【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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次の回で闇こころん突破口を開きたい。





第24奏 恋と依存は紙一重。弦巻こころは──

 人は生まれた頃から優劣が決まっている。

 才能、容姿、経済能力。生まれた時からこの三つに酷い差が出る。

 

 弦巻こころは、運の良い事に全てを手に入れた。

 やりたい事は何でもでき、欲しい物は何でも手に入る。

 家の敷地内を歩けば、両親や使用人がこぞって彼女の容姿を褒める。

 文字通り全てが思うがまま、ワガママの限りを尽くせる。

 

 しかし、孤独の彼女にそれらは意味がなかった。

 

 やりたい事が何でも出来る──一人ぼっちで何が出来ると言うのか。

 

 欲しい物が何でも手に入る──友達はそれで手に入るのか?

 

 容姿を褒められる──褒めるだけで一緒にいてはくれないではないか。

 

 ずっと一人。

 いつまでも孤独。

 未来を想像すれば、何も見えない暗闇が現れる。

 光もなければ希望もない。決められた運命(レール)に乗って、弦巻こころはただ運ばれるだけ。

 言い方を変えれば、何の苦もなく生涯を過ごせるという事。ただ、そこに孤独と言う代償が乗る訳だが。

 

 今も昔もこれからも。

 彼女は孤独()に縛られたまま。

 誰にも見えないその鎖は、弦巻こころに闇を生み出させる。

 積もりに積もったその闇は、彼女の顔から笑顔を消した。

 元々愛想笑い程度しか出せなかったが、それすらも出せなくなった。

 

 毎年毎年友達が欲しいと、神にも仏にもサンタクロースにも願った。

 無駄撃ちに終わる確率の方が高いけれど、それでも願い続けたのだ。

 

 ただ一緒にいてくれる存在。

 

 普通の人なら絶対持っているであろうモノを、恵まれた彼女は持っていない。

 恵まれた故の代償か、それなら彼女は生まれる家を間違えたのだろう。

 両親も使用人も皆労働に視線を置く。その環境を寂しく思ってしまう彼女は、普通の家に生まれるべきだった。

 

 恵まれてるのに報われない少女。

 

 寂しさが心を押しつぶし、いつしか涙を流すようになった。

 寂しいけど悲しいわけじゃない。水滴が頬を伝うが泣いている訳ではない。

 ただ、涙が蛇口から滴る雫の様に零れ落ちるだけ。

 そんな機械のようにしか涙が流せない少女は、自分も知らない自分の闇に潰されていった。

 

 

 ──そんな時、弦巻こころの前に彼が現れた。

 

 

 彼女が求めた一緒にいてくれる人。

 彼女が憧れた“普通”を持っている人。

 

 一つの光がこころを照らした。

 小さく儚いが、その光は彼女を闇を少しづつ晴らしてくれた。

 初めての友達に、初めての明かりに、こころは戸惑いさえ覚えた。しかし、確かな光がそこにはある。

 彼女は生まれて初めて満たされたのだ。

 

 彼と出会ってからは毎日が楽しい。楽しい事を一緒に探してくれるからだ。

 そのおかげで彼女は、心の底から笑えるようになった。

 

 それから少し月日が流れ、小学校二年生へと進級した。

 嬉しい事に、その年から弦巻こころと彼は同じクラスへ。そして彼の隣になった。当然、飛び跳ねたいくらい嬉しかった。

 肩を並べて勉学に励み、休み時間は外で遊び、一緒に給食を食べた。放課後には彼と一緒に下校して、別れ際の道でお喋りをした。

 眩しい程に幸せな日々。こころはずっとこの関係が続くと思っていた。

 

 けれど、彼は“普通”なのだ。

 普通に友達を作り、普通の愛を手にする、普通の人。

 当然、交友関係も広がっていく。

 そして、普通に恋もする。

 

 ある日、彼が言った。好きな人が出来たと。

 彼は語った。好きな人の事を。

 彼の顔は、今まで見たことのない笑顔で満ちていた。

 

 彼が遠く感じた。

 

 別に、拒絶をされた訳ではない。

 それでも、彼の手を無理にでも掴んでおかなければいけない気がした。

 ここで手を離せば、彼が遠くに行ってしまう。

 そう考えた瞬間、脳裏に過去の日々が蘇った。

 

 過去の日々──“恵まれた自由な日々”の記憶が。

 孤独で寂しくて、何も見えないあの暗い世界の光景が。

 

 ──嗚呼、怖い。

 

 一度光を知った彼女は、もう闇には戻れない。

 縋って縋って縋り続けて、地を這ってでも彼の傍から離れるわけにはいかない。

 

 いつからか弦巻こころは、彼といる事だけを考えるようになった。

 彼にこころを見続けて貰うため、こころはあらゆる手段を尽くした。

 

 黒服の人達に頼んで彼を家に招待した。

 彼の願いを何でも叶えた。

 普通の彼に見合うよう、普通を心掛けた。もちろん彼との楽しい事探しは続けたが。

 そのおかげか、彼の隣にいる事は出来た。

 

 けれど、あの日見た彼の笑顔は引き出せない。

 彼の好きな人には出来て、こころには出来ない。

 その差が、彼女の焦りを生んだ。

 

 彼の傍にいるために、彼の事をもっと知らなければならない。

 彼の一番の存在は、弦巻こころじゃなければならない。

 

 その想いに至った時、彼女は悟った。これが恋かと。

 だが、残念ながらそれは恋ではない。

 

 弦巻こころが患ったのは──重度の依存。

 

 “恵まれた自由な日々”で得た闇よりも、更に深く濃い闇。

 それを抱えたまま今までを生きた彼女は、誰よりも愛に飢えている。

 

 抱く想いを間違った──いや、抱き方を間違えた想いは、彼女の心に闇の住む巣を作った。

 

 それが、弦巻こころと言う少女だ。

 

 弦巻こころは愛されたい。

 弦巻こころは満たされたい。

 壊れた心は願い()を見る。

 




「」使わずに書ききってやったぜ。

こころん病ませたら予想の五倍反響があった。
皆病んだこころん好きなの? 次作はヤンデレこころんで書けばいいの?

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