りの唐突さに無意識に矯めつ眇めつしてしまい、「ああん?何見てんだよ」とチンピラ、まさに言い得て妙、チンピラ宛らに言葉を浴びせられ、余りの凶悪さたるや、「い、いや。悪い…。」と尻すぼみに返せば、「じゃあ、ジロジロ見てんじゃねえよ。陰キャが!」と初対面にも関わらず、酷い言葉遣いに開いた口が塞がらない様は、滑稽としか言い表せず、上鳴は臣が「陰キャ」と呼ばれたことに、顔を背けながらも笑いを堪えきれずにいた。初対面での――既視感が否めなかったが――陰キャ認定はあんまりである。
されども致し方なし、かの少年である。さもありなん。
それから、その暴言少年は自身の席でふんぞり返っていると、制服をかっちり着こなし、委員長然とした高身長の、まるで真夏の向日葵の様な凛とした不屈の青年と口論になっていた。
その後ろの後ろ、一番最後の席に座る彼女は対角線上のここからでは明瞭に見えなかったが、眉を顰めている様子であった。
口論のうちに、上鳴の後ろの席の男子生徒がやって来た。髪を逆立て人工的な深紅の髪色は鮮やかで、少しだけ、ここだけの話、少しだけニワトリの鶏冠のように見えた。
名を切島鋭児郎というらしい。
人間が明朗で、話さずとも滲み出る人の良さ、さながらに苔薔薇のようであれば、先程の衝撃がやや緩和されつつも、未だに「陰キャ」と呼ばれたことを引き摺りつつ、考えないようにしようと頭の中から振り払った。
「陰キャ」と呼ばれた時に、彼女に聞こえやしなかったかが、不安の種であった。結局、上鳴に事情を話せなかったのも悔やまれるところ。
***
ヒーローたる者、臨機応変なれ。
とはいえ、流石に突拍子も無く運動能力をお測りになるとは、幾許か自由を突き抜けて奔放である。
流石の暴政の如くに声を上げる者もいたのだが、「自由な校風」とされる免罪符を以て、右から左へ。仰せられるまにまに従うほかなく、流石ヒーローの卵たるや、早速受け入れて測定を始めた。
亜麻色のツンツン髪の少年――先生はその名を仰ったようでしたがこちらが呆けてきちんと聞き取れず、失礼もあっては宜しく有りませんので、亜麻色の少年と呼ばせて頂きますが、この亜麻色の少年は口の大層悪いけれども、入試一位の名は伊達ではなく、上手く個性を使って、着々と順位を上げ行く。
皆様方の個性を自ら解説なさる程のご親切に痛み入る次第でございます。
さて、その頃朝霞臣はと言うと、先程からの亜麻色の君の口の悪さに慣れず未だに兎の如くビクビクして、測定が終わる度に上鳴少年と鶏冠――基い、切島少年とつるんでいる。
切島少年は亜麻色の君の口の悪さに苦笑しつつも、教室に入る寸前に、朝霞臣が上鳴少年に何か言いかけた事を思い出されて、尋ねてきた。
「さっき教室で言いかけたヤツだっけ?実はさ俺、推薦入試も受けたんだよね。」
上鳴少年も切島少年も意外そうに朝霞臣を見詰めてくるものだから、不思議がった。
「朝霞って、意外と成績優秀、品行方正だったんだな…。陰キャなのに。」
などとこの中では、誰よりも長い付き合いの上鳴少年に言われてしまったのが、声にならない声となって漏れ、少しショックを受けた模様であれども、話を続けた。
「そ、それで、その時にあのポニーテールの子がペンを落としたんだよ。直ぐに返せば良かったけど、丁度実技が始まろうとしていたところで、声を掛けるに掛けられないまま、今に至るってわけ。」
「ストーカーじゃん。」
上鳴少年からバッサリ袈裟斬りをお見舞いされ、満身創痍の朝霞臣は恨み辛みを申しあげながらも、名を呼ばれて、「ボール投げ」の測定へ。
これまでの所、長距離走では、かの天竺牡丹の少女・八百万百、委員長然とした向日葵の少年・飯田天哉についでの三番と言ったところで、それからは目覚ましい成績は残せていない。
ここぞとばかりに気合いの入るボール投げで、勿論、朝霞臣が最も得意とする分野であるが故に、測定不能を叩き出した関西からの方には負けるとも、他の者には負けるまいと、気合十分に迎えた競技なのである。
直前のポニーテールの子は大砲一門どこからともなく取り出し、出しになった記録に面食らわされたが、女の子には負けられないと、現代のジェンダー的なアレにはアウトかもしれない事を思いつつ、普段通りの勢いで投げた。
見るからにやる気が無さげな投球ぶりに、溜め息の出そうな所であるが、ここが他とは違うところ、忘れてはならない、朝霞臣が「強い力で物を投げる」個性の見せ場、ボールは美しい放物線を描いて天高く彼方へ遠ざかり、叩き出す記録は28km。
