【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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明日香を引っ張った理由? え? 中三だから?(正しくロリコンの鑑)



第19奏 明日香の先輩

 明日香との買い物が終わり、帰路にてあことばったり遭遇。ついでにそのまま羽沢珈琲店で一服もしておいた。

 家に帰ってからは夕飯の支度に取り掛かろうと準備を開始。そこにエプロン姿の明日香が「私の嫁力見せてあげます」と言いながら乱入してきた。さらに、何故かあこも俺のエプロンを着て参戦。

 その後、椎茸を入れたくない明日香と、ピーマンを入れたくないあこと、両方ぶっこみたい俺とで三方に別れ、何処ぞの日朝ライダーよろしく混沌を極めていた。俺の隙をついて嫌いな物を野菜室に戻そうとするのやめて欲しい。

 そんな愚痴が漏れてしまう出来事もあったが、夕飯の支度は終了した。何故か俺の皿だけピーマンと椎茸が集うカオスグラタンになっていたが、無事分配。

 中学三年生(お子様)達に嫌いな物を食べさせた後、少し食後休憩を取らせたのちに風呂に向かわせた。

 

「先輩も一緒に入りますか?」

 

 と言う明日香のからかいに、

 

「明日香の胸があと二回り大きくなったら入ってやるよ」

 

 と返して金的を蹴られた。

 後輩ジョークに先輩ジョークで返しただけなのに、この一方的な理不尽は如何なものかと国会に抗議したい。

 

「後輩にセクハラする先輩ってどうなんですかね?」

「先輩の金ちゃんを蹴りあげる後輩もどうなんだろな?」

 

 バチバチと火花を散らしながら、お互いの背後に龍と虎が現れる(ような気がした)

 

「喧嘩は、めっ!」

 

 そしてここで第三勢力の参入。

 猫(ニャン吉)を纏った(抱き抱えた)魔王が登場。実物は強すぎたので、勝敗は第三勢力に譲った。

 こっそり写真を撮ってゆきにゃーに自慢したのはまた別の話。

 龍虎合戦(猫)が終了し、無事二人を風呂に向かわせた俺は、二階に上がって明日香の部屋の準備をする。が、ここで問題発生──

 

「やっべ、布団の余りが無い……」

 

 何故こう言う日に限って、ニャン吉は来客用布団のある押し入れの中で爪とぎや排泄をしたのか。これは(ご飯)を餌に聞き出さなければ。

 そんないつかの予定の話はまた今度にして、今は明日香の寝床を準備しなければ。

 

「俺の部屋でいっか」

 

 そう結論づけ、俺は一階に戻った。

 それからテレビを見ながらニャン吉の毛ずくろいをしていると、明日香とあこが戻って来る。

 お風呂上がりの女の子はどこか色っぽいと言う話と、髪を下ろしたあこがべらぼうに可愛いと言う話は後でひまりとするとして、俺は寝床について明日香に相談した──

 

「明日香、今日俺の部屋で寝てくれないか?」

「初めては先輩と決めているので無理ですごめんなさい」

「なら問題ねーじゃねぇか──って違うわ。布団の余りが無かったから俺の部屋使ってくれって事だ」

「……先輩はどこで寝るんですか?」

 

 似合わない冗談を言った明日香が心配そうな顔で尋ねてくる。さっきまで合戦やってたのに急にうるうるとした涙目の可愛い後輩になるのやめて貰いたい。頭を撫でたくなってしまう。

 

「俺はソファーか何かで寝るから気にすんな」

「そう言う訳にはいかないですよ。年下が年上より良い環境で寝るなんて無礼なこと出来ません。あと、頭撫でないでください。子供じゃないです」

「そう言う事は椎茸食えるようになってから言え。と言うわけで、子供はちゃんとした所で寝ような?大きくなれないぞ?」

「別に大きくならなくても良いですよ。先輩どう見ても小さい子好きですし」

 

 さりげなく発せられたロリコン認定発言に不満を感じていると、明日香がチラりとあこを見る。

 

「どうしの、明日香ちゃん?」

「何でもないよ。先輩が未発達好きなのを再確認しただけだから」

「おい待ていつ俺がロリコ……未発達好きになったんだよ」

「……ずっと前から、ですかね」

 

 心の中からひび割れた音がした。

 俺は傷ついたチキンソウルをそっと奥に隠し、

 

「俺は断じてそう言う系じゃない」

「無自覚なだけで絶対そうですよ。なんなら試してみますか?」

「ほーん、良いだろう。条件は?」

 

 そう聞くと、明日香はニヤリと口角を上げた。途端に嫌な予感が身体を走る。

 

「じゃあ先輩、今日私と寝て下さい」

「初めてを捧げる人は決めてるので無理ですごめんさい」

「良いでしょう、ならば無理矢理奪うまでです」

「俺が求めてた答え(ツッコミ)と違う……」

 

 何でノリツッコミしてくれないのさと、俺が愚痴ると、

 

「だって本気ですもん」

 

 真顔でそう返して来た。

 へいへいウェイトウェイトと内心で阿呆みたいに焦っている俺は、

 

「私、先輩の事好きですから」

 

 年下に貞操を狙われる情けない先輩になっていた。

 

「女の子が軽々しくそう言う事をだな……」

「軽々しくないですよ。こんな事言うのは先輩相手にだけですから」

「だからな明日香、そう言う告白ごっこみたいな事は──」

「ごっこじゃないです」

 

 その一言に俺は固まった。

 

「今、なんと?」

「だから、ごっこじゃないです」

「……マジ?」

「さっきからずっと本気って言ってるじゃないですか。で、どうなんですか?」

 

 明日香はジッと見つめて聞いて来るが、ここで素直に返事をしたら、あこに好きだと伝える事になってしまう……

 

