【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
大体一話三千文字で書いてるから×10して……30000文字?やべぇよやべぇよ。
「神楽君に宇田川さんも、こんな所で何をしているんですか。学校は……」
「紗夜先輩こそ、なんでここに」
紗夜先輩とばったりエンカウントしてしまった。まだ午前中……と言うより、今日は平日。何故ショッピングモールに紗夜先輩がいるのだろうか。
俺がしばらく考えていると、紗夜先輩がそれを遮るように口を開く。
「私は日菜のためにお菓子などを買いに来ただけです」
「ああ、じゃあ俺と同じですか」
「……神楽君は関係ないのでは?」
「それがあるんですよ。てか、日菜先輩が学校を休んだ原因が俺ですから」
学校では風邪の可能性も考えてリサ姉に欠席理由を聞いたが、日菜先輩がリサ姉に何も話してないようだった。なので十中八九俺が原因と言えるだろう。
「……日菜に、何かしたんですか?」
スーパーのレジ袋にみかんゼリーを詰めている俺を、紗夜先輩は鋭い氷の目で見てくる。
「どちらかと言えばされた側ですが、そうですね……喧嘩……的な物と言いますか、そんな感じです」
「日菜と神楽君が、喧嘩?日菜が家族以外とですか……信じられないわ」
「まあ、喧嘩的な物、ですからね」
痴情のもつれと言った正しいような気がするが、今の俺にとってそんな事はどうでも良かった。肝心なのは、日菜先輩とどうやって仲を戻すかだからだ。
「……今日会いに行くのは辞めた方が良いか。紗夜先輩、日菜先輩に『明日会いに行きます』って伝えといてください。あと、これをお願いします」
俺は紗夜先輩にみかんゼリーが入った袋を渡した。
「すみません。日菜先輩をお願いします」
「日菜は家族ですので、むしろこちらからお願いしたいと……いえ、分かりました。後は任せてください」
「ありがとうございます」
やはり、傷を負ったら家族に頼るのが一番良いのだろうか。
紗夜先輩にお見舞いの品を託した後、俺はそんな事を考えながらショッピングモールを出た。
「ねえねえ、りゅう兄」
「ん、どうした?」
「りゅう兄は酷い事された訳じゃないんだよね?大丈夫なんだよね?」
ショッピングモール前の、赤色の歩行者信号が変わるのを待っていると、あこがそんな事を尋ねて来た。とても不安そうな目で、あこは強く俺の手を握ってくる。
「大丈夫、別に殴られたりとかはしてないよ。急にどうしたんだ?」
「だってりゅう兄、辛そうな顔してるから」
「そうか?……まあ、そうなのかもな。でもどちらかと言うと──」
告白とキスをされて、それに責任を感じた日菜先輩が俺を避けてしまっている。
俺の中で、その現状が酷くショックで、心の中に穴が空いてしまっているのだ。このどうしようもなく視界が黒ずんでいくような感覚は、去年爺ちゃんが死んだ時の事を思い出させる。
「なんか、ちょっと寂しいなって思ってさ」
「……寂しい?」
家族、友人が離れていく感覚はいつになっても慣れない。
俺は胸の穴に鍵をかけるように深呼吸を一度した後、不思議そうな顔をしているあこの頭を撫でた。あこはあまり満足していない様子だ。
◇
──あーあ……ズル休みしちゃったな。
窓もカーテンも締め切った自室で、デスクの小電灯に照らされながら、ベッドに寝そべったあたしはそんな事を思う。
竜君に告白をして、キスをして、それから避けるように学校を休んだ。学校を休んだあたしを、竜君はどう思うのだろう。
きっと嫌われてるなと思いながら、あたしはその事実を忘れようとするように頭を左右に振る。今日は一日竜君の事を忘れて、明日しっかり謝ろうと決めたのだ。今はしっかり休まなければいけない。
「あたしに出来るかな……」
こんな事今までになかった。やはり、この分からないは怖い。普段なら未知を面白がるのだが、これだけはどうしても怖かった。
何となく、小学生の時の事を思い出した。簡単な事が出来ないあの人達を不思議がって、それで皆が離れていった時の事。別にあの人達はるんって来なかったら別に良い。けれど、離れる人が竜君になると話が違って来る。こころちゃんや彩ちゃんとも違う面白い人。そして、大切な人。絶対に彼だけはなくしたくない。
何度も何度も頭の中で、竜君への想いを確かめた。そんな風にして過ごしていると、部屋の入り口からノックをする音が聞こえてくる。どうやらお姉ちゃんが帰ってきたようだった。
「日菜、入るわよ」
「うん、いいよー」
あたしが返事をすると、部屋のドアがガチャリと開いた。
「具合はどう?一応頼まれた物は全部買ってきたわ」
「うん、ありがとう。……あれ、みかんゼリーなんて頼んだっけ」
ジュースやお菓子の中に、頼んだ覚えのないゼリーが一つ。しかも、それだけ袋が別だった。
