【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
あこ「……りゅう兄免許は?」
竜介「……走り屋にとって車魂こそが免許証」
あこ「無免許だよね?」
竜介「……」
あこ「りゅう兄?」
「羽丘の生徒会から風紀を乱すなって怒られた……」
「だろうな」
つぐみにたっぷり説教を貰ったその放課後、逃げるわけにもいかず俺は有咲の家へとやって来た。
やっぱり怒だった有咲は、現在も俺に正座をさせたまま眉間にシワを寄せて仁王立ちしている。
「今回のは完全に不意打ちだったんだよ。いやホントマジで。いきなりガっと」
「じゃあ離せば良かったじゃねーか」
「そしたらコロッケが落ちちゃうじゃん?」
「お前な……」
盛大に溜息をついた後、有咲は頭を抱えた。
「私さ、そろそろ本気で竜介が刺される心配し始めてるんだけどよ……。大丈夫なのか?なんか、ストーカーとかそう言うの……」
「こころに拉致られた事なら数えきれない程あるぞ」
「もう手遅れじゃねーか」
小学生の時から積み上げて来た拉致経験。北の国に同じ事をされても多分焦らないだろう。なんかいける気がする。
「だけどもう解決したから大丈夫だ。ほら、その証拠に羽丘に戻して貰えたし」
「それでいきなり羽丘に転校したのか……。一言ぐらい連絡よこせよ」
「……それはすまなかった」
不安そうな顔で呟く有咲に俺はそう謝罪をした。羽丘に戻れた事への嬉しさで舞い上がっていたため、皆に伝えるのを忘れていたのだ。
「ま、まあでも、俺が花咲川から居なくなったぐらいじゃ、大した影響は……」
「今日の朝、私の所に奥沢さんが来たぞ?さっき言ってた弦巻さんとの事をすげー心配してた。で、竜介に会いに来たんだとよ」
「え?」
思っていた以上に影響があり、思わず声を漏らしてしまった。
「ったく、お前のスマホは何のためにあるんだよ」
「ごめんなさい……」
「謝るぐらいなら最初からするなよ」
「はい……」
きっと今の俺は男とは思えない程恐縮しているだろう。嫁の尻に敷かれる旦那と言った方が早いだろうか。相変わらず俺は有咲に弱かった。
「今度何かあったらちゃんと有咲に連絡入れる」
「おう。あとちゃんと他にも送れよ。それとコロッケのやつはもうやるな。ああ言うのは恋人作ったりだとか結婚した後にやれ」
「わかりました……」
口すっぱく、有咲になんどもコロッケゲームの事を咎められた。
「じゃあ、この話はお終いな」
「え、もう?」
もっと怒られると思っていたので意外だった。もしかしたら、これよりも重要な話があるのかもしれない。そう思い至り俺は身構えた。しかし、有咲は何も言ってこない。相談しにくい事がなのだろうか。
「……有咲、何かあった?」
「え、なにがだよ?」
「いや、何も喋らないからさ、どうしたのかなーって……」
「ああ、別になんでもない」
思いつめた顔をするわけでもなく、何処か懐かしいものを見る目で有咲は言った。
「ただ、なんか羽丘に行った途端竜介が大人しくなったなって思っただけだ」
「俺、暴れた事なんて一度たりともないぞ?」
「そうじゃなくてだな……」
暴行事件でも起こしたことになっていたのかと疑ったが、そう言うわけではなさそうだ。
煮え切らない有咲の様子にただひたすら疑問を持ちながら、俺は有咲の話を聞く。
「なんか、今日は竜介が撫でたり抱きついてきたり、私を娘だーとか言ってこなかったから……変だなって思って……」
「ああ、そう言う事か。実は今朝な、皆との接し方について考えさせることがあったんだよ。そんで、皆もう立派な女の子な訳だし、俺が過保護になる必要ないなって思ったわけで。だから、今日から少しずつ接し方探ってみようと思ったんだよ。まあ、早速やらかしたが」
「ふ、ふーん……そうか……」
俺が心境の変化を説明している間、有咲は何処かソワソワとしていた。話を聞く気があるのか疑ってしまう。
「……有咲、どうしたんだ?なんか落ち着きないけど……」
「え?いや……何でもない、けど……」
「隠さなくて良いから。ほら、言ってみ?」
恥ずかしそうに顔を反らす有咲に、俺はどうしたのか尋ねる。有咲は変わらずモジモジしていた。
「わ、私は、その……ただ──」
「ただ?」
「も、もう……頭撫でたりとかしてくれないのかなって……思って──さ、寂しいわけじゃねー!!!」
「落ち着け有咲。俺はまだ何も言ってないぞ」
つぐみよろしく何か勝手に自爆した有咲を宥める。取り敢えずご所望の撫でをお届けしておいた。
「……ほんとに寂しくなんかねーからな……」
「OKOKちょまかわちょまかわ」
「わ、分かってねーだろ!」
キッとした目を向けて来るが、そこに反抗的な意図は感じられない。子猫が必死にねこぱんちをしているのと同じようなものだ。しょうがないので特別条例でハグをしておいた。
