あえて最初に書かなかった入試の時の話がやっと書けました。タイミングは絶対にここだって決めてました。
あーやりきった。
大幅迄とは言いませんが、後に加筆修正があると思われますが、話の筋があまりに変わる程の事は致しません故ご心配なく。
宜しければ、感想もしくは評価をお願い致します。
日はカーテンが隙間より漏れ出でて、顔に射し込み目が覚める。濃い青無地のカーテンを開けた。
花散らしは夜明けまで一晩中降ったが、朝にはやんで、朝日がとても鮮やかに射している中、バルコニーの柵や手摺り、葉に滴る露が自重で落ちる様や、軒の上に張ったクモの巣が破れ残っているのに、雨が降りかかっていて、絡まった雨露が乱反射する。2階のバルコニーへ迫らんばかりの木の葉はとても重そうで、露が落ちると枝がふと跳ね上がったりする様子といったら。
昨日の朝に一人で学校に行き得れ、朝のラッシュも耐えられると思い、もっとゆっくりしても良かろうと、普段よりも遅々として支度をする。手紙は昨晩書き終えたために、香を焚き付けておいた便箋へ入れると封をして、切手は少し舐めてから貼った。
手紙を出して学校へ向かおうと、ポストを探したが慣れない土地で、なかなか見つけられなかった。何とか見つけてより学校へ着いた頃、ホームルームの15分前だった。
普段通り、大きな扉を開けて中へ入ろうとした時、上鳴と峰田が飛びかかってきた。
足元で峰田が死んだ顔付きでドスドスと腿の辺りを殴りつけ、上鳴は肩を組み、ニヤニヤ顔で「お前ってやつは〜」と朝霞の頬を指でウリウリと押す。何故朝っぱらからこんな事をされているのか理解されないまま、朝霞の席へと連行していった。
飯田の暑苦しい「おはよう!」に返せないまま、席まで引っ張られると、尋問が始まった。廊下側の窓際で、正面の上鳴、峰田の四面楚歌の状態からは逃げられそうにもなかった。
「お前って奴は…、お前って奴は…。」
血涙を流さんばかりに峰田がおいおいと泣き、上鳴は依然としてニヤニヤ顔で問い詰めて来た。
「田舎っぺの陰キャのクセに、朝霞、お前やるじゃねーか!」
訳知り顔で肩をばしばし叩くもので少し痛いが、一体自分が何をしたからこんな目に遭っているのか皆目見当もつかず、「えっと…、なんのこと?」と純然たる気持ちで質問し返せば、袖に湊が出来るほどの峰田が音高く殴らんと拳を振り上げるけれど、近くで静観していた切島が「まあまあ」と抑え込んだ。
事の顛末を聞くに芦戸の目撃証言が起爆剤となったらしい。
なんでも昨日、駅の近くで頼まれた御遣いを終えて、さあ帰ろうと駅へ向かっていた所、八百万と朝霞臣が同じ傘に入って駅へと向かってくるではないか!
これはスクープ、絶対本人達に聞かなきゃと思い、今朝八百万が来たタイミングで、現状の臣と同様に尋問が開始され、それを聞き付けた上鳴・峰田も臣がやって来るや否や異端審問会が始まったというわけだった。
昨朝の二人の楽しげな談笑も相俟って、こういう話が好きな芦戸や上鳴、峰田が食いつかない筈もなく、しかも昨日の今日だ。根掘り葉掘り聞かざるを得ないらしかった。
芦戸や含むその他女子らが八百万に尋問し終えた後に、芦戸が自分の席に戻るついで、朝霞臣に審問を開始したが、答えることは一向に八百万と何ら変わらず、「つまんないのー」とだけ言って、思った以上にあっさりと引き下がったのに、どうも裏を感じて止まなかったが、嵐が過ぎ去ったので良しとした。
「ちぇっ。絶対に朝霞くんが帰ったフリして、皆がいなくなった後に、二人で帰るつもりで戻って来たに違いないと思ったんだけどな〜。」
「いや、だから、忘れ物取りに戻って来たら、事の成り行きでそうなっただけなんだって…。」
上鳴も峰田も妙に引き下がったのに何か陰謀を感じてしまったが、何も無く終わったことにホッとした。ふと八百万の方へ振り向いたら、目が合って、何か気まずそうで申し訳なさそうだった。
目が合ったのをまた揶揄われそうになったが、ホームルームの時間が近付き、飯田の「席に着きたまえ!」の大号令で難を逃れた。人の噂も七十五日、受難はまだ終わりそうもないだろう。―――
***
プレゼントマイクの授業は予想通り、やたらに喧しいのだがその実、至極普通の進め方であった。普通と違うのは、一般的なものと比べて教師の五月蝿さだけだった。
開いたノートの端に筆記体のLの様なモノを書き連ね、それを組み合わせ重ね合わせて円を描いたり、投石器の幾何学模様を記憶の糸を手繰り寄せながら描く。
