【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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お気に入り1000件突破とUA10万突破を同時に遂行したい。そしてなんとか上手く写真に収めたいって言う野望の話を広がる宇宙の中でしようと思う。


第35奏 ぱ す ぱ れ ラ ジ オ

 調理実習があった日の翌日──快晴の土曜日に事は起きた。

 先日料理人スキルを目覚めさせたあこのために、まずは簡単なチャーハンから作り方を教えてあげようと思い材料の買い出しに出かけた時の事だ。

 

 

 拉致られた。

 

 

 この一言に尽きる。

 スーパーの帰り道、コーラ片手に歩いていたら、突然黒光りする筋肉に担ぎあげられワゴン車に詰め込まれたのだ。

 最近は男でもハイエースされるんだなぁと呑気にシートにふんぞり返りながら俺はコーラを飲んでいた。今更ワゴン車で拉致られたぐらいで驚きはしない。こちとらリムジンで経験済みじゃいと黒光りする筋肉達に対しマウントを取っていた。

 

 そして、車が走る事約十五分。連れて来られたのは3()6()0(ライ)プロ。麻弥さん及びPastel*Palettesメンバーが所属している事務所だ。

 

 そこに連れて来られた俺は、彩先輩と日菜先輩がいるラジオスタジオらしき場所のゲスト席と書かれた場所に座らされ、訳も分からず原稿を渡された。

 ガラスの向こう側で、スタッフだかADだか知らない人が指でカウントダウンを開始する。

 

 そして、ゼロになった途端『ON AIR』の赤ランプが点灯した。それと同時に彩先輩と日菜先輩が声をあげる。

 

『ぱすぱれラジオー!』

 

 俺には訳が分からなかった。集中力の問題なのだろうか。

 

 ──おっし集中。神楽竜介集中しろー。

 

「リスナーの皆様こんにちは。今回も始まりましたぱすぱれラジオ!パーソナリティーを務めるのは毎度お馴染み、まん丸お山に彩りを。Pastel*Palettesふわふわ&ボーカル担当、丸山彩と──」

「るんっ!と成分ジーニアス!Pastel*Palettesギター担当氷川日菜ちゃんに続き!──」

 

 アイドルらしい自己紹介を二人がし終わった後、日菜先輩が『ほら、なんか即興で自己紹介しろ』と言う視線を送って来る。訳わかめ状態だったがノリで頑張る事にした。

 

「リスナーの皆様はじめまして。迷える仔犬の癒しの泉、羽丘のスパダリプリンスこと神楽竜介です」

「以上の三人でお送りするよ〜!イェーイ!」

 

 何だか今日は日菜先輩のテンションが高い気がする。ラジオ収録が好きなのだろうか。

 

「で、これはどう言う状況で?」

「えっとねー、前々から竜君をここに呼ぼーって話はしてたんだけど、なんかスタッフさん達が上手く竜君を誘えなかったらしくてー」

「はあ、なるほど。でも俺、番組スタッフらしき人に声かけられた記憶はないんですが……」

「そりゃそうだよー。スタッフが黒いスーツの人達に邪魔されて近づく事すら出来なかったって言ってたし」

 

 まさかの黒服さんだった。しかし、何故黒服……もうこころに拉致される事はないと思っていたのだが。

 

「まあ、あの人達を相手にしてたなら無理もないですわ。何だったら彩先輩から俺に掛けくれれば良かったのに」

「そうしたかったんだけどね、ゲストアポを取るのは自分達の仕事だーって皆が意地張っちゃって……しばらく黒いスーツの人と交戦してたらしいよ」

「何処の紛争地域ですか」

 

 割と本気のバトルが繰り広げられていた事に若干驚きながら彩先輩と談笑していると、スマホ片手に鬼の形相をした日菜先輩がずいっと俺に顔を寄せて来た。

 

「竜君、電話番号教えて!」

「アイドルがそんなすぐに逆ナンするんじゃありません」

「でも彩ちゃんとは交換してるじゃん!」

「そりゃ彩先輩とは時間をかけて──」

 

 思い返してみると、彩先輩とは出会ったその日に連絡先を交換していた気がする。と言うよりか、パスパレで連絡先交換してないのは日菜先輩だけだった。

 

「……まあ彩先輩とは気が合いましたし、イブは弟子で麻弥さんはマブダチですし、千聖先輩は無理矢理でしたし、そう言う事もありますよ。はい」

「ちょっと竜君!?」

「フルフルしときます?」

「する!」

 

 涙目になったりパアっと明るくなったり、今日の日菜先輩はいつにも増して感情の変化が忙しない。日菜先輩には申し訳ないが、彼女の姿を見て犬を幻視してしまった。

 俺とLINEを交換した日菜先輩は、これでもかと言う程に尻尾をフルフルしていた。

 