測定不能は兎も角、人力でキロメートルを出すとは皆々様は思いもよらず、それどころかポニーテールの少女と張り合う大記録、そしてこれから二投目もある。
ノーマークのつもりであった御歴々もじっと注目する。個性を使えば、ルールの範囲内で、何をやっても良いとのことだったはずなので、二投目は祖父よりの「投石器」で試した。
突然取り出された謎の帯キレに、当然ながら疑問符の浮かべて観察する姿は、言うまでもないほどに可笑しく、この方々も間抜け面をさらすのかと、一見の価値があったと後に語られる。
中には、一般入試の時に朝霞臣と試験の組み分けを同じくする方々―当然推薦組の者らも、遂に始まるぞと言った面持ちで一挙手一投足に目を凝らした。
投石器を以ては、先程の28kmを大幅に超える35kmという大々記録。
歓声の上がるどころか、幾許か引かれた様子に見えられ、反復横跳びでは類まれなる記録を叩き出した小男に、「オイラも使わせてくれ!」とせがまれたが、「個性のおかげもあるから、普通に使っても、全国平均よりちょっと良いぐらいにしかならないぞ…?」と暗にお断りを述べた。
亜麻色の君は、無論のこと、人を射殺さんばかりに睨み、何か視線を感ぜられてそちらを向けば、「ひっ…」と動揺で声を漏らしてしまうのも仕方がない。
あの睨み、既に人を数名世から消しておられますから。
上鳴、切島の所へ戻れば、両名より「案外やるじゃねーか」と勢いある手で背中を叩くために、痛がっているように見られた。
「何だ、朝霞って結構やるじゃん。ヒョロ長くて、明らかに遠くに飛ばすような筋力なんて無さそうなのにな。」
上鳴に悪気が無いのもまた心憎いところ、「ヒョロ長い…」と反芻すると、隣の切島は腹を抱えて笑われており、一頻りの笑いの後に、「そういや朝霞の個性ってどんなやつなんだ?」と言われれば、「強い力で物を投げる個性、なんだけど…」とやや恥ずかしげに頬を右手人差し指で掻きながらの応え。
「なんだそりゃ。」
「なんだそりゃって…そんなこと言うけど、見晴らしの良い所からやれば狙撃できるし、猟の時なんか適当にそこら辺の物を投げれば仕留められたしで、結構便利なんだけどなあ。」
「いや、上鳴は朝霞と付き合い長いのに知らなかったのか?」
「長い付き合いも何も、知り合ったのなんて、春休み始まってすぐくらいだぞ?」
「個性の話くらいはしたんじゃないのか?」
切島にそう感想を述べられるとも、上鳴と朝霞臣は互いに顔を見合わせて、「そういやお互いの個性が何か知らないな」と互いを指差しながら言えば、「何だかんだで、朝霞の部屋に何を置くかばっか話してたわ」とのことにすかさず切島は食いついた。
「朝霞って一人暮らしなんか!」
「そうなんだぜ、コイツこの年で一人暮らしとか良くやるよな。」
「なぜ上鳴が俺の代わりに答えてんの…」
一人暮らしを聞きつけて、「今度遊びに行っても良いか?」のやり取りは定石、断れない性分、無論許可を出した。何も無くてつまらんぞとは、一応ながら釘を刺して置きはしたが、人は些か期待し過ぎる嫌いがあるため、もてなしの豆腐でも買って牡丹鍋と洒落込む心積り、そうなれば必然的に上鳴も来るわけで、先日借りた漫画や雑誌をまとめて返してしまおうと皮算用。
「なんだったら今日このあとにウチ来る?」
いっそ今度が今日になろうが関係ないのが一人暮らしの利点。上鳴も誘って親睦会と決め込もうと、更衣室へ向かう折に「今日はどうか」と尋ねれば、彼もまた二つ返事で加わることに。
***
仲良く三人で夕餉を作れば夜も更け、帰り時になって漸く静かになる頃合い、朝霞臣はまたも筆記具を返し損ねたことに今更気付き、「まあ、明日でいっか」と明日の支度をして、夜も日付が変わる頃、床に就いた。
体力テストの順位は上鳴少年よりちょっと上程度。最後に示された評価順堂々一位の『八百万百』を見て、自分も頑張ろうと明日を迎えた。
読む文章がどうしても江戸以前だからか、どう足掻いても文の手本とその実際の書体が、長ったらしい。
やたらと敬語法に凝ったのは1話だけです。もしも、敬語等を扱わないと行けない人が複数人出たら、また使うかもしれない(使うとは言ってない)
ちなみに投稿時点で読んでいるのは、『雨月物語』と『源氏物語(与謝野晶子訳)』です。
書けば書くほど言い訳がましくなってしまうのが嫌になりますが、花の例えは勝手な印象で付け足したものです。用いられた花々は全て、誕生花でもあります。割と見た目と意味を寄せて選んでみました。