【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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竜介「─偽りの体は、それでもチョコで出来ていた─」
あこ「?……かっこいい!」
竜介(うん、可愛い…)








第13奏 アンりみテッド・チョコレイトワークス

 チョコレート─それはカカオ豆を加工し、砂糖やミルクを混ぜて作る甘い菓子。

 大人から子供まで、その汎用性の高さと単純な美味しさから幅広い層に人気を誇る。

 そして、俺の目の前にはそんなチョコを使って作られたチョコ製品達が山の様に積まれていた。

 今にも倒れそうな菓子の山にヒヤヒヤしながら、俺はこの惨状を作りだした少女に声をかける。

 

「えっと、この大量のチョコ菓子は何かな…りみ?」

「ふえ?竜介くんに食べて貰おうと思って買ってきたんだよ?」

「そ、そうか。ありがとな…」

「うん!」

 

 純粋な瞳で俺を見つめながら、早く食べて欲しくて仕方が無いといった様子のりみ。

 これが嫌がらせではなく、しっかりとした好意の上で行っているのだから尚更手強い。

 

「じゃ、じゃあ…いただきます」

 

 手近にあったチョコクッキーを口に運ぶ。

 味は普通に美味しい…美味しいのだが、いつまでも降り注ぐりみのキラキラとした視線が俺に気まずさを与えてくる。

 一体、俺がお菓子を食べる光景を眺めて何が楽しいのだろうか。

 

「なあ、りみ?」

「ん、どうしたの?」

「いや…そんなジッと見られると食べにくいと言うか…」

「え?…あ、ごめんね。気が回らなかったよ」

 

 そう言って、りみは両手で自分の目を隠した。いや、そういう事では無いのだけれど…。

 それと、よく見たら指の間からしっかりとこっちを凝視している。

 

「りみ、見てるのバレバレだぞ」

「み、見てないよー…」

「はあ……分かった。そんなに見たいなら見てて良いよ。その変わり、りみも一緒に食べてくれ」

「え…良いの?」

「ああ、よろしく頼む」

 

 俺がお願いすると、りみは机の上のチョコ菓子達に手を付ける。

 両手に板チョコやチョコパンを持ったりみは、その甘みを存分に堪能していた。

 ただ、ハイペースで濃口の物を消費し続けるりみを見ていると、胸やけのような感覚に襲われる。

 やはり、俺一人でこの量のチョコを抱えるのは難しかったようだ。

 

「ちょっと自販機で飲み物買ってくるわ…。りみは何飲む?」

「あ、飲み物なら持ってきてるよ!…はい、どうぞ!」

「おう、ありが─」

 

 感謝の言葉を言いかけたところで俺は固まる。

 それもそのはず、りみが飲み物と称し手にしたのはチョココロネだったのだから。

 クルクルと渦を巻き、中からチョコが垂れそうになってるあのチョココロネだ。

 一体、俺にどうしろと。

 いや、もしかしたらりみ渾身のボケの可能性も…

 

「チョココロネは飲み物やんね♪」

 

 …至って真面目そうだった。

 

「えっと…チョココロネをどうやって飲むの?」

「普通に歯で噛んで飲み込むんだよ」

「それは食べるという動作では?」

「むう…竜介くんは細かすぎるよー」

 

 ムッと頬を膨らまし、りみはチョココロネを口に運ぶ。

 何故、俺が悪い事をした雰囲気になっているのだろうか。

 そんな事を考えながらりみから貰ったチョココロネを食べて(飲んで)いると、教室の入口の方から「げっ!?」と何かに驚く声が聞こえてくる。

 思わずそちらを振り向くとと、愕然としながらこちらを見ている有咲がいた。

 

「ちょまっ!?竜介、りみから離れろ!」

「え、急にどうしたんだよ有咲…」

「いいから!」

 

 有咲は俺の腕をグイっと引っ張って無理矢理立たせた後、俺を守るようにりみと俺の間に割り込んで来る。

 

「お、おい有咲…一体どうしたんだよ?」

「お願いだ竜介。私の後ろに居てくれ…」

「いや、でも…」

 

 なんで?と聞こうと思たっていると、有咲が「はあ…」とため息をつき、渋々と言った様子で俺に説明をし始める。

 

「いいか竜介、お前このままだとりみにお持ち帰りされるぞ?」

「お、お持ち帰り?」

 

 有咲の言うお持ち帰りとは、ムフフな事目的で家に異性を家に招き入れると言うあのお持ち帰りの事だろうか。

 だとすれば、もしかして俺は今人生最大の貞操の危機と言うことに…。

 俺が己の危機に身を震わしている中、有咲とりみは互いの間に視線の火花をぶつかり合わせていた。

 これが俗に言う修羅場と言うものなのだろうか。

 

「りみ、竜介と二人きりでの接触は禁止ってポピパの皆で決めたよな?」

「だって…最近ずっと竜介くんと会えてなかったから…日課のチョコ詰めが…」

「前から言ってるけどな、りみ…竜介は人なんだぞ?」

 

 以前は何だと思われてたの?

