【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
時は放課後。
場所は花咲川学園近くの公園。
「そう言えば、こころと初めて会ったのもこの公園だったな」
「へぇ」
大して興味がないと言った様子の美咲については何も気にしない。
大事なのは、ここから始まったこころとの思い出だ。
「ここのブランコでさ、こころがずっと一人で遊んでたんだよ」
俺のお気に入りだった公園で、毎日毎日詰まらなそうにブランコを揺らしていたこころ。
当時若干の人間不信を患っていた俺でも、声をかけざるを得なかった。
「美咲は驚くかもしれないけど、昔のこころはさ──全然笑わない子だったんだよ」
「意外だね」
「だろ?」
寂しさに押し潰されて一人で泣き出してしまう……こころはそんな少女だった。
「昔のこころ程、寂しそうって言う言葉が似合う人居ないと思うぞ」
「そこまでだったんだ」
一緒に遊んでいる時でさえ泣いてしまう事がある程だ。
孤独というのは小学校低学年の子が背負うには、とても重い枷だったのだろうと思う。
「だからさ、こころが笑顔になれるように探したんだよ。楽しい事」
「全ての元凶は竜介だったのか……」
「そうだな。でも、今のこころがいたからこそ出来た事があるだろ?」
「……まあ」
ハロハピの結成が最近だと一番の功績だろう。
近くの病院でライブを行った際には、一人の女の子の笑顔を取り戻したと、こころが笑顔で語っていた。
「小さい頃は泣いてた少女が、今は世界を笑顔にしようと活動してる。それを見てたらさ、やっぱ心にグッと来ちゃうんだよ」
「え、何……惚れたの?」
「父性が目覚めた」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
美咲にこの領域の話はまだ早かったようだ。
「いや、目覚めるだろ父性」
「普通そこは恋心だと思うんだけど?」
「残念だが俺にはあこがいるんだよなぁ……」
愛し愛しのマイエンジェ……マイロードの事を思い浮かべる。
そろそろ告りたいなと緩い気持ちを固めながら、俺はスマホを取り出した。
「最近撮ったあこの昼寝画像見るか?ニャン吉抱き枕にして寝てるやつ。マジ尊い」
「勝手に写真撮って大丈夫なの?巴さんとかに怒られない?」
「いや、写真自体が巴からの要望だからさ。あこの生活風景を送れって言われてんだよ」
「ああ、そう言う……。まあ、普通そうなるよね」
苦笑いをする美咲を横目に、俺は今一度あこの写真を見る。
「エモさがやばりみりん……。ああ、この気持ちはどうしたら──」
「告れば良いんじゃない?」
「言わないで」
それは一番俺がわかってるからと美咲に言い聞かせ、この話は幕をとじた。
そんなやり取りの中で、不意に俺の頭がとある日の事を思い出す。
「そう言えば、初めて黒服さんに拉致られたのもここだったな。特殊金属性のサメでも噛みきれないほど頑丈な袋に閉じ込められてさ」
「ガチの拉致じゃん……」
美咲が引き気味に答える。
確かにあの時の光景は、死期を悟ってしまう程にはリアルだったと思う。
袋から出された際、目の前にこころがいると認識した時の安心感と言ったら、それはもう戦後の帰国と同じ感覚だと思う。
「取り敢えず、拉致主がこころだって分かった時からはもう抵抗しなくなったな」
「何回もやられてるの?逃げなよ……」
「美咲は黒服さんと鬼ごっこした事あるか?」
「……無理だね」
あのスーパーサ〇ヤ人と何かで張り合うのは間違っている。
吉田〇保里と格闘技やった方がまだましだ。
「でさ、拉致られた時は毎回決まってこころの部屋に着くんだよ。窓が一切ない俺ん家のリビングぐらいある部屋に」
「そこで何してたの?」
「ひたすらこころに抱きつかれてた」
