【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第33奏 ハンバーグの味を君へ

 最近曇りの日が多い。梅雨も夏休みもすぎたのに。雷でも鳴ったら大変だなと、そんな呑気な事を俺は思いつつ、一時限目の家庭科に行われている議題『明日に行われる調理実習の班決め』について先生の説明を聞いていた。

 

 やはり元女子高(今も女子高みたいなものだが)なだけあって家庭科が必修科目にある。料理が好きな俺としてはこの上ないほど喜ばしい事だが。

 今回の調理実習、一見平和な女子達による可愛いお戯れに見えるかもしれないが、実はそんな世界線なぞ何処にも存在しない。ギラギラと料理が出来る存在(おれ)を確保しようと火花が散っているのだ。パッと光って消えてくれ。

 

 調理実習の目的が『協力して料理の作り方を学ぶ』なのに、俺を捕まえ楽をしようなどと言う輩で溢れかえっているのだ。これでは女らしさの欠片もない。もっとお淑やかさと慎ましさを持って欲しい。

 そして、先生もその事を分かっていたのか、おっとり口調で皆に告げた。

 

「あ〜ちなみにですが〜、神楽君は特別班ですからね〜。ズルはいけませんよ〜」

 

 クラスの女子からブーイングの合唱が起こる。汚ねぇ歌声響かせやがって。さすが女子高、男子に見せる華の欠如が激しかった。

 だが、この状況に俺は内心でほくそ笑んでガッツポーズを決め込む。このクラスは俺を含めて二十七人、そして実習班は五人一組、二人余る。片方は俺で、そしてもう片方は、

 

「……なに?あたしの顔になんかついてるの?」

 

 羽丘のツンデレボッチ──美竹蘭様だ。おそらく……というか絶対余る。クラスメイトと話しているのなんか日食程度の頻度でしか俺は見たことない。それ程クラスメイトとの仲が浅い。

 そう言うわけなので、可愛い可愛い蘭ちゃんをゲットしようと思い、俺は堂々と先生に意見を申し上げた。

 

「先生、蘭とペアでやりたいのですが良いでしょうかー?」

「え、ちょっと……」

「ん〜まあしょうがないですねぇ〜。人数もちょうどよくなりますし〜」

 

 蘭の戸惑いの声を他所に、俺と先生の間で不可視の条約が結ばれた。はぐれアフグロぼっちゲットだぜぃ。

 目的も果たしたので、俺は残り時間を費やし全力でうたた寝をする事にした。

 

 

 授業終わりのチャイムを目覚ましにして起床した後、蘭に腕を引かれて廊下まで連れて行かれる。何事かと思い蘭に尋ねると、キッと鋭い目をして俺の意図を問うて来た。

 

「どういうつもり?」

「どうって言われても……何となく蘭が一人になるなって思って」

「別にサボるから気遣わなくても……」

 

 ボソッと呟いた蘭に、俺はデコピンをした。さっきと同じ鋭い目を向けられるが、それに屈せず俺は蘭に告げる。

 

「おサボりはダメだぞ。ただでさえサボり多くて色んな教科の単位が危ないのに。このままじゃひまり達とクラスどころか学年まで離れる羽目になるぞ。良いのか?」

「……嫌だ」

「じゃあ、しっかり出席するんだぞ。分かったか?」

 

 子供に言い聞かせる母の様に俺が言うと、蘭は「分かった」としょげながら言った。本当に母親に叱られた後の子供の様だった。

 

 

 ___

 

 

 

 家庭科の調理実習当日の三、四時限目。

 俺と蘭の班に謎のヘイトが集まる家庭科室にて、調理前の調理道具と食材チェックが行われていた。

 

「神楽君~個人持込のピーマンは没収ですよ~」

「そ、そんな殺生な!」

「衛星面で危険ですので~食中毒でも起こしたらどうするんですか~」

「……分かりました」

 

 先生の言うことは十割正しい事なので、俺はやむなくピーマンを明け渡す。ピーマンハンバーグを作って昼休みにあこに食べさせる計画が潰れてしまった。

 

「それでは~早速始めましょうか~まずは玉ねぎを~──」

 

 調理課題のハンバーグの作り方を先生は説明しているが、その説明をしっかり聞いてる人はこのクラスに何人いるのか。俺へのヘイト集中が止まらない。

 そんな視線には屈せず、俺は先生の説明を聞き流しながら蘭へ玉ねぎの微塵切りを教えていた。

 

「玉ねぎを切ると沁みますが我慢して~……これは不思議と沁みませんね~」

 

 玉ねぎの刺激が来ないことに皆不思議に思っている中、不意に蘭が何かを察し俺のほうを見た。

 

「竜介、何かしたの?」

「ふふふっ。実は二時限目に理事長に頼んで玉ねぎだけ冷蔵庫に移して貰ったのさ!玉ねぎは切る前に三十分冷やすだけで大分沁みなくなるからな。俺超優秀」

「神楽君~うちの理事長をそんな理由でこき使わないでくださ~い」

 

 俺の素晴らしい裏技に先生がイチャモンをつけて来た。こんなパーフェクトでノックアウトな事俺にしか出来ないのに……なんで蘭は呆れた目を向けてくるのだろう。

 

