【完結】いちばん小さな大魔王!   作:コントラポストは全てを解決する

52 / 95
ローソンで我が魔王をお迎え致しました。可愛い。


第49奏 ぶっちゃけ事情in奥沢家

 燐子の家から出て数分。素直に帰るにしてはまだ少し早いのではないかと思い、俺は美咲の家にやって来てた。羊毛フェルトの道具を貸して貰い、何度も針で羊毛を刺す。そうして段々羊毛が固まって来た頃、美咲が何となしに聞いて来た。

 

「竜介ってさ、生理用品どうしてるの?」

「俺は男だ」

 

 いくら俺が女よりの顔立ちだからと言って、身体の機能まで女の子にするのはあんまりじゃないかと俺は美咲に目で訴える。

 

「あー、ごめん……。竜介ってさ、あこの生理用品どうしてるのかなって」

「お前……さすがにモラルとかデリカシーの無さとかを疑うぞ……」

「いやーずっと気になっちゃってさー。夜も八時間しか寝れなくて……」

「十分じゃねえか」

 

 自分不眠極めてます顔で美咲は語るが、睡眠時間は快調そのものだった。

 美咲のキャラがブレッブレだが、疲れているのだろうか。それとも本当に寝不足なのか。

 いつもの二倍の速度で羊毛に針を指す美咲を見ながら、俺は彼女の体調を探った。

 

「それで実際のとこはどうなの?」

「あ、続けるのね……。まあ、言うとすれば、俺は何も知らん。そこら辺はあこにお金渡して任せてるから」

「へえ。毎月いくら渡してるの?」

「えっと、一万円くらいかなー」

 

 俺がそう言うと、美咲が大きく目を見開いた。

 

「渡しすぎじゃない?あたし使っても七百円とかだよ?」

「でも、女の人は化粧とかするだろ。それで飛んでってるんじゃないのか」

「え、あこって化粧するの?」

「……そう言えばしないな」

 

 朝起きて顔を洗い、その直後には牛乳で髭を付ける。そしてそのまま学校に行こうとするのがあこだ。この雑な男らしさは巴に似た物を感じる。

 

「ドラムのメンテ代とかは親が出してくれている筈だし……後はゲーム代か」

「ゲーム代に毎月だいたい九千五百円飛ばしてるの?嘘でしょ……」

「まあ俺のバイト代から出してるし、仕送りに手は出してないからセーフって事で」

「いやいやいや。そう言う事じゃないでしょ」

 

 美咲が大袈裟に顔の前で手を振りながら、事の異常性を俺に訴え掛けて来る。

 

「自分が稼いだお金を勝手に使われてるって事でしょ?悪女じゃん」

「でも使い道は自由で良いって言ってあるし。何も問題はない」

「いやー……それにしても一万はやり過ぎでしょ……」

「うるさいなー。ひとんちの家庭事情なんだから別に良いだろ」

 

 俺は言うが、その後美咲にあこは娘でもなければ家族でもないでしょと論破されてしまった。もう放っておいて欲しい。今の時代貢ぎでもしないと、意中の子にアピールも出来ないのだ。それとこの世は顔か金。

 それからも美咲は俺にゴタゴタ言ってきたが、可愛いは正義理論で黙らせておいた。

 

「俺が幸せならそれで良いだろ。あこに尽くすのが俺の幸せなんだし」

「あんた、もう少し自分に興味持ちなよ……。相手に依存しすぎると、日常生活もまともに過ごせなくなるよ?」

「大丈夫大丈夫。せいぜい三食カップラーメン生活になるくらいだから」

「あー、もう手遅れだったかー……」

 

 俺を見ながら美咲が頭を抱えた。なんて失礼なのだろうか。

 

「仕方ないだろ。自分に向けて料理すると失敗するんだから」

「あんたのその変な短所何なの……。相手に依存し過ぎでしょ」

「昔は違ったんだぞ?」

「今がダメなら意味ないでしょ」

 

 本当に昔は大丈夫だったのだ。だけど今は、料理が終わる頃には手が血だらけになってしまう。不思議も不思議、摩訶不思議である。早くこの症状を治したい。

 

「てかさー、そこまで依存してるんだったら、もうあこと付き合いっちゃいなよ」

「そうは言うけどさ、最近やっと思春期に入ったかなって具合なんだよ。それと、あこが鈍感過ぎる」

「なんか想像つく」

 

 明日香が言っていた嫌いな人の家になんか泊まらない理論と同じ様に、俺も嫌いな人は家に泊めない理論を持っているのだ。そこを察して気付いて欲しい。あの鈍感さんめ。でもそこがまた可愛い(末期)