俺の腸を絞り出そうとするかのようなこころの強いハグ。思い出だしたらお腹が痛くなってきた。
「そんでさ、ひたすら『好きよ』って言って来るんだよ。父性目覚めるだろ?」
「目覚めるとしたらやっぱ恋心じゃないかなー……」
頭を捻って美咲は答える。
「てかさ、竜介はこころがどんな思いであんたにそう言う事してるか知ってるの?」
「え?普通に幼馴染としてだろ?」
俺が言うと、美咲が大きなため息をついた。
「やっぱり竜介はブレないねぇ……。まあ、こころもこころだけどさ」
「どういう事だ?」
「うんや何でもない。ただ、竜介はもっとこころのことを見てあげた方が良いよ。竜介自身のためにも」
揺れたブランコを止め、真面目な顔で諭す様に美咲は言う。
俺自身のためとはどういう意味だろうかと考えてみたが、俺にはさっぱり分からなかった。
そんな俺を見越してか、付け足す様に美咲が言う。
「まあ簡単だよ。こころをちゃんと見たあとで、竜介の気持ちを伝えてあげれば、きっと分かってくれるよ。こころならね」
「な、なるほど」
「あはは……。ちょっとあたしらしく無かったや。今のは忘れて良いよ」
「そうか……」
確かに美咲らしくないと言えばそうかもしれない。けど、こんな事を言えるぐらいには成長したと言う捉え方も出来る。
もしかしたら俺も、美咲を見習って成長しなければならないのかもしれない。
「まっ、よく分かんなかったけど、俺も頑張ってみるよ」
「ん、頑張れ」
美咲の応援も貰ったので、俺は来たる日の覚悟を決める様にブランコを飛び降りた。
その時、ポケットから何か落ちる──
「ん?なんだこれ、って────盗聴器?」
「え?」
──それは、こころの闇だった。
「あぁー……今の会話全部聞かれたみたいだな……。悪い美咲」
「な、何?」
「もしかしたら明日学校休むかもしれねーからさ。先生に伝言頼むわ。それと、出来れば有咲にも伝えといてくれ」
盗聴器の電源を切り、巴にあこへの伝言を送った後、俺は公園の出口に向かって歩きだす。
「い、一応聞くけど……何処行くの?」
「こころのとこ」
そう一言告げた後、俺はこころの家の方角に向かって走った。
___
走って走って走って、走り続けた。
なるべく人気のない場所を意識して走り続け、人が寄り付かない様な──誘拐されても騒ぎになりにくそうな所で足を止めた。
「黒服さーん、居るんでしょー」
そう声を掛ければ、茂みの中や家々の隙間からスーツ姿の女性が数名出てくる。
「ご協力感謝致します。神楽様」
「いつもの事ですからね。ただ、今回のは頂けないかと。さすがに盗聴器はね……」
「申し訳ありません。ですが、拝聴した音声データに関しては弦巻家にて厳重に保護してますので……」
さすがの黒服さんも度が過ぎてる事を理解しているようだ。
ただ黙ってこころの言う事を実行するだけの団体に成り果ててしまったのかと思ったが、そこは大丈夫そうだった。
「で、今回も袋ですか……」
「いえ。今回は車を用意させております」
「お、珍しい」
初めてまともに招待された事に嬉しさと悲しさを感じた。
ただ、やっぱり迎えの車と言うとリムジンが来てしまうので、まともな招待と言えども頭を捻りたくなる。
まあ、今はそんな事置いておくべきだろう。
「黒服さん、こころは一体いつから盗聴を?」
「……かなり前からかと。この件は全てこころ様が準備したものですから。我々は途中から仕込みの手伝いをしていただけでしたので」
「結局加担してるですね……」
「……申し訳ありません」
こころへの愛は相変わらずのようだ。逆に安心してしまった。
そんな馬鹿な事を思いながら、俺は迎えの車に乗り込む。
やっぱり俺にリムジンは合わなかった。
愛のためなら何でもするのよ!
バディファイトのガルパピコパック箱買いしました。あこが二枚出たので僕は満足です。