「まあちょっとしたアクシデントは置いておいて~。微塵切りにした玉ねぎはフライパンで狐色になるまで炒めてくださいね~」

 

 そんな先生の説明はやはり聞き流し、俺は頑張ってフライパンを扱う蘭をまじまじと眺めていた。今更だが、蘭のエプロン姿が中々に可愛いのだ。料理をする姿が様になっている。

 

「……何?竜介」

「いんや別に?ただ、今の蘭ならお嫁に出しても大丈夫だな~って思っただけだ」

「……あっそ」

 

 そっぽ──は向かず、フライパンに視線を落とした。赤くなっている顔の理由は、きっとガスコンロの熱だけではないだろう。可愛い。

 

「はいそこ~いちゃつかないでくださ~い。それと神楽君~先生の前で結婚の話はNGですよ~。先生独身なので~」

 

 おそらく三十路を過ぎたであろうおば──お姉さん先生による逆恨みの視線が俺に突き刺さる。ついでにケース付きだが包丁も俺の背中に刺さっていた。怖いのでやめてくださいお願いします。

 俺が融合係数(恐怖心)に駆られる中、先生はうふふうふふと妖しい笑みを浮かべながら教卓の方へと戻っていった。

 

「では~玉ねぎが炒め終わった所から~ボールに合いびき肉、卵、パン粉、塩コショウを入れて一緒に混ぜてくださ~い」

「竜介、パン粉とかってどれくらい入れれば良いの?」

「うーん……ひまりもいるし、つなぎは豆腐でいっか。ヘルシーさは大切──」

「は~い没収で~す」

 

 豆腐はアルカリ性だから大丈夫と言う俺の謎理論は無事に無視され、お豆腐は先生の手元に消えていった。きっと誰かがこの光景を見た後、俺を嘲笑うのだ。

 やさぐれた後バッタを混ぜたマーボー豆腐でも作ってやろうかと俺は思ったが、先生に正論で説き伏せられたので大人しくしていようと思う。

 

「混ぜる時には~力強くこねて粘りが出るまでやってくださいね~。よ~く混ぜれば混ぜるほど美味しくなりますので~」

「蘭、混ぜる時は優しく、そして素早くを意識するんだぞ。こね過ぎて肉の細胞を壊すと、焼いた時に肉汁と一緒に旨みが逃げて行っちゃうからな」

『……』

 

 俺と先生の間に沈黙が訪れる。

 古のおばちゃん知識と、最近クッ○パッドで得た情報がぶつかり合う瞬間だった。

 

 その後、クラス全員が早こねを選択すると言う悲惨な出来事が起きたが、それ以外問題なく調理が終了。試食会へと移行し、皆が班員と完成した品を食べあっていた。

 

「はい……竜介」

 

 当然俺達の所も完成している訳で、今は蘭が丹精込めて作った料理を俺が食そうとしているところだった。俺は蘭から渡された箸を受け取り、一口分に切ったハンバーグを口の中へと放り込む。

 

「──うん、美味しい。蘭の愛情を感じる」

「な、何それ……」

「ははっ。冗談だ──」

「……ま、まあ、込めた……けど」

 

 ポソっと呟いた蘭の言葉に俺は固まった。俺の聞き間違いじゃなければ今、蘭が……

 

「りゅ、竜介にって……愛情……込めた……けど。い、言わせないでよ……もう」

 

 ──ツンデレのデレが出たぞ!皆の衆出会え出会えー!!!

 

 俺の心の中でカチドキの宴が行われていた。

 

「可愛いかよ……」

「は~い、いちゃつくのは他所でやってくださ~い」

 

 

 ___

 

 

 

「──と言う訳で。こちら、蘭が愛情を込めて作ったハンバーグになります」

『おぉー』

 

 昼休み、俺はタッパーに詰めた蘭特製のハンバーグ(一口サイズ)を披露していた。皆から驚きの声があがる。特にモカは一層興味を惹かれていた。

 

「り~君、食べてみて良い~?」

「だってよ。どうする?蘭」

「べ、別に、勝手にすれば……」

「じゃあいただきま~す」

 

 モカが食べ始めたのをきっかけに、皆もハンバーグに手を付けた。それぞれが美味しいと絶賛し、それを聞いた蘭は顔を赤くする。

 そんな中、蘭の手作り料理をかなり気に入ったモカが、お礼だと言わんばかりに蘭に抱きついた。

 

「蘭~美味しかったよ~」

「あ、あっそ……」

「愛情込めた~?」

「……こ、込めたけど」

 

 その言葉を最後にアフグロ内で言葉は消え、皆が蘭に抱きつく。素晴らしい友情だなと、俺は胸を打たれた。

 

「やっぱ料理は愛情だな」

「……りゅう兄も、愛情が込められた料理貰うと嬉しいの?」

「もちろん」

「……そっか」

 

 あこが悩ましいと言った表情をしていたが、どうしたのだろうか。

 そんな心残りを抱えながら、俺はハンバーグを一口放り込んだ。

 




カテゴリーAは俺の物だー!!!(O M O)

兄貴のマーボー豆腐が食べたい。
良いよなぁ、お前は<チェンジキックホッパーッ!

特撮ネタで溢れ返った調理実習回だが、実はハンバーグ自体がアマゾンズパロだったと言う事実に誰も気づかない。あーまーぞーん




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