 

「し、知ってるよ!でも、竜介くんは特別なの!」

「だから…なんと言おうと竜介は…」

 

 有咲は呆れながら、融通の聞かない子供をあやす様に言う。

 けれど、そんな言葉はりみに届かなかったのか、りみはガタリと席を立ったあと大声で叫びだした。

 

「違うもん!竜介くんはちゃんと生きてるチョココロネだもん!」

 

 生きてるチョココロネとは何だろうか。

 なんて事を考えながらりみの話を聞いていると、りみは俺の下まで近づきその右手をギュッと握って来た。

 有咲が「ちょっ…」と動揺しているが、そんな事は知らんと言った様子で俺に熱弁する。

 

「竜介くん、私ねチョコが好きやね。その中でも、山吹ベーカリーのチョココロネは一番好きやんよ…」

「おう、そうだな…」

「初めて山吹ベーカリーのチョココロネを食べた時は、凄くドキドキして、胸の中がキラキラになったの」

「そ、そうなのか…それは良かったな…」

 

 興奮気味に方言で語るりみの目は、香澄のように輝いている。

 

「でねでね、竜介くんに初めて会った時にそれと同じくらい…ううん、それ以上にキラキラしたの!」

「は、はあ…」

「それからずっと、私は考えたの…このキラキラが何なのか。そして…答えに辿り着いたんだよ!」

「な、なるほど…」

 

 ババーン!という効果音が似合いそうな得意顔でりみは言った。

 俺の顔を見つめる目を一層輝かせながら、眼前までズイっと近付いてくる。

 

「私ね、考えたの…竜介くんがチョココロネみたいにキラキラしてるなら、竜介くんはチョココロネなんじゃないかって…」

「……ん?」

「でも、竜介くんは生きてるけど、チョココロネは生きてない…。それなのに、なんで両方キラキラするのかなって思った。分からなかったけど、私はめげずに考え続けたの」

 

 何か…おかしな方向に話が転がり始めた。

 俺がチョココロネなんて言われても、首を傾げる事しか出来ないのだが…。

 それと、りみはもうこれ以上考えなくて良いと思う。りみりんワールドが特殊過ぎて話についていけない…。

 

「それで気づいたんだよ!竜介くんが生きるチョココロネなんだって!」

「有咲、翻訳お願い」

「ごめん、私も分からない。ただ、りみは本当に竜介がチョコで出来てるなんて思ってないから、そこは大丈夫…なはず」

「そこは自信持って…」

 

 そう言えばさっきチョコ詰めとか言っていたが、この大量のチョコを詰めて俺の体をチョコにしようとか考えてたりするのだろうか。それとも、俺の体をパン生地に見立て、その中にチョコを入れるチョココロネ的考えを……何故だろう、急に寒気がして来た。

 

「な、なありみ…もしかして、俺の事食べようとか考えてる?」

「へ?そ、そんな事するわけないやん!」

「じゃあ、さっき言ってたチョコ詰めって?」

「ただ竜介くんにチョコを食べて貰うってだけだよ?私はそれを見るのが幸せだから…」

 

 変人を見る目でりみは俺を見てくる。さすがにこれは理不尽極まりない。もし今、クラスの人全員に俺とりみのどちらが変かを訪ねたら、皆揃ってりみの方がおかしいと答えるだろう。

 まあ、りみが人肉食者じゃなかっただけ良しとしよう。

 なんて風に一時の安堵を覚えていると、不意にりみが俺の腕に抱きついてきた。

 

「あ、あのね…竜介くん…」

「……おう、なんだ」

「えっと…そのね?…私の…私の家に…」

 

 急にモジモジしながら、りみは上目遣いで俺を見つめる。

 小動物みたいな雰囲気があって可愛らしいのだが、何故だか今はとてつもない程の嫌な予感が俺を襲っていたので、それを気にしている余裕がなかった。

 俺が内心ヒヤヒヤしている中、りみは「すぅ…はぁ…」と大きく深呼吸をする。そして、その恥ずかしさ諸共飲み込もうとする勢いで、りみは教室中にその言葉を轟かせまいと大声を発した。

 

「わ、私の家に来て、これから毎日チョコを食べてて下さい!」

 

 ─お持ち帰り宣言だった。

 

