【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

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第4奏 有咲の家族は幼なじみ

 おたえとの放課後デートのあと、道中で香澄を拾い有咲の家に訪れた。

 玄関は既に解錠済みだったので中に入ると、仁王立ちで怒り顔の有咲がいた。

 有咲の機嫌なんか知らんとばかりに香澄は有咲に抱きつくが、有咲は微動だにせずこちらを見続けている。

 

「なあ、竜介」

「どうした?あと、香澄引き離さなくて良いのか?」

「今は良い。それよりこれについて説明して貰えるか?」

「?」

 

 そう言って有咲はスマホを取り出し、某SNSアプリのとある投稿を見せて来る。

 そこには『バカップル爆誕www』というふざけた文面と共に、俺とおたえのコロッケゲームの写真が載せてあった。

 情報化社会反対。プライバシーを保護しろ。

 

「すっげー絵面。世の中にはぶっとんだ事するやつがいるんだな」

「お前だよ。てかさ、これはないんじゃね?」

 

 家に入った時から分かっていたが、有咲はかなり怒っているらしい。

 誤解を解こうとなんとか弁明をするが、有咲の表情は一向に変わる気配が無い。

 何故俺は、浮気がバレてその言い訳をする旦那みたいな状況になっているのだろうか。

 

「いやね?最初はただおたえにあーんして貰うだけの筈だったんだよ」

「いやもうそこでアウトじゃね?」

「え?友達同士でのあーんは普通だろ?俺もたまに沙綾にやるぞ?」

「普通しねーよ」

 

 頭を抱え、ため息を吐きながら言う有咲。

 友希那先輩とリサ姉、蘭モカもやってたので、てっきり普通かと思ってた。

 

「私はさ、たまにお前の本命が本当にあこちゃんなのか分からなくなる時があるよ…。好きな人がいるなら、他の女の人との付き合い方を考えたらどうだ?」

「それは出来ない。俺はあこが好きだが、それと同じくらい友達が好きだからな。俺にとっては皆大切なんだよ。もちろん有咲のことだってな」

「……そう言う言い方はずりーよ…」

「そうか?」

 

 何がずるいのかはよく分からないが、強ばっていた有咲の表情が緩くなってきたので一応お許しは貰えたみたいだ。

 

「まあ、俺のせいで有咲が不快な思いをして怒らせてしまったなら謝る。すまなかった」

「え?い、いや…不快とかそんな大袈裟な事じゃ無かったし…。てか別に怒ってたわけじゃ……少し妬いただけっつーか…その…」

「え、妬いた?」

「っ!…違う!今の無し、今の無しだ!忘れろ!」

「お、おう…」

 

 言葉のあやだったのか、耳を赤くし怒鳴りながら俺の眼前まで詰め寄ってくる。

 香澄に抱きつかれたままよく移動出来るな、と素直に感心してしまった。

 それと、俺の許容範囲に女の子が入ってくるとつい気恥ずかしくなってしまうので少し離れて欲しい。

 

「有咲…近い」

「…わ、悪い」

 

 距離の近さを指摘すると、有咲は即座に俺から離れる。

 お互いの間に気まずい沈黙が訪れ、目を合わせるのも気まずかった。

 しかし、そんな空間を壊すかのように有咲の腰元あたりから「うぐっ…えぐっ……」と涙を啜る音が聞こえてくる。

 

「ありざああぁぁ…!」

「うお、香澄!?って、どうしてそんな泣いてんだ!?」

「あー…構って貰えないから泣きだしちゃったか」

「子供か!?」

 

 有咲の家に入ってからずっと香澄は有咲に抱き着いていたが、いつもの様な反応が帰ってこなかったからか、それとも単純に無視されたのが嫌だったのか…取り敢えず香澄は寂しさで泣き出した。

 中々の幼児退行っぷりである。

 

 

