【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
イラストの練習始めたけど才能なさ過ぎて泣きそう。てかもうやめる(三日坊主)
「すまん!ほんっとに申し訳ない!」
「だ、大丈夫だよ!こうして会議はちゃんと開けたわけだし……」
会議用資料を届け終わった後、俺はつぐみにひたすら頭を下げていた。
つぐみは間に合ったから大丈夫と俺を許してくれているが、俺が遅れてしまったせいで会議が昼休み中に終わらず、放課後に持ち越す事になってしまったのだ。穏やかでいられる筈がない。それに、つぐみには生徒会の仕事に加えて家の手伝いとバンド練があるのだ。俺のせいで予定がずれて、つぐみが休めずまた倒れる事になんてなったら、俺はつぐみや皆に合わせる顔がなくなってしまう。
もう謝ってもどうにもならないが、俺は何度も何度もつぐみに謝った。
「も、もう!重く受け止めすぎだよ竜介君。失敗なんて誰にでもあるんだしさ」
「いやでも、ただでさえ忙しいのに……。俺が言えた義理じゃないけどさ、ちゃんと休めてるか?無理してない?」
「大丈夫だよ、もう子供じゃないんだし」
「……そうだったな。すまん」
「だから謝らなくて良いのに……」
つぐみは軽く頬を膨らましながら、俺の謝罪に対して愚痴を吐いた。今の謝罪はつぐみを子供扱いしてしまった事に対してだが、つぐみは気づかなかったようだ。
俺の伝わらない想いは置いておき、今はつぐみにどう償うかを考えなければ。そう考えしばらく頭を捻っていたが、これと言って良い案は出てこなかった。
そんな俺に、つぐみは「しょうがないなぁ……」と呆れながら言ってくる。
「う~ん、そうだな……今度、私に何か料理作ってよ」
「料理?」
「うん!それでこの件はチャラにしてあげる。どう?」
「……分かった」
俺が返すと、つぐみは「ふふっ。よろしくね♪」と慈愛の笑みを向けてきた。考えの至らなかった俺に償いのチャンスを与えてくれる所とかほんとつぐみ天使。
「じゃあ、そろそろチャイムなるから教室戻るね。バイバイ!」
「おう。またな」
手を振りながら去っていくつぐみを見送った後、俺も教室の方に向かった。そんな時、廊下の曲がり角の所で日菜先輩に似た人影が俺の視界に写る。
「日菜先輩?」
駆け足でその曲がり角を見に行ったが、そこには誰もいなかった。俺の気のせいかと思ったが、人影があった場所には『氷川日菜』と刺繍がしてあるハンカチが落ちていた。やはり、さっきの人影は日菜先輩のものだったようだ。
「いたなら声掛けてくれれば……」
今からでも追いかけようかと思ったが、その瞬間に昼休みの終了を知らせるチャイムがなってしまったので、俺は諦めて教室に戻る事にした。
「だぁ〜……何だかなー……」
ガラガラと教室の戸を開けながら、スッキリとしない味の悪さを自分の口の中で転がす。どうしようもないムシャクシャを心の中に溜め込みながら、俺は自分の席へと向かった。
「後で天文部行ってみるか」
日菜先輩のハンカチをポケットにしまい込み、机の中から国語の教科書を出した。
「よーしお前ら席つけー授業始めるぞー」
日直が号令を掛け、皆が先生に礼をする。そしたら席に座って、普通に授業が始まる。
黒板に書き出された数式をノートに写し、その途中で先生に指名されたので、俺は黒板に問題を解きに行った。用が済んだらまた席について、国語の教科書はそのままに、俺はノートに数式を記す。
蘭の方から訝しげな視線が飛んで来たが、今の俺にはそんな些細なことを気にしている余裕がなかった。
◇
雨粒を落とす灰色の雲を見上げ、詰まらない話を繰り返す物理の先生の話をボーっと聞きながら、あたしは考え事をしていた。
──神楽竜介。
その名前と顔を頭の中に思い浮かべる。あたしにとっては初めて出来た男の子の友達で、初めて好きになった人でもある。
竜君は優しくて、料理が出来て、ちょっと女の子よりの顔立ちで、かっこいいと言うより可愛くて、でもそんな点も魅力になってしまう変わった人。彩ちゃんのように面白くて、何度も何度も興味をそそらされる人だ。
あたしは彼が好き。これは胸を張って言える。
でも、竜君には好きな人がいる。でもでも、竜君は他の女の子とも普通に仲が良い。そして、竜君には男の子の友達がいない。
まるで、女の子を食い荒らすために生まれて来た獣の様だ。だけど本人にその気は全く無く、竜君は同性の友達と接する様に女の子達と仲を深める。
嗚呼、面白い。そして分からない。