「よし……竜君のLINEゲット。えっと、スタンプスタンプ……」

「本人目の前にいるのに送ります?」

「るん!って来たから」

「今はお帰りください」

 

 日菜先輩は「ぶー……」と唇を尖らせながら不貞腐れる。そんな日菜先輩を見て、彩先輩は微笑ましそうに笑っていた。そこに言葉はない。

 ラジオ番組にはあってはならない無言の一時が訪れた。スタッフが『お便りコーナー』と書かれたカンペを出す。彩先輩はハッとした様子で話出した。

 

「で、では、ぱすぱれお便りコーナーをやっていきましょう。今回もたくさんの……今までで一番多いお便りありがとうございます。ほとんどかぐ君宛だけど」

「特別ゲストの影響凄いですね」

「だね。じゃあ一通目、ラジオネーム『人参嫌いです』さんより、『神楽君へ。人参食べさせようとするのやめてください』」

 

 おかしい。ラジオネームなのに誰から送られて来たのかが一瞬で分かってしまう。

 

「まあ、そうですね。今度キャロットゼリー持っていくので楽しみにしててください。『人参嫌い』さん」

「うわー……かぐ君鬼畜だー」

「人参嫌いが許されるのは小学生までですからね」

『きゃははは!』

 

 彩先輩と俺で盛大に笑った。おそらくだが、明日か明後日ぐらいに紗夜先輩が俺を冷凍ポテトで殴りに来るだろう。

 そんな俺の未来予知を他所に、彩先輩は二通目のお便りを読む。

 

「続いて、ラジオネーム『あなたを愛してるわ!』さんより、『黒服の人達に竜介を守ってって頼んだわ!困った時にお願いすれば助けてくれるはずよ!』だって。かぐ君」

「目頭が熱くなるお頼りですね。でも、俺のお願いはお便り主さんの幸せなので頼る事はないかな」

「かぐ君が珍しく男前だー」

「珍しくは余計ですよ」

 

 未だに黒服さんが俺の周囲にいる理由が分かった。今度こころと黒服さんにお礼を言っておこうと思う。

 

「……竜君、誰かと付き合ってるの?」

「いえ、別に?」

「でもこの人、かぐ君の事愛してるって言ってるね」

「男にもミステリアス成分は必要ってことさ。ああ、儚い……」

 

 事情を説明すると長くなるので薫先輩で誤魔化しておく。彩先輩と日菜先輩は頭にハテナマークを浮かべた。

 

「まあ気にしなくていっか。じゃあ次のお便りいっちゃうねー。ラジオネーム『星降るあられ祭り』さんより、『好きな女の子のタイプを教えてください』だって」

「お、やっとお便りらしいお便りが来ましたね」

 

 ラジオネームからも誰だか想像がつかなかった。正真正銘、匿名のお便りだろう。演劇部時代の俺のファンからだろうか。そんな様々な考察を頭の中で繰り広げながら俺は質問への返答をする。

 

「うーん……好きなタイプかー。やっぱり、一緒にいて安心する人ですかねー」

「安心する人?」

「はい。好きになるなら長く付き合える人が良いじゃないですか。だから、一緒にいると安心する人がいいなーって」

「あーそれなんか分かるかもー」

 

 彩先輩が俺の意見に賛同してくれる。結婚する事まで考えて相手を好きになると言う俺の考えは間違っていなかったようだ。

 

「私にとってはかぐ君がそれかなー」

「残念ですが俺の隣はもう埋まってますので」

「知ってるー」

『きゃははは!』

 

 再び彩先輩と俺で盛大笑った。正直な事を言えば彩先輩の隣は結構落ち着く。と言うより、俺は隣に誰かいると大抵は落ち着いてしまう。何故か節操のない男みたいに聞こえて来る不思議。

 俺が摩訶不思議な現象に首を捻っていると、いきなり余裕のない顔をした日菜先輩に胸倉を両手で掴まれた。

 

「竜君はあたしといるとるん!ってする!?」

「い、いきなりですね。まあ、してると思いますよ?」

「ほんと?嘘じゃない?」

「はい。嘘じゃないです」

 

 何処か切羽詰った様子だった日菜先輩の顔が再びパアっ!と明るくなった。るんっとした気分がどんな気分かは分からないが、きっと俺はるんっとしている筈だ。まあ、今はそんな事よりも荒れてる日菜先輩を止める事に全力をださねば。

 

「日菜先輩、苦しいので離して貰ってもよろしいでしょうか?」

「あっ……えと、ごめんね?」

「いえいえ。珍しい姿が見れてるんって来ましたよ」

「あはは……。じゃあ、そろそろ次のお便り行こっか」

 