「──お前、まさか」

「何ですか先輩?」

 

 明日香がニヤりと笑った。

 この娘、本気と言っておきながら俺を弄っていやがる。肝の据わり具合いが俺の百倍先を行っている。

 

「先輩、どうしたんですか?答え、聞かせて下さい」

「くっ……」

 

 どうしよう、後輩が強すぎる……。

 心の中で歯噛みしながら唐突に訪れたアタックチャンスに戸惑っていると、不意にあこがクイクイと服の裾を引っ張って来る。

 

「りゅう兄、大丈夫?」

 

 と、上目遣いでまっすぐに心配してくれるあこ。味方と天使はここにいた。

 

「俺は大丈夫だ。それと、ちょっとだけ失礼するぞ」

「ふえ?──」

 

 あこを抱き寄せ、そのまま耳を塞いだ。

 土壇場での神対応にドヤ顔を作って明日香を見ていると、何故かジト目を返された。

 

「先輩、そう言う事は出来るんですね」

「そう言う事?」

「……何でもないです。で、返事はどうするんですか?」

 

 ジト目の明日香が聞いて来る。

 今の俺は天下無双も出来る程無敵状態なので、何でも言える自信がある。

 

「明日香、俺はあこが好きだ。だからお前の想いには答えられない」

「──わかりました。まったく、耳を塞いだら意味ないじゃないですか」

「どうよ俺の神頭脳」

「どうしようもない程のチキンですね」

 

 何故か急に明日香の発言が辛辣なものになった。それと心做しか怒っているようにも見える。

 

「明日香、なんか機嫌悪い?」

「悪くないですよ。先輩の気の所為です」

「嘘だな。だって明日香の怒ってる時の癖が出てる」

「……何ですかそれ」

「それは内緒」

 

 それを言ってしまっては明日香が意識してしまう。

 本当はそんなものないけど。

 

「で、どうした?」

「……別に、先輩はいつも通りあこちゃんにゾッコンだなって思っただけです。それ以外の子はどうでも良いんだなーって」

 

 いじけて言った明日香は、ぷいっと顔を逸らす。

 

「私だって、頑張ってるんですから……見てくださいよ……」

 

 口を尖らせる明日香は、子供のようだった。パジャマの裾をギュッと握り、悔しそうな顔をしている。

 何故そこまで悔しがるのかは分からなかったが、明日香が誤解をしていると言う事は分かった。

 

「俺は、明日香の事ちゃんと見てるぞ?」

「そんな嘘、つかなく──」

「嘘じゃない。だって、俺は明日香が椎茸嫌いで、俺の手作り菓子が好きで、寂しがり屋の可愛い後輩だって事、ちゃんと知ってる。だから、ちゃんと見てる」

「な、何ですかそれ……」

 

 ギリッと歯噛みした顔で明日香が俺を睨んだ。

 まるで、ふざけるなとでも言いたげな顔だった。

 

「先輩は私の気持ち、分かってくれないじゃないですか」

「人の心なんて分からん。俺はエスパーじゃないからな。でも、明日香が俺を必要としてるのは何となくわかる。それがどんな形なのかは分からないけど」

 

 気さくな友人としてか、いじり合える先輩後輩の仲か、それとも恋人としてか──

 

「さっきの明日香の告白、あれは本気って事で良いのか?今の状況から見るに」

「今の状況とかじゃなくて、最初から分かってて下さいよ……」

「そこはほら、あれよ……竜介クオリティ的な?俺に女心とか無理だ」

 

 そもそも俺は男だし、と心の中で言い訳を付け加える俺に、

 

「開き直りましたね……」

 

 明日香が一瞬だけくすりと笑って返した。

 

「まあでも、明日香を見てるのは本当だぞ?最近水泳のタイム上がってんだろ?顧問の先生から聞いた」

「……先輩、私の何なんですか」

 

 何──とは、簡単な問題を出してくれる。

 そんなもの、明日香に出会った時に決まっているのだ。

 

「俺は明日香に出会ってからずっと、『明日香のカッコイイ先輩の神楽竜介』だよ」

「──っ、そう……来ましたか。先輩は酷い人ですね。そんな事言われたら、私はずっと『先輩の可愛い後輩の戸山明日香』でいなきゃいけないじゃないですか」

 

 悔しそうな口調で明日香は言うが、その顔は笑っていた。

 

「仕方ないですね……先輩のために引いてあげましょう。それと先輩──」

「ん、なんだ?」

「あこちゃん、赤くなってますよ」

「えっ?」

 

 明日香に言われ胸元のあこを見ると、耳から頬まで全てが赤くなっている姿が目に写る──

 

「うおおぉ!?悪いあこ!苦しかったか!?」

「……うん……苦しかった」

「ほんとごめん!」

 

 思い切り抱きしめる形になってしまったあこを離そうと俺は動くが、

 

「りゅう兄……待って……」

 

 服を掴むあこによって、それは阻止されてしまった。

 

「もう少しだけ、このまま……」

「お、おう……でも、苦しかったんだろ?どうして続けるんだ?」

「分かんない……けど、嫌じゃなかったから……」

 

 自分の胸に手を当ててあこは答えた──

 

 

(ドキドキしてる……)

 

 

 俺に頭を当てつけて、あこが何か呟いたが上手く聞き取れなかった。

 どうすれば良いのか分からず、俺は頼る様に明日香を見るが……

 

「これはまだまだ時間がかかりそうだなぁ……」

 

 そう何かを察した様子を見せるだけで、手助けはしてくれなかった。

 燐子に告白され明日香に告白され、あこに抱き着かれ……本当に今日はおかしな一日だ。




結局最後は魔王が持っていくぅー⤴︎
二話連続投稿で真っ白に燃え尽きたのでしばらくお休みします。

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