「香澄〜パパのところにおいで〜」

「やだ!有咲が良い!」

「……夕飯の準備するわ。台所借りるな」

「めっちゃ傷ついてんじゃん…」

 

 別に泣いてなんかいない。ただ目から汗が出てきているだけだ。

 

「てか竜介、香澄の分の材料あんのか?足りなかったら冷蔵庫から使っちまっていいからな?」

「いや、多めに買ってきたから大丈夫だと思う。あ、婆ちゃんって卵とかにアレルギーある?」

「今日婆ちゃん高校の同窓会行ってて帰ってこねーから三人分で大丈夫だ」

「わかった」

 

 相変わらず有咲の婆ちゃんは元気そうで何よりだ。

 有咲のご両親が亡くなって以来、有咲の心の拠り所は婆ちゃんだけだからどうか長生きして欲しい。

 香澄のように寂しさで有咲が豹変する、なんて事にならないといいが…。

 

「有咲、今日俺泊まってこっか?」

「へ?……きゅ、急にどうしたんだよ」

「いやだって、今日お前夜一人だろ?寂しくない?」

「お前は私の親か」

 

 ぷふ、っと笑いながら有咲は言う。

 心配性が過ぎただろうか。

 そんな事を思いながら、俺は料理を始める

 

「有咲、お腹空いた!」

「お、香澄が復活した。オムライスで良いか?」

「うん。りゅう君のご飯なら何でも美味しいからオッケーだよ!」

 

 香澄がニコニコ笑顔で親指を立てる。

 もう少し幼児退行した可愛らしい香澄を見ていたかったが、どうやら次回にお預けらしい。

 そんなやり取りを香澄としていると、有咲が羨ましそうな顔をしながら香澄に尋ねる。

 

「なあ、香澄…お前、よく竜介の所に飯食いに行ってんのか?」

「ん〜私が行くと言うより、りゅう君の方から家に来てる…のかな?」

「最近は色んな家に通い妻状態だったからな。自分の家でご飯食べてないや」

「お前、そんな事してお金大丈夫なのか?」

「俺が何のためにCircleで手伝いしてると思ってんの?」

 

 さすがに小遣いだけで約週三の夕飯作りは回せない。

 なので仕方なく賃金ありの手伝いをCircleでしている。

 いつか、宝くじが当たったりしないだろうか。

 

「え、お前バイトしてたの?賃金受け取らずに山吹ベーカリー出禁になったお前が?」

「バイトじゃない手伝いだ。そこ間違えないように」

「有咲、りゅう君はしゃちく?だから」

「いや、社畜でも給料は普通に貰ってるぞ?」

 

 俺だって、労働に見合った額ならちゃんと受け取るよ?山吹ベーカリーを除いて。

 でも、いつもまりなさんは時給を二百円ぐらい上乗せした額を渡してくるのだ。

 本当に訳が分からない。

 

「俺の事贔屓にしてくれるのは嬉しいけどさ、やっぱちゃんとする所はちゃんとして欲しいじゃん?」

「それ、ただお前が有能なだけなんじゃね?」

「それはない。あと単純に、俺なんかにお金払うの持ったいねーなって思って」

「急なネガティブ発言…」

 

 フライパンの上で卵をかき混ぜながら、ダイニングテーブルで待っている有咲とそんな会話をする。

 香澄が時々興味深そうにこちらの様子を見てくるが、決して手伝ったりはしてくれない。

 まあ、香澄に手伝わしたら多分この家のガスコンロを使い物にならなくするので頼んでもやらせないけど。

 

「なんて言ってる間にオムライス完成〜。ほれケチャップ」

「おお〜ふわとろオムライスだ!りゅう君すごい!」

「いやー…それほどでも、あるかな?」

「うっざ」

「ひっで」

 

 頭を掻くポーズをしながら言う俺に、有咲は毒針のような言葉を言い放ってくる。

 調子に乗ったのは悪かったから心に来る一言を飛ばしてくるのはやめて欲しい。

 

