そして、書く度に1,000字づつ減っていく不可解…。まあ、長すぎても良くないしね!!
宜しければ、評価または感想をお願い致します。
優しい春の甘い風が雲を誘い、梅に鶯、春もようよう増すらしく、花に誘われる蝶か、それとも蝶に誘われる花か、今はそれも考えられないくらいに、春の風は朗らかさを齎し、春らしさと聞く程に郷里の山が心にかかる。
早起きはお手の物で、ゆとりをもって学校へ行かんと、朝の時間を有効に使う。
故郷から持って来た
向こうの物とは段違いで、やはり都会は洗練されていると沁み入れば、今行けばホームルームの1時間前に着いてしまうのだが、昨日は朝のラッシュに耐えられず、早目に向かうが得策かと痛感したために、ひと足早いが学校へ。
上鳴とは何度か泊まりで過ごす事があった故に、朝に弱い彼に一応声は掛けておくかと、電話をしてやった。いわゆる、モーニングコールである。生返事で「…おう………」と返ってくるだけで、遅刻しまいか心配にさせられた。
外は予報ハズレの雨になる模様、山育ちの野人たる由縁、さらば傘を持って向かうが、行きの電車で邪魔くさそうに扱われた時なんかは、肩身が狭いばかりで、晴れの日に一体傘を携える馬鹿がどこにいるのかと、じーっと彼の顔と手元の傘が睨め付けられた。
またもこれが都会の洗礼かと身も凍り、背の高さに反して身を縮こまらせるごとく、端の方端の方へと行けば、車両同士を繋ぐ連結部分の真上まで来ると、不思議な乗り心地に身を委ねて降車駅まで揺れた。
飛ぶ車窓を使い物にならぬ目で追いかければ何が見えるでもなし、必死に読もうと試みるときには、既に何百メートルも過ぎ、否応なしに自身の個性使用に気付かされる。
遠くまで逃げんとされようが、目に映るは半径35kmにも及ぶ故に、逃げも隠れもさせられない一方で、例え死角であろうとも視界内にあり、声を掛けられても振り向かない癖があるのである。
これだけは直せよと祖母君にも仰せられたが、目で見なくなった分、この癖が却って強化されるばかりで、一向に直りそうも直せそうにもなく、少し諦めの流れに乗りつつあった。見えるならそれで構わないと皆が甘んじていたツケ、今身に降り掛かる。
降りるまでの間、ずっと斜め後ろから視線を感じて仕方がなく、後ろも実際には見えている分、目は口ほどに物を言うを体感すると、居心地の悪いこと悪いこと。
雪まだ居残る寒い頃に、雪を割り出づる雪割草のように悠々と、また自信に充ちた優雅さを、轟焦凍は思い起こさせた。
先程から朝霞臣から視線を外すこと無く、いわゆる、もろガン見状態が乗車してより2駅後から続いており、気付いていないフリをし続けるのも何か心苦しいが、あまりにこちらを凝視するゆえに、この膠着状態がかれこれ15分は続いている。声をかければ良いやらと思うを、やはりここは陰キャ故に声もかけられないまま。
皆がみんな言いたいことが言える訳でもないように、朝霞臣はどうして良いか分からず、どうにもしようが無いなら無いで、ええいままよと轟の好きにさせた。
気を逸らす為に、号車に関わらず同級生らしき者が居ないか、個性駆使して探し回れば、射干玉の黒い影が車窓を見てはしゃぎ、周りの目を恥ずかしそうに諌める常闇踏陰がいた。
臣はあの顔が同級生だとは認められたものの、名が分からぬために悶々とし続けた。しかし、神秘的な個性なことで、常闇自身の言動も少し拗れており、毛色の違いが過ぎるゆえ、近寄りがたかった。
探せど探せどこの時間にはこの2人しか見つけられず、気付けばここは降車駅、慣れない通勤ラッシュに体を押されながら出ると、これから歩いて数十分の道程、覚えたはずの道を不安げに辿り、時折、同じ制服の子を目印に何とか一人で至った。
***
着いてからはあまりの暇さ加減に、何か手慰みになるものでも持ってくればと悔いるけれども、時すでに遅く、到着してしまってから後悔してももう手の打ちようがない。
――そういえば、ばあさんに手紙返してなかった。
もしやと思って鞄を漁れば、昨晩の郵便受けで祖母より手紙を拝受したのを、探せど探せど今朝見つからなかったままなのは、鞄の中かと、中身を引っ繰り返さんばかりに探る。