あたしが不思議にゼリーを見つめていると、お姉ちゃんが少し困った顔で言ってきた。
「それ、神楽君からよ」
その一言に、自分の身体が固まったのが分かった。
「その反応、本当に神楽君と喧嘩したのね。明日ちゃんと仲直りするのよ?」
「うん。まあ、喧嘩とは違うけど……」
どうやら竜君はお姉ちゃんに現状を“喧嘩”と伝えていたようだ。真実を伝えてくれても良かったけど、気を使ってくれたのだろうか。
「一応聞くけど、神楽君に何かされたりはしてないわよね?本人は何もしてないって言ってたけど、大丈夫だったの?」
「お姉ちゃんは心配しすぎ。それに何かしちゃったのはあたしの方だから、竜君は悪くないよ」
あたしが勝手に想いを拗らせて、告白で崩壊して、そして口付けをしたのだ。全部が全部、自分が悪い。だから、竜君を責めないで欲しかった。
「あたしがね、竜君にキスしちゃったんだ。それで、頭の中こんがらがっちゃってさ」
「……そう」
思い切って打ち明けたあたしの言葉に、お姉ちゃんは数秒置いてから一言返事をするだけだった。お姉ちゃんも竜君が好きな筈なのに、どうして何も言わないのだろう。
もし、あたしを気遣っての事なら、そんな物捨てて早くぶって欲しかった。
「……怒らないの?お姉ちゃん」
「どうして?」
「だって、お姉ちゃんも竜君が好きなのに……」
「ああ、その事ね──」
何と言うべきか、そんな表情でお姉ちゃんは黙り込んだ。
「神楽君の事は、もう半分諦めてるわ。それにね、最近はあの人が可愛く見えて来るのよ。不思議なものでね、以前は喉から手が出る程欲しかったのに、今では宇田川さんとの仲を応援してるの」
「そうなんだ。……でも、あたしはお姉ちゃんみたいにはなれないな。あたしは、竜君に傍にいて欲しい。竜君が傍にいなきゃ嫌だ」
あたしはあたしを主張した。お姉ちゃんみたいにはなれないから。ワガママだけど、こうしないとあたしがあたしでいられないから。
「日菜は、神楽君に傍にいて欲しいの?」
「うん」
「それは、恋人として?それとも友達としてかしら?」
「そんなの当然──」
当然……その先の言葉が出てこなかった。
あたしは、竜君にどうして欲しいんだろう。そんな疑問が頭の隅に浮かんで来た。
「それで、日菜はどっちなの?」
「……わかんない。なんでか分かんないけど、分かんない」
竜君の事は好きだ。一緒にたくさん思い出を作っていきたいし、誰にも負けない思い出を積み重ねたい。
その願いは確かだ。確かなのだが、どうしてか、その行動をためらいなく実行出来ない。今は何処かに後ろめたさを感じてしまう。
「もしかしたら、神楽君に想いを告げた事で、気持ちに一段落ついたんじゃないかしら?」
「気持ちに……一段落」
「そう。今の日菜には神楽君と宇田川さんがどう見えてるの?」
そう聞かれて、あたしは二人の事を思い起こした。
とてもお似合いで、付き合い始めても心置きなく祝福出来る。そんな気がした。
けれど、やはりあたしには彼は必要だった。
「……ちょっと良いなって思ったけど、ダメ。あこちゃんだけの竜君になっちゃうのがやだ。あたしにも構ってくれなきゃやだ。あたしの所にもいなきゃやだ」
「日菜は寂しがり屋ね」
「そう、なのかな……?」
仮にそうだとするのならば、あたしは竜君に構って欲しかっただけなのだろうか。
思い出が欲しいのも、寂しさを紛らわしたかったからなのだろうか。
もしかしたら、小学校の時に友達がいなかった寂しさのツケが回ってきただけだったのだろうか。
あたしはしばらく考えてみたが、良く分からなかった。
「まあ何にせよ、神楽君とは明日しっかり話し合って来なさい。じゃなきゃ友達にも戻れなくなるわよ?」
「……竜君に嫌われてないかな?」
「あの人はそんな簡単に人を嫌いになれないわ。むしろ、日菜と波長が合うかもしれないわね」
「なんで?」
あたしが尋ねると、お姉ちゃんは可愛い子供を見るような顔で言った。
「神楽君も、結構な寂しがり屋だからよ」
それが、お姉ちゃんの答えだった。竜君が寂しがり屋とはどう言う事だろう。彼はどちらかと言えば一人で先を走っていくタイプだと思っていたのだが。
あたしは再び考え込んだけれど、その答えは出てこなかった。
そんなあたしに向って、お姉ちゃんが「そう言えば」と口を挟んだ。
「神楽君が、明日会いに行くと言ってたわよ」
「えっ……」
あたしのタイミングで行きたかったのだが……どうやら明日は騒がしい一日になりそうだ。
ほとんど登場してないのに魔王様がお強い。これはまた魔王様未登場回を数話作るべきか……。
日菜ちゃん編もうちょっとドロドロするかと思ってたけど、案外可愛い青春劇で収まりそうで良かった。こう言うので良いんだよ。ラブコメの波動を感じる。でも病みヒロイン出したい(手のひらフライ返し)