【完結】いちばん小さな大魔王! 作:コントラポストは全てを解決する
あこ「ばーん!」
仕事量について話をしようと思う。
仕事量──言葉そのままに、仕事をこなせる量。そして速度でもある。少子高齢化で若者不足になったこの現代社会において、これの数値が物を言うと言っても過言ではないだろう。純粋に出来るやつを雇いたいのは至極当然。至極真っ当。
考えてみて欲しい。どんくさくて仕事も遅いノーマルフェイスのリーマンと、完全無欠で欠点のないイケメンスーパーリーマン。どちらかを選ぶとしたら、絶対皆後者を選ぶ。
所詮この世は実力主義。スキルのないやつは台風でも自費出勤させられるようなブラック企業に勤める運命となっているのだ。税金で金取られたくなきゃ勉強しろ。それが先祖代々由緒正しく受け継がれてきたこの世の掟。そして性質。
弱者に意見を言う資格はないのだ。これぞ信念。俺の信念はこの拳の中にある。
さてさてここまでダラダラと現代社会の愚痴を殴り綴って来たが、結局何が言いたかったのかというと、シンプルに生徒会の仕事量が可笑しいと言う事をお伝えしたかった。
聞いて欲しい。昨日お昼にくじ引きをする事が決まって、その翌日の朝には中等部三年全クラスの出席番号、組、名前を書いた用紙を、不備不正チェックを全て終えた状態でクソデカ選挙銀ボックスに入れて持ってきたのである。単純に頭可笑しい。あと心なしか生徒会役員様達の目が死んでる。
「つぐみ……つぐり過ぎじゃないか?いやだってこれ……えぇ?」
「結構予定押してたから、一気に終わらせようってなって」
「お疲れ。ほんとお疲れ。クッキー作って来たぞ」
疲れた脳には甘いもの。俺はつぐみにクッキーを差し出し、休息を促した。
昨日つぐみがバンド練を休んだと聞いたから何をしているのかと思っていたが、まさか俺の用事のために精を出してくれていたとは思わなかった。申し訳ない気持ちで胸が一杯だ。
俺は死んだ顔でクッキーを食べるつぐみに向って合掌をした。
「で、後は俺がこの中から一枚引けば良いと」
「うん。やり直しなしの一回勝負だって」
つぐみ監修の下、俺は選挙ボックスのケツを開け、中から紙を一枚抜き取った。
ドキドキワクワク、運命のキングタイム。中から引いた紙をパラりと開き、そこに書いてあるクラス、出席番号、名前を見る。
『三年B組 番号.5 氏名 宇田川 あこ』
WINNER,Ryuusuke Kagura.
「シャァオラァァッ!!!」
「──ひきゅッ!?」
いけない。喜びの声が大き過ぎて、寝落ち仕掛けてたつぐみを起こしてしまった。でも仕方ない。だって素直に嬉しいから。百四四分の一の確率に勝ったのだ。叫んだって良いだろう。
「つぐみ、やったぜ」
「うわぁ……」
あまりに奇跡的過ぎてつぐみが引いてる。俺、今あのつぐみに引かれてるんだ。普通に心にクる。
俺はつぐみの引く顔を横目に、くじ引き用紙を天に掲げた。まあ、まだ確定ではないが。あこの了承を得なければならない。
あこは俺との相部屋をどう思うだろうか。あの鈍感さんの事だから、きっとそこまで俺を意識しないだろうけど、そろそろミカヅキモ程度には俺を異性として意識して欲しいのが本音。
「私も竜介君と同じ部屋が良かったなー……」
「別に相部屋になったからって何かあるわけじゃないぞ?料理出来ないし」
「そう言う事じゃないんだよ。もう……」
俺の料理目当てかと思ったが、そう言う訳ではないらしい。それ以外に何か目的があるのか……もしかして、昔みたいに添い寝して欲しいとか、そう言う類だろうか。
「竜介君は、もう少しあこちゃん以外の女の子に興味持った方が良いと思うよ。なんか、竜介君って男の子っぽくない」
「おっと、言っちゃいけない事言ったな。悪い事言うのはこの口かー」
「
グ二ーっと、つぐみの頬っぺを伸ばしてみる。モチモチしてて、日頃のスキンケアがしっかりしてる肌だった。今度使ってる化粧水を聞いておこうと思う。
つぐみのモチモチ肌を堪能しながら、俺は男の子の在り方を考えた。
「ち、違うよ!私が言ってるのは男子高校生っぽくないって事で……。ほら、普通の男の子だったらさ、ひまりちゃんの胸に視線が誘導されちゃったりとか……」