「どうしたらいいんだろ……」
シャーペンをクルクル回し、これからの過ごし方を考えた。
分からないのは面白い。それは確かだ。だが、この胸の内に広がる焦りは何なのかと、あたしはこれまで幾度となく首を傾げた。一つだけ分かるのは、竜君に忘れられたくないと言うことだけ。
竜君の記憶の中であたしの存在が薄れると、あたしの中に嫌な感覚が芽生えるのだ。さっきも竜君がつぐみちゃんと仲良くしているのを見て“それ”が来た。
忘れられたくなくて、竜君にたくさん自分をアピールした。何度も、何度も、何度も、竜君に忘れないでと警告した。
けど、やっぱりダメだった。
「忘れられたくないな……」
そう言葉を零しながら、薄らと込み上げて来た涙を手で拭い、それを拭くためにハンカチを出そうとポケットに手を伸ばした。
「……あれ?」
ポケットの中にあった筈のハンカチがない。いつの間にか落としていたようだ。
「まあ、いっか」
あれはショッピングモールの年末セールで買った物に自分の名を刺繍しただけの物だ。別に無くなっても構わない。
あたしは制服の裾で涙を拭いた後、もう一度雨雲を見上げた。朝よりも雨足は悪化していた。
◆
夕暮れも来ているのか分からないほど、外は灰色の雲で覆われていた。俺は窓の外を眺めながら、雨雲の様な灰色のゴミを箒で掃く。
「ねえ、竜介。今日あたし達の練習見に来ない?」
「あー悪い。今日は日菜先輩の所に行かなきゃいけないからパスで。悪いな」
「分かった。今度また誘うから」
「おう。サンキュ」
チリトリを床に構える蘭にバレないように、俺はポケットの中にある日菜先輩のハンカチを触った。
この後日菜先輩に会いに行く。正直怖い気持ちもあるが、今話さないと色々拗れそうな気がするのだ。それに、最近日菜先輩は何かに焦りを抱いている。その何かを突き止めないと、あの人は壊れてしまう。そんな気がしてならなかった。
「上手く出来るかな……」
ボソっと、つい弱音を吐いてしまう。
蘭が俺の呟きに疑問の意を持って首を傾げさせたが、蘭なりに何かを察したのか、チリトリを見ながら呟いた。
「別に、一人でそこまで抱え込まなくても良いんじゃない?もっと皆に頼っても良いと思うけど。それに……あ、あたしだっているし……」
「蘭……少し見ない内に素直になったな」
「う、うっさい!」
ほんの少し茶化すと、蘭はチリトリの角で俺の脛を殴った。照れながら怒る蘭の様子が大変愛らしい。
「はぁ……心配して損した気分」
「悪かったって。でも、蘭のおかげで肩の力が抜けたよ。ありがとな」
「……別に」
ふいっと、蘭は顔を逸らした。相変わらず人の善意の言葉に弱いようだ。
蘭のおかげで身も心も軽くなった。これなら何があっても大丈夫だろう。
「よっし掃除終わり。じゃあ、ちょっと日菜先輩の所行ってくるよ」
「うん。行ってらっしゃい」
掃除用具を片付けた後、俺はカバンを持ち天文部の部室を目指して走った。
___
「失礼しまーす」
廊下を走ってやって来た俺は、天文部部室のドアを開ける。今朝、日菜先輩が部室を掃除したと言っていたからか、部屋の中がとても綺麗だった。
部室にはもう日菜先輩が来ており、今は変なアンテナをセッティングしている。宇宙人用の特殊な電波とかを飛ばすのだろうか。
俺が不思議に思いながら見ていると、アンテナ設置に集中していた日菜先輩と目が合った。
「……え、竜君どうしたの?」
「日菜先輩にお届け物です」
俺の姿に気づき、俺の元までやってきた日菜先輩にハンカチを渡す。渡された日菜先輩は感激したような目をしていた。
「わ、わざわざ届けにきてくれたの?」
「はい。ないと困ると思って」
「……うん。ありがと竜君」
「どういたしまして」
俺が笑って返すと、日菜先輩はハンカチをギュッと握った。やはりこのハンカチは日菜先輩にとって大切な物だったようだ。
「もう、このハンカチは捨てられないな」
「なんか言いました?」
「ううん!何でもないよ。あ、お菓子あるけど食べてく?」
「はい。いただきます」
ウキウキした様子の日菜先輩が、椅子とお菓子を準備してくれる。鼻歌を歌いながら、これから始まるティータイムを楽しみにしているようだった。ここ最近様子がおかしかったから心配していたが、そんな物は俺の杞憂だったらしい。
最近不安を煽る回ばっかで読者の皆はメンタルがオーバーフローよな。
次回、動きます。
Roseliaが人気投票一位になったらしい。さすが我が魔王。この結果には竜介君もニッコリ。
……
祝えッ!!!