【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
皆は恋をした事があるだろうか?
俺こと神楽竜介は、ただいま絶賛片思い中である。
その子に惚れたきっかけは…何だったっけ?
付き合いは長いが、気づいたら好きになっていた。
その子の名前は宇田川あこと言い、俺の一つ下で現在中学三年生。
紫の毛色にカールのかかったツインテールと、頭を撫でろと言わんばかりの低身長が特徴。
そして、一番のチャームポイントは姉に憧れカッコイイ事を追い求めるその姿。
最高にカッコよく、最高に可愛いあこが俺は大好きなのだ。
「――う―け!」
学年も違えば学校も違う。
中学までは携帯電話も持ち込み不可なので、休み時間に連絡も取れない。
あこが隣に居ないと途端に景色が荒んで見えてしまうのだから、心とは不思議なモノだ。
「竜介!」
「ん?おお、どうしたこころ?」
「一緒にお昼ご飯を食べましょ!」
目の前で弁当片手に瞳をキラキラさせている彼女の名前は弦巻こころ。
世界に名を轟かせる大財閥弦巻家の一人娘であり、ハロー、ハッピーワールド!というバンドでボーカルを務めている。
そんなこころは今日も今日とて皆が笑顔になる事を探し、何かあれば俺のところに転がり込んでくる。
「竜介、今日のお弁当はね少しだけ私が作った料理が入ってるの!」
「なるほど。だからいつもよりキラキラしてるのか」
「ええ!」
「でもさこころ」
純粋な瞳で俺を見つけるこころを視界に入れながら、その先にある時計に目を向ける。
「お昼まで、まだもう一授業あるんだ」
「あら、そうだったの?うーん、残念ね……そうだわ!」
一瞬シュン…とした表情を見せたこころだったが、その後すぐにまた瞳を輝かせた。
こういう時のこころは大体ぶっとんだことを考えている。
「お弁当を食べながら授業を聞けば良いとかは無しな?」
「あら、ダメだったかしら?」
「ああ、先生も生徒の事を思って毎日準備をしている。そんな先生が弁当を食べながら話を聞く生徒なんて見たら、きっと悲しんでしまうよ」
「…そう、悲しんでしまうのは嫌だわ」
全世界の人を笑顔にするのが目標のこころにとって、悲しいというワードは思った以上に響いている様子だった。
「だから、あと一時間頑張ろう。出来そうか?」
「ええ!わかったわ!」
「よし、いい子だ」
子供を褒める時のように強くワシワシとこころの頭を撫でる。
撫でられたこころは目を瞑り大変気持ちよさそうにしていた。
本当、娘をあやしてるみたいだ。娘どころか嫁も彼女もいないけど。
「じゃあ、こころ。そろそろ授業が始まるから自分の席へお戻り?」
「そうね!それじゃあ竜介、お昼休みにまた来るわ!」
そう言って手を振りながら、こころは自分のクラスである一年C組に戻っていく。
あれだけ騒いでいたこころだが、彼女がいたのはここ一年B組。
自分のクラスでない場所であれだけ騒げるのを見てると、少し感心してしまう。
「本当お前、弦巻さんを手懐けるの上手だよな」
「そうかな?こころの話をしっかり聞いて、ちゃんとした理由を話せば結構聞き入れてくれるよ?」
「その二つが出来たら苦労しないんだよな〜。それと、今じゃお前ら『花咲川の異空間』に『異空間制御装置』なんて呼ばれてるからな」
「何それ、ちょっとカッコイイ」
なんて言ってみると、金髪ツインテールの少女―市ヶ谷有咲は笑いながら「バーカ♪」と調子が良さそうに返してくる。
「なんか他にないの?そういうカッコイイ奴」
「そう言えば、前に先生が竜介の事、あたしの保護者って言ってたな。何でも、お前が編入してから私の出席率が上がったらしい。自覚ないんだけどな」
「あ、それなら俺も言われた事ある。えっと、確か『有咲のお嫁さん』だったっけ?」
「え、そこは婿じゃね?」