少しヘタった状袋から数枚の罫引き紙を抜き出し、筆で書かれた罫引きの上を舞う美しい文字列を読み遣る。
不安症の気があるから罫書を持っているのが助けとなって、これからまだまだ時間もあるしとお返事書こうと、筆箱開けば、家に置きたるお気にの筆ペン。思い付くままに思うままに書きたかったのも山々、筆が無いなら書きよもない。
祖母君は日中において書道の師範、手紙は墨を以て筆で書くのを教え込まれ、日課の日記も送る手紙も、筆で書くのが習慣だから、困りに困って読むことしか出来なかった。
返事は何と書こうか考えおれば、上鳴からの電話が鳴り、「何で起こしてくれなかったんだよ!」と駄々をこねられ、一応電話もしたし返事も来たからまあ良いだろうと通話を切ったと言うと、「返事なんてしてない!」と寝惚けて記憶も曖昧、「ヤバい!遅刻するかも!これってもしかして、除籍の危機か!?」と機器の向こうで騒ぎ立てている。
苦情の電話に遅刻の危機かと憂慮する時間があれば、早く準備を進めれば良いものを。除籍にならぬようにとお祈り申し上げた。
何を書くか決め、いざ書かんと思ったものの、筆ペンを持っていないことに再び気付き、内心で悪態つこうがこちらの手合い、誰に言うでもなく少し苛立ってしまった。
教室に留まって居るのは朝霞臣を含めて3人、轟焦凍と常闇踏陰のみで、少し疎通の図りがたければ誰も話をする訳でもなし、各々本を読んだり携帯をいじったりと、そもそも隙が無かった。
その沈黙はドアの開閉音で破られた。
揺れるスカート、射干玉の総髪下げる少女が入って来ると、男しか居ない空間も少しは華やぎ、「あら、わたくしだけしかまだ来ておりませんのね」とほかの女子の未到に残念がっている様子、朝霞臣は彼女が席に着くと、今が好機とばかりに半年来の念願果たしに向かった。
「あの、八百万さん…だったよね?」
些か怪訝な少女は、「ええ」と頷くと、「確か、朝霞臣さんでしたかしら。何か御用ですか?」との連れない御返事、それもそのはず、まだ話をした事ない故に、若干の警戒をするのも当然で、真っ黒なその目に見詰められて呼吸が出来なくなりそうになりつつも、少したじろぎそうにながら、「実は…」と話を続ける。
「まあ、そうでしたの!わたくし、そんな失態をするなんて。態々大事に取っておいてくれたのですね。痛み入りますわ。」
周りに小さな花が舞うかの如く、嬉しそうにお話なさる姿は、本当に得も言われぬ可憐みを纏い、まるで宛ら天女のようで、天竺牡丹の名にや相応しい。
傍の椅子を引いて腰掛け、互いに推薦入試だったり、昨日の運動能力テストの話なんかで花を咲かせて、互いの個性の話になる。八百万の個性が如何なるかを知り、知り合ったばかりの人の個性を乱用するのも良心の呵責に苛まれましたが、駄目で元々、筆ペンを創り出せないかと相談し申し上げた。
「筆記具のこともありますし、お易い御用ですわ。」
「悪いな、出会い頭にもかかわらず。」
「そんなことありませんわ。なんと言っても、筆まめの殿方なんて素敵じゃありませんか。」
「そんなことなんて…」と恥ずかしげに、臣は己が後頭部を撫で付けながら言えば、「ちょっとお待ち下さいね」と言うや否や腕まくり、店頭で良く見る普通の筆ペンが出て来る。
「悪いな」と感謝を述べると、「そんなことありませんわ。むしろ、お役に立てて光栄です。」だなんて正に育ちの良さが垣間見え、やはり天女を確信した次第、「筆ペンとはいえ、普段から筆でお書きになるなら、大変綺麗な字をお書きになるんでしょう?お書きになっている所を拝見してもよろしいでしょうか?」と言われて断れる者がいるだろうか。
傍の席次の轟、常闇も少し気になっては居たが会話に混ざれなかった。奴等もコミュ障ゆえ。
「わっ…凄くお上手ですわ…」
「そんなことない」と言いながら、筆を罫書の上ですらすら滑らせつつ、朝霞臣は八百万百と会話を楽しんだ。書ききる頃には徐々に人も集まり始め、あの真夏の暑苦しさを思い起こさせる委員長も来れば次第に騒がしくなり、教室のドアをくぐる者も「またやってるよ…」と呆れ顔。
