バンドリ!彼奴のいないこの世界で   作:アルファデル

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全話で
「えぇキーボードの練習に何度か行った事あるから」
と言う琴葉のセリフを
「名前さえ分かれば後は自分で調べるから大丈夫よ」
に変えました。その後まりなさんと初対面という描写を描いたのに何その矛盾?となったので
今回はバンドイベントスタート回です
それではどうぞ!


op.7 視える景色と視えていなかったもの

op.7

 

ライブ当日、CiRCLEに集まった俺達四人は控え室で出番を待っていた

 

他のバンドもいてフロア内には緊張で包まれている、各々がどういう演奏になるか失敗しないかなどの心配の心が視えていて俺自身もこの空気に少しのまれていた

 

「うーーーー緊張してきたなぁ皆んな!」

 

そんな中で響也が全くそうとは感じられない言い方をしながら話しかけてきた

 

「響也煩い、他のバンドもいるんだからもう少し静かに喋って」

 

「あ、やっべ声でかかった!気をつけないとな」

 

「その声が既に大きいんだけど…それでどこが緊張してるのよ」

 

鈴原のツッコミで他のバンドから笑い声が起こりフロア内の雰囲気が明るく、柔らかくなった。相変わらず響也は本人の意識、無意識に関わらず場を和ませる事が出来るな

 

それは響也自身の心、爆弾が爆発するかの様に感情を隠さず表に出す事で相手の不安や緊張などで詰み重なった物を吹き飛ばし、相手を前に進められる様に押すことが出来るからだ

 

誰でもできる事じゃないそれは響也だから出来る美点でかく言う俺も背中を押された一人だ。と言ってもそのほとんどは無意識、もっと言えば天然なのだが

 

「いやいやいや、これでも緊張してるぜ?でもさそれ以上に楽しみなんだよ今回のライブがさ。絶対最っ高のライブになるって確信してるから、つか十六夜が静かなんて今日は豪雨か?」

 

そう言われて椅子に座り目を瞑って沈黙していた十六夜が目を開いて響也に返事をする

 

「おいおい随分な言い方じゃねぇか、少し考え事をしてただけだ」

 

「え?十六夜が考え事!?今日本当に豪雨なんじゃ…」

 

「少なくても響也にだけは言われたくないんだけどな(結局当日まで来たが、違和感の正体は響也が話していた内容から予想程度にしか掴め無かったな。だがその予想が正しければ…ヤハハハ、ビリッとくる演奏が出来そうだ)」

 

犬歯を剥き出しにしながら口を歪める十六夜

 

「お、おい十六夜?お前一体な、何を企んでやがる!?」

 

その顔を見た響也は俺の背後に隠れて少し震えながら声をあげる、思わずそうしてしまうくらい十六夜の顔は笑顔というには不気味に歪んでいる

 

「…いやぁ別に?何も考えちゃいねぇぜ?ほんとに全く、響也にどんなイタズラをしようかなんて…これっぽっちもなぁ」

 

「その言い方だと全然安心出来ないんだが!?もうすぐ出番にしてはずいぶん余裕だなおい!」

 

「響也うるさい」

 

「いやこれ俺のせいか!?「響也…」はいすみません!…神っち、これ俺泣いていいよな?」

 

肩を落とし猫背になりながら少し涙目になってそう言ってくる響也

 

「俺にそれを聞かれても困る」

 

神っち〜という声を聞き流しつつ考える。俺達に足りていない何かを、これまでの練習で一人一人の演奏スタイルについては理解出来た。だが肝心の最後のピースが見つかっていないままだ

 

「神っち?」

 

少し心配した様子で響也が声をかけてくる

 

「いや何でもない、少し考え事をしてただけだ」

 

「なんだいつもの癖か、険しい顔してたから心配したぜ。つか最初はかっこいいと思ったけどやっぱこの格好落ちつかねぇ」

 

そんなやりとりをしていると控え室のドアが開く、そこからまりなさんが入ってきた

 

「皆さんもうすぐ始まりますので準備をお願いします!」

 

そう言われ控え室が慌ただしくなる中、まりなさんが俺達の方へ向かってきた

 

「やぁ少年少女達!調子はどう?」

 

「いつでも俺は絶好調だぜまりねぇ!俺達の演奏、楽しみにしといてくれよ!?」

 

「勿論楽しみにしてるよ、何と言ってもトリだからね!公平にするためにくじで順番を決めたけどまさか響也君達が最後になるなんてビックリだよ」

 

「あのまりなさん。それを今言わないでください、これでもかなり緊張しているので」

 

鈴原が緊張した様子で言う、今回演奏する順番をくじで決めたのだがその結果俺達のバンドはトリをつとめる事になった

 

「そうなんだ、ごめんね琴葉ちゃん。お詫びに一つアドバイス、初めて四人でお客さんに聞かせる演奏で色々考えたり思う事はあると思うけどそれは一旦置いて演奏を楽しむの。音楽は音を楽しむって書くんだし楽しまないと損だからね!」