「りゅう君りゅう君、食べて良い?」

 

 待ちきれない様子で、目の奥をキラキラさせながら香澄は言った。

 

「ああ、どうぞ召し上がれ」

「やった!いただきます!」

 

 香澄に続き有咲も「いただきます」と食事の挨拶を済ませ、二人とも同じタイミングでオムライスを口に運ぶ。

 そして、「うまー!」と香澄は叫び声をあげ、有咲も口に合っていたのか黙々と食べ続けていた。

 二人の食べる速度は思った以上に速く、ものの二十分前後で食べ終えてしまう。

 ここまで美味そうに食べて貰えるなら作った甲斐があると言うもの。

 その後、香澄と有咲の食べ終わった食器を片付け、暇つぶしにテレビを見ながらゴロゴロしていた。

 皆で雑談したり、テレビを見ながら笑い合ったりする平和な一時。

 だが、ふと有咲が何かに気づいた様子で俺と香澄に話しかけて来る。

 

「……お前ら、家の方大丈夫なのか?」

「俺の方は大丈夫だ。あ、そう言えば香澄、さっき明日香から夕飯だから帰ってこいって言うメールが来たぞ?」

「え、そんなメール私の所には来てないよ?返信どうしよう…」

「返事ならさっきしたから、そろそろ迎えに来ると思うぞ?」

 

 と、俺が言った瞬間にインターホンがなる音が聞こえる。

 急いで出ると、やはりそこには香澄の妹の戸山明日香がいた。

 

「あ、こんばんは先輩。お姉ちゃんの迎えに来たんですけど…」

「おう、ちょっと待ってな。香澄ー!明日香が迎えに来たぞー!」

「はーい!」

 

 元気の良い返事と共に学生カバンを掲げた香澄がドタドタと走ってくる。

 そんな香澄を見て、ため息を吐きながら呆れる明日香。

 しかし、その明日香の表情には安堵の気持ちも隠れていた。

 やはり口では厳しく接していても、心は家族を心配しているようだ。

 

「すみません、姉がお世話になりました」

「いやいや気にしないで。というか俺が引っ張って来たようなもんだし、今回はあんま香澄に厳しくしないでやってくれ。それと、香澄にはもう夕飯食わせちまったから親御さんに言っといてくれると助かる」

「むっ…お姉ちゃんだけずるいですね。羨ましいなあ〜」

 

 チラ、チラ、と期待を込めた眼差しで明日香は俺を見つめて来た。

 香澄より明日香の方がお姉ちゃん属性を持っているのは気の所為だと思いたい。

 

「はいはい…今度明日香の好きなもん作ってやるから、それで勘弁してくれ」

「やった!じゃあ、それで勘弁してあげます。…っと、そろそろ行かなきゃ。では先輩、また今度」

「またなー」

「りゅう君ばいばーい」

「おう」

 

 小さくお辞儀をして先を歩く明日香に対し、香澄は大きく手を振りながら妹の後を歩く。

 まるで親子のようだ。

 それと、二人には申し訳ないが今の今まで保育園のお迎えを幻視していた。

 明日香と香澄を見送った後、有咲の元に戻る。

 しかし、戻って来た俺を見る有咲の顔は心底不思議と言った様子だった。

 

「なんでいんの?」

「え、酷くない?」

「あ、いや…てっきり香澄と一緒に帰ったかと思ったからつい」

「ああ、そういう事か…良かった。あ、そうだ…今日俺ここに泊まってくから」

「はっ?」

 

 何言ってんのお前?とでも言いたげな目で有咲に見られる。

 

「いや、だって今日お前一人なんだろ?だったらやっぱ俺が泊まった方が良いかなって…」

「もう子供じゃねーし、そこまでしなくて良いよ…」

「…まさか、反抗期か……」

「あっ?」

 