 手に持った葉書をトレーディングカードの様に手で捌きながら、彩先輩が面白そうなお便りを探す。葉書の枚数がそれこそトレーディングカードのデッキ並みだったが、まさかあれ全てが俺宛なのだろうか。

 俺は若干怖くなりながら彩先輩の読み上げるお便りの内容を聞いていた。

 

「えっと、ラジオネーム『水色クラゲ』さんからで、『最近羽丘学園に移ったそうですが、調子はどうでしょうか?体調にはくれぐれも気をつけてください。それと、困った事があったらすぐ電話してね』」

「仕送りの荷物に入ってる母ちゃんの手紙みたいなお便りですね。何だかラジオのお便りとは少し違うような……」

「面白いね。ちゃんと声聞かせてあげるんだよ?」

「分かりました」

 

 今度花音先輩(ママ)に電話しよう。俺は心に固く誓った。

 

「じゃあ次のお便りは……あ、これ面白そう。ラジオネーム『きぐるみフェルト』さんより『料理を好きになった理由を教えてください』」

「また話が長くなるものを選びましたねー……」

「でも、これは私も気になるなー。かぐ君がいつから料理してたのか」

「始めたのは小三ぐらいからですね。大切な人のために始めたんですよ。まあ、最初は上手く出来なくて嫌になりましたが」

 

 最初はあこのために、あこだけに喜んでもらえれば良いかと、そんな中途半端な覚悟で俺は料理をしていた。

 

「まあ未経験なんで上手く出来ないのは当たり前なんですが、その時の俺はそれを引きずっちゃいまして。少しだけやさぐれましたねー」

「へえ、やっぱかぐ君でも失敗した経験はあるんだ」

「そりゃそうですよ。そもそも俺は万能型じゃないですし。……話が逸れましたけど、小三で料理のめんどくささを知った俺はですね、一回投げ出しました」

 

 上手くなるまではあこにも振舞わないと言い訳し、自分の失敗から目を逸らし続けたあの頃の自分。今ではいい思い出だ。

 

「ですけどそんな時、幼馴染のパン屋の娘に誘われたんですよ、今度一緒に料理しようって。まあ料理と言ってもほとんどパン作り教室でしたけど」

「それってさあやちゃ──」

「日菜先輩、ラジオですから個人名は伏せてください」

 

 俺の人差し指で日菜先輩のお口にチャックをしておいた。

 

「それで結局一緒に作ったんですけど、二人とも形が歪でちょっと焦げたパンが完成しました。でも、その時は失敗が悔しくなくて、また次に頑張ろうって思えたんです。それからですね、俺が料理を好きになったのは」

「じゃあ、その幼馴染の子のおかげって事?」

 

 日菜先輩の問いに俺は首を縦に振る。きっとあの出来事がなければ俺の料理の腕は酷いものになっていただろう。俺は心の中で沙綾に感謝の気持ちを送った。

 

「あの時見た幼馴染の笑顔は、家宝に等しいものですよ。俺にとっての料理の在り方を示してくれたものですから」

「うわ~ロマンチックだね~日菜ちゃん」

「……そうだね」

 

 コイバナに食いついた女子の様な反応を示す彩先輩に対し、日菜先輩は面白くないと言った様子で返した。

 俺は日菜先輩の態度に疑問を抱くが、それを誤魔化すようにスタッフが本番終了10秒前のカンペを出す。

 

「ありゃ、もう終わりですか。何だかあっという間でしたね」

「楽しんで貰えたなら良かったよ~。また今度来てね、かぐ君」

「はい。時間が空いたら来させて貰いますね。あ、終了三秒前ですけど終わりのあいさつとかは──」

「し~ゆ~Palettesたいむ!ばいばーい!」

 

 最後の最後でグダグダだった。

 




お便りが選ばれた方々一覧

順番に氷川紗夜様、弦巻こころ様、氷川日菜様、松原花音様、奥沢美咲様。

日菜先輩に関しては、星降る→流星・天体観測、あられ祭り→ひな祭り・ひなあられと言った様子で少し捻った名前となっております。竜介君にバレずに好きな子のタイプ聞き出す日菜先輩ほんと策士。るんって来た。やがて星降る。
日菜先輩を振り回したい回だった。

し~ゆ~Palettesたいむ!は『パレットのように色あせず飽きない時間(たくさんの色)を次回も送るよ』と言う意味を込めて作りました。公式に採用されたい(願望)

紗夜先輩の冷凍ポテトでビルドネタをやりたい。出来てるよッ……。

バンドリ二次創作界隈に特撮ネタをやらせる事でブシモと東映両者に利益が出るよう仕向けられてる説を提唱したい。絶対繋がっているから。時期とか絶対狙って──おっと頭の中にキーンキーンという謎の音が……。

し~ゆ~Palettesたいむ!
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