 

裏表のない暖かく包み込む様な笑顔を鈴原だけじゃなく俺達に向けながらそう言うまりなさん

 

「音を…楽しむ…まだ緊張は抜けないけど少し気分が楽になりました」

 

憑き物が取れた様に苦笑しつつそう返した鈴原、話す前より幾分か落ち着いて視えた。かく言う俺もまりなさんの言葉と心に励まされた

 

「それは良かったよ楽器ってその人の心理状態が色濃く出ちゃうから、緊張したままだと音にもそれが伝わっていい演奏ができ無くなっちゃうんだよね…ってそれはピアノ教室で演奏会もしてる琴葉ちゃんの方がよく知ってるか」

 

「いえ言われる事によって再認識できることもありますから、ありがとうございますまりなさん」

 

「少しでも力になれたなら良かったよ。他のバンドもいるからここのスタッフ的にはあんまり大声では言えないけどみんなの演奏、一番楽しみにしてるからね!」

 

それじゃまたあとでねと言いまりんさんは控え室を後にした

 

「うっしゃあ!!楽しみにしてくれてる人がいるなら後は全力で演るだけだ。だろみんな!!」

 

響也の号令に各々が返事を、覚悟が決まった()をしていた。俺も自分でできることを…いや違うなこれじゃ響也の思いに答えていない。俺がやりたい様にやる、それが響也への礼だと思うしなりより俺がそうしたいから

 

 

 

 

「ーーー!!」

 

ステージから控え室まで聞こえてくる観客の声や演奏、その雰囲気に少しずつ気持ちが高ぶるのを感じながら俺達は出番を待つ

 

「みんなー準備はいい?もうすぐ出番だからステージ裏に出てきて貰っていいかな?」

 

まりなさんが控え室のドアを開けてそう言ってきた

 

「よっしゃあ!行こうぜみんな!!」

 

響也に続いて俺達は控え室を後にした、一歩また一歩とステージが近づくに連れ独特な雰囲気が漂ってくる

 

俺達の前のバンドが演奏を終え幕が下がる。そして俺達と代わり各々が楽器の準備を完了し後は幕が上がるのを待つだけになると響也が俺に言ってきた

 

「神っち、俺達を最っ高の演奏に導いてくれ。神っちになら出来る」

 

そう信じで疑わない心と目で俺を真っ直ぐに見てくる響也、あぁその目を視ていると本当に出来そうな気がしてくる

 

「あぁ、やろう皆で」

 

こうして幕が上がる。俺達の最初のライブが、様々な思いを乗せて

 

 

 

 

羽沢サイド

 

私達AfterglowはCiRCLEへ神峰先輩達の音楽を見に来ました。他のバンドの演奏はもう終わって後は神峰先輩達の演奏を残すだけ、CiRCLEで練習している時に神峰先輩達と会ってその時に琴葉先輩と十六夜先輩を紹介して貰い、同じキーボードと言うこともあって琴葉先輩とはすぐに打ち解けど十六夜先輩は…モカちゃんと一緒になって揶揄われました。主に神峰先輩の事で

 

うぅあの時のモカちゃんと十六夜先輩の顔、鏡合わせしたみたいに同じ表情だったなぁ。十六夜先輩もCiRCLEでバイトしているから何度か会う機会はあったけど実際に私達と話すのはあの時が初めて…の筈なのに何であんなに息が合っていたんだろう

 

「つぐ大丈夫?さっきから表情がコロコロ変わっってるけど」

 

そんな事を考えていたらひまりちゃんに心配した様子で話しかけてくる。そんなに私の顔百面相してたかな?

 

「うん大丈夫だよ、少し考え事をしてただけだから」

 

「にしても楽しみだな神峰先輩達の演奏、神峰先輩の歌声は聞いて凄いって思ったけど楽器については他のメンバー含めて誰も聴いてないもんな」

 

「そうだねー響也先輩から話を聞いたときは驚いたよ。まさか神峰先輩がキーボードじゃなくてベースだなんてー」

 

モカちゃんが言った事は私も思ってた。響也先輩は神峰先輩の本職はベースだって言ってたけど私はそれが未だ信じられずにいる。神峰先輩のピアノは誰かに寄り添う様に聞こえて技術も素晴らしかった。そして歌声は技術だけじゃない何かを感じた

 

でもなんでだろう、あの時感じていなかった違和感。神峰先輩と関わる様になってから時折見せる届かない何かへ必死に手を伸ばそうとしているあの表情、それを見るたびに神峰先輩のピアノへの違和感は強くなっていった

 

そう感じたのは私と何処か似ていたから、皆より劣っていると感じてもっともっと上手になりたいって思う私と

 

「それにしても今回のイベントに出てるバンド何処もレベル高いね、この中で神峰先輩達がトリって…うぅ私が出るわけじゃないのに緊張してきちゃった」

 

「…神峰先輩達なら大丈夫だと思う」

 

「蘭がそう言うの珍しいな。まぁ私も特に心配はしてないな。緊張とかその辺は響也先輩がどうにかするだろうし」

 

そんな事を話しているとステージの幕が上がり始める、観客全員がステージに注目する中そこから神峰先輩達が見えてーーー!?