「俺もそう思った」
意味わからんといった様子で有咲は首を傾げる。
地味に結婚認定が入っていたので、有咲お得意のツンデレが飛んでくると思ったが俺の杞憂だったらしい。
「まあでも、お前そこら辺の女子より女子力あるからな」
「そうか?てか女子力ってあれだろ、学校に絆創膏持ってきたり、百均便利グッズ熟知してたり」
「でも竜介、学校に救急箱持ってきてんじゃん」
「それは女子力なのか?」
現在俺のロッカーで待機してくれてる救急セット…通称ピーポー君(商品名)の事を思い出しながら有咲にそう問う。
「ま、正直どうでも良いけど。あ、そう言えばさ…」
「ん、どうした?」
「その…巴さんの妹とは何か進展あったのか?」
「……いや、まったく」
「そうか…」
俺が答えると、有咲は何処か安心したような表情をしていた。
やはり、いくら中三と言えども中学生と付き合おうとするのは不純だと思われているのだろうか。
「なあ、有咲。やっぱり俺があこと付き合うって言ったら、皆反対するのかな…。巴はそこそこ認めてくれてるんだけどね」
「わ、私は別に何とも思わねーけど?ま、まあもしかしたら何処かにお前の事が好きな奴がいるかもしれねーし?」
「なんで顔赤くしながら言ってんだ?」
「あ、赤くなってねー!」
有咲は否定してみせるが、やはりその顔は赤い。
先程のツンデレ分が加算されたかのように、いつもの二倍は照れていた。
「まあ、誰が来ようと俺はあこ一筋だけどな!」
「…ふーん」
「何その詰まんなそうな顔」
「別に?なんでもねーし。てか、あこちゃんが竜介以外の人が好きで、その人と付き合い出したらどうすんだよ?殴り込みにでも行くのか?」
「いや、静かに見守るけど?」
俺がそう言うと、有咲は驚いた表情をする。
確かに、あこと彼氏(仮)との愛の深さを確かめるために殴り込みをするかもしれないが、出来るならひっそりと見守っていたい。
「意外だな。百パーカチコミに行くかと思ってたわ」
「そうか?俺としては相手の幸せを考えてこその恋愛だと思ってるから、迷惑がかかる様な事は論外だと思ってるけど」
「まあ…かもしれねーけどさ、寂しさとかやるせなさとか、そう言うの湧いて来ないのか?」
「それは…まあ普通に湧くな。何なら寂しさで一年ぐらい部屋に引きこもってる自信がある」
「ふーん…そうか」
急に自分の髪の毛を指で弄りながら、意味ありげな視線を向けて返事をしてくる有咲。
「じゃ、じゃあ…さ」
「うん?」
「お、お前があこちゃんにフラれたりとかしたら…代わりに私が竜介のか、彼女になってやっても…いいぞ?」
「いや、そこまで気を使わくていいよ。申し訳ないじゃん」
「……バーカ」
何故か有咲に罵られた。
分かりやすく頬を膨らまし、不機嫌アピールをしている。
もしかして本気だったのだろうか。
……いや、それはありえないだろう。有咲に好かれる程の事をした覚えがない。
「そんな怒るなって…」
「うっせ、別に怒ってねーし」
「はあ……今日の晩飯にお前の好きなもん作ってやるから、それで勘弁してくれ」
「……本当か?」
「ああ、本当だ。で、何が良い?」
「………オムライス」
「了解」
数秒に渡って考え込んだ後、有咲の口から出た言葉はオムライスだった。
意外と子供っぽい物を注文してくる所に思わずクスりと笑ってしまうが、それが有咲にバレてしまい折角直した機嫌を再び悪くしてしまう。
更に、不貞腐れたまま机に突っ伏してしまった。
これではもう回復は見込めないだろう。
そう考え、俺は黒板の方に目を向けた。
「……そう言えば、もう授業始まってたんだな」
黒板には先生が『お前ら早く結婚しろ』と言う字がデカデカと書いてあった。
今年共学化したばかりだというここ花咲川学園高校。教師も含め皆やたらとノリが良い気がする。
それと先生、俺の本命は宇田川あこです。