【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
人は生まれた頃から優劣が決まっている。
才能、容姿、経済能力。生まれた時からこの三つに酷い差が出る。
弦巻こころは、運の良い事に全てを手に入れた。
やりたい事は何でもでき、欲しい物は何でも手に入る。
家の敷地内を歩けば、両親や使用人がこぞって彼女の容姿を褒める。
文字通り全てが思うがまま、ワガママの限りを尽くせる。
しかし、孤独の彼女にそれらは意味がなかった。
やりたい事が何でも出来る──一人ぼっちで何が出来ると言うのか。
欲しい物が何でも手に入る──友達はそれで手に入るのか?
容姿を褒められる──褒めるだけで一緒にいてはくれないではないか。
ずっと一人。
いつまでも孤独。
未来を想像すれば、何も見えない暗闇が現れる。
光もなければ希望もない。決められた
言い方を変えれば、何の苦もなく生涯を過ごせるという事。ただ、そこに孤独と言う代償が乗る訳だが。
今も昔もこれからも。
彼女は
誰にも見えないその鎖は、弦巻こころに闇を生み出させる。
積もりに積もったその闇は、彼女の顔から笑顔を消した。
元々愛想笑い程度しか出せなかったが、それすらも出せなくなった。
毎年毎年友達が欲しいと、神にも仏にもサンタクロースにも願った。
無駄撃ちに終わる確率の方が高いけれど、それでも願い続けたのだ。
ただ一緒にいてくれる存在。
普通の人なら絶対持っているであろうモノを、恵まれた彼女は持っていない。
恵まれた故の代償か、それなら彼女は生まれる家を間違えたのだろう。
両親も使用人も皆労働に視線を置く。その環境を寂しく思ってしまう彼女は、普通の家に生まれるべきだった。
恵まれてるのに報われない少女。
寂しさが心を押しつぶし、いつしか涙を流すようになった。
寂しいけど悲しいわけじゃない。水滴が頬を伝うが泣いている訳ではない。
ただ、涙が蛇口から滴る雫の様に零れ落ちるだけ。
そんな機械のようにしか涙が流せない少女は、自分も知らない自分の闇に潰されていった。
──そんな時、弦巻こころの前に彼が現れた。
彼女が求めた一緒にいてくれる人。
彼女が憧れた“普通”を持っている人。
一つの光がこころを照らした。
小さく儚いが、その光は彼女を闇を少しづつ晴らしてくれた。
初めての友達に、初めての明かりに、こころは戸惑いさえ覚えた。しかし、確かな光がそこにはある。
彼女は生まれて初めて満たされたのだ。
彼と出会ってからは毎日が楽しい。楽しい事を一緒に探してくれるからだ。
そのおかげで彼女は、心の底から笑えるようになった。
それから少し月日が流れ、小学校二年生へと進級した。
嬉しい事に、その年から弦巻こころと彼は同じクラスへ。そして彼の隣になった。当然、飛び跳ねたいくらい嬉しかった。
肩を並べて勉学に励み、休み時間は外で遊び、一緒に給食を食べた。放課後には彼と一緒に下校して、別れ際の道でお喋りをした。
眩しい程に幸せな日々。こころはずっとこの関係が続くと思っていた。
けれど、彼は“普通”なのだ。
普通に友達を作り、普通の愛を手にする、普通の人。
当然、交友関係も広がっていく。
そして、普通に恋もする。
ある日、彼が言った。好きな人が出来たと。
彼は語った。好きな人の事を。
彼の顔は、今まで見たことのない笑顔で満ちていた。
彼が遠く感じた。
別に、拒絶をされた訳ではない。
それでも、彼の手を無理にでも掴んでおかなければいけない気がした。
ここで手を離せば、彼が遠くに行ってしまう。
そう考えた瞬間、脳裏に過去の日々が蘇った。
過去の日々──“恵まれた自由な日々”の記憶が。
孤独で寂しくて、何も見えないあの暗い世界の光景が。
──嗚呼、怖い。
一度光を知った彼女は、もう闇には戻れない。
縋って縋って縋り続けて、地を這ってでも彼の傍から離れるわけにはいかない。
いつからか弦巻こころは、彼といる事だけを考えるようになった。
彼にこころを見続けて貰うため、こころはあらゆる手段を尽くした。
黒服の人達に頼んで彼を家に招待した。
彼の願いを何でも叶えた。
普通の彼に見合うよう、普通を心掛けた。もちろん彼との楽しい事探しは続けたが。
そのおかげか、彼の隣にいる事は出来た。
けれど、あの日見た彼の笑顔は引き出せない。
彼の好きな人には出来て、こころには出来ない。
その差が、彼女の焦りを生んだ。
彼の傍にいるために、彼の事をもっと知らなければならない。
彼の一番の存在は、弦巻こころじゃなければならない。
その想いに至った時、彼女は悟った。これが恋かと。
だが、残念ながらそれは恋ではない。
弦巻こころが患ったのは──重度の依存。
“恵まれた自由な日々”で得た闇よりも、更に深く濃い闇。
それを抱えたまま今までを生きた彼女は、誰よりも愛に飢えている。
抱く想いを間違った──いや、抱き方を間違えた想いは、彼女の心に闇の住む巣を作った。
それが、弦巻こころと言う少女だ。
弦巻こころは愛されたい。
弦巻こころは満たされたい。
壊れた心は
「」使わずに書ききってやったぜ。
こころん病ませたら予想の五倍反響があった。
皆病んだこころん好きなの? 次作はヤンデレこころんで書けばいいの?