「ちゃんと分かってるよ。有咲は昔から寂しがり屋だからな。そのくせ全然甘えて来ないから、ちょっと心配だったよ。昔甘えて来なかった分、今たくさん甘えてくれて良い」
「……ず、ずりーぞ……そんな言い方……。それに、竜介だって一人だったのに誰にも甘えてなかったじゃねーか……」
「有咲が見ていられない様な状況だったからな。まあ、皮肉な事にそのおかげで今の俺があるんだけど。取り敢えず今は、俺と婆ちゃんに甘えておけ。有咲は抑え込み過ぎだ」
ポンポンと有咲の頭を軽く叩き、甘える恥ずかしさを消せるよう努めてみる。
そんな俺に、有咲が何処か悲しそうな顔をして尋ねて来た。
「仮に私が昔の分をお前に甘えるとして、竜介は誰に甘えるんだよ……。お前は、もう家に家族が──」
「はいストップ。そこから先は言わない」
「で、でも……」
「でもじゃありません。男の子の心は女の子の十倍強く出来てるんですー」
昔の俺は女の子ぽかったが……と心の中で付け足した後、俺は有咲に続けて言った。
「それに、俺には皆がいるからな。幼馴染がたくさんいると、結構寂しさって感じないんだよ。今はそれだけで充分足りてる」
有咲に心配させないようニコりと微笑んだ。だが、納得とは程遠い表情を有咲は返して来た。仕方ないのでゴリ押そうと思う。
「さ、お暗い話はここら辺にしといて、夕飯の準備でもするか。台所と食材借りるなー。明日返しに来るから」
「え……ちょっ……まだ言いたい事──」
「何にしよっか……あー……オムライス食いたい気分だな」
有咲の制止を振り切り、俺は台所ヘと直行した。
「だから……話は……」
「有咲、俺は大丈夫だって言ってるだろ?もしかして疑ってたり?」
不意打ちで聞いてみると、有咲は「うぐっ……」と固まる。
台所でフライパンやまな板を準備しながら、有咲の答えを待った。
「……別に疑ってたりは……」
「なら別に問題ないだろ。まあ、いざとなったら有咲に泣きつかせて貰うよ。今はそれで引いてくれないか?」
「……分かったよ」
不満タラタラながらに有咲は了承した。
今度有咲との接し方について深く考える必要がありそうだ。もしこころの様に寂しさが暴走した場合、おそらくだが有咲はこころを越えるとんでも行動を起こしてしまうだろう。
「有咲、ケチャップの文字何にする?」
「じゃあ……星」
「……だんだんと香澄の影響受け始めて来たな」
「そ、そんなんじゃねーし!」
もしかしたら有咲の心の休息場所は、香澄の隣なのかもしれない。今度香澄に菓子折りを持って行こう。
俺はそう有咲の友人達に感謝しながら、夕飯の支度を進めた。
____
「ただいまー……」
有咲の家で夕飯を作って食した後、家に帰って来た。
食後休憩に思いのほか時間を費やしてしまい、帰宅時間が夜九時を回ってしまった。
「あ、りゅう兄おかえり!」
「おう。ただいま──」
パジャマ姿のあこが元気よく出てきた。口の端には夕飯を食べた証であるトマトケチャップがついている。
何故か湧き出た安心感と、家に帰って来たら誰かに出迎えて貰える事に幸せを感じながら、あこの手に握られているポッキーの箱に疑問符を浮かべる。
「あこ、そのポッキーは?家に置いといた記憶は無いけど……」
「あ、えっと……こ、これはね、放課後に買って来て──」
何故か恥じらう姿を見せ始めたあこの、もう片方の手に握られたスマホを見て、察したくない何かを察した。
「りゅ、りゅう兄!あことポッキーゲームして!!」
「ポッキーゲームのルールは知ってるのか?」
「す、スマホで調べた!」
「じゃあダメだ」
「……え?」
つい先程有咲としたばかりなのだ。約束は守らねばならない。たとえ誰にも見られていなかったとしてもだ。俺の覚悟は強い。
しかし、拒否した瞬間途端にしょんぼりしてしまうあこに胸を締め付けらてしまう。既に覚悟が消えそうだった。
「……蘭ちゃんには出来て……あこにはしてくれないんだ」
「あー……あこ?実はさっきその事について有咲に怒られてさ、嫁か恋人が出来るまではって約束したんだ」
「じゃ、じゃあ!あこが今からりゅう兄の恋びとになれ、ば──」
魔王様硬直。
木魚の音を幻聴しながら数秒経過。
魔王様オーバーヒート。
以上、現場より。
「あこお風呂入ってくるッ!!!」
「お、おう。行ってらっしゃい」
つぐみと有咲よろしくあこも自爆した。今日は自爆デーか何かなのだろうか。
それと、今回は俺が赤面しなかった。きっとあこの意外な姿に感慨深さを覚えたせいだろう。
最近文字巨大化のやり方を覚えたからやってみた。良き。魔王力の表現方法が増えた気がする。
イニシャルA……A……アクセル…ッ!!
変…身ッ!ブォオンブオン!
さあ、振り切るぜッ!!
身体がバイクなら溝落としとか楽勝だべ。