 

スポットライトに照らされたのは男性は白のシャツに黒のベスト、女性の琴葉さんは黒のドレス。まるでドラマとかで見かけるバーテンダーの服に身を包んだ神峰先輩達でした

 

………え?えぇ!!?神峰先輩の格好、ス、スーツ!?凄い似合ってる!神峰先輩の落ち着いた雰囲気にスーツが凄い似合ってる!

 

「驚いたな神峰先輩達の衣装、けど全員不思議と似合ってるな」

 

「だねー響也先輩は落ち着かない様子だけどー」

 

「つぐみ大丈夫?凄い表情になってるけど」

 

蘭ちゃんに指摘されてハッとなった私は深呼吸してなんとか気持ちを落ち着かせる。それにしてもいきなりあの格好は心臓に悪いよぉ

 

幕が上がり終わる、今度は期待に胸を高鳴らせながら神峰先輩達の演奏が始まるのをまった

 

 

 

 

神峰サイド

 

幕が上がり終わって最初に目に映ったのは観客の様々な心、当たり前だが無名である俺達への疑心暗鬼や何故俺達がトリを務めているんだという不満、ライブ終盤での疲れや退屈を表す心で埋め尽くされていた

 

思わず目を背けたくなる様な光景だが、今日は今だけは、逃げたくない。先ずは観客全員の()を俺達に向けてもらわないとな。そのためには…!!

 

そう考えていると後ろから突然響也のドラムの音が聞こえた、まだ曲は始まっておらず独特のリズムで奏でられたそれは爆風となって会場の空気を吹き飛ばし、観客達の心をステージへと向けさせた。同時に俺の背中を押してくれている様にも視えた

 

響也らしい鼓舞を受けた俺は苦笑を浮かべすぐに気持ちを切り替える。すると、演奏が始まっていないのにも関わらず曲のイメージが俺の視界に流れ込んできた

 

でもなんでだ?練習の際、何かが足りないとは感じていた。だが今はそのピースが嵌り、より鮮明に視えている

 

練習とステージでの演奏の違いなんて、すぐ見つけられるのでは観客がいる事ぐらいしか…!そうか、練習の時には違和感の正体を探す事ばかりしていて肝心な自分達の音を誰に聞かせたいのか、もっと言えば観客を意識する事を失念していた

 

気づいてしまえば当たり前の事、だが今は反省してる時間はない。気づけたのならそこから変えていけばいい

 

「Rising Hope」

 

曲名を言い指示を出す

 

原作の神峰は指揮棒で指示を出していたが今俺が持っているのは指揮棒じゃ無くベース、そして指揮者では無く演奏者の立場だ

 

けど演奏者の心を表現するのが演奏なら俺の思いも伝わるはずだ。ベースを弾いていないときは自分の腕を使って指揮を振るおう。俺のやりたい事ははっきりした、先ずはライブ終盤という事もあり披露や退屈の心が視える観客の心を覚ます

 

【凛と響く音を水が流れる様に】

 

Rising Hopeはキーボードの旋律から始まりそこから一気にその他の楽器が炸裂するかの様に奏でられる。鈴原に出だしのリズムを作ってもらうためにそう指示を出し響也と十六夜には

 

【会場全体を音で震わせろ】

 

と指揮をする、歌い出しと同時に響也と十六夜の演奏が始まり観客のテンションも一気に上がった

 

目に映る光景、それを読み取り指揮をする。観客がいる中で誰かと演奏するのはこれが初めてだから俺の解釈が間違っている事もあるだろう。だが今は自分のできる全力をこの演奏に込める。そう考えた時ふと視界にあるもの映り始める

 

透明で視えていなかったそれは俺の歌声から全員の演奏を纏っていき確かな形となって浮かび上がってくる。それを視て俺は目を見開いた

 

あり得ない、有り得る筈がない!だって…これは、この()は!!

 

心の中でいくら否定していても現実としてそれはあり、観客の心へと向かっていく。そしてーーーーーー掴んだ

 

俺の歌声から出てきたそれはこの世界では視る事はないと諦めていた心を掴む手の音だった




やっと自分が一番書きたいと思ってたところを書き始める事が出来ました!!
いやうん、ここまで時間が掛かるとは…ですがここから一気に書いていきますよ!?(自分の連載ペースに目を逸らしながら)
何故心を掴む手の音が今まで視えていなかったのかについては次回、分かります
ここでいきなりですが主人公の【見える】と【視える】があります。それは共感覚越しに見ている時は【視える】それ以外で見ている時は【見える】になります。そこに注目しながら見るのも楽しみの一つです!
ではまた次回で!Σ(゚д゚lll)

ソルキャ以外の作品とのクロスオーバーはありかなしか

  • あり
  • なし

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