【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第43奏 ──魔王、降臨。

 二時間近く日菜先輩を必死に介抱した後、家に送り届けて帰って来た。その時の日菜先輩は酷くやつれていて、とてもじゃないが見ていられない状態だったのを覚えている。

 

「ただいまー」

「おかえりりゅう兄。ご飯出来てるよ?」

「おう。サンキュ」

 

 何とか平静を装いながら、出迎えてくれたあこに返事をする。そんな俺がおかしく見えたのか、あこはずっと俺の事を訝しんだ目で見ていた。

 あこの視線は一旦置いておき、俺はリビングへと向かう。そこには夕飯のメニューであるチャーハンと卵の中華スープが並べられていた。

 

「これ、あこが作ったのか?」

「そ、そうだけど。変だったかな?」

「いや、よく出来てる」

 

 この間教えたチャーハンと付け合せのセットを早速使ってくれたようだ。鼻腔を燻り食欲をそそられる。出来は上々らしかった。

 

「食べてもいいか?」

「良いけど。その前に一つだけ」

「ん、なんだ?」

 

 食べても良いと言われたので実食しようとしたら待ったを掛けられた。焦らしプレイとは中々レベルの高い事を──とふざけたかったが、あこが真剣な面持ちでこちらを見てきたのでそれをやめた。

 

「りゅう兄、学校で何かあったでしょ」

 

 そしてあこの口から問われたのは、案の定今日起こった学校での事だった。

 

「あこに隠し事は出来ないか」

「何年も一緒にいるからね」

「はは、そうか。いやー参った参った」

「それで、何があったの?」

 

 どうやらお手上げらしい。出来れば一人で片付けたいと思っていたのだが、その願いは星の藻屑になってしまったらしい。ただ、やはり俺の拗れた問題にあこを巻き込むのは話が違うと思うのだ。

 

「今日さ、生徒会で使う資料をつぐみに届けなきゃいけなかったんだけどな、俺がうっかりして届けおくれちゃったんだよ。それで、つぐみに迷惑掛けちまって……」

「そっか」

 

 一か八かで嘘を発し、それが通った。

 あこの優しい微笑みが胸に刺さる。

 

「そう言うわけで、ちょっと傷心中なんだ。ほら、つぐみって一回過労で倒れた事あるだろ?俺のせいでまた倒れたらって思ったら、つい暗い方向に考えちゃって」

「そこまで深く考えなくても大丈夫だよ」

「そうかな?」

 

 俺が尋ねる演技をすると、あこはコクリと首を縦に振った。

 

「きっと大丈夫だよ」

 

 諭すように、あやすように、あこは笑う。

 あこの優しさという毒針が、俺の心を蝕んでいた。何の比喩でもなく胸が痛い。

 

「……そうか、そうだよな。悪い。少し過敏になってたみたいだ。ありがとな」

「うん。どういたしまして。じゃあ、ご飯食べよっか」

「そうだな。いただきます」

「いただきます」

 

 お互いに両手を合わせて食事の挨拶をした。俺は待ちに待ったあこ特製チャーハンとスープを口に運ぶ。

 

「……美味い」

「ほんと?良かった~」

 

 喜ぶあこの姿を横目に、俺はチャーハンをかき込む。香ばしい上に粒はパラパラ、なのに水分は残っておりふっくらとしている。スープの方はと言うと、なんの捻りもない俺が教えた通りの物だったが、何故か俺のより美味しくなっていた。

 総評的に言うと、俺が作るより上手に出来ている。

 

「なんだろ、悔しい……」

 

 料理なら誰にも負けないと思っていたのだが、どうやら俺は井の中の蛙どころか虫かごの中のカブトムシ並に思い上がっていたようだ。

 俺は明日からの修行の日々に向け、悔しさと一緒に料理を一気食いする。そして噎せた。

 

「ゲフッ、ゲフッ……」

 

 あこに背中をさすられる。何だかここ最近情けない姿を見せてばかりだ。たるんでいるのだろうか。気を引き締めなければならない。

 俺は自分の頬を二回叩いて気合いを入れ直した。こんな有様じゃ、日菜先輩と仲直りなんて夢のまた夢だ。

 

「りゅう兄、大丈夫?」

「ああ、心配ない。少しつっかえただけだ」

 

 心配するあこを他所にして、俺は続けてチャーハンをがっついた。本当はもっと味わって食べたかったが、今は気分は酷く沈んでいたのでそれどころではなかった。

 そうして夕飯にがっつくこと十分。俺は無事にあこの特製手料理を食べ終えた。

 

「ご馳走様。美味しかった」

「うん。お粗末様」

「じゃあ俺、風呂の準備してくるから」

 

 食器を水につけた後、俺は風呂場に向かうため部屋の出口まで歩みを進めた。

 

 

「待って、りゅう兄」

 

 

 しかし、そこであこに呼び止められてしまう。

 

「……どうした?」

「正座」

 

 ニッコリと微笑み、あこは俺に正座を強要した。

 