八百万の前の席を間借りして居るために、その席の主、常に脳内がお祭り気分の峰田実が、後ろ側の扉で物凄まじい形相で臣を見ていたことなど知る由もなく、上鳴が駆け込んで来たタイミングで、「八百万。ペン、助かったよ。ありがとな。」と告げて席へ戻った。
戻る際に峰田と擦れ違ったが、爆豪ばりの恐ろしい目付きで凝然として見るものだから、「勝手に使ってて悪かったな!」と一言添えると、益々目付きが凶悪に。何が気に入らなかったのか分からないまま不思議に思いつつも、席へと向かった。
***
昼時、上鳴は今朝の臣と八百万の様子を見て、「進展したか?」と尋ねれば、臣は含んでいた定食の味噌汁を噎せそうになった。
「進展って…そんな、何もないって。ペン返したついでに、話が弾んだだけだって。」
「それを普通は進展したって言うんだよおおおお!!」
この日たまたま峰田とも連れ立って昼食の際に、彼は学食の机を拳で強く叩き付けると、恨めしそうな羨ましそうな目で臣を凝視した。今朝の視線はその類の視線かと合点がいった。
「オイラも八百万とお近付きになりたいぞおおおお!!」
「席が前後で十分近いからいいだろ。」
上鳴がそう答えれば、「そうじゃないんだって〜」と峰田は言うが、学校が始まってからまだ間もない2日間で八百万は本能的に悟った、「この男は、ダメだ」と。女性の本能的な部分が何かを察知したのだろう。その判断は必要十分に正しいのだが。
「大体よォ〜、何で八百万の前にいるオイラじゃなくて、対角線上の朝霞が仲良くなってんだよォ~~。羨ましいぞ…。どうしたら、そんなにお近付きになれんだよ~~。」
「羨ましいって言われても…。推薦入試での忘れ物を返してあげただけだって。」
推薦入試の話をすれば必ず驚かれるのも最早慣れっこ、「くっ…オイラも推薦入試を受ければ、朝霞の位置と入れ替われた可能性が微レ存……?」と何やら訳の分からぬことをブツブツ言っている間に、昼休みも僅か、次の授業の準備もあるために急ぎ目で残りをかき込み、三人は教室へ戻った。
教室へ戻る道中、雨が降り始めると上鳴は「今日晴れじゃなかったのかよ…。おい、朝霞。何で教えてくれなかったんだよ」と言うものの、「お前…。俺は今朝電話した時にちゃんと傘を持って来いって言ったからな?」と返せば、「嘘だッ!!」とアノ顔付きで答えた。腹を抱えて笑いながら教室に戻った。折り畳み傘を貸してやるからと一応言っておくと、「神様、仏様、朝霞様!」と思ってもないことを言われたので、頭をはたいた。
***
授業も終わる17時だい、雨は一向に降り止まないどころか、寧ろ雨足はより強くなってくると、流石に傘を差さずには帰られない。朝霞以外は誰も傘を持って来て居なかった故に困り果てていた。唯一の例外、上鳴を除いては。急ぎの用があるらしい、上鳴は朝霞から折り畳み傘を借りると「お礼は今度するから!」と言うだけ行ってしまった。
傘を持たずに来ている生徒達の困りたる様に、臣は流石に居心地が悪かったが、残るは一本しかないためにどうにもしようが無かった。「止むまで待つか…」と誰かが呟けば、銘々がそうしようかと教室で待つ流れになった。
けれども、いつ止むか分からないままは待っていられないので、誰かが今後の予報を調べれば、明日の朝まで止まぬ雨なのだと言った。それは困ったと、しかし傘なしでは帰れない。
「わたくしが皆さんの分の傘をお創り致しますわ!」
八百万は張り切って全員分の傘を作ってやると、夫々が八百万にお礼を言って帰路を辿り始めた。臣は持っていたので自分以外のを作るといいと促し、臣もほどなくして教室から去った。
帰ってから書きかけの手紙を探すと無かった。
―――うわっ!しまった!学校の机の中か!!
急を要する様なものでも無いし、翌朝に書けばよろしいのだが、矢張り少し几帳面な性質がそうはさせず、気になっては仕方が無かったため、学校へと再び戻った。
すると、そこにはまだ八百万の姿があるではないか!