 

「まあ、竜介は竜介で鈍感だけどね」

「否定したいけど前科があるから否定出来ない。もう心がボロボロなの……」

 

 リサ姉に明日香、こころに日菜先輩。そして燐子。年上年下同い年、全ジャンル見事にコンプリートしている。心が痛い。

 

「俺はさ、皆が幸せならそれで良いって生きてきたのよ。好かれようと頑張ってたんじゃないの。なのになんで他の女の子に好かれてるんだ?いや嬉しいけどさ。もうちょっとこう……皆警戒しなきゃいけないと思うの。俺ってそんな無害に見える?実は俺って自分を男だと思ってる女だったり──」

「大丈夫。竜介は男だよ。だから自分に自信持って」

「だよな。俺って男だよな」

 

 想い人が厨二病でバンドマンのイケメンさんなので、実は俺が女の子なのではと疑心が芽生えたが、俺はしっかり男だったようだ。もう確認しないと自分の性別も分からないとか言う悲しみの深み。

 

「て言うかあれだわ、こう言っちゃあれだけど、俺結構モテてたわ。今でも月一ぐらいで告られてる」

「え、嘘」

「まあそのほとんどが告白ゲーム的な奴だったり、周りに自慢するためのステータス欲しさからだったりだけど」

「あー……」

 

 告白ゲームダメ絶対。純情男子の俺には結構効く。

 

「あれは告白にカウントしない事にしてる」

「懸命な判断だと思うよ」

「なんであんな非人道的な事が出来るんだろうな」

「申し訳ないけど、ちょっとだけ皆の気持ちは分かる」

 

 美咲が裏切った。親友だと思っていたのに。

 俺は傷心の感覚を胸に、美咲を睨んだ。

 

「いやだって仕方ないじゃん。さっきのお小遣いの話の時も竜介の事欲しいって思ったし」

「お金目的かよ」

 

 正直にぶっちゃけた美咲の心象は、お金だった。こころにでも頼めば良いでは無いかとなげやりに俺は思う。

 しかし美咲は意見を改める素振りもなく、ただ諭す様に「竜介」と俺の名を呼んだ。

 

「なんだよ美咲。言っとくけど今お前に対しての好感度が最底辺ぶっちぎってるからな」

「それでも良いから聞いて」

 

 美咲は何を言おうとしているのだろうか。何を言われても好感度が戻る事は無さそうだが。

 

「例えば……そうだね、鬣がないオスライオンがいたとするよ。そのオスライオンが、メスを惹きつけるにはどうすれば良いと思う?」

「……頑張って餌を取る?」

「そう。それしかない。けどさ、もし立派な鬣があって、尚且つ餌も取れるオスがいたら、メスはどうすると思う?」

「……」

 

 美咲の言いたい事は分かった。つまり、鬣は顔立ち、餌は金。先程俺が言った世の中金か顔の話に結び付く。そして、その両方を持った俺は、異性を惹きつける宿命を背負っていると言うのが美咲の伝えたい事なのだろう。

 

「悲しい事に、あんたは鬣と狩りの才能を持ったライオンに生まれて来てしまった。残念だけど、降り掛かる火の粉は祓って行くしかないってことなの」

「薫先輩みたいな……薫先輩よりそれっぽい事言いやがって」

「嫌いになった?」

 

 真面目な顔で聞かれた美咲の問いに、俺は無言を返す。悔しいけど、美咲の言う事は正しかった。

 どうやら俺には戦う道しか残ってないらしい。

 

「……誰も傷つかないのが一番だと思わない?」

「でも竜介は、もうたくさん傷つけたし、傷ついた」

「心が痛い」

 

 結論。俺は諦めるしかないようだ。好感度が下がった話を気にしてるのか、何処か寂しそうな顔をする美咲を見ながら、俺は一度溜め息をついた。

 

「なるほど。俺も俺自身の在り方を考える必要がありそうだ。ちょっと帰って悟りを開くよ」

「あ、うん。じっくり考えてね」

「おう。それと、さっきは悪かったな。美咲の事、嫌いになんかなってないから。んじゃ、またな」

「ま、またね。……良かった

 

 自分から吹っ掛けてきておいて、実は内心不安に思っていたようだ。緊張が解れて、頬が緩みきっている。取りあえず可愛いかよ。




モテるのも考えものよね。好きでもない奴の告白フラなきゃ行けないんだから。告白ゲームダメ絶対。お兄さんとの約束だぞ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。