【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
昼休みが終わり、五限と六限でこっくりこっくりとしていたら放課後になっていた。
アフグロの面子はバンド練習あるので、あこだけ連れて下校していると、偶然彩先輩に会った。そのついでで羽沢珈琲店にてお茶をする事に。
頼んだコーヒーを啜りながら一息つき、どんな話題を出そうか悩んだ後、前々から抱えていた悩みを打ち明ける事にした。
「友達が欲しい」
「むっ、私と言うものがありながらその発言は頂けないなぁ〜」
「そうだよりゅう兄。あこもいるのに」
「ああ、違うんだ。俺が欲しいのは男の友達で……」
「男の子の……友達?」
神楽竜介十六歳。
幼馴染、学校の友達、その他諸々の交友関係が全て女性しかいない。
Circleでの気の合う上司まで女性とかほんと巫山戯てると思う。
「いや、俺だって部活で一緒に汗を流したりゲーセン行って太鼓ゲーやったり、男だけのバイク旅とか色々したいんですよ」
「普通に作れば……って、羽丘も花咲川も男の子ってかぐ君しかいなかったね」
「そうなんですよ。高校入ったら頑張ろうって思ってたのに、このザマです」
中学でも何故か俺一人だけ女子グループに混ざっていたうえ、部活も手芸部に入っていたので男との付き合いなんてなかった。
「じゃあ、今からでも何かスポーツやってみれば?」
「……料理とか裁縫の方が好きなんですよねぇ……」
「難儀だねぇ……」
お互いにコーヒーをズズっと飲み、ため息をつく。
「そう言えばかぐ君って、紗夜ちゃんにギター教えて貰ってるんだよね?バンドでも組んでみたらどうかな?ボーイズバンド」
「いえ、まだそこまで上達してないですし、ギターは趣味の範疇なので。それと、初めてのセッションはあことしたいです」
そう言いながら、隣でチビチビとココアを飲むあこの頭を撫でる。
「面倒臭いねー」
「ですねー」
運ばれて来たケーキセットのモンブランをいじりながら、俺と彩先輩とあこはのほほんとしていた。
「じゃあ後は……あ、私達の事務所に来てみる?結構男の人多いよ?」
「……千聖先輩が怖いです」
「前から思ってたけど、かぐ君って千聖ちゃんに何かされたの?」
別段なにかアクションを起こされた訳じゃない。ただ、
「偶に千聖先輩から品定めする様な視線を感じるんですよ」
千聖先輩の目が怖いのだ。
「ああー……千聖ちゃん、かぐ君の事を専属マネージャーにしようとしてるから」
「専属マネージャー?俺みたいな素人がそんなのやったら、千聖先輩の顔に泥塗っちゃいますよ」
「多分、仮にそうなったとしても千聖ちゃんは気にしないと思うよ?」
昔は自分のキャリアに酷く拘っていたのに。千聖先輩、随分と変わったなぁ……としみじみ思う。
「まあ、進路の一つとして考えてみます。なんでそこまで俺に拘るのかは分かりませんが」
「うーん……かぐ君は変わらないなぁ」
「皆の成長が早すぎるんですよ」
結成当時はバラバラだったPastel*Palettesも、気付けば家族と言わんばかりの団結力を固めていたし。イブは俺の下に弟子入りして来るし、麻弥さんの可愛さは日に日に増していくし。
「あ、麻弥ちゃんからメールだ」
「仕事ですか?」
「ううん。なんか麻弥ちゃんがかぐ君のドッペルゲンガーみたーってメールしてきて」
「ドッペルゲンガー?」
不思議に思いながら彩先輩のスマホを見せて貰うと、多少ボヤけているが俺が写っていた。
「これ掃除してる時のですね。そう言えば麻弥さんに羽丘に移った事言ってませんでした」
「じゃあ今伝えちゃうね」
「お願いします」
慣れた手つきで彩先輩がスマホを操作し、麻弥さんへ伝言を送ってくれた。
明日しっかり挨拶をしに行こうと思う。
「それにしても、花咲川と羽丘を行ったり来たりしてて大変だね。かぐ君は」
「そうなんですよ……。羽丘にいると有咲が心配になるんですけど、花咲川にいると蘭が心配になっちゃって……」
ぼっちツンデレが学校で苦労していないかが心配になってしまう。
そんな俺を見て、何が面白かったのか彩先輩がクスっと笑った。
「かぐ君、自分の心配はしないんだね」
「まあ、花咲川も羽丘も仲良い子いっぱいいるんで。それに羽丘の理事長とはカラオケ友達なので少し気が楽なんですよ」
「え、そうなの?もしかしてかぐ君って凄い家の生まれだったり……」