かれこれ2時間は経っているのに、依然として居るのを不可解に理由を訊ねた。曰く、みんなの分の傘を創ったものの、エネルギー切れで自分の分が作れなくなってしまったとのこと。その上、今日に限って迎えが駅前という段取りだった。更に運の悪いことに、携帯の充電が切れてしまったらしいのだ。
余りの不憫に返す言葉も見つけられなかったが、傘を持っているのは自分しか居ないし、どうしようか思案する内に、これは八百万に傘を貸して自分が濡れて帰るのが良いのでは無かろうかと思い至った。
「俺の傘、使って帰りなよ。」
「いや、それですと朝霞さんが濡れてしまうことになりますわ。」
「連絡も取れない上に、迎えが駅前なんだろ?俺は別に濡れて帰っても問題ないし、使いなよ。」
「それだと申し訳が立たないですわ…。朝霞さんも先程、今日お書きになっていたお手紙を取りに来た様子ですし、濡れられては良くありません。今回はわたくしの力不足が招いた結果ですし、戒めに濡れて帰りますわ。」
嫌それではとお互いが譲らぬ限り、平行線からは抜け出なかった。「遅くなっては行けないから」と言えば、「それは朝霞さんも同じですわ」と返されて、一向に結論に着地しなかった。
「そう言えば、朝霞さんはどこまで何ですか?」
「――駅前まで」と告げれば、「それなら、二人で一緒に帰りましょう!そうしたら、一件落着かつ合理的ですわ!」とまるで名案顔をなさった。確かにこれなら二人とも濡れないで帰れると臣も考えた。
揺れるスカート、総髪が濡れぬように八百万の側に傘を寄せて歩いた。
冬を終えて春になったとはいえ、鶯の聞こえぬなら、人がいくら春が来たと言ってもそうは思えないなと、場を繋ぐつもりで言えば、「朝霞さんは、思った通り風情のあるお方ですね」と八百万は感想を述べた。山奥育ちだから鶯が聞こえないとどうも違和感があってと、少し恥ずかしげに返した。
「それにしても、朝霞さんのボール投げの記録は目を見張るものがありましたわ。」
「いや、そんなことないよ。それこそ、八百万の方が万能じゃないか。俺はただ物を遠くまで投げられるのと、遠くまで見えるだけだから…」
「遠くまで見えるだけ…とはどういうことなのでしょうか?」
そう問われて、臣は「ああ、実は…」と自らの生い立ち話を始めた。遠い雪国で育ったこと、両親の個性を両方とも受け継いだこと、祖父母に引き取られてからマタギの手伝いをして生活していたこと、春になると美しい山桜に誘われて鶯が宿ること、夏は、秋は、冬はと続けた。時折、「まあ…」とか「一度は経験してみたいですわ」とかの相槌が挟まれながら話した。
それから、推薦入試の日に祖母に無理やり手を繋がされて帰ったこと、合格の可否を知る前に祖父が死んでしまったこと。そして、実は目が見えていないこと。
「目が見えていないのに、なに不自由無く暮らして居られるのも、個性のおかげなんですのね。」
「このおかげで何とかなってるけど、なかったら今頃この学校には来てなかっただろうなあ。」
臣は灰色の厚い雲に目を向けた。重くなってしまった空気を割くように、取ってつけたかの如く、ついでにと互いの連絡先も交換しようとしたものの、互いにこのタイミングで八百万の携帯の充電が切れていたことを思い出し、じゃあまた明日しましょうと約束を取り付けた。
駅前まではもうすぐだったのに、八百万に「明日のヒーロー基礎学、楽しみだな」とつい話が盛り上がって長くなりそうな話題を選んだ。
「そうですわね。何せオールマイトが受け持つと言われてますし。ヒーロー科の目玉授業ですもの、常に下学上達、色んなことを学ばなければいけませんわ!」
八百万はヒーローになる気でここに来ている一方、朝霞臣は彼女ほどの意気込みで此処には来ていなかった。ただ、彼女に筆記具を返すのが第一の目的でもあった。臣は八百万のヤル気を知って以来、自分の雄英高校での存在意義に悩むことになる。
駅前には黒塗りの、見るからに高級車があった。明らかにあれが八百万の迎えの車だろうと分かる。濡れぬように車のドアの前までついて行った。送迎のスーツを来た人にお礼を言われると、後部座席の窓が開き、「それではまた明日。ごきげんよう。」と別れの挨拶を互いに交わしてから、車は雨を割いて突き進んで行った。
傘は惚れた方が片袖を濡らす。家に着いてから濡れた制服を乾かすのに骨がいった。
翌日、芦戸に二人は根掘り葉掘り尋問を受けた。
こういう日常的なとこを書くのが好きなんですよね。原作に話を沿わせるのも、勿論大切ですが、やはりこういう場でこそ自分自身の独創だったりを出さねば、書く意味がありませんし。
少しづつA組キャラと絡ませて行きたいです。