「あの、何故正座なのでしょうか。……なんか怒ってる?」

「良いから正座」

「あ、はい」

 

 言われるがまま、俺はあこの前で正座をする。そのまま見上げると、ドMにはたまんないであろう目で俺を見下ろすあこの姿が見えた。

 

 なんとなく、本当に何となくだが、あこの不機嫌の理由が理解出来たかもしれない。

 おそらくだが、あこは最初から勘づいていたのだ。俺がどうしようもない程巨大な問題を抱えている事を。先程話したつぐみとの一件の事が、ただのカモフラージュだったと言う事も。全部が全部、あこには筒抜けだったのだ。

 まさか、こんな早い段階で気づかれるとは思わなかった。

 

「……一応聞くけど、いつ気付いた」

「最初からずっと。りゅう兄分かりやすいから」

「そ、そうですか……」

 

 威圧的で、誰にも物を言わせない王の瞳が俺を写す。

 脂汗が背中に伝い、黒板を爪で引っ掻く様な嫌な感覚が走った。

 

「なんでちゃんと話してくれなかったの?」

「いや、あのですね、隠してたわけでは無いんですよ。なんと言うか、あこには言いにくくてですね」

「……それって、あこが子供だから?」

「いや、そうじゃなくて……」

 

 必死に言葉を紡ごうと口をパクパクさせるが、何も言葉は出てこなかった。好きな人の前で、他の女性にキスされましたなんて、どう口にしろというのか。

 俺がそうしてずっと口ごもっていると、痺れを切らしたのかあこが俺の眼前まで迫って来た。鼻の先と鼻の先が触れ合いそうだ。

 

「あ、あこ?何を──」

「あこがもう子供じゃないって事、りゅう兄に教えてあげようかなって思って」

「い、いや、そんな事しなくても……」

 

 真っ直ぐと見据えたあこの目から、本気で怒っている事が伝わって来る。このまま黙っていたら身体に直接聞かれそうだった。

 

「……分かった。話す、話すよ。だから武力行使だけはやめてくれ」

「うん。それで、何があったの?」

「はぁ……。実はさ、今日の放課後、日菜先輩に告白されたんだ。キスもされて」

「……ふーん」

 

 俺は意を決してあこに事情を話してみるが、当の本人は何とも詰まらなそうな顔をしていた。

 

「日菜先輩の方もキスしたこと事に責任を感じてるみたいで、俺もどうしたら良いかよく分からなくてな」

 

 日菜先輩は俺を理解したいけど出来ないと言っていた。それは日菜先輩の数少ない苦手分野である、相手の存在の掌握から来るものだろう。今まで他人に関心を持たなかったが故の悲劇、とでも言えば良いだろうか。

 

「あこ、俺どうすれば良いかな?」

「……少なくとも、キスについてはそこまで責任を感じなくて良いと思う」

「え、何でだ?」

「だって、りゅう兄のファーストキスはあこが貰ってるもん」

 

 悠久の静寂が訪れた。

 今魔王様の口からとんでもない事実が言い放たれた気がする。

 

「……俺、あことキスした事があるのか?」

「うん。あこが小学五年生の時に、頭突きの勢いに任せて」

「あー待て、少し思い出して来た」

 

 あこに言われ、俺も小学六年生の時を思い出した。あの時は確か、あこが突然プロレスごっこを吹っ掛けて来て、その時の突進で偶然マウストゥマウスが出来上がってしまったのだ。

 

「よく覚えてたな。そんな昔の事」

「りゅう兄との大切な思い出だからね」

「あこ……」

 

 今日のあこは酷くイケメンさんだった。それと、ほんの少し涙が出てきた。

 

「ありがとな。おかげで少し楽になったよ」

「あこは闇のドラマーだかね。こんなのドラムのウォーミングアップより簡単だよ」

「はは。かっこいい事言ってくれる」

「にひひ♪」

 

 あこが軽快に笑う。

 ほんの少し、されど大きな一歩。あこのおかげで解決の糸口が見えた気がした。




当小説でお子様系メインヒロインの役割を担っていたあこ様がいつの間にか嫁力と魔王力をあげていた。いけない。竜介の乙女力が薄れてしまう。

【速報】人気バンドRoseliaドラマーの宇田川あこが結婚。相手はCircle新人スタッフか。

新人スタッフとか言う最強ポジ。百合に男入れても怒られない。やったぜ。
バンドリ世界に同年代の男一人ぶっこむだけでこの有様よ。ギャルげー作れそう。総勢二十数名とかやばいな。vita版の大図書館の羊飼いよりも多いじゃん。
ギャルげーはいいぞ。徹夜でやるギャルげー程美味しい物はない。
そもそも僕をこんな拗らせ恋愛脳にした原因がギャルげーなんだよなぁ。恋愛さえ絡めばSFでも推理ものでもスポコンものでも何でも書ける気がする。不思議。スポコンって何の略なの?スポーツコンバット?デデンデンデデン
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