【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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久しぶり☆


第16奏 二刀流恋愛プレイヤー:RinーRin

 花音先輩と水族館に行った翌日のこと。

 場所は白金家の燐子の部屋。カーテンは締め切り、ドアはきっちりと閉められている。

 カーテンの隙間から差し込む光だけが唯一の灯となっており、その光に照らされ異様な雰囲気を放つ燐子(ライバル)に─

 

「りゅっ君…好きです…!わ、私と…付き合ってください…!」

 

 俺は告白されていた。

 

「取り敢えず、説明頼めるか?」

 

 頭の中は混乱一色だった。

 何故…どうして…と、俺の脳内は疑問で埋めつくされている。

 

「説明も何も…言った通り…だよ?」

「…好きって、異性としてだよな?」

「うん…」

「マジかよ…」

 

 おかしい…何もかもがおかし過ぎる。

 燐子が好きな人はあこで、俺の好きな人もあこ。お互い好きな人を巡って何度も勝負してきた筈だ。

 どちらがあこに似合うアクセサリーを選べるかとショッピングモールに二人で買い物に出掛けたり、あこが好きそうなカッコイイ言葉勝負のため燐子の家で一徹したり、あこが誕生日の時の前日には手作りケーキを互いに作って二人きりで試食会もした。

 己をプライドをかけて競い合ってただけなのに…だけ、なのに─…

 

「よくよく考えると、割とイチャコラしてたな俺達…」

「あっ…気付いちゃった…?」

 

 アクセサリー勝負と言う名目でお外デートは何回もしてるし、お泊まりデートにあたる勝負は四回程している。それに手作り菓子の食べ合いって、カップル通り越して夫婦感がある。

 

「そうか…俺はいつの間にか燐子の手の平の上で踊らされていたのか…」

「…人聞きの悪い言い方…やめて欲しいな…」

「いや、でも事実じゃん?てか何?もしかして俺に近寄るためだけにあこ好きの同性愛者のふりしてたの?あこを利用したとか言い出したら容赦なく殴るからな?」

「りゅ、りゅっ君…落ち着いて…」

 

 詳しく、説明して欲しい。俺は今、冷静さをかこうとしている。

 

「えっとね…実はあこちゃんには…Roseliaに入った後すぐに告白したんだ…。フラれちゃったけど…」

「え、嘘…」

 

 衝撃の事実。燐子は俺より先の段階に進んでいた。これが年上の実力…。

 

「じゃ、じゃあ…いつからその…俺を?」

「…初めて会った時の次の日にはもう…。だから…あこちゃんとりゅっ君…二人が好きな状態がしばらく続いてた…」

 

 俺と燐子が出会ったのはあこを通じてだった。

 NFOと言うゲームであこと三人で協力プレイをし、結構気が合ったので連絡先を交換したのだ。その時、燐子から恋愛相談があると持ち掛けられ、燐子もあこが好きと言う事を把握。お互いに『絶対に負けない』と言う強い意思表示の下、今日まで付き合い続けて来た。

 しかし燐子は、俺にあこが好き云々と言う事を伝えた後に行った、あこ好きライバル会合の時には既に俺も好きになっていたと。

 

「尻軽過ぎない?夜の繁華街でおじさん相手に変なバイトしてないよね?」

「そんな事してないよ…!」

「そ、そうだよな…。悪い…」

 

 普段物静かな燐子からは見られない、力強い否定だった。

 

「でもさ、なんでそんな急に好きになったんだ?俺、そこまでの事した覚えが…」

「ううん…私にとって…同性愛って言うのを…受け入れてくれるだけで…それだけでとても響いたよ…。両親でも…受け入れてくれなかったから…。でも…りゅっ君はそれだけじゃなくて…私の事をライバルだって言ってくれて…。それと、りゅっ君は先輩の人達の中で…私だけ呼び捨てタメ口にするから…そう言うのずるいよ…」

「そ、そうか…」

 

 何がずるいのかはよく分からなかったが、取り敢えず燐子の中では俺にとって些細な事が大きく響いてるらしい。

 

「まあ、その…なんだ。好きって言ってくれるのは嬉しいけど…俺はあこの事が…その…好きなわけで…」

「…うん、わかった…」

「ごめん…燐子」

「ううん…気にしないで…」

 

 告白をフると言うのはやはり辛い。リサ姉の時もそうだった。きっと、この辛さに慣れる事はないだろう。

 

「それでねりゅっ君…最後に…お願いがあるんだ」

「おう、なんだ?」

 