英語は昔から嫌いだった。試験で人並みの点数は取れるものの、外国人とはどうにも縁遠い田舎の山奥で暮らしていたものだから、益々その必要性が見出せなかった。「試験のため、試験のため…」と言い聞かせながら、入試では対策に励んだことを思い出した。
そう言えば、入試の時の説明もプレゼントマイクだったような。―――
都会の冬はそんなに寒くないな。それに建物がいちいち高くって、空がちっとも見えやしない。
二度目の来訪でも変わらず、都会を好きになれそうになかった。
試験会場は噂に違わぬ通りの人波で、思い返せば引っ越してから上鳴と出会したあの日、大都会の雑踏に酔ったのを彷彿とさせる。
普通の大学にも中々ないであろう大きな講堂に生徒諸氏は集められ、この後の実技試験の説明を鮨詰め状態で受けていた。
話半分の説明にはあまり思い出すことはないけれど、――確かあれは飯田だったか、一人猛っていたような気がする。質問のある者は挙手せよという投げ掛けで、本当に手を上げる奴がいるものなのかと驚いたことを鮮明に記憶している。今の英語の時間も分かる人は居るかと言われて即座に手を挙げている。
同じ出身校の生徒同士が同じ組にならない様に組み分けされたらしいが、そもそも自身の中学校からは己しか受験している者は居ないため、散けさせる意味もないのだが。
「筆記試験はそこそこ出来た気がするんだがなあ」とこの時も今のように白昼夢を見ていた。
白昼夢の内に質疑応答も終わり、会場へ移動する流れへ移って人が動き始めてから、少し遅れてその流れに任せて着いて行った。
幾分かは開けたところに集められれば、来る途中には望めなかった空が生き生きと広がり、雲が一朶浮かんでいた。それでも今は冬、身軽な格好とは言っても、体操着では如何せん寒かった。雪国の寒さよりはまだましだったが。
いづれかの組みに分けられてから間もないのに、自分の属する組では既に何名かがグループ化していた。試験は自力でどうにかするものだが、今くらいは緊張を解そうとしてだろう、談笑をしたり、準備運動をしたり、不安げに周りを見回したりと銘々が何かやっていた。
その中に一人、掌を結んでは開きを繰り返し、自身の今日の感触を確かめているのだろうか―こちらに背を向けていたので分からないが―たまにその個性らしきを手の平の上で発動させて、数回に一度は舌打ちをしていた。
その彼が舌打ちする度に、彼の傍の者がビクついて視線を向けていた。
それほど大きな音でもなかったが、何か爆発音のようなものがするなと思っていたので、何をやっているか気になって糸を飛ばして観察してみると、見れば、本当に手の平で爆破を起こしていたのでビックリしたのを強く覚えている。
之が所謂、強個性というやつかと感心した。鼻先は少し赤く、稀に手に息を吹きかけて温めていた。
個性把握テストの時に何か既視感めいたものがあると過ぎったのは、この爆豪の舌打ちにビクつくのと、爆発の個性だったのかと胸に落ちた。
触覚糸は、その名の通り、触覚器・視覚器・聴覚器を見えない糸として放出する。加えてこれは不可視かつ外からの認知不可である。使用した所で誰からも分からない故に、本当は宜しくないのであろうが、爆豪の所に飛ばしたついで、情報収集と決め込もうじゃないかと、テスト会場の様子を探った。
不穏な言葉を発しながら、市街地を練り歩く
――ああ、あれがお邪魔ロボなのか。関わるのだけはやめておこう。
そう心中で思い、まだ何かないかを調べている最中であった。
突然の試験開始の号令。
不意の試験開始に全員が固まっていた中で、一人その手の爆発を利用して、先程の小手調べとは桁違いの爆発で市中へ翔けて行った。
その後、何人かはあとを追うように、白い息を吐き吐き、駆け出す者もちらほらいたが、それでも大部分は動き出せないでいた。ヒーロー活動が「よーいドン!」で始まるわけがないだろうと、プレゼントマイクが拍車を掛けると、地に足が付いて動けなかった者らが一斉に飛び出して行った。
あまりの団子状態に、またその中の数名は躓いてしまっていた。スタートダッシュに失敗した者達の手を取って起こしてやると、感謝の言葉を述べられたあとは、彼らは只管にこの場を走り去った。
さて自分もと、何か石や破片など適当なものを結構な数集めながら、目星を付けた建物へ向けて最短距離で漫ろ歩いた。―――
たまに迫り来るロボットをポイントなど気に掛けず、指で弾いた小石などで2、3体を適当にうち倒して、悠々自適に目的のビルの屋上へ向かった。