 何言ってんのお前?的な目を再び向けられる。

 いやだって昔は「りゅうすけ…寂しいから一緒に寝て?」と、ぬいぐるみ抱きしめながら上目遣いで甘えて来てたし。

 なるほど…十年ちょっとで人は大分変わってしまうらしい。

 

「パパ超悲しいわ〜…」

「いや、お前は私の親じゃねー」

「そんな娘に育てた覚えはありません!」

「だから保護者面をやめろー!」

 

 うがー!と声をあげながら俺に突っ掛かろうとする有咲。

 そこまで嫌がられるとは思ってなかったので少しショックだった。

 あの頃の素直で可愛い有咲をもう見れないとなると、途端に寂しさが込み上げてくる。

 

「わかったわかった、子供扱いして悪かったよ。有咲のお望み通り今日はもう帰るから、もう機嫌直してくれ」

 

 カバンを背負い、居間から玄関に続くドアへと足を運ばせる。

 しかし、歩き始めてすぐに有咲に制服の裾を掴まれ、歩みを止められてしまった。

 まったく…有咲も素直じゃない。

 

「別に…泊まっちゃダメだなんて言ってないだろ……」

「でも、有咲はもう子供じゃないんだろ?」

「うぐっ……確かにそうだけど、私もちょっと期待してたと言うか…その…」

 

 有咲は気まずそうにモジモジしながら、頑張って「泊まっていけ」の一言を言おうとしていた。

 素直に有咲が自分の意思を伝えられるよう、俺も心を鬼にしてジッと待ち続ける。

 心の鬼にしてとか言ってるが、二人でいる時ぐらい素直に接して欲しいという俺のワガママも実は混ざっていたり。

 

「あのな、竜介」

「おう」

「…きょ、今日は…泊まっていって欲しい。その……一人は寂しいから…そ、そばに居て欲しいな?…なんて」

「……」

「竜介?」

 

 俺は硬まってしまった。

 有咲には「ここに泊まれ」と一言言って欲しいだけだった。

 しかし、俺の期待を良い意味で裏切り「寂しいから一緒にいて?」と上目遣いでの懇願を付けてきた。

 まるで、昔の有咲が帰って乗り移ったかのようだ。

 正直に言うと、この上なく可愛かった。本当、あこと張り合えるぐらいの可愛さだ。

 そして、この発言を聞いた瞬間俺の中で何かが切れる音がした。

 ツー、と何かが上唇を伝い俺の足元に落ちていき、それに合わせて有咲から慌てたような声が聞こえる。

 

「ちょま!?竜介、鼻血出てる!」

「え?嘘?あ、ほんとだ…。悪い有咲、床汚しちまった」

「気にすんな。それよりティッシュどこやったっけっなー…」

 

 切れたのは鼻の中の血管だったか。

 一瞬自分の理性の糸が切れたかと思ったが、勘違いで良かった。

 まだまだ手のかかる子供のような奴だと思っていたが、どうやら認識を改める必要があるらしい。

 有咲は一人の女性としてかなり魅力がある。

 あこがカッコイイの魔王だとするなら、きっと有咲はカワイイの魔王になれるだろう。

 魔王同士で争いが起こったらどうしようか…。

 ただ、今はまだ胸の内にある父性のようなモノで有咲を見守っていたい。

 父さんの意思は強いのだ。

 

「やっぱ俺、有咲のパパだわ」

「いや、だからお前は私の親じゃねー……まあ、家族にならなってやっても良いけど…」

「つまり養子?」

「そうじゃねーよ。アホ竜介…」

「アホとは失敬な」

 

 鼻血を出していた俺を心配してくれていた有咲がプクーっと頬を膨らます。

 先程まで照れながら嬉しそうにしてのに、どうして急に不機嫌になるのか。

 乙女心と秋の空とはよく言ったものだ。

 

 

 

 




有咲のヒロイン力が高すぎてメインヒロインの座を乗っ取られそうなの…。
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