 これを叶えてくれたらちゃんと諦めると言うモノだろう。

 燐子のことだから、ピアノの連弾か二人きりでゲームとかだろうか。最後だから燐子の要望にはしっかり答えて─

 

「りゅっ君とディープキスしたい…」

「─…ん?」

 

 気の所為だろうか。燐子から燐子らしからぬ発言が聞こえて来た。

 

「りゅっ君とお風呂入りたい…」

「えっ?」

「りゅっ君と添い寝したい…」

「燐子?」

「何ならそのまま…あんな事やそんな事したい…」

「ちょっと落ち着いて?」

 

 話がおかしな方向に転がりだした。

 燐子は胸の内にそんな欲望を隠していたのか…。俺なんかあこと恋人繋ぎしたい欲望しか無いのに…。

 

「燐子、一回落ち着こう?な?」

 

 俺は頑張って燐子を落ち着かせようとするが、この暴走タンクは中々止まらない。一回殴ったりした方が良いだろうか。

 

「病める時も…健やかなる時も…お互いに支えあいたい…」

「それもう結婚だからな?てか最後のお願い多くない?」

「…どこまでなら良い…?」

「最初から駄目だよ」

 

 燐子は不機嫌そうな顔をした。俺に非は無いはず。

 

「…普通のキスは…?」

「駄目」

「…外国だと普通にしてるよ…?」

「ここは日本。おけ?」

 

 頬を膨らませ、燐子は一層不機嫌そうな顔をした。

 

「りゅっ君はワガママだよ…」

「ワガママは燐子の方だと思うぞ?」

「むぅ…なら…最後にりゅっ君と既成事実を…」

「キスがダメで何故それがいけると思った?」

「イかせる自信はあるよ…?」

「やかましい」

 

 女の子らしからぬ発言が聞こえたので、燐子の頭にデコピンを入れておいた。

 

「てか既成事実って…寝取る気満々じゃねーか…」

「別に…寝取る気はないよ?ただ…りゅっ君が…私とあこちゃん…両方を選んでくれれば…」

「俺に二股せよと?」

「そしたら…あとはあこちゃんが私を受け入れて…ハッピー三角関係の…完成…!」

 

 得意げな顔でこのおなごは何を言っているのだろうか。

 誰も傷つかなくて理想的とかちょっと俺も思ってしまったけど。

 しかし、世間体やらチキンソウルやらがあるので、俺が燐子の案を受け入れる事はない。

 

「全部…ダメ…?」

「ダメ」

「…じゃあ…最後にハグして…?思いっきり…ギュウッって…」

「…急に普通になったな」

 

 突然普通の要求をしてくので疑心を抱えてしまう。

 だが、さすがに燐子も無理矢理はしてこないだろう。そう結論付け、俺は燐子を思い切り抱きしめた。だが…

 

「ふふっ…引っかかったね…りゅっ君♪」

 

 ドサっと、燐子が俺を押し倒した。

 嗚呼、何となくこんな感じはしていた。だが、俺は男で燐子は女。力の差はハッキリしており─…

 

「なんか燐子の腕重くない?」

「両手首に十キロずつ重り巻いてる…。今日の朝から…」

「準備万端過ぎない?」

 

 やだ…この人ガチだ。ガチで男を犯しに来ている。

 

「りゅっ君…」

「な、なんだ?」

「筋肉痛で腕が動かない…」

「バカじゃねーの?」

 

 よくよく考えれば、普段引きこもり気味の燐子に重り生活は無理な話であった。

 一先ずこれで安心だが、体勢と重りのせいで俺も腕を動かせない。

 

「どうしようりゅっ君…」

「誰かが来るの待つしかないんじゃない?俺意外に来客は?」

「……このあと…あこちゃんが来る…」

「…はっ?」

 

 耳を疑いたくなる様な情報が入って来た。

 

「あこが来るのか?え、何?あこが来るまでにキスして風呂入って添い寝して既成事実作って役所に書類出そうとしてたの?」

「行けるかなって…」

「行けねーよ…」

 

 まさかほんの数十分で恋のABCを終わらそうとする人がいるとは…。

 そんな失望感に俺が浸っていると、燐子の部屋の扉が開く音がする。

 燐子の顔には「終わった」と書いてあった。

 

「りんりん!遊びにき…た……よ?」

「「…」」

 

 この状況を見て、あこは何を思うだろうか。

 バンドメンバー兼ゲーム友達が自分が住んでいる家の家主を襲っているという、中学三年生には情報過多過ぎる状況。

 

「何…してるの……?」

 

 あこの瞳からハイライトが堕天した。

 おそらくこれからお説教である。

 二兎追った燐子は、二兎とも手放すはめになった。

 

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