ブルックの昔話+   作:あいうえおあおあお

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pixivに投稿していた「ブルックの昔話https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9213685

ってシリーズです。その後日談に当たる「茶会前(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9432556」も一緒に投稿するつもりです。

処女作なので生暖かい目で見て貰えると幸いです。


昔話その①

 昔、私には王がいました

 

 

 ブルックはその言葉から口を開いた。思えば、こうしてブルックの昔話をしっかり聞くのは、初めて会った時以来かも知れない。だけど、あの時の私にはブルックの陽気な振る舞いが原因で、彼の気持ちを察することは出来なかった。変な奴だとは思ったが、実際あの陽気さで私のおびえは消えていた。

 ひょっとすると彼の陽気さは、初めて会う人への彼なりの配慮の意味もあるのかも知れない。しかしそうなると、こうして彼のありのままの本心を覗けるのはこれが初めてになるのであろうか。

 

 

 「ちょっとナミさん聞いてます!!? んもうそんなに老人の話はつまらないですか!! これじゃあ私の面目丸つぶれじゃないですか!!」

 

 ハッと気を取り直す。つい気をそらしてしまった、これじゃあ確かにブルックに失礼だ。

 「ごめんごめん。ってあんた元々潰れる“面”無いじゃない。」

 

 「ヨホホホ!! これは然り!! 一本取られました、メモっときましょう!!」

 

 そう言って笑うとブルックは自分の頭を開けてメモ帳を取り出した。

 「自由か!!!」

 

 

 やはりブルックの陽気さは配慮ではなく元々の彼の性格なのであろう。彼の陽気さはどんなにつらい時でも途絶えることはなかった。そう、ブルックとの航海ももう長くなる。ブルックが私たちに話していないことはあるにせよ隠していることはないはずだ。だからこそ彼は今、自分の言葉の意味を話そうとしてくれている。

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 きっかけはゾウでサンジ君が最悪の世代のカポネ・ベッジにプリンとの結婚を告げられたあの瞬間だった。確かにブルックはこう言った。「ヴィンスモークがサンジさんの性……!? ちょっと背筋がゾッとする名前なんですが…」と。状況が状況だ。ベッジやシーザーが語る多くの情報やサンジ君の決意を前にブルックの言葉が持つ意味を考える余裕はなかった。そして長らく彼の言葉を忘れていた。

 

 

 その言葉を思い出したのは大分後になってから。サンジ君の姉レイジュと弟ヨンジに会ったつい数時間前だ。ブルックはヴィンスモークのことを知っていた。ヴィンスモークが大昔に北の海を武力で制圧した一族であることを知っていた。その時、小さな疑問が生まれた。なぜ彼はそのことを話さなかったのだろう。

 

 

 無論話す必要がないと思ったといえばそれまでだ。しかし、今回の敵はビッグ・マムだけとは限らない。ヴィンスモーク家の意向を無視してサンジ君を取り返すのだ。彼らと敵対する可能性もある。ならば、彼らについての情報を共有しておくというのは決して悪いことではないはずだ。

 

 

 では、単純に話したくなかったのだろうか。どういう理由で。どういう意図で。

 

 

 ブルックを疑っているわけではない。今では大切な仲間の一人だ。ただ今から敵対するであろう相手は四皇ビッグ・マムと世界政府加盟国ジェルマ。すぐに解決できる疑問ならすぐに解決しておきたかった。少しでも仲間同士の結束を高めておきたかった。ブルックの言葉の意味を聞いておきたかった。

 

 

 そして私は今日の見張り番を決めた。ブルックと私が話す時間を設けた。彼の言葉を聞くために。

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 豆は同じ。水も同じ。お湯の温度も混ぜる順番も同じ。当然砂糖も牛乳も。ならばなぜ、サンジ君のコーヒーとここまで味が違うのだろう。再会したら今度こそ聞いてみよう。口に出すといつでも作ってくれるもんだから、つい甘えてしまっていた。

 その点で言えば、牛乳はほぼサンジ君の味と同じ。もっとも牛乳はサンジ君が選んだものだし、なにか一手間も加えているらしいが。

 

 温めた牛乳をコーヒーと共にトレーに乗せ片手で持ち、見張り台まで運ぶ。航海に慣れる前はとてもこんな芸当は出来なかったが、今では見張り台でのコーヒーはちょっとした楽しみだ。ただ、これも海の状態が良い時に限る。ついちょっと前に体験した水あめの海ではとてもこんな余裕はなかっただろう。

 

 

 「はい、頼まれてた牛乳。あんた本当に牛乳好きね」

 

 「ヨホホ、ありがとうございます。この暖かさと美味しさは骨身に染みます。って私もう身が無いんですけど! ヨホホホホ。」

 

 

 いつも通りのスカルジョーク。いつも通りの彼。

 

 

 「別にいいわよ。私も寝る前にコーヒーが飲みたかったし。そんなことより話しの続きを聞かせてくれる?」

 

 「ええ、もちろんですとも。どこまで話したでしょうか。私は脳の血の巡りが悪いものでつい忘れてしまって。って私もう脳ないんですけど! ヨホホホホ。」

 

 

 いつも通りのスカルジョーク。いつも通りの彼…なのだろうか。ここまでスカルジョークを連発するのは珍しい気がする。

 

 

 「私には王様がいたって所から。ってもしかしてあんた兵士だったわけ!?」

 

 「ええ、護衛戦団の隊長を務めていました。昔スリラーバークでそのことについても話したつもりですが。」

 

 「そう言えば、聞いたこともある気がするけどアンタそのことについて全然語らないじゃない」

 

 「ヨホホホ。これは失礼。老人の昔話など退屈と思いまして。」

 

 さっきの当てこすりだろう。なかなかずるい奴だ。思わず得意の拳骨を喰らわす。

 「いいからさっさと話しなさい!!」

 

 どういう理屈か、彼の頭にたんこぶが出来る。よくよく考えればこれも不思議だ。

 「ヨホホホ。オヤオヤ手厳しィーーー!!!」

 

 そしてやっとブルックは話し出した。

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