 どうやら有咲が言っていた事が現実になったようだ。

 クラスの女子が「きゃあー!」と黄色い声を上げ、有咲は「え、ちょ、ちょま…おま…は?え?」と口をパクパクさせていた。

 お持ち帰り宣言には驚いたが、そこまで歓喜し喚きたつものだろうか。ロマンチックな愛の告白などでも無いのに。

 

「あ、あの…竜介くん…どう、かな?」

「えと、りみの家でチョコを食べてればいいの?」

「う、うん!」

「ま、まあ…それくらいなら…」

「ちょい待てこらアホ竜介」

 

 快く…とまでは行かないがりみのお願いを了承しようとすると、放心状態から帰ってきた有咲がストップを掛けてくる。

 その有咲は何処か不満そうに、けれども不安そうでもある表情をしていた。

 

「どうした?」

「お前、りみの言ってる事ちゃんと理解してんのか?」

「?…理解も何も、家に毎日菓子食べに来てくれって誘ってたじゃん?」

「はあああぁぁ…」

 

 有咲にクソデカいため息をつかれた。心做しか、クラスメイトも落胆しているように見える。

 何故そんな反応をするのか。皆はりみの言葉に何を見出しているのか。

 そんな皆の態度にりみも疑問を持ったのか、りみも不思議そうな顔をして有咲に尋ねる。

 

「有咲ちゃん、どうしたの?」

「いや…何でもねえ…。それとなりみ、こいつに言いたい事があるならはっきり言わないと伝わらないぞ?こいつアホだし」

 

 唐突に貶すのやめてもらえないだろうか。

 

「で、でも…私、ちゃんとお願いしたし…。竜介くん、もしかして伝わりにくかったかな?」

「ん?これから毎日りみの家にお菓子食べに行けば良いんだろ?」

「だから竜介、そういう事じゃ…」

 

 有咲が俺に何かを訴えかけて来ているがそれはスルーし、ホッと胸を撫で下ろしているりみを見る。どうやら、すれ違いなどは無かったようだ。

 

「良かった…ちゃんと伝わってたよー…」

 

 りみの一言に、俺を除いたクラスの全員が「…え?」と間の抜けた声を出した。

 

「竜介くん、約束やからね?」

「あー…うん。でも、さすがに毎日は厳しいかも。俺にも用事があるし、何よりりみの親御さんやゆりさんの迷惑になっちまう。だから、偶にで良いか?」

「むぅ…そっか。じゃあ、偶にで我慢するよ…」

「おう、サンキュ」

 

 礼を言いながら頭を撫でると、りみは気持ちよさそうに体を少し縮こませる。

 

「あ、そうだ竜介くん。お姉ちゃんのことは気にしなくて良いよ?よく『竜介と結婚してー』って独り言言ってるし、竜介くんの事気に入ってると思う」

「そんなに気に入られる事したっけ?」

「お姉ちゃん、竜介くんの料理大好きだから」

「おお、それは光栄だ」

 

 そんな事を話ながら、お互い「あはは」と笑い合う。

 最近りみと会ってなかったから有咲の話しを聞いた時は何をされるのかと思ったけど、りみは可愛いりみのままで安心した。

 けど、出来ればもうりみりんワールドは見たくない。あれは脳の処理能力をダメにする魔法レベルの空間だ。

 そんな事を考えながらりみの頭を撫でていると、有咲が服の裾をクイクイと引っ張ってきた。

 そちらを見ると、自分の頭を俺に向けて来る有咲の姿が視界に写る。

 

「ん、撫でろ」

「え?…お、おう…」

 

 有咲に言われるがまま、そっと頭を撫でた。

 右手にりみ、左手に有咲、両手に花である。

 満足いった顔をしていた有咲だが、その直後に拗ねたように愚痴を吐く。

 

「ったく…私の心配返せよ…。ヒヤヒヤしたじゃねーか…」

「ありがとな。さすが俺の娘だ」

「うっせーアホ竜介」

 

 ぶーたれながら絶賛反抗期オーラ増し増し中の有咲を俺は撫で続けた。

 親子の絆は強いのだ。

 




完全に勢いで書きました。それとサブタイが個人的に過去最高傑作です。久しぶりにあこが未登場ですが、前書きのあれで我慢してください。
それと気づいてる方は少ないと思いますが、この小説の総合ptがあと200ptで1000ptを超えます。あと200ptで1000ptを超えます(2回目)
何となく暇つぶしで書き始めたバンドリ二次創作でプロットも何も無いですが、今では自分の投稿小説の中で一番人気が出ています。素直に嬉しいのでもっともっと人気出やがって下さい(感謝)


有咲は娘←ここ重要。流星堂のお会計にてこの合言葉を言うと、10分の1スケール有咲ちゃん人形が貰えます(貰えません)
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