「良いかつぐみ、デカい胸って言うのはな?それだけで一個の罪を背負ってる様なもんなんだよ。肩は凝るし、好きな服のサイズは合わないし、周りの嫉妬が痛いし。そんな人にエッチな視線を向けるのは間違ってるだろ?」
「なんで私正論で説き伏せられてるの?」
「つぐみが巨乳を理解してないからだろ。そんなんじゃいつまで経ってもお子様バディーのままだぞ」
俺は知っている。つぐみが毎日お風呂上がりにグングンバストアップ体操をしている事を。てかつぐみままが言ってた。
俺にお子様バディー認定されたつぐみは、ぷりぷり頬を膨らましながら怒っていた。
「べ、別にちっちゃくないもん!私脱げばそこそこすごいんだからね!」
「へー」
「無関心!?」
以前にも言ったような気がするが、好きでもない異性の裸に何の価値があると言うのだろうか。巨乳でグラマラスな女の水着姿と、あこの水着姿を用意されたら、俺は迷わずあこの方に鼻の下を伸ばす自信がある。俺はなんてハレンチなのだろうか。
「うーこうなったら!」
「おいやめろ。
「だ、だからあれは違うもん!」
いつぞやかにあった、俺がこころとあこを妊娠させ、デキ婚する羽目になったと勘違いしたつぐみが、俺を寝とって夜逃げしようと下着を見せた日。思い返してみると中々に濃い出来事だ。
幸いな事に生徒会室にはもう誰もいないので、つぐみの非行を見る者はいないが、如何せんつぐみは思い切りが過ぎる。
「懐かしいなー、あれがあったのって何時だ?一ヶ月前くらいか?」
「……だいたいそれくらいだと思う」
「あの時はほんとびっくりしたよ。俺はただ蟹とイクラを買っただけなのに、つぐみに貞操狙われたんだから」
「うー……思い出させないでよ〜!」
自分の手で顔を隠し、羞恥に悶えるつぐみ。あの時から大分経ったが、つぐみもバッチリ覚えているようだ。俺もあの時見たつぐみの艶めかしい表情と、見えた下着の色は忘れない。大人の色気がムンムンだった。
「まあ、積もる話もここら辺にして。そろそろ教室戻ろーぜ。HRが始まっちまう」
「なんかやるせないなー……」
ここに来たのが朝の七時半。気づけばもうすぐ八時半だ。一時間も話していた事になる。
朝のHR後の十分休み。俺は一限目である数学の支度を進めながら、今朝の出来事を蘭に話した。
「蘭、聞いて。朝あった凄いこと」
「なに」
「ちょっと先にさ、山岳遠足があるじゃんか。あれで宿泊部屋があこと同じなった」
「へえ……はっ?」
ボヘーっと何かを考えながら、窓の外の空を眺めていた蘭が真面目な顔でこちらに振り返った。心做しか顔が怖い。
「竜介と同じ部屋になれたの?あたし聞いてないんだけど」
「まあ、中等部三年限定だからな。てか、俺と一緒だと何がそんなに良いんだ?」
「だって……」
「だって?」
俺はその先を聞こうと耳をすませるが、蘭が口ごもったまま話さなくなり、何も分からなくなってしまった。
つぐみもそうだったが、なぜ俺との相部屋にそこまでの価値を感じてるのだろうか。
「お金払ったら、変えてくれないかな……」
「そこまでするか……」
どうやら、俺との相部屋は相当価値があるらしい。
野郎との相部屋にどれほどの価値があるのか頭の中で計りながら、俺は先ほど同様上の空状態となっている蘭を見た。今日はいつにも増してボーっとしている。もしかして悩み事でも……まさか、蘭パパさんと何かあったのだろうか。
「蘭、どうした?さっきから心此処にあらずって感じだけど」
「あ、えっと……ちょっと色々あって……」
「俺で良ければ話聞くぞ?」
「あー……」
何かを言いたいけど、話して良いか分からない。そんな様子で口ごもる蘭。しかし、意を決した様に、覚悟の決まった目で俺を見ながら言った。
「放課後、時間ある?」
それはデートのお誘いだった。
特殊タグって二十利用出来るんだね。試してみたけどまさか行けるとは。デカ文字斜体めっちゃオシャンティー。
つぐみちゃんはどうか病まずに、普通なままで主人公を好きでいて。一人くらい普通の子がいないと皆の気が持たないから。というか僕が病ませたくない。