「ああ、違いますよ。ただ単に友達なだけです」
俺も一回で良いから金持ちになってみたい。
「羽丘の理事長は凄いですよ。宝塚ボイスでミッ〇ーマウスマーチ歌いますからね」
「なんか聞いて良いのか分からない情報だなぁ……」
念のため秘密にしておいて下さいと、口元にクリームを付けたあこと苦笑いの彩先輩に言っておいた。
「一応聞いておきたいんだけどさ、羽丘の理事長さんって女の人?」
「ですね」
「……別に男の子の友達居なくても良いんじゃないかなぁ」
彩先輩が困惑顔でそう言った。
「いやいや必要ですよ?同性の友達。周りの知り合いが全員異性だったって言う想像した事ありますか?」
「うーん……全員かぐ君みたいな人だったら別に大丈夫かな〜。かぐ君中身乙女だし、私より女子力高いし……」
「俺自撮りとか苦手ですよ?」
「そこ以外は全部かぐ君が勝ってるよ」
「なんと……」
と言う事は、彩先輩は炊事洗濯掃除その他諸々の能力値がゼロと。
「ポンコツみたい──そう言えば彩先輩、ポンコツキャラで売ってましたね」
「キャラじゃなくて素なんだよー……」
「結婚相手見つける時苦労しそうですね」
「そうなんだよね……。かぐ君みたいな人が近くにいれば──」
そうボヤいた彩先輩の目が、ギラッと光って俺を見る。
何を言おうとしてるのか分かってしまう自分が嫌だった。
「かぐ君と結婚すれば万事解決……」
「丁重かつ慎重に全身全霊と全誠意を持ってお断りさせていただきます」
「そこまで!?」
彩先輩が「フラれた〜」と言いながら机に突っ伏した。
「そんな軽いノリで結婚とか言っちゃダメですよ」
「まあそうだけど……。でも、かぐ君とは気が合うし何となく一緒のお墓入れそう」
「なんでそんなパワーワード思いつくんですか……。まあ、そのうち彩先輩の前にも良い人が現れますよ」
「そうかなー……。あ〜私も異性の幼馴染作っとけば良かったな〜」
そう言う話なのかと疑問に思ったが、これ以上彩先輩に狙われたくないので触れないでおいた。
「まあ、一応言っときますけど、幼馴染って恋愛対象になりにくい物らしいですよ。なんか家族と同じように接しちゃうみたいで」
「へぇ〜意外だね。かぐ君見てると全然そうじゃなさそうなのに」
「これが愛の力ですよ」
「かぐ君が乙女過ぎるだけじゃないかな?」
彩先輩が面白い事を言ってくれた。
「今日の会計は彩先輩にお願いしますね」
「じょ、冗談だからね!ちょっとした可愛い先輩ジョークだから!」
「はい。俺も冗談です」
「良かったぁ……」
俺が笑って返すと、彩先輩はほっと胸を撫で下ろした。さすがの俺でも女性に飲食代を全額負担させるなんてバカな真似はしない。
彩先輩のアタフタ具合を微笑ましく思いつつ、未だに口元にクリームを付いたあこを見る。
「あこ、クリームがついてるぞ」
「え?どこ?」
ぺちぺちとあこが自分の頬を触るが、クリームに触れる事はなかった。可愛いなーと口に出しそうなのを堪え、俺は指で取ってそのまま自分の口の中へ。
俺がクリームの甘さを感じていると、彩先輩が「おぉ〜」と感心するような声を出した。
「どうしたんですか?」
「かぐ君って時々大胆な事するよね」
「大胆な事?」
おそらくクリームを食べた事だろうけど、あれは小さい頃からやっているので耐性がついているだけだ。他の人にやったら普通に照れるだろう。しないけど。
「まあ、慣れですね。付き合い長いので」
「……その割にはあこちゃん赤くなってない?」
「えっ?」
彩先輩に言われあこを見てみると、顔を真っ赤にして俯いていた。
「あこ?大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
「そうか……」
小さくボソッとあこは言うが、とても大丈夫そうには見えない。
不安になって来たのでスマホを取り出すと、彩先輩に取り上げられてしまった。
「な、何するんですか」
「ふふっ。今はそっとしといてあげるべきだよ」
「は、はぁ……なるほど……」
なにかを悟ったような笑顔で言う彩先輩。俺は間の抜けた声を返す事しか出来なかった。
「そっか〜いつの間にかここまで来たんだ〜。良かったね、かぐ君。やっぱりかぐ君男の子だったよ」
「え?いや、そうですけど……。えっと、ありがとうございます?」
訳も分からずお礼をすると、彩先輩はまた笑い出した。
一体何が良かったのか──その答えは彩先輩のみぞ知る。