流石に誰も屋上から戦うなんて思うまいと、その考えの通り、見渡せば屋上で戦う者などいやしなかった。
そろそろ本腰入れてやりますかねと、様式美とはいえ、「見えない目」を閉じて糸を伸ばした。。ピンチになった者に手を貸したりや、取り零しを潰して行こうという作戦だった。
投石器を振り回しながら適当に索敵していると、腕のような物が複数あるマスクの少年が、不意の敵の攻撃に対応できそうもなかったので、先ずは一つ目、投石器を大きく振り抜いて、少し大きめの石を投擲した。
そのマスクの少年は腕を重ねてその攻撃を防ごうと身構え、不意の攻撃に目を瞑ってしまったが、一向に訪れない痛みを不思議がり、また何かが強い力で敵にぶつかった様な音がし、目を開け腕を下ろすと、敵はピクピク微かに動きながら横たえ、その傍には砕けた石のようなものが散乱していた。あまりの不可解に戸惑っていたが、彼は敵を狩りに場所を変えた。
それから、格闘家然とした尻尾のある少年の背後を襲おうとした敵であったり、少女の頭から伸ばした茨で対処しきれなかった大き目の敵であったり、あとは拳を大きくして振り抜いたものの取り零した一体のトドメを刺したりした。
先程の一等でスタートを切った舌打ちの少年が、息せき切り、青息吐息で汗を額から流すもので、キツそうだったものだから偶に援護射撃を行うと、「クソが!邪魔すんな!!」と叫ぶ声が音高かった。
地鳴りが始まった。遂に大型ギミックが作動したのだ。
待ってましたと言わんばかりに、爆発の個性の少年が飛び出して行った。
今居る一番高い建物よりも数倍は高いであろうか、そのギミックは街の中心地に向けて歩を進める。
あの少年も自分の近くのビルまで飛び上がって来ると、不意に視線を感じたらしい。こちらに気付くととんでもない形相で此方を睨み付けてきた。先程見かけた時よりも体が温まっているのだろう、鼻の赤みは少しはましになり、血行が良くなったお陰で頬に赤みがさしている。
自分の足元には小さな瓦礫や石が散乱しており、手には投石器を携えている。これまでずっと美味しい所を持って行った奴が誰か分かったのだ。当然、あんな顔もするだろう。
――いや、いま思えば相当いやらしい戦い方をしていたなあ。
ヤツは親指で首を切ってそのまま親指を下に向けてきた。そのあとの動作は速かった。これまでのように、ごっつぁんゴールはさせるまいと爆発とその爆風の勢いで、ギミックの眼前まで飛び上がれば、何か一言叫んで彼の最大威力か何かで大きな爆発を起こすと、敵の肢体は爆発で飛び散った。
砕けた大きな残骸が真っ直ぐ落ちて行く。
彼は残骸の処理などには目もくれず、「あー、清々したぜ」という面持ちで、首元に手を当ててポキポキ鳴らしていた。
その近くで何やら服が歩いていた。
悲鳴のような声を出していたので、少女なのだろう。彼女は降ってくる大きな残骸を避け切れそうに無かった。
あそこの彼は気付いて居ないのだろうか?それとも分かっててわざとか?
一瞥くれるどころか、振り向くこともなくその場を去って行く。
溜息をひとつ。そして、その少女は固まった足を動かせず避け切れずにその場に留まっていたので、上から少し大きな錻が落ちて来るのを、投石器で力一杯にこぶし大の石を投げてぶつけて軌道を逸らした。
服が浮いている少女らしき人物は、何が起こったのか分からず、複数の腕を持っていたマスクの少年よろしく、辺りをキョロキョロ見回していた。
まもなく、試験終了の声が響いた。
「やっと終わった…」と階段を降りれば、自分の撃破数が2桁に届いているかいないかの所にあるというのに気付き青冷めて、視界が一気に。―――
カクンと頭が揺れた。
頬杖を突いて眠っていたようだった。
授業が終わりに差し掛かり、次回の課題を指示していた。授業中に何をやっていたか記憶になく、出された課題が何が何だか理解できず、青冷めた。
斜め後ろの上鳴に授業後すぐにからかわれた。
***
次の授業はヒーロー科諸君お待ちかねの「ヒーロー基礎学」である。近くの席次の上鳴・切島らは「オールマイトがどうたらこうたら」「オーダーしたコスチュームがうんたらかんたら」話していた。周りの様子を窺えば、どうやら誰も彼もが楽しみで堪らなかったようである。
後ろの席の芦戸も蛙吹も「楽しみだね!」とか「オールマイトが教えるって本当なのかしら」なんて会話を交わしている。
朝霞臣はそもそもヒーローへの憧憬で雄英に来た訳ではない。ただ薦められて、少女の忘れ物を返せればと思っていただけ。しからば、切島や上鳴らのように盛り上がるに盛り上がれないし、元はと言えば、ヒーロー活動自体が何なのかもあまり理解出来ていない。
それもそのはず、あまりのド田舎で敵が活動する訳もなく、敵の活動を目にしたこともないし、前時代的な家庭でテレビを所有しておらず、テレビ越しでヒーローの活動を見るなんて以ての外だった。
何だか自身の存在は場違いでは無かろうかと、一抹の不安ばかりが心中にやって来て、ちっともこれからの授業に楽しみを探せそうにもなかった。目的を達成してから、何か歯車が狂ったように思えてならない。
このままで本当に良いのだろうか、自分は何しにここに来たのか、自分は本当にココに居るべきなのだろうか、自分は。―――
その刹那、教室のドアが勢い良く開かれた。
「私が来た!!!」
シルバーエイジと呼ばれるその出で立ちで来たらしかった。
むしろ、臣はオールマイトを初めて見たような気もすると思い返していた。今からの指示を出して各々が発注した衣装を手に、移動を開始した。
「ほら、朝霞。なにボーッとしてんだ。行くぞ!」
そう言って、上鳴が臣の手を引いた。この時ばかりは、上鳴のこの能天気さが救いだった。
――着替え中のこと。
当然ながら更衣中は下着姿になる訳で、更衣室の中では、何ら不思議な光景ではない。
しかし、一同(轟や爆豪を除く)は朝霞臣の身体を見ておののいた。華奢な体つきにも関わらず、まるで歴戦の戦士の様に、体の至る所に傷痕があるのだ。
無論、盲目になったとはいえ個性の「触覚糸」で見えている為に、多くが此方に視線を送っていることに気が付いた。
「えっと、何かあった…?」
真面目さが売りの緑谷はつい尋ねずにはおられなかった。
「あの…朝霞くん。その全身の傷痕って…。」
やはり聞かれるかと想像の通りだった。
「実家がさ、マタギを家業にしててね。小さい頃から駆り出されてると、自然と怪我も増えるでしょ。」
背中のここは山の斜面で足を踏み外して枝でぱっくり割いちゃった痕で、足回りの細かい傷痕もその時にね。あと、肩のこの辺りは枝が刺さったところで、こっちの二の腕のところは…とかつての傷の説明をすると、一同は若干口元が引き攣っていた。
見た目や普段の柔らかな言動からは、到底そう思わせない傷や、これまでの生活に驚きが隠せないでいた。
「朝霞、お前。何だ!以外に男らしいじゃねーか!!」
切島は上半身裸のままの臣の肩をバシバシ叩くものだから、臣の肩周りがほんのり赤らんできていた。
「ちょっと、切島…。普通に痛いんだけど…。」
それでも、ガハハ笑いをしながら叩く手を止めなかった。
全員が着替え終わると、今度は上鳴が「朝霞、お前…そんなコスチュームで本当に良かったのかよ?」と疑問を呈してきた。
臣のコスチュームと言えば、普通のYシャツに、黒のスラックスだけだった。強いて言えば、Yシャツの左胸の辺りに、小さな兎のワッペンが付いているのと、ホルスター型の黒い革のサスペンダー。肩口まではあったであろう、その黒酸塊色の髪は投石器と似たような紐でひとつに纏められている。
上鳴が疑問を投げかけるのもおかしくはなかった。
「うーん…。ヒーローの衣装って見たことないから、イマイチ要領分かんなくって、適当に書いて出したんだよね。要望には書いてもない兎のワッペンなんて付いてるし…。」
「ヒーローの衣装を見たことないって…。別に衣装が何だかんだじゃなくて、ヒーローの活動くらい見たことあンだろうから、機能性とか何だは想像できるだろ…。」
上鳴が呆れた様子だった。
「ヒーローの活動って実際何するかよく分かってないんだよね…。」
「……は?」
上鳴電気は、臣が言った意味が分からず固まっていた。
「いや、だから、ウチにテレビとか無かったから、ヒーローの活動姿なんて見たことなくって、何するか分からないっていうか、なんというか…。」
尻すぼみで臣が説明した。上鳴はそれでもこう言わざるを得なかった。
「お前、マジか。―――」
話が一向に進まない。―――
文の書き方は今読んでる本(前話要参照)にもろ大きな影響を受けていますが、割りと筆者自身の話し方も影響を与えています。
1回の話で色々な情報が出されるから、分かりづらいと友達に言われたことがありますが、文章にすると尚のこと直せそうなところ、直せないのは不徳の致すところ。
さてはオメー、直